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第2巻(丑の巻)
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第6巻(巳の巻)
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第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
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第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
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第61巻(子の巻)
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第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第76巻(卯の巻)
序文
総説
日本所伝の天地開闢説
支那の開闢説
波斯の宇宙創造説
希臘の天地開闢説
エヂプトの開闢説
メキシコナフア族の天地創造説
マヤ族の万物創造説
北欧に於ける宇宙創造説
太平洋西北岸創造説
英領北亜米利加創造説
亜弗利加神話
ヘブライ天地創造説
パレスチン創造説
ミクロネシヤ創造説
インドネシヤ創造説
第1篇 春風駘蕩
01 高宮参拝
〔1918〕
02 魔の渓流
〔1919〕
03 行進歌
〔1920〕
04 怪しの巌山
〔1921〕
05 露の宿
〔1922〕
第2篇 晩春の神庭
06 報告祭
〔1923〕
07 外苑の逍遥
〔1924〕
08 善言美霊
〔1925〕
第3篇 孤軍奮闘
09 闇の河畔
〔1926〕
10 二本松の蔭
〔1927〕
11 栄城の山彦
〔1928〕
12 山上の祈り
〔1929〕
13 朝駒の別れ
〔1930〕
14 磐楠舟
〔1931〕
15 御舟巌
〔1932〕
余白歌
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インドネシヤ
創造
(
さうざう
)
説
(
せつ
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
篇:
前付
よみ(新仮名遣い):
章:
インドネシヤ創造説
よみ(新仮名遣い):
いんどねいやそうぞうせつ
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年3月23日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm760017
愛善世界社版:
八幡書店版:
第13輯 484頁
修補版:
校定版:
121頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
太初
(
はじめ
)
には、
002
茫々
(
ばうばう
)
たる
海
(
うみ
)
があるだけでした。
003
海原
(
うなばら
)
の
中
(
なか
)
に
一
(
ひと
)
つの
大
(
おほ
)
きな
岩
(
いは
)
があつて、
004
絶
(
た
)
えず
波
(
なみ
)
に
洗
(
あら
)
はれてゐましたが、
005
その
岩
(
いは
)
から
一羽
(
いちは
)
の
鶴
(
つる
)
が
生
(
うま
)
れました。
006
岩
(
いは
)
は
鶴
(
つる
)
を
産
(
う
)
むときに
汗
(
あせ
)
を
流
(
なが
)
しました。
007
そしてその
汗
(
あせ
)
からルミム・ウットといふ
女神
(
めがみ
)
が
生
(
うま
)
れました。
008
鶴
(
つる
)
が
女神
(
めがみ
)
に
対
(
むか
)
つて、
009
『
二握
(
ふたにぎり
)
の
砂
(
すな
)
を
取
(
と
)
つて
撒
(
ま
)
きちらしてごらん』
010
と
言
(
い
)
ひました。
011
ルミム・ウットはすぐ
二握
(
ふたにぎり
)
の
砂
(
すな
)
を
取
(
と
)
つて、
012
海原
(
うなばら
)
に
撒
(
ま
)
きちらしますと、
013
見
(
み
)
る
見
(
み
)
るそれが
大
(
おほ
)
きくなつて
世界
(
せかい
)
が
出来
(
でき
)
ました。
014
世界
(
せかい
)
が
出来上
(
できあが
)
ると、
015
女神
(
めがみ
)
は
高
(
たか
)
い
山
(
やま
)
に
登
(
のぼ
)
つて、
016
その
頂
(
いただき
)
に
突立
(
つつた
)
つて、
017
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
西風
(
にしかぜ
)
に
体
(
からだ
)
を
曝
(
さら
)
