第四章 怪しの巌山〔一九二一〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
篇:第1篇 春風駘蕩
よみ(新仮名遣い):しゅんぷうたいとう
章:第4章 怪しの巌山
よみ(新仮名遣い):あやしのいわやま
通し章番号:1921
口述日:1933(昭和8)年12月05日(旧10月18日)
口述場所:水明閣
筆録者:白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月23日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:一方、鋭敏鳴出の神に吹き散らされた曲津神たちは陣容を立て直し、雲を次々と吐き出して重なり合わせ、延々数百里にもまたがる巖山を築き上げ、その前に千尋の谷川を作って一行を阻もうとした。
しかし、再び鋭敏鳴出の神が、千引巖を頭上の高く差し上げ、「うん」という一声と共に深い谷川の巖が根に打ち付ければ、巖と巖がぶつかってほとばしりでた火の光に曲津神は驚き退いてしまった。
紫微天界における火は、鋭敏鳴出の神の神の巖投げによって始まった。
曲津見の神たちは、火の光に驚き肝を冷やし、数百里の巖山も次第に影が薄らぎ、白雲となって空に消えてしまった。
さらに鋭敏鳴出の神の神は言霊歌により風を呼び、空に漂ってなおも日の光をさえぎっている曲津神の雲を晴らしてしまった。
一行一同は、鋭敏鳴出の神の言霊の神徳をたたえる歌を歌ったが、同時に、曲津神の根源が、百神たちの曇った水火(いき)が固まって生まれたことを悟った。そして、自分自身の心の曇りが高地秀の宮にも曇りを生んだことを悔いた。
高野比女は、鋭敏鳴出の神に先頭を、天津女雄の神に後方の守りを任せ、一行は春風渡る青野ケ原を、駒に乗って東の宮への帰り道を進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2018-07-03 17:53:21
OBC :rm7604
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 515頁
修補版:
校定版:226頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 八十曲津見の神は、002鋭敏鳴出の神の生言霊にうたれて、003雲霧となり、004西吹く風にあふられて、005一度は東の御空遥かに逃げ失せたれども、006ここに再び陣容を立て直し、007飽くまでも神の神業にさやらむと、008古綿をちぎりたる如く、009雲を次々吐き出だし、010幾千丈とも限りなく重り合せて、011遂には天を貫く大巨巌となり、012蜿蜒数百里にまたがる巌骨の山を築き上げ、013その前面に千尋の深き溪川をつくりて、014一歩も進ましめざらむとし、015力を尽すこそ忌々しけれ。
016 ここに、017高野比女の神一行は、018駒の轡を並べて、019夜を日についで進ませ給ふ折しもあれ、020前途に横はる思ひがけなき巌山に、021行手を遮られ、022暫し思案にくれ給ひけるが、023ここに鋭敏鳴出の神は、024曲津見の醜の雄猛びものものしやと宣りつつ、025かたへの千引巌を、026頭上高くさし上げながら、027「うん」と一声、028深溪川の巌ケ根に向つて打ちつけ給へば、029巌と巌とは相摩して、030迸り出でたる火の光に、031曲津神は驚きて、032さしもに堅き巌山も、033どよめきそめつ梢後方に退きにける。
034 紫微天界に於ける、035火の生れ出でしは、036鋭敏鳴出の神の巌投げによりて始まれるなり。037曲津見の神は激しく飛び出でし火の光に、038驚きて肝を冷し、039今までの勇気はどこへやら、040数百里にまたがる巌山も、041次第々々に影うすらぎ、042遂には白雲となりて、043御空遠く消え失せたるぞ不思議なれ。
044 高野比女の神はこの態を見て、045感嘆のあまり御歌詠ませ給ふ。
046『鋭敏鳴出の神の功に生れ出でし
047火は曲神を追ひ散らしける
