第四章 現実的苦行〔四〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
篇:第1篇 幽界の探険
よみ(新仮名遣い):ゆうかいのたんけん
章:第4章 現実的苦行
よみ(新仮名遣い):げんじつてきくぎょう
通し章番号:4
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:1921(大正10)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:また、一週間水を口にしないことで、水のありがたさを身にしみて感じることができた。草木の葉一枚でも、神様のお許しがなければ戴くことはできないということを知り、どんな苦難でも自若、感謝の気持ちで対することができるようになった。
そしてまた、衣食住の恩とともに、空気の恩を感謝せなくてはならない。空気ばかりは、ただの二三分でも呼吸しなくては生きることができないのだから。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm0104
愛善世界社版:21頁
八幡書店版:第1輯 52頁
修補版:
校定版:20頁
普及版:11頁
初版:
ページ備考:
001 つぎに自分の第一に有難く感じたのは水である。002一週間といふものは、003水一滴口に入れることもできず、004咽喉は時々刻々に渇きだし、005何とも言へぬ苦痛であつた。006たとへ泥水でもいい、007水気のあるものが欲しい。008木の葉でも噛んでみたら、009少々くらゐ水は含んでをるであらうが、010それも一週間は神界から飲食一切を禁止されてをるので、011手近にある木の葉一枚さへも、012口に入れるといふわけにはゆかない。013その上時々刻々に空腹を感じ、014気力は次第に衰へてくる。015されど神の御許しがないので、016お土の一片も口にすることはできぬ。017膝は崎嶇たる巌上に静坐せることとて、018是くらゐ痛くて苦しいことはない。019寒風は肌身を切るやうであつた。
020 自分がふと空をあふぐ途端に、021松の露がポトポトと雨後の風に揺られて、022自分の唇辺に落ちかかつた。023何心なくこれを嘗めた。024ただ一滴の松葉の露のその味は、025甘露とも何ともたとへられぬ美味さであつた。
026 これを考へてみても、027結構な水を火にかけ湯に沸して、028温いの熱いのと、029小言を言つてゐるくらゐ勿体ないことはない。
030 草木の葉一枚でも、031神様の御許しが無ければ、032戴くことはできず、033衣服は何ほど持つてをつても、034神様の御許しなき以上は着ることもできず、035あたかも餓鬼道の修業であつた。036そのお蔭によつて水の恩を知り、037衣食住の大恩を覚り、038贅沢なぞは夢にも思はず、039どんな苦難に逢ふも驚かず、040悲しまず、041いかなる反対や、042熱罵嘲笑も、043ただ勿体ない、044有難い有難いで、045平気で、046社会に泰然自若、047感謝のみの生活を楽むことができるやうになつたのも、048全く修行の御利益である。
049 それについて今一つ衣食住よりも、050人間にとつて尊く、051有難いものは空気である。052飲食物は十日や廿日くらゐ廃したところで、053死ぬやうな事はめつたにないが、054空気はただの二三分間でも呼吸せなかつたならば、055ただちに死んでしまふより途はない。056自分がこの修行中にも空気を呼吸することだけは許されたのは、057神様の無限の仁慈であると思つた。
058 人は衣食住の大恩を知ると同時に、059空気の御恩を感謝せなくてはならない。060しかし以上述べたるところは、061自分が高熊山における修行の、062現界的すなはち肉体上における神示の修行である。063霊界における神示の修行は、064到底前述のごとき軽い容易なものではなかつた。065幾十倍とも幾百倍ともしれぬ大苦難的修練であつた。