第一四章 神の述懐歌(二)〔一八四五〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第1篇 紫微天界
よみ(新仮名遣い):しびてんかい
章:第14章 神の述懐歌(二)
よみ(新仮名遣い):かみのじゅつかいか
通し章番号:1845
口述日:1933(昭和8)年10月11日(旧08月22日)
口述場所:水明閣
筆録者:内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:続いて香具の比女、狭別の比女、小夜子比女が述懐歌を歌った。
こうして、八柱の比女神は日ごろの思いのたけを打ち明けたことにより、心が清清しく改まった。そして、天の刻が至るのを待つこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7314
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 63頁
修補版:
校定版:118頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 香具の比女の神は、002はるばる高地秀の山に鎮まります大宮に詣で、003顕津男の神の御前に静に進みて御声も清々しく謡ひ給ふ。
004『天なるや音橘の永久に
005香具弥の比女は御歌まゐらす
006岐美が女とさだまりてより幾月日
008岐美こそは男神にませば雄々しくも
010玉の緒の命を岐美に捧げつつ
011死なまく思ふこの頃の吾
012曲神の醜のささやきしげくとも
013われはおそれじ岐美と逢ふ日を
014岐美を慕ふ心は兎もあれ角もあれ
015神の神業の遅るるをおそる
016吾こそは須勢理の比女にあらねども
017神業かしこみ岐美に計るも
018契りてしその生日より七八年
019経ぬれど未だ音づれもなし
020吾が思ひ夢か現か白雲の
021なかに迷へる橘の香よ
022橘の香具の木の実の名を負ひし
024わが心くませ給へば片時の
025夢の枕を交せたまはれ
026如何にして日頃の悩みはらさむと
027思ひつつなほ曇るわが身よ
028曇りたる世を照さむと岐美は今
029小さき事に心ひかすな
030よしやよし百神達は計ゆとも
032惟神真の神の御言葉を
033守るは司の務なるべし
034花匂ふ春の桜も秋されば
035梢のもみぢ葉散る世なりけり
036この儘に散らむは惜しき香具の比女
037わが若き身を如何に思召すや
038若き身を神の大道に任せつつ
039悩みの淵に沈みぬるかな
040何事も時の廻りとあきらめつ
041苦しき心を忍びつつ生く
042わが命消えぬばかりに思ひつつ
043愛恋の岐美を忘れかねつも
044岐美こそは雄々しき男神よ吾はただ
045かよわき心抱きて涙す
046神業を務めむとして務め得ぬ
047醜の曲世のうらめしきかも』
048 ここに顕津男の神は、049御歌もて答へ給はく、
050『美しき香具弥の比女の心かも
051男の身ながらも涙にくるる
052汝が心汲まぬにあらねど今日の我は
053神代を思ひて黙しゐるなり
054村肝の心はやたけと逸れども
055汝に報はむ術なきをかなしむ
056時来れば花橘の香具の比女よ
057我おほらかに手折らむと思ふ
058男子われためらふ心あらねども
059この世を思ひて時を待つなり
060われこそは浦洲の鳥ぞちちと啼く
061千鳥にも似て啼きさけぶなり
062やがて今朝日昇らば汝が心
063明し照さむしばしを待ちませ』
064 香具の比女の神はまた謡ひ給ふ。
065『青山に日が昇る世を待たせとは
067若き身をただ徒らに待ち佗ぶる
068こころは苦しき浜千鳥かも
069青山に日の隠ひし世にしあれば
070岐美がなさけの枕恋ほしも
071神業の妨げなさじと忍びつつ
072また神業の後るるをおそる
073世を守る尊き御子の生れずば
074如何で神国の基たつべき
