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第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
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天祥地瑞
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第76巻(卯の巻)
序文
総説
日本所伝の天地開闢説
支那の開闢説
波斯の宇宙創造説
希臘の天地開闢説
エヂプトの開闢説
メキシコナフア族の天地創造説
マヤ族の万物創造説
北欧に於ける宇宙創造説
太平洋西北岸創造説
英領北亜米利加創造説
亜弗利加神話
ヘブライ天地創造説
パレスチン創造説
ミクロネシヤ創造説
インドネシヤ創造説
第1篇 春風駘蕩
01 高宮参拝
〔1918〕
02 魔の渓流
〔1919〕
03 行進歌
〔1920〕
04 怪しの巌山
〔1921〕
05 露の宿
〔1922〕
第2篇 晩春の神庭
06 報告祭
〔1923〕
07 外苑の逍遥
〔1924〕
08 善言美霊
〔1925〕
第3篇 孤軍奮闘
09 闇の河畔
〔1926〕
10 二本松の蔭
〔1927〕
11 栄城の山彦
〔1928〕
12 山上の祈り
〔1929〕
13 朝駒の別れ
〔1930〕
14 磐楠舟
〔1931〕
15 御舟巌
〔1932〕
余白歌
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第76巻
> 第1篇 春風駘蕩 > 第5章 露の宿
<<< 怪しの巌山
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第五章
露
(
つゆ
)
の
宿
(
やど
)
〔一九二二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
篇:
第1篇 春風駘蕩
よみ(新仮名遣い):
しゅんぷうたいとう
章:
第5章 露の宿
よみ(新仮名遣い):
つゆのやど
通し章番号:
1922
口述日:
1933(昭和8)年12月05日(旧10月18日)
口述場所:
水明閣
筆録者:
内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年3月23日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
大野ケ原を、一行十一人は、駒のくつわを並べつつ勇み進んでいく。
曲津神の妨害を退け、高地秀の宮も近づいてきた。一同は順番に旅の様子を述懐歌に歌いつつ、駒を進めていく。
野辺に一夜を明かして、翌日の昼には、無事に高地秀の宮に帰りついた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7605
愛善世界社版:
八幡書店版:
第13輯 521頁
修補版:
校定版:
249頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
果
(
は
)
てしも
知
(
し
)
らぬ
大野
(
おほの
)
ケ
原
(
はら
)
の
真中
(
まんなか
)
を
十一頭
(
じふいつとう
)
の
駒
(
こま
)
の
轡
(
くつわ
)
を
並
(
なら
)
べつつ、
002
花
(
はな
)
の
香
(
か
)
運
(
はこ
)
ぶ
春風
(
はるかぜ
)
に
003
鬢
(
びん
)
のほつれをいぢらせつ
004
手綱
(
たづな
)
かい
繰
(
く
)
りしとしとと
005
大河
(
おほかは
)
小川
(
をがは
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
006
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
むで
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ふ
007
その
風景
(
ふうけい
)
はさながらに
008
名高
(
なだか
)
き
画工
(
ぐわこう
)
の
描
(
ゑが
)
きたる
009
絵巻物
(
ゑまきもの
)
の
如
(
ごと
)
見
(
み
)
えにける。
010
高野
(
たかの
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は、
011
大野
(
おほの
)
ケ
原
(
はら
)
の
真中
(
まんなか
)
に
駿馬
(
はやこま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
を
留
(
とど
)
めて、
012
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
雲
(
くも
)
を
眺
(
なが
)
めながら
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かに
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
013
『
久方
(
ひさかた
)
の
空
(
そら
)
に
往
(
ゆ
)
き
交
(
か
)
ふ
白雲
(
しらくも
)
の
014
かげは
高地秀
(
たかちほ
)
山
(
やま
)
より
流
(
なが
)
るる
015
高地秀
(
たかちほ
)
の
山