048巌骨の山と変じて曲神は
050千引巌の摩擦によりて現はれし
052天界に始めて見たる火の光
053四方を照らして曲をやらへり
054巌ケ根ゆ火の出づること悟りけり
055鋭敏鳴出の神の神業によりて』
056 鋭敏鳴出の神は御歌詠ませ給ふ。
057『曲神は巌骨の山と変じつつ
058行手にさやれど何か恐れむ
059巌と巌の軋りて生れし火の神の
061谷底に散りたる火花に怖ぢ恐れ
062ときはの巌山も崩れ初めたり
063堅磐常磐の巌の山と見ゆれども
065アオウエイ生言霊を宣りあげて
066この巌山を雲と散らさむ』
067 かく歌ひつつ、068鋭敏鳴出の神は、069声も朗かに御歌詠ませ給ふ。
070『アオウエイ天津真言の言霊に
071巌骨山は跡なく消えむ
072カコクケキ輝き渡る大空の
073天津日光に亡びよ曲津見
075さやりたる醜の曲津見の曲業も
076生言霊の水火に消えなむ
078たつくもの重り合ひて巌となりし
079曲津の山をば崩してや見む
081ながながと広野の中に尾をひきし
083ハホフヘヒ空吹く風の功績に
084雲と散るべしこの巌山も
086曲津見の醜の猛びの深くとも
089八十曲津見力の限りさやるとも
090如何で悩まむ神なるわれは
092わくらはに力あつめて生り出でし
093曲の巌山いまに砕かむ
094一二三四五六七八九十
095百千万の神守らせたまへ』
096 斯く歌ひ給ふや、097蜿蜒として幾百里にわたりたる巌骨の山も、098次第々々に煙となりて砕けつつ、099風のまにまに散り行くぞ愉快なれ。
100 天津女雄の神はこの態を見て、101御歌詠ませ給ふ。
102『天晴れ天晴れ鋭敏鳴出の神の功績に
103醜の巌山早や崩れたり
104曲神の奸計の深溪川さへも
106天地の中に生れて主の神の
107恵みを知らぬ曲津神はも
108火の神の在処を始めて悟りけり
109巌と巌との中にいますを
110曲神の醜のとりでを亡ぼさむ
111ためには強き力の火なるよ
112あらがねの地にも火にも神ますと
114曲神は火の御光に怖ぢ恐れ
115雲の彼方に影をかくせり
116かくのごと力の限りを集めたる
117曲の仕組の山は崩れぬ
118言霊の水火に生れし天界に
119尊きものは言霊なるかも
120何一つ武器は持たねど言霊の
121水火の剣に守られ行かむ
122真心をつくしの宮居より降り来し
124駿馬は勇みすすみて天界の
125この清しさに嘶き止まずも』
126 梅咲比女の神は御歌詠ませ給ふ。
127『面白き旅に立つかも行先に
128曲の構へし砦を破りつ
129主の神の御稜威は高しわが岐美の
130功は広しと思へば楽し
131曲神の心つくしの巌山も
132生言霊に跡なく亡びぬ
133曲神は偽りごとをたくみつつ
135天津真言の生言霊の幸はひに
136生りし森羅万象は永久に亡びじ』
137 香具比女の神は御歌詠ませ給ふ。
138『御樋代神とわれは選まれ東の
139宮居に仕へておもふ事なし
140今までの心の雲り晴れにつつ
141わが背の岐美を尊くぞ思ふ
142恋しさの心は消えて背の岐美を
144鋭敏鳴出の神の功の尊さを
146力なき女神の身もて神業に
147仕ふる日々の重さを思ふ
148さりながら辞まむ術もなかりけり
149神の依さしの尊かりせば
150わが心曇らひにつつ背の岐美の
151神業にさやりし事を悔ゆるも
152言霊の水火も清めずひたすらに
153岐美を慕ひし愚かさを恥づ』
154 寿々子比女の神は御歌詠ませ給ふ。
155『ここに来て神の奇しき神業を
157何事も生言霊の幸はひに
158生り出づるよしを悟らひにけり
159やすやすと神に仕へて朝夕を
161朝夕の禊の神事をおこたりし
162われは御子生み叶はざりしよ
163今日よりは瀬見の小川に禊して
164生言霊を清め澄まさむ
165鋭敏鳴出の神の言霊清ければ
166流石の曲津見も逃げ失せにけり』
167 朝香比女の神は御歌うたひ給ふ。
168『御樋代の神とはいへど言霊の
170わが岐美を恨みし事の今更に
172曇りたる水火もて少しも曇りなき
173水火にあはすと思ひし愚かさ
174吾のみか八柱比女神も悉く