してゐました。
018
そのうちに
身重
(
みおも
)
になつて、
019
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
みました。
020
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
が
大
(
おほ
)
きくなると、
021
ルミム・ウットが
妻
(
つま
)
を
娶
(
めと
)
るやうに
勧
(
すす
)
めました。
022
男
(
をとこ
)
はその
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
つてあちらこちらを
探
(
さが
)
し
廻
(
まは
)
りましたが、
023
どうしても
女
(
をんな
)
を
見
(
み
)
つけることが
出来
(
でき
)
ませんでした。
024
ルミム・ウットは
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
に
思
(
おも
)
つて、
025
自分
(
じぶん
)
の
背丈
(
せたけ
)
と
同
(
おな
)
じ
長
(
なが
)
さの
杖
(
つゑ
)
を
息子
(
むすこ
)
に
与
(
あた
)
へて、
026
『この
杖
(
つゑ
)
よりも
背
(
せ
)
の
低
(
ひく
)
い
女
(
をんな
)
を
探
(
さが
)
すがいい。
027
そんな
女
(
をんな
)
を
探
(
さが
)
したら、
028
それがお
前
(
まへ
)
の
妻
(
つま
)
となるべき
運命
(
うんめい
)
を
持
(
も
)
つた
女
(
をんな
)
ですよ』
029
と
教
(
をし
)
へました。
030
そして
二人
(
ふたり
)
は
別
(
わか
)
れて、
031
世界
(
せかい
)
を
一
(
ひと
)
めぐりすることになりました。
032
母
(
はは
)
は
右
(
みぎ
)
に
廻
(
まは
)
り、
033
子
(
こ
)
は
左
(
ひだり
)
に
廻
(
まは
)
つた。
034
子
(
こ
)
は
左
(
ひだり
)
に
廻
(
まは
)
つて、
035
永
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
歩
(
ある
)
き
続
(
つづ
)
けてゐるうちに、
036
たうとう
世界
(
せかい
)
を
一巡
(
ひとめぐ
)
りしてしまつて、
037
二人
(
ふたり
)
がぱつたり
出会
(
であ
)
ひました。
038
二人
(
ふたり
)
は
余
(
あま
)
り
永
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
別
(
わか
)
れてゐたので、
039
お
互
(
たがひ
)
に
見知
(
みし
)
りませんでした。
040
男
(
をとこ
)
はすぐに
杖
(
つゑ
)
と
女
(
をんな
)
との
高
(
たか
)
さを
比
(
くら
)
べて
見
(
み
)
ましたが、
041
杖
(
つゑ
)
は
男
(
をとこ
)
が
気
(
き
)
のつかぬうちにだんだんと
伸
(
の
)
びてゐましたので、
042
女
(
をんな
)
の
背丈
(
せたけ
)
よりずつと
高
(
たか
)
かつたのでした。
043
『これだこれだ、
044
この
女
(
をんな
)
こそお
母
(
かあ
)
さんに
教
(
おそ
)
はつた
通
(
とほ
)
りの
女
(
をんな
)
だ』
045
と
思
(
おも
)
つて、
046
たうとうルミム・ウットを
自分
(
じぶん
)
の
妻
(
つま
)
にしてしまひました。
047
ルミム・ウットは
沢山
(
たくさん
)
の
子供
(
こども
)
を
産
(
う
)
みました。
048
そしてそれがみんな
神
(
かみ
)
さまとなりました。
049
(ミナハツサ島)
050
また
一説
(
いつせつ
)
に、
051
太初
(
はじめ
)
には、
052
茫々
(
ばうばう
)
たる
海
(
うみ
)
と、
053
それに
覆
(
おほ
)
ひかぶさつてゐる
天空
(
てんくう
)
があるだけでした。
054
ある
時
(
とき
)
、
055
天空
(
てんくう
)
から
一
(
ひと
)
つの
大
(
おほ
)
きな
岩
(
いは
)
が
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
に
墜
(
お
)
ちて
来
(
き
)
ました。
056
そして
月日
(
つきひ
)
がたつにつれて、
057
赤裸々
(
せきらら
)
な
岩
(
いは
)
の
面
(
めん
)
に
粘土
(
ねんど
)
が
積
(
つ
)
み
重
(
かさ
)
なると、
058
そこに
沢山
(
たくさん
)
の
虫
(
むし
)
が
生
(
うま
)
れました。
059
虫
(
むし
)
どもは、
060
絶
(
た
)
えず
岩
(
いは
)