(
やま
)
の
聖所
(
すがど
)
も
近
(
ちか
)
づきて
016
わが
魂
(
たま
)
わが
駒
(
こま
)
勇
(
いさ
)
み
出
(
い
)
でけり
017
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
の
隈手
(
くまで
)
も
恙
(
つつが
)
なく
018
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みに
渡
(
わた
)
り
来
(
こ
)
しはや
019
昼月
(
ひるづき
)
のかげは
白
(
しら
)
けて
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
に
020
近
(
ちか
)
づきにつつ
黄昏
(
たそが
)
れむとすも
021
三日月
(
みかづき
)
の
月
(
つき
)
のまゆみに
照
(
て
)
らされて
022
矢竹心
(
やたけごころ
)
の
駒
(
こま
)
は
勇
(
いさ
)
みぬ
023
久方
(
ひさかた
)
の
高地秀
(
たかちほ
)
山
(
やま
)
もほの
見
(
み
)
えて
024
この
広原
(
ひろはら
)
に
黄昏
(
たそが
)
れむとすも
025
一夜
(
ひとよさ
)
の
露
(
つゆ
)
のやどりをたのみつつ
026
明日
(
あす
)
はかへらむ
高地秀
(
たかちほ
)
の
山
(
やま
)
へ
027
高地秀
(
たかちほ
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
に
白雲
(
しらくも
)
湧
(
わ
)
き
立
(
た
)
ちて
028
西
(
にし
)
へ
流
(
なが
)
るる
夕
(
ゆふべ
)
なりけり
029
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
もあとなく
止
(
や
)
みて
静
(
しづ
)
かなる
030
春
(
はる
)
の
大野
(
おほの
)
に
露
(
つゆ
)
あびつ
寝
(
ね
)
むか』
031
梅咲
(
うめさく
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
032
『
春駒
(
はるこま
)
のいななき
高
(
たか
)
く
響
(
ひび
)
かひて
033
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れむとす
大野
(
おほの
)
ケ
原
(
はら
)
に
034
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
に
傾
(
かたむ
)
く
月
(
つき
)
のかげ
見
(
み
)
れば
035
利鎌
(
とがま
)
の
如
(
ごと
)
く
鋭
(
するど
)
かりけり
036
曲神
(
まがかみ
)
の
醜
(
しこ
)
の
猛
(
たけ
)
びも
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて
037
御空
(
みそら
)
の
星
(
ほし
)
はきらめき
初
(
そ
)
めたり
038
大空
(
おほぞら
)
の
星
(
ほし
)
は
目
(
め
)
と
目
(
め
)
を
合
(
あ
)
はせつつ
039
永久
(
とは
)
のささやき
続
(
つづ
)
けゐるかも
040
幾万
(
いくまん
)
と
数
(
かず
)
かぎりなき
星
(
ほし
)
かげを
041
仰
(
あふ
)
ぎつわれは
心
(
こころ
)
はろけし
042
大空
(
おほぞら
)
を
二
(
ふた
)
つに
割
(
わ
)
りて
永遠
(
とことは
)
に
043
銀砂
(
ぎんしや
)
流
(
なが
)
るる
天
(
あま
)
の
河
(
かは
)
はも
044
久方
(
ひさかた
)
の
空
(
そら
)
に
横
(
よこ
)
たふ
天
(
あま
)
の
河
(
かは
)
も
045
その
行先
(
ゆくさき
)
は
海
(
うみ
)
に
続
(
つづ
)
けるか
046
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
もいやさやさやに
響
(
ひび
)
きつつ
047
わが
目
(
め
)
俄
(
にはか
)
に
眠
(
ねむ
)
くなりたり
048
春風
(
はるかぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれて
長
(
なが
)
き
駒
(
こま
)
の
旅
(
たび
)
を
049
しばし
休
(
やす
)
めむ
草
(
くさ
)
の
褥
(
しとね
)
に
050
大空
(
おほぞら
)
の
星
(
ほし
)
の
模様
(
もやう
)
の
夜具
(
やぐ
)
を
着
(
き
)
て
051
大地
(
だいち
)
の
褥
(
しとね
)
に
一夜
(
ひとよ
)
を
眠
(
ねむ
)
らむ』
052
香具
(
かぐ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
053
『
高野
(
たかの
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
に
従
(
したが
)
ひて
054
天津
(
あまつ
)
高宮
(
たかみや
)
に
詣
(
まう
)
でけるかも
055
