神々たちはさらに、七日七夜の間、生言霊を山のさまざまな方角から宣りあげていった。真鶴山は四方八方に伸び広がって、目も届かないくらいに広大になった。
これにより、山の四方の原野は次第に水気がなくなって地が固まり、真鶴国が誕生した。
一行は祝いと喜びの歌を歌った。
生代比女は、顕津男の神をずっと待っていたが、いまやっと真鶴山が世に出て、時が来たと歌いかける。
しかし、顕津男の神は、生代比女が八十比女神の一人ではないため、見合うことはできない、と諭す。
すると生代比女は嘆きの歌を歌い、たちまちその姿は消えて隠れてしまった。そして、山麓より黒煙が立ち上り、あたりを包んでしまった。
多々久美の神の言霊でも黒雲は晴れず、顕津男の神は生代比女に歌い呼びかけた。
すると黒雲の中から生代比女は答えて、顕津男の神への恋が破れた恨みに、沼の主となり、八十比女神の一人、玉野比女を呪ってやる、と歌い残して、悪竜となって玉野湖をさして駆け去ってしまった。
連れの神々は口々に、生代比女に対する怒りの歌を歌うが、顕津男の神は生代比女の情けにほだされ、主の神のいいつけに背いても、生代比女を捨てることはできない、と歌った。
たちまちあたりの黒雲は晴れ、四方に白梅が香り、天国の状態を顕した。