の
面
(
めん
)
をかぢりつづけますので、
061
小
(
ちひ
)
さい
砂土
(
すなつち
)
がだんだんと
岩
(
いは
)
を
覆
(
おほ
)
ふやうになりました。
062
と、
063
天空
(
てんくう
)
に
輝
(
かがや
)
く
太陽
(
たいやう
)
から、
064
木
(
き
)
でこしらへた
刀
(
かたな
)
の
柄
(
え
)
が
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
て、
065
砂土
(
すなつち
)
の
中
(
なか
)
に
根
(
ね
)
をおろして、
066
大
(
おほ
)
きな
樹
(
き
)
となりました。
067
暫
(
しばら
)
くすると、
068
今度
(
こんど
)
は
月
(
つき
)
から
葡萄
(
ぶどう
)
の
蔓
(
つる
)
が
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
て、
069
樹
(
き
)
にまつはりつきました。
070
かうして
樹
(
き
)
と
葡萄
(
ぶどう
)
とが
抱
(
だ
)
き
合
(
あ
)
つて、
071
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
と、
072
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
とを
産
(
う
)
みました。
073
そしてその
二人
(
ふたり
)
が
結婚
(
けつこん
)
して、
074
カヤン
族
(
ぞく
)
の
祖先
(
そせん
)
となりました。
075
(中央ボルネオのカヤン族)
076
神々
(
かみがみ
)
の
誕生
(
たんじやう
)
についての
一説
(
いつせつ
)
には、
077
世界
(
せかい
)
の
初
(
はじ
)
めに、
078
一匹
(
いつぴき
)
の
蜘蛛
(
くも
)
が
天
(
てん
)
から
降
(
お
)
りて
来
(
き
)
て、
079
巣
(
す
)
を
造
(
つく
)
りました。
080
と、
081
小
(
ちひ
)
さい
石
(
いし
)
が
一
(
ひと
)
つ
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
にひつかかりましたが、
082
それが
段々
(
だんだん
)
大
(
おほ
)
きくなつて、
083
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
一
(
いつ
)
ぱいに
広
(
ひろ
)
がる
大地
(
だいち
)
となりました。
084
暫
(
しばら
)
くすると、
085
天空
(
てんくう
)
から
地衣
(
こけ
)
が
墜
(
お
)
ちて
来
(
き
)
て、
086
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
根
(
ね
)
をおろし、
087
地衣
(
こけ
)
の
間
(
あひだ
)
から
虫
(
むし
)
が
生
(
うま
)
れて、
088
頻
(
しき
)
りに
糞
(
ふん
)
をひり、
089
その
糞
(
ふん
)
から
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
の
土壌
(
つち
)
が
出来
(
でき
)
ました。
090
暫
(
しばら
)
くすると、
091
また
天
(
てん
)
から
一本
(
いつぽん
)
の
樹
(
き
)
が
墜
(
お
)
ちて
来
(
き
)
て、
092
土壌
(
つち
)
の
中
(
なか
)
に
根
(
ね
)
をおろしました。
093
それから
今度
(
こんど
)
は
一匹
(
いつぴき
)
の
蟹
(
かに
)
が
大地
(
だいち
)
に
降
(
お
)
りて
来
(
き
)
て、
094
鋭
(
するど
)
い
鋏脚
(
はさみ
)
でやたらに
地面
(
ぢめん
)
をかきむしり
掘
(
ほ
)
り
返
(
かへ
)
しました。
095
かうして
沢山
(
たくさん
)
の
山
(
やま
)
や
谷
(
たに
)
が
出来
(
でき
)
ました。
096
一本
(
いつぽん
)
の
葡萄
(
ぶどう
)
の
蔓
(
つる
)
が
樹
(
き
)
に
抱
(
だ
)
きつきました。
097
さうしてゐると、
098
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
と
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
とが、
099
天
(
てん
)
からこの
樹
(
き
)
の
上
(
うへ
)
に
降
(
お
)
りて
来
(
き
)
て、
100
男
(
をとこ
)
は
刀
(
かたな
)
の
柄
(
え
)
を、
101
女
(
をんな
)
は
紡錘
(