175生言霊は濁らひますらむ
176御子生みの神業に離れし過も
177みな言霊の濁ればなりけり
178今日よりは心の奥より清め澄まし
179神の依さしの神業につくさむ
180御樋代の神と任けられいたづらに
182言霊の清くありせば曲神の
183千引の巌も崩れこそすれ
184朝な夕な瀬見の小川に禊して
185慎しみ敬ひ神業に仕へむ
186曲神の強き猛びも恐れずに
187進み行かむか言霊剣もて』
188 宇都子比女の神は御歌詠ませ給ふ。
189『宇都子比女われは御樋代神として
190今日が日までも待ちあぐみたり
191真心をつくしの宮居に詣でつつ
192主の大神の光りにうたれつ
193主の神の依さしの神業成らずして
194あだに月日を過す苦しさ
195鋭敏鳴出の神の言霊清ければ
196御空の月日も澄み渡りつつ
197曲神は雲霧となり雨となりて
199万世の末の末まで生き生きて
200神業に仕へむ若返りつつ
201若返り若返りつつ神業に
202仕へむとして言霊磨くも』
203 狭別比女の神は御歌詠ませ給ふ。
204『いざさらば進み行かなむ曲津見は
205影だにもなく逃げ失せにけり
206うづ高く積みて造りし巌山も
207跡なく消えて春風わたる
208言霊の旅を重ねてをりをりに
209曲津の奸計をめづらしみ見つ
210言霊に消えて跡なき巌山の
211あとに匂へる百花千花よ
212言霊の水火の濁れば雲となり
213曲津見となりて世を塞ぐなり
214百神の曇れる水火の固まりて
215八十曲津見は生れ出でにけむ
216斯の如悟りしわれは今日の日を
218わが神魂清まりぬれば自ら
219生言霊も澄みきらふらむ
220天界の旅をつづけて今更に
221生言霊のたふとさを知る
222洗へども磨けどおちぬ魂線の
223曇りを如何に払はむかと思ふ
224神を愛し神を信じつ朝夕に
225魂洗ふよりほかに道なし』
226 花子比女の神は御歌詠ませ給ふ。
227『われもまた御樋代神と仕へつつ
228高地秀の宮居に年をふりけり
229高地秀の宮居の聖所に朝夕を
230曇りし心に仕へ来しはも
231愛善の真言の光におはす神は
233今日よりは心の駒を立て直し
235大らかにいます岐美ゆゑ大らかに
236仕へて神業に勉むべきなり
237村肝の心の闇は晴れにけり
238主の大神の御旨さとりて
239何事も神の御心と知りながら
241妬み嫉み今まで続けし八柱の
242御樋代神を愚かしみおもふ
243御樋代の神の中にもすぐれたる
245花のごと清くあれよと主の神は
246花子と名づけ給ひしものを
247花も実もなき言霊を宣りにつつ
248わが背の岐美を悩ませしはや
249わが罪の深さ重さを悟りつつ
250神の御前に詫びつつ泣くなり』
251 小夜子比女の神は御歌詠ませ給ふ。
252『夜も昼も神の恵みに抱かれて
254楽しかるこの天界に生れあひて
255かこち過せしことを今悔ゆ
256言霊の幸はひたすくる天界に
257われは亡びの道を歩みし
258知らず識らず亡びの道を辿りけり
260御樋代神かたみに妬み嫉みつつ
261高地秀の宮居を曇らせしはや
262清らけき心の玉をかがやかし
263かたみに仕へむ神の御前に
264主の神の七十五声の言霊に
265国津神たち数多生れにき
266国津神の上に立てよと主の神の
267依さし給ひしわれ等なりける
268国津神の心におとる魂線を
270真心のあらむ限りを照らしつつ
272いざさらば百神駒に召しませよ
273東の宮居は遥かなりせば』
274 高野比女の神は御歌詠ませ給ふ。
275『鋭敏鳴出の神はわが行く先に立ちて
277天津女雄の神は後方を守りつつ
278進ませたまへ東の宮居へ』
279 斯く歌ひ給へば、280鋭敏鳴出の神は、281高野比女の神其他一同に黙礼しながら、282ひらりと駒に跨り、283いざや道案内せむと、284馬背に鞭うち蹄の音も勇ましく、285鈴の音を四辺に響かせながら、286春風わたる青野ケ原を進ませ給へば、287一行は轡を並べてしづしづと御心も朗かに進み出で給ふ。
288(昭和八・一二・五 旧一〇・一八 於水明閣 白石恵子謹録)