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
駒
(
こま
)
の
旅路
(
たびぢ
)
を
重
(
かさ
)
ねつつ
056
今宵
(
こよひ
)
も
草
(
くさ
)
の
褥
(
しとね
)
に
眠
(
ねむ
)
らむ
057
万里
(
ばんり
)
行
(
ゆ
)
く
駒
(
こま
)
も
脚
(
あし
)
をば
地
(
ち
)
にのべて
058
旅
(
たび
)
のつかれをやすらひ
居
(
を
)
るも
059
この
駒
(
こま
)
はやさしき
駒
(
こま
)
よ
千万
(
せんまん
)
里
(
り
)
の
060
旅
(
たび
)
をたすけて
報酬
(
むくい
)
を
求
(
もと
)
めず
061
天界
(
かみくに
)
に
生
(
い
)
きてほりする
事
(
こと
)
なくば
062
日々
(
ひび
)
の
生活
(
すぐせ
)
は
安
(
やす
)
けかるらむ
063
幾千
(
いくせん
)
里
(
り
)
われを
助
(
たす
)
けて
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
つ
064
駒
(
こま
)
の
心
(
こころ
)
のうるはしきかも』
065
寿々子
(
すずこ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
066
『
千万
(
せんまん
)
里
(
り
)
の
旅
(
たび
)
を
重
(
かさ
)
ねて
今
(
いま
)
ははや
067
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
に
近
(
ちか
)
づきにけり
068
明日
(
あす
)
ざれば
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
にかへらむと
069
おもへば
楽
(
たの
)
しく
夜
(
よ
)
も
眠
(
ねむ
)
られず
070
一夜
(
ひとよさ
)
の
露
(
つゆ
)
の
枕
(
まくら
)
を
重
(
かさ
)
ねつつ
071
帰
(
かへ
)
らむよき
日
(
ひ
)
待
(
ま
)
つは
楽
(
たの
)
しき
072
曲津見
(
まがつみ
)
の
醜
(
しこ
)
の
猛
(
たけ
)
びも
言霊
(
ことたま
)
の
073
水火
(
いき
)
に
祓
(
はら
)
ひて
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
にけり
074
鋭敏鳴出
(
うなりづ
)
の
神
(
かみ
)
の
言霊
(
ことたま
)
力
(
ちから
)
もて
075
道
(
みち
)
の
隈手
(
くまで
)
もつつがなく
来
(
こ
)
し
076
河
(
かは
)
となり
又
(
また
)
山
(
やま
)
となり
雲
(
くも
)
となりて
077
曲津見
(
まがつみ
)
は
道
(
みち
)
にさやりけるはも
078
曲津見
(
まがつみ
)
は
如何
(
いか
)
に
猛
(
たけ
)
るも
議
(
はか
)
ゆとも
079
生言霊
(
いくことたま
)
に
及
(
およ
)
ばざりけり
080
久方
(
ひさかた
)
の
筑紫
(
つくし
)
の
宮居
(
みや
)
の
旅
(
たび
)
に
立
(
た
)
ちて
081
世
(
よ
)
のさまざまの
憂
(
うき
)
をさとりぬ
082
風
(
かぜ
)
清
(
きよ
)
く
眺
(
なが
)
め
妙
(
たへ
)
なる
高地秀
(
たかちほ
)
の
083
宮居
(
みや
)
にし
住
(
す
)
めば
世
(
よ
)
のさま
知
(
し
)
れずも
084
うつり
行
(
ゆ
)
く
世
(
よ
)
のさまざまの
事毎
(
ことごと
)
を
085
悟
(
さと
)
らひにけり
旅
(
たび
)
を
重
(
かさ
)
ねて
086
わが
魂
(
たま
)
は
黒雲
(
くろくも
)
の
如
(
ごと
)
濁
(
にご
)
らへりと
087
筑紫
(
つくし
)
の
宮居
(
みや
)
に
詣
(
まう
)
でてさとりぬ』
088
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
089
『
千万
(
せんまん
)
里
(
り
)
遠
(
とほ
)
の
旅路
(
たびぢ
)
を
重
(
かさ
)
ねつつ
090
はや
一夜
(
ひとよさ
)
の
旅
(
たび
)
となりける
091
高地秀
(
たかちほ
)
の
山
(
やま
)
は
恋
(
こひ
)
しもなつかしも
092
岐美
(
きみ
)
の
御霊
(
みたま
)
のとどまりませば
093
住
(
す
)
みなれし
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
の
聖所
(
すがど
)
こそ
094
わが
永遠
(
とことは
)
の
命
(
いのち
)
なりける
095
永遠
(
とことは
)
の
命
(
いのち
)
の
聖所
(
すがど
)
を
後
(
あと
)
にして
096
再
(
ふたた
)
び
吾
(
われ
)
は
旅立
(
たびだ
)
たむと
思
(
おも
)
ふ
097
さりながら
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
等
(
たち
)
の
御許
(
みゆる
)
しを
098
受
(
う
)
けての
後
(
のち
)
に
定
(
さだ
)
めむと
思
(
おも
)
ふ