つむ
)
を
地面
(
ぢめん
)
に
落
(
おと
)
しました。
102
と、
103
刀
(
かたな
)
の
柄
(
え
)
と
紡錘
(
つむ
)
とが
夫婦
(
ふうふ
)
となつて、
104
一人
(
ひとり
)
の
子供
(
こども
)
を
産
(
う
)
みましたが、
105
その
子供
(
こども
)
は
体
(
からだ
)
と
頭
(
あたま
)
とを
持
(
も
)
つてゐるだけで
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
もありませんでした。
106
この
怪物
(
くわいぶつ
)
がひとりでに、
107
二人
(
ふたり
)
の
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
みました。
108
一人
(
ひとり
)
は
男
(
をとこ
)
で、
109
一人
(
ひとり
)
は
女
(
をんな
)
でした。
110
男女
(
だんぢよ
)
は
結婚
(
けつこん
)
して
沢山
(
たくさん
)
の
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
み、
111
その
子
(
こ
)
がまた
沢山
(
たくさん
)
の
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
む。
112
かうしてゐるうちにだんだんと
形態
(
けいたい
)
が
完全
(
くわんぜん
)
になつて
来
(
き
)
ました。
113
それがいろんな
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
でありました。
114
(中央ボルネオ)
115
蛇
(
へび
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
の
大地
(
だいち
)
116
世界
(
せかい
)
の
初
(
はじ
)
めには、
117
天空
(
てんくう
)
と
海
(
うみ
)
とがあるだけでした。
118
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
に
一匹
(
いつぴき
)
の
大
(
おほ
)
きな
蛇
(
へび
)
が
泳
(
およ
)
ぎ
廻
(
まは
)
つてゐました。
119
その
蛇
(
へび
)
は、
120
光
(
ひか
)
り
輝
(
かがや
)
く
石
(
いし
)
をはめた
黄金
(
わうごん
)
の
冠
(
かむり
)
を
頭
(
かしら
)
にしてゐました。
121
ある
時
(
とき
)
天空
(
てんくう
)
にゐる
一人
(
ひとり
)
の
神
(
かみ
)
が、
122
下界
(
げかい
)
を
見
(
み
)
おろしますと、
123
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
に
光
(
ひか
)
り
輝
(
かがや
)
くものが
動
(
うご
)
いてゐます。
124
何
(
なん
)
だらうと
眼
(
め
)
をこらすと、
125
それは
蛇
(
へび
)
の
頭
(
かしら
)
になつてゐる
黄金
(
わうごん
)
の
冠
(
かむり
)
でした。
126
神
(
かみ
)
は、
127
『あの
上
(
うへ
)
に
大地
(
だいち
)
をこしらへることにしよう』
128
と
言
(
い
)
つて、
129
一握
(
ひとにぎり
)
の
地
(
つち
)
を
天空
(
てんくう
)
から
投
(
な
)
げ
落
(
おと
)
しました。
130
土
(
つち
)
はうまく
蛇
(
へび
)
の
頭
(
あたま
)
に
落
(
お
)
ちかかつて、
131
一
(
ひと
)
つの
島
(
しま
)
となりましたが、
132
月日
(
つきひ
)
がたつにつれて、
133
だんだんと
大
(
おほ
)
きくなつて、
134
たうとう
大地
(
だいち
)
となりました。
135
(東南ボルネオ)
136
また
一説
(
いつせつ
)
に、
137
空
(
そら
)
には
七
(
なな
)
つの
世界
(
せかい
)
があります。
138
そしてそのうちで
最
(
もつと
)
も
高
(
たか
)
いところにある
世界
(
せかい
)
に
神々
(
かみがみ
)
のうちで
最
(
もつと
)
も
偉大
(
ゐだい
)
なムラ・ディアディが、
139
二羽
(
には
)
の
鳥
(
とり
)
を
召使
(
めしつかひ
)
として
住
(
す
)
んでゐました。
140
ムラ・ディアディは、
141
七
(
なな
)
つの
世界
(
せかい
)
の
一
(
ひと
)
つに
大
(
おほ
)
きな
樹
(
き
)
を
生
(
は
)
やして、
142
その
枝
(
えだ
)
で
天
(
てん
)
を
支
(
ささ
)
へることにしました。
143
それから
一羽
(
いちは
)
の
牝鶏
(
