第四六章 一島の一松〔四六〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
篇:第5篇 御玉の争奪
よみ(新仮名遣い):みたまのそうだつ
章:第46章 一島の一松
よみ(新仮名遣い):ひとつじまのひとつまつ
通し章番号:46
口述日:1921(大正10)年10月25日(旧09月25日)
口述場所:
筆録者:外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:1921(大正10)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:竹熊、武熊別は黄金水の玉を十個まで手に入れたことで、残る二個はたやすいと祝宴を張っていた。
そこへ部下の鬼彦がやってきて、竜宮城の高杉別、森鷹彦が、残る二個の玉を献上に来た、と注進した。
竹熊は高杉別、森鷹彦を引見し、自分に神宝を献上に上がった理由を尋ねた。二神は、すでに十個の玉を奪った竹熊の神算に恐れをなして、降参に来たと理由を語った。
そして実際に二個の神宝を竹熊に献上すると、その光沢は本物のように見えたので、竹熊は歓喜した。高杉別、森鷹彦は、自分たちが献上する二個の玉はとりわけ穢れを嫌うので、厳重に箱に封印して奥殿に奉安し、いざというときのみ、取り出して使うように、と述べた。
これより高杉別、森鷹彦は竹熊の信任を得て、重く用いられるようになり、邪神軍の中で武熊別と並ぶほどの地位を得た。
しかし、二神が竹熊に献上した玉は偽者であって、森鷹彦の玉はすでに大八洲彦命に献上されており、高杉彦の玉は、部下の杉高に呑み込ませて、地中海の列島の島に守護神として封印していた。
杉高は島に岩窟を深く掘って玉を納め、その上にしるしの松を植えておいた。これが一つ島の一つ松と言われている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm0146
愛善世界社版:248頁
八幡書店版:第1輯 134頁
修補版:
校定版:247頁
普及版:128頁
初版:
ページ備考:
001 ここに竹熊は武熊別と共に、002あまたの者を集め、003大祝宴を張つた。004その理由は、005十二個の宝玉はわが神智神策をもつて十個まで手に入れたり、006余すところただ二個のみ。007いかなる神力の強き神人なりとて、008これを奪取するに何の苦心かあらむと、009おのが智略に誇り、010ここに一同を集め祝宴を張つてゐた。
011 時しも末席より鬼彦肩を揺りながら立ち現はれ、012竹熊、013武熊別の前に出で、
014『今日は実に大慶至極の日なり。015しかるによき事の続けばつづくものかな。016ただ今竜宮城より高杉別、017森鷹彦の二神司、018二個の玉を持ち献上せむことを申込みたり。019いかが取計らつてよかるべきや』
020と述べた。021酒宴の酒に酔ひて酔眼朦朧たる竹熊らは、022願望成就の時節到来と欣喜雀躍し、023ともかく二神司を引見せむことを承諾した。024ややありて高杉別、025森鷹彦は侍者の案内に伴れて、026殿中深く竹熊の前に現はれ一礼をなし、027且つおのおの玉を献上せむことを申込んだ。
028 竹熊は胸を躍らせた。029注意深き武熊別は二神司にむかひ、
030『この貴重なる竜宮城の神宝を何ゆゑ吾らに譲与せらるるや。031その理由を聞かまほし』
032と詰つた。033二神司は喜色満面を粧ひながら、034おもむろに答ふるやう、
035『貴下等の神算鬼謀は吾らをして舌を巻かしむるに足る。036既に十個の玉は貴下の手に入れり。037われ二個の玉を以て貴下と争ふといへども、038十対二の比例をもつて、039何ぞよく貴下の軍に勝たむや。040それよりも潔く吾らは此の玉を貴下に献じ、041たがひに和親を結び、042もつて天下泰平を祈らむのみ』
043と、044言葉涼しく答ふるのであつた。
045 竹熊は二個の玉を熟視して大いに驚き、046その光沢に感激止まなかつた。047このとき高杉別、048森鷹彦は言葉を設けて曰く、
049『この玉は十二個のうち特殊の神力あり、050故に悪臭に触れ、051悪風にあたらば霊力迸出して何の効用も為さじ。052いづれの者にも拝観を許さず、053ただちに函を作り十重二十重に之をつつみて奥殿深く奉安し、054危機一髪の場合にこれを使用したまへ』
055と述べた。056竹熊も武熊別も二神の誠意を疑はず、057ただちに言のごとく之を幾重にも函に包み、058固く封じて奥殿深く蔵めたのである。
059 しかるにこの玉は真赤な偽玉であつた。060注意深き二神司は竹熊の機先を制し、061もつて真玉の奪取を免れたのである。062その後高杉別、063森鷹彦は竹熊の気にいりとなり、064重く用ゐられた。065しかして真正の玉は、066森鷹彦は大八洲彦命に献り、067高杉別は従臣の杉高に命じ、068口に呑ましめて地中海に羅列せる嶋嶼に之を永遠に秘蔵し、069杉高をこの島の守護神に任命した。070一つ島に堅き岩窟を掘り、071玉を深く蔵め、072その上に標の松を植ゑておいた。073これを一つ島の一つ松といふ。
074 これより二神司は竹熊の信任をえ、075武熊別と列んで三羽烏と称せられ、076帷幕に参ずるにいたつた。077アゝ今後の高杉別、078森鷹彦は如何なる行動に出づるであらうか。
079(大正一〇・一〇・二五 旧九・二五 外山豊二録)