099
大空
(
おほぞら
)
に
星
(
ほし
)
はまたたき
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
の
100
草葉
(
くさば
)
の
露
(
つゆ
)
は
玉
(
たま
)
とにほひつ
101
春草
(
はるくさ
)
の
根
(
ね
)
にひそみ
鳴
(
な
)
く
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
も
102
いや
冴
(
さ
)
えにつつ
夜
(
よ
)
は
更
(
ふ
)
けにけり
103
星光
(
ほしかげ
)
は
千万
(
ちよろづ
)
あれど
弓張
(
ゆみはり
)
の
104
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
及
(
およ
)
ばざりけり
105
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
に
新月
(
しんげつ
)
の
影
(
かげ
)
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて
106
闇
(
やみ
)
のかたまり
地
(
ち
)
に
拡
(
ひろ
)
ごれり
107
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
とほして
仰
(
あふ
)
ぐ
星
(
ほし
)
かげの
108
数限
(
かずかぎ
)
りなくまたたく
夜半
(
よは
)
なり』
109
宇都子
(
うづこ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
110
『
長
(
なが
)
の
旅
(
たび
)
を
今日
(
けふ
)
が
宵
(
よひ
)
まで
続
(
つづ
)
けつつ
111
世
(
よ
)
のさまざまを
悟
(
さと
)
らひしはや
112
大空
(
おほぞら
)
にただ
一片
(
ひときれ
)
の
雲
(
くも
)
もなく
113
千万
(
ちよろづ
)
の
星
(
ほし
)
かがやき
初
(
そ
)
めつつ
114
満天
(
まんてん
)
に
数
(
かず
)
の
限
(
かぎ
)
りをかがやける
115
星
(
ほし
)
かげを
力
(
ちから
)
に
一夜
(
ひとよ
)
を
眠
(
ねむ
)
らむ
116
国土
(
くに
)
稚
(
わか
)
き
大野
(
おほの
)
ケ
原
(
はら
)
も
春
(
はる
)
されば
117
花
(
はな
)
の
筵
(
むしろ
)
となりて
匂
(
にほ
)
へる
118
花筵
(
はなむしろ
)
いやさや
敷
(
し
)
きて
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
を
119
眠
(
ねむ
)
りつ
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
きくは
楽
(
たの
)
しも』
120
狭別
(
さわけ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
121
『
高地秀
(
たかちほ
)
の
峰
(
みね
)
は
白雲
(
しらくも
)
たなびきて
122
遠野
(
とほの
)
の
旅
(
たび
)
の
夜
(
よ
)
は
更
(
ふ
)
けにけり
123
明日
(
あす
)
の
日
(
ひ
)
は
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
に
帰
(
かへ
)
らむと
124
心
(
こころ
)
いさみて
眼
(
まなこ
)
冴
(
さ
)
えつつ
125
曲津見
(
まがつみ
)
に
道
(
みち
)
の
行手
(
ゆくて
)
を
遮
(
さへぎ
)
られし
126
時
(
とき
)
を
思
(
おも
)
へば
今宵
(
こよひ
)
は
安
(
やす
)
けし
127
鋭敏鳴出
(
うなりづ
)
の
神
(
かみ
)
の
言霊
(
ことたま
)
天地
(
あめつち
)
に
128
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
りて
曲津
(
まが
)
は
失
(
う
)
せける
129
言霊
(
ことたま
)
の
貴
(
うづ
)
の
力
(
ちから
)
を
今更
(
いまさら
)
に
130
われは
悟
(
さと
)
りぬ
旅
(
たび
)
を
重
(
かさ
)
ねて
131
言霊
(
ことたま
)
の
伊照
(
いて
)
りたすくる
天界
(
かみのよ
)
に
132
生
(
うま
)
れしわが
身
(
み
)
の
幸
(
さち
)
を
思
(
おも
)
ふも
133
見渡
(
みわた
)
せば
深
(
ふか
)
く
包
(
つつ
)
みし
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
に
134
遥
(
はる
)
かの
野辺
(
のべ
)
はかくろひにけり
135
日並
(
けなら
)
べて
旅
(
たび
)
に
立
(
た
)
ちつつやうやくに
136
一夜
(
ひとよ
)
をあます
草枕
(
くさまくら
)
はも
137
草枕
(
くさまくら
)
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れもしらずがに
138
駒
(
こま
)
は
安
(
やす
)
けく
眠
(