めんどり
)
をこしらへて、
144
それを
大
(
おほ
)
きな
樹
(
き
)
にとまらせると、
145
やがて
三
(
みつ
)
つの
卵
(
たまご
)
を
産
(
う
)
みました。
146
暫
(
しば
)
らくすると、
147
三
(
みつ
)
つの
卵
(
たまご
)
から
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
が
生
(
うま
)
れました。
148
そこでムラ・ディアディは、
149
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
を
造
(
つく
)
つて、
150
女
(
をんな
)
たちと
結婚
(
けつこん
)
させることにしました。
151
これ
等
(
ら
)
の
男女
(
だんぢよ
)
の
間
(
あひだ
)
に
大勢
(
おほぜい
)
の
子
(
こ
)
が
生
(
うま
)
れて、
152
それがまたお
互
(
たがひ
)
に
夫婦
(
ふうふ
)
になることになりましたが、
153
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
だけは、
154
どうしても
結婚
(
けつこん
)
しようとしませんでした。
155
かの
女
(
をんな
)
の
夫
(
をつと
)
となるべき
男
(
をとこ
)
は、
156
蜥蜴
(
とかげ
)
のやうな
顔
(
かほ
)
をして、
157
カメレオンのやうな
皮膚
(
はだ
)
をしてゐました。
158
だから
女
(
をんな
)
はそれを
嫌
(
きら
)
つて、
159
『わたしは
結婚
(
けつこん
)
なんか
決
(
けつ
)
してしない。
160
糸
(
いと
)
を
紡
(
つむ
)
ぐ
方
(
はう
)
がいくらいいかも
知
(
し
)
れぬ』
161
と
言
(
い
)
つて、
162
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
糸
(
いと
)
を
紡
(
つむ
)
いでゐました。
163
と、
164
ある
日
(
ひ
)
かの
女
(
ぢよ
)
が
紡錘
(
つむ
)
を
取
(
と
)
り
落
(
おと
)
しました。
165
紡錘
(
つむ
)
は
天上界
(
てんじやうかい
)
から
遥
(
はる
)
か
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
に
広
(
ひろ
)
がつてゐる
海
(
うみ
)
に
墜
(
お
)
ちました。
166
女
(
をんな
)
は
天上界
(
てんじやうかい
)
からだらりと
垂
(
た
)
れてゐる
糸
(
いと
)
を
伝
(
つた
)
つて
海
(
うみ
)
の
面
(
おもて
)
に
降
(
お
)
りて
来
(
き
)
ました。
167
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
には、
168
一匹
(
いつぴき
)
の
大
(
おほ
)
きな
蛇
(
へび
)
が
浮
(
うか
)
んでゐました。
169
女
(
をんな
)
はそれを
見
(
み
)
ると、
170
天
(
てん
)
を
仰
(
あふ
)
いで、
171
『ムラ・ディアディさま、
172
土
(
つち
)
を
少
(
すこ
)
しばかり
下
(
くだ
)
さいな』
173
と
叫
(
さけ
)
びました。
174
天界
(
てんかい
)
にゐるムラ・ディアディはこれを
聞
(
き
)
くと、
175
召使
(
めしつかひ
)
の
鳥
(
とり
)
を
一羽
(
いちは
)
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
して、
176
『これを
下界
(
げかい
)
の
女
(
をんな
)
に
持
(
も
)
つて
行
(
い
)
つておくれ』
177
と
言
(
い
)
つて、
178
一握
(
ひとにぎり
)
の
土
(
つち
)
を
渡
(
わた
)
しました。
179
鳥
(
とり
)
がその
土
(
つち
)
を
女
(
をんな
)
のところに
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
ますと、
180
女
(
をんな
)
はそれを
蛇
(
へび
)
の
頭
(
あたま
)
にふりまきました。
181
と、
182
土
(
つち
)
は
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
大
(
おほ
)
きくなつて、
183
たうとう
大地
(
だいち
)
となりました。
184
蛇
(
へび
)
は、
185
自分
(
じぶん
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
に
大地
(
だいち
)
が
出来
(
でき
)
たので、
