第四二章 八尋殿の酒宴の二〔四二〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
篇:第5篇 御玉の争奪
よみ(新仮名遣い):みたまのそうだつ
章:第42章 八尋殿の酒宴(二)
よみ(新仮名遣い):やひろどののしゅえん(二)
通し章番号:42
口述日:1921(大正10)年10月24日(旧09月24日)
口述場所:
筆録者:桜井重雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:1921(大正10)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:挑発に乗って玉を取り出した五柱の神々と竹熊たちは、玉を取り出そうとしない竜宮城の五柱の神々を責め立てたが、高杉別、森鷹彦、鶴若、亀若、時彦らはどうしても挑発にのらなかった。
竹熊らは玉を出さない五柱の神々に虐待を加え始め、汚い虫や牛馬の糞尿を無理やり食わせた。しかし五柱の神々は拷問に屈せず、頑として玉の供出を拒否し、生命に変えても玉を離すことはない、と意思をあらわにした。
すると金色の烏が数限りなく現れて、五柱の神々を竹熊の館から救い出し、竜宮城へと連れ帰った。一方で怪鳥がまた数限りなく現れると砂礫の雨を降らせ、玉を竹熊に供出してしまった芳彦、神彦、倉高、杉生彦、猿彦の頭上を砕いて悶死させてしまった。
黄金水の玉は七個までが、竹熊の手に渡ってしまったのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2017-12-04 12:30:30
OBC :rm0142
愛善世界社版:225頁
八幡書店版:第1輯 126頁
修補版:
校定版:224頁
普及版:116頁
初版:
ページ備考:
001 ここに竹熊、002大虎彦は威丈高になり、003高杉別、004森鷹彦、005鶴若、006亀若、007時彦を眼下に見下し、
008『汝らは竜宮城の神司とはいへ、009その実は有名無実にして、010糞土神同様なり。011玉なき者は、012この席に列なる資格なし。013ああ汚らはしや』
014と塩をふり、015臀部をまくり、016あらゆる侮辱を加へた。017五柱の従臣は、018勘忍に勘忍を重ね、019これも畢竟悪魔の世迷ひ言に過ぎずとして、020つひには少しも耳をかさなかつた。
021 玉を差し出したる竜宮城の五柱の神司も、022竹熊一派の者も、023共に声を揃へて、024高杉別以下の神司をさんざん罵倒した。025酒宴はますます酣となつた。
026 この時、027竹熊は左より大虎彦は右より、028彼我の手を結びあはせ、029円を描いて高杉別以下四柱の神司を中に取まき、030悪声を放ちつつ踊り狂ひはじめた。
031 五柱の神司は、032遁れ出づるに由なく、033何時また吾が玉を奪はるるやも知れずと、034非常に苦心した。035されど竹熊の執拗なる計略も、036この五柱の神司の玉のみは、037どうしても奪ることはできなかつた。038そこで更に第二次会に臨まむことを告げた。039酔ひつぶれた彼我の者たちは、040一も二もなく、041手を拍つて賛成した。
042 要するに、043玉を差し出したる五柱の神司は、044知らず知らずのまに、045全く竹熊の捕虜となつたのである。046高杉別以下四柱の神司は、047いかにして此の場を遁出さむかと苦心すれども、048彼らはなかなか油断はしない。049やむなく引きずられて、050第二次会の宴席に臨むことになつた。
051 第二次の宴会は開かれた。052ここは以前の席とは変つて、053よほど大きな広間であつた。054広間は上下の二座に別たれて、055上座には八重畳が敷きつめられ、056種々の珍宝が飾り立てられてある。057席の中央には、058得もいはれぬ美しき花瓶に、059芳香馥郁たる珍らしき花樹が立てられてある。060これに反して、061下座には目もあてられぬやうな、062汚い破れ畳が敷きつめてあつた。
063 各自席に着くや、064竹熊は立つて一同に向ひ、
065『この席は、066玉を差し出したる心美しき者のみ集まる、067神聖なる宴席である。068玉を差し出さざる心汚き者は、069下の席に下れよ』
072 そこで、073一同は立つて、074高杉別以下四柱の神司を下座に押しやつた。075五柱の神司は、076この言語道断なる虐待に慷慨悲憤の念に堪へなかつたが、077深くこれを胸の中に秘めて、078せきくる涙をぢつと押へてゐた。
079 上座の席には、080海河山野の種々の珍らしき馳走が列べられ、081一同は舌鼓を打つて或ひは食ひ、082あるひは飲み、083太平楽のあらむかぎりを尽してゐた。084下座におかれた五柱の神司の前には、085破れた汚き衣を纏へる年老いたる醜女数名が現はれて、086膳部を持ち運んできた。087その酒はと見れば牛馬の小便である。088飯はと見れば虱ばかりがウヨウヨと動いてゐる。089その他の馳走は蜈蚣、090蛙、091蜥蜴、092蚯蚓などである。093五柱の神司は、094あまりのことに呆れかへつて、095暫しは、096ただ茫然と見詰めてゐるより外はなかつた。
097 その時、098汚き老婆は、
099『竹熊さまの御芳志である。100この酒を飲まず、101この飯を食ひたまはずば、102竹熊さまに対して、103礼を失するならむ、104親交を温むるため是非々々、105御遠慮なく、106この珍味を腹一杯に召し上れ』
107と、108無理矢理に奨めておかない。109上座よりは、110酒に酔ひつぶれた者が集まりきたりて、111手を取り、112足を取り、113無理無体に頭を押へ、114口を捻ぢ開け、115小便の酒を飲ませ虱の飯を口に押込み、116その他いやらしい物を強て食はせてしまつた。
117 そこへ芳彦座を立ち酔顔朦朧として、118高杉別以下の神司にむかひ、
119『貴下らは竹熊さまの誠意を疑ひ、120玉を秘して出さざるため、121かかる侮辱と迫害を受くるものならむ。122よし玉を出したりとて、123決して奪はるるものにあらず、124速やかにその玉を差し出し机上に飾りたて竜宮城の威勢を示し、125もつて竹熊さまの心を柔げられよ』
127 この時、128高杉別は首を左右に振り声を励まし、
129『吾はたとへ如何なる侮辱を受くるとも、130いかなる迫害に遭ひ、131生命を絶たるるとも万古末代、132この玉は断じて離さじ』
133と、134キツパリ強く言ひはなつた。135残りの四柱神司も同じく、136「高杉別の意見に同意なり」と答へた。137をりしも、138金色の咫尺の烏数百千とも限りなく中空より、139光を放つて現はれ、140高杉別以下四神司を掴んで、141竜宮城へ飛び帰つた。
142 つづいて数多の怪鳥は天空に舞ひ乱れ、143砂磔の雨しきりに降りきたり、144屋根の棟を打ち貫き、145宴席に列べる芳彦、146神彦、147倉高、148杉生彦、149猿彦の頭上を砕き、150その場に悶死せしめた。
151 アゝ貴重なる竜宮の黄金水の玉は、152惜しい哉、153七個まで竹熊の手に渡つてしまつたのである。
154(大正一〇・一〇・二四 旧九・二四 桜井重雄録)