ねむ
)
らひにけり』
139
花子
(
はなこ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
140
『
長旅
(
ながたび
)
に
疲
(
つか
)
れし
吾
(
われ
)
も
一夜
(
ひとよさ
)
の
141
旅
(
たび
)
とし
思
(
おも
)
へば
嬉
(
うれ
)
しくなりぬ
142
明日
(
あす
)
の
日
(
ひ
)
は
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
の
大前
(
おほまへ
)
に
143
復命
(
かへりごと
)
せむとおもへばうれし
144
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みやゐ
)
は
常
(
つね
)
に
紫
(
むらさき
)
の
145
雲
(
くも
)
立
(
た
)
ちのぼり
清
(
すが
)
しき
山
(
やま
)
はも
146
久方
(
ひさかた
)
の
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
に
聳
(
そび
)
えたる
147
高地秀
(
たかちほ
)
山
(
やま
)
の
春
(
はる
)
はうるはし
148
百千花
(
ももちばな
)
咲
(
さ
)
き
足
(
た
)
らひたる
高地秀
(
たかちほ
)
の
149
山
(
やま
)
は
天界
(
みくに
)
の
姿
(
すがた
)
なるかも』
150
小夜子
(
さよこ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
151
『
小夜
(
さよ
)
更
(
ふ
)
けて
眠
(
ね
)
らへぬままに
草
(
くさ
)
の
露
(
つゆ
)
152
素足
(
すあし
)
にふめば
清
(
すが
)
しかりけり
153
明日
(
あす
)
の
日
(
ひ
)
は
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
に
帰
(
かへ
)
らむと
154
おもへば
心
(
こころ
)
をどりて
眠
(
ねむ
)
れず
155
日並
(
けなら
)
べて
旅
(
たび
)
の
楽
(
たの
)
しさ
苦
(
くる
)
しさを
156
悟
(
さと
)
らひにつつ
一夜
(
ひとよ
)
となりぬ
157
一夜
(
ひとよさ
)
の
野辺
(
のべ
)
の
宿
(
やど
)
りももどかしく
158
おもひぬるかな
聖所
(
しがど
)
近
(
ちか
)
みて
159
御樋代
(
みひしろ
)
の
神
(
かみ
)
打揃
(
うちそろ
)
ひ
紫微
(
しび
)
の
宮居
(
みや
)
に
160
詣
(
まう
)
でしことを
珍
(
めづ
)
らしとおもふ
161
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みに
夜
(
よる
)
も
安
(
やす
)
らけく
162
幾日
(
いくひ
)
の
旅
(
たび
)
をつづけけるかも
163
わが
心
(
こころ
)
頓
(
とみ
)
に
勇
(
いさ
)
みて
眠
(
ねむ
)
られず
164
駒
(
こま
)
のあがきの
音
(
おと
)
ききて
居
(
を
)
り
165
薄曇
(
うすぐも
)
る
春
(
はる
)
の
陽気
(
やうき
)
のただよひて
166
風
(
かぜ
)
静
(
しづ
)
かなる
神苑
(
みその
)
にかへらむ
167
大宮居
(
おほみや
)
の
庭
(
には
)
を
流
(
なが
)
るる
清川
(
きよかは
)
に
168
明日
(
あす
)
はかへりて
禊
(
みそぎ
)
せむかな』
169
天津
(
あまつ
)
女雄
(
めを
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
170
『
御樋代
(
みひしろ
)
の
神
(
かみ
)
の
御供
(
みとも
)
に
仕
(
つか
)
へつつ
171
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
に
近
(
ちか
)
づきしはも
172
いざさらば
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるまで
眠
(
ねむ
)
るべし
173
春
(
はる
)
の
気
(
き
)
のただよふ
野辺
(
のべ
)
の
草生
(
くさふ
)
に』
174
斯
(
か
)
く
神々
(
かみがみ
)
は
述懐歌
(
じゆつくわいか
)
をうたひつつ
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるを
待
(
ま
)
ち
給
(
たま
)
ひ、
175
再
(
ふたた
)
び
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
勇
(
いさ
)
ましく、
176
次
(
つ
)
ぎの
日
(
ひ
)
の
真昼頃
(
まひるごろ
)
、
177
やうやくにして
高地秀
(
たかちほ
)
の
宮居
(
みや
)
の
聖所
(
すがど
)
に
無事
(
ぶじ
)
帰
(
かへ
)
らせ
給
(
たま
)
ひける。
178
(
昭和八・一二・五
旧一〇・一八
於水明閣
内崎照代
謹録)
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