186
重
(
おも
)
くて
苦
(
くる
)
しくてたまりません。
187
彼
(
かれ
)
は
力
(
ちから
)
まかせに
首
(
くび
)
を
振
(
ふ
)
りました。
188
大地
(
だいち
)
は
忽
(
たちま
)
ち
蛇
(
へび
)
の
頭
(
あたま
)
から
転
(
ころ
)
げ
落
(
お
)
ちて、
189
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
に
沈
(
しづ
)
んでしまひました。
190
ムラ・ディアディはこれを
見
(
み
)
ると、
191
すぐに
八
(
やつ
)
つの
太陽
(
たいやう
)
を
造
(
つく
)
つてかんかん
照
(
て
)
りつけさせました。
192
激
(
はげ
)
しい
太陽
(
たいやう
)
の
熱
(
ねつ
)
に、
193
海
(
うみ
)
の
水
(
みづ
)
がどんどん
乾
(
かわ
)
いて、
194
やがて
大地
(
だいち
)
が
水
(
みづ
)
の
上
(
うへ
)
に
現
(
あらは
)
れて
来
(
き
)
ました。
195
女
(
をんな
)
は
蛇
(
へび
)
の
体
(
からだ
)
に
刀
(
かたな
)
を
突
(
つ
)
き
刺
(
さ
)
して、
196
一
(
ひと
)
つの
島
(
しま
)
にしかと
縛
(
しば
)
りつけました。
197
『かうして
置
(
お
)
けば、
198
二度
(
にど
)
と
大地
(
だいち
)
をこはすことはなからう』
199
女
(
をんな
)
はかう
言
(
い
)
つて
喜
(
よろこ
)
んでゐますと、
200
天界
(
てんかい
)
にゐるムラ・ディアディが、
201
『かうなると、
202
あの
児
(
こ
)
も
一人
(
ひとり
)
では
置
(
お
)
けぬ』
203
と
言
(
い
)
つて、
204
嫌
(
きら
)
はれた
男
(
をとこ
)
を
吹筒
(
すゐとう
)
と
一
(
いつ
)
しよに
筵
(
むしろ
)
に
包
(
つつ
)
んで、
205
空
(
そら
)
から
投
(
な
)
げおろしました。
206
大地
(
だいち
)
に
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
た
男
(
をとこ
)
は、
207
腹
(
はら
)
が
空
(
す
)
いたので
吹矢
(
ふきや
)
を
飛
(
と
)
ばして、
208
一羽
(
いちは
)
の
鳩
(
はと
)
を
射
(
い
)
ましたが、
209
狙
(
ねらひ
)
がそれて
中
(
あた
)
りませんでした。
210
しかし
男
(
をとこ
)
はうまく
吹矢
(
ふきや
)
に
縋
(
すが
)
りついて、
211
女
(
をんな
)
の
住
(
す
)
んでゐる
村
(
むら
)
に
飛
(
と
)
んで
行
(
ゆ
)
きました。
212
女
(
をんな
)
は
今
(
いま
)
は
拒
(
こば
)
みかねて、
213
彼
(
かれ
)
と
結婚
(
けつこん
)
をしました。
214
それが
人間
(
にんげん
)
の
祖先
(
そせん
)
であります。
215
(スマトラ島のトバ・バタク族)
216
また、
217
神々
(
かみがみ
)
のうちで
最
(
もつと
)
も
偉大
(
ゐだい
)
なバタラ・グルの
妻
(
つま
)
が、
218
お
産
(
さん
)
をしようとしてゐる
時
(
とき
)
、
219
『
鹿
(
しか
)
の
肉
(
にく
)
が
食
(
た
)
べたい。
220
早
(
はや
)
く
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て
頂戴
(
ちやうだい
)
』
221
と
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
しました。
222
バタラ・グルはすぐに
一人
(
ひとり
)
の
召使
(
めしつかひ
)
をやつて、
223
鹿
(
しか
)
を
射
(
い
)
とめさせることにしました。
224
しかし
召使
(
めしつかひ
)
はどうしても
鹿
(
しか
)
を
狩
(
か
)
り
出
(
だ
)
すことが
出来
(
でき
)
ないで、
225
空
(
むな
)
しく
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ました。
226
バタラ・グルは
更
(
さら
)
に
大鴉
(
おほからす
)
をやりましたが、
227
これも
駄目
(
だめ
)
でした。
228
しかし
獲物
(
えもの
)
をあさり
廻
(
まは
)
つてゐるうちに、
229
深
(
ふか
)
い
穴
(
あな
)
を
見
(
み
)
つけました。
230
試
(
ため
)
しに
棒
(
ぼう
)
を
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んで
見
(
み
)
ましたが、
231
いつまでたつても、
232
底
(
そこ
)
に
届
(
とど
)
いたらしい
響
(
ひびき
)
がかへつて
来
(
き
)
ませんでした。
233
『とても
深
(
ふか
)
い
穴
(
あな
)
らしい。
234
一
(
ひと
)
つ
底
(
そこ
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
よう』
235
大鴉
(
おほからす
)
はかう
思
(
おも
)
つて、
236
穴
(
あな
)
の
中
(
なか
)
に
舞
(
ま
)
ひ
込
(
こ
)
みました。
237
そして
真暗
(
まつくら
)
いところをいつまでもいつまでも
舞
(
ま
)
ひ
降
(
くだ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
238
到頭
(
たうたう
)
漫々
(
まんまん
)
たる
海原
(
うなばら
)
に
出
(
で
)
ました。
239
大鴉
(
おほからす
)
はひどく
疲
(
つか
)
れましたが、
240
幸
(
さひは
)
ひ
自分
(
じぶん
)
が
投
(
な
)
げおろした
棒
(
ぼう
)
が、
241
波
(
なみ
)
に
漂
(
ただよ
)
つてゐましたので、
242
その
上
(
うへ
)
にとまつて
休
(
やす
)
んでゐました。
243
バタラ・グルは
待
(
ま
)
ち
遠
(
どほ
)
しくなつて、
244
五六
(
ごろく
)
人
(
にん
)
の
召使
(
めしつかひ
)
と
一
(
いつ
)
しよに、
245
大鴉
(
おほからす
)
を
探
(
さが
)
しに
出
(
で
)
かけました。
246
すると
深
(
ふか
)
い
穴
(
あな
)
が
見
(
み
)
つかりましたので、
247
一握
(
ひとにぎ
)
りの
砂
(
すな
)
と
七本
(
ななほん
)
の
樹
(
き
)
と
鑿
(
のみ
)
と
山羊
(
やぎ
)
と
蜂
(
はち
)
とを
携
(
たづさ
)
へて、
248
穴
(
あな
)
の
中
(
なか
)
に
舞
(
ま
)
ひ
降
(
お
)
りました。
249
海
(
うみ
)
の
面
(
おもて
)
に
降
(
お
)
りつくと、
250
先
(
ま
)
づ
光
(
ひかり
)
を
呼
(
よ
)
んで、
251
あたりを
包
(
つつ
)
んでゐる
闇
(
やみ
)
を
追
(
お
)
ひ
退
(
の
)
けました。
252
それから
七本
(
ななほん
)
の
樹
(
き
)
で
筏
(
いかだ
)
を
造
(
つく
)
るために、
253
山羊
(
やぎ
)
と
蜂
(
はち
)
とに
樹
(
き
)
を
支
(
ささ
)
へさせて、
254
自
(
みづか
)
ら
鑿
(
のみ
)
を
揮
(
ふる
)
ひました。
255
筏
(
いかだ
)
が
出来上
(
できあが
)
ると、
256
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
た
一握
(
ひとにぎ
)
りの
土
(
つち
)
をその
上
(
うへ
)
にまきました。
257
土
(
つち
)
は
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に
広
(
ひろ
)
がつて
大地
(
だいち
)
となりました。
258
(スマトラ島のハイリ・バタク族)
259
以上
(
いじやう
)
古今
(
ここん
)
東西
(
とうざい
)
各国
(
かくこく
)
の、
260
天地
(
てんち
)
開闢
(
かいびやく
)
宇宙
(
うちう
)
創造
(
さうざう
)
の
説
(
せつ
)
は、
261
我
(
わが
)
皇典
(
くわうてん
)
の
所伝
(
しよでん
)
の
外
(
ほか
)
は、
262
何
(
いづ
)
れも
荒唐
(
くわうたう
)
無稽
(
むけい
)
にして、
263
歯牙
(
しが
)
にかくるに
足
(
た
)
らざるを
知
(
し
)
るべし。
264
即
(
すなは
)
ち
宇宙
(
うちう
)
創造
(
さうざう
)
は
夢中
(
むちう
)
想像
(
さうざう
)
にして
天地
(
てんち
)
開闢
(
かいびやく
)
は、
265
癲痴
(
てんち
)
怪百
(
くわいぴやく
)
なり。
266
我
(
わが
)
説示
(
せつじ
)
する
天祥
(
てんしやう
)
地瑞
(
ちずゐ
)
の
宇宙
(
うちう
)
創造説
(
さうざうせつ
)
や
天地
(
てんち
)
開闢説
(
かいびやくせつ
)
に
比
(
ひ
)
して、
267
天地
(
てんち
)
霄壤
(
せうじやう
)
の
差異
(
さい
)
あるを
玩味
(
ぐわんみ
)
すべきなり。
268
昭和八年十二月五日 旧十月十八日 於水明閣 口述者識
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