075天界の基を建つる神業を
077よしやよし曲神達はさやぐとも
078主の言の葉にそむくべきやは
079さりながら岐美の心に従ひて
080吾おとなしく時を待つべし』
081 次に狭別の比女の神は、082比古神の御前に立ちて御歌詠まし給ふ。
083『主の神の依さしによりて神業に
084仕へ奉ると岐美に誓ひし
085契ひてし日より幾年経たれども
086岐美のおとづれ無きぞ淋しき
087八柱の比女の一つに数へられ
088花の盛りをあだに過ぎけり
089春すめば桜の花も散りぬべし
090早手折りませうづの心を
091吾にしてあやしき心持たねども
092神に叛かむことの口惜しき
093比古神の御樋代として仕へ居る
095天界は愛と善との国と聞くに
096たのしみ事を未だ知らなく
097知らず知らず岐美に仕へて年さびぬ
098ほかに心を移さぬ吾は
099若草の妻と御側に侍りつつ
100まだ一度の神業もなし
101神業に仕へまつると主の神の
103不老不死の天津神国と聞き乍ら
105わが涙天に昇りて雲となり
106凝り固まりて雨と降るなり
107汝が岐美の情の雨の露うけず
108わが身の涙のつゆに濡れつつ』
109 顕津男の神は憮然として、110返し歌詠ませ給ふ。
111『汝が悩み我は知らぬにあらねども
112せむ方なさに忍び居るなり
113醜草の言の葉しげき世なりせば
114神のみ業をためらひて居り
115ためらひの心は真の主の神に
116逆ふとも思ひつ未だ果し得ず
117天界の万の業を任けられて
118忙しき我を曲神議ゆも
119美しき優しき汝が真心に
121一時の契さへなきつれなさを
122くやみ給ふな愛恋の比女
123やがて今天の岩戸のあきらけく
124開かむ時を楽しみ待たせよ』
125 狭別比女の神は御歌もて答へ給ふ。
126『ありがたし勿体なしと思ひつつ
127岐美の言葉のうらめしきかな
128ただ見れば雄々しき岐美の真心の
129奥には降らむ涙の雨は
130わが涙神国の為になるならば
131苦しき月日も喜び忍ばむ』
132 小夜子比女の神は、133比古神の御前に立ちて静に謡ひ給ふ。134その御歌、
135『久方の天の峯火夫の神言もちて
136神業のために岐美に仕へし
137岐美がりに朝な夕なを仕ふるも
138主の大神の神宣なればなり
139百八十の日を忍びつつ岐美がりに
140仕ふる心の恋しさ苦しさ
141天界は愛と善との世界なれば
143天界に厳の教を守らずば
145年さびし岐美を守りて朝な夕な
146仕へ奉るも神の御ため
147主の神の国魂生みの神業を
149朝夕に相見仕ふる吾なれば
150心の悩み日々につのるも
151この悩み救はむものは汝が岐美の
152雄々しき心の光とぞ思ふ
153何故にためらひ給ふか主の神の
154厳の言葉の神業なるを』
155 比古神はこれに答へて謡ひ給ふ。156その御歌、
157『小夜砧打つ術もなきわが身なり
159主の神にはばかる由はなけれども
160醜の魔神の言葉うるさき
161醜神のところを得たる天界に
162真の仕組なすは苦しき
163われも亦ためらひにつつ神業に
164おくれむ事の口惜しく思ふ
165一度の小夜の枕も交へざる
167やがていま百神達を言むけて
168神の依さしの神業に仕へむ
169汝が心深くさとりて我は今
170悩みの淵に沈みてぞ居る
171わが胸の焔はしきりに燃ゆれども
172瑞の御霊の力に消しつつ
173千万に月日を悩めるわが心
174覚りて待てよ小夜子比女の神』
175 小夜子比女の神はまた謡ひ給ふ。176その御歌、
177『はしたなき吾の言葉を許しませ
178恋しさ迫りて宣りし繰り言
179この上は岐美を悩まし奉らじと
180こころの駒に鞭打ち忍ばむ
181あきらけき紫微天界のなかにして
183何事も比古遅の神の御心に
184任せて静に其の日を待たなむ』
185 斯く八柱の比女神は、186日頃積り積りし思ひのたけを比古神の前に打明け給ひてより、187心清々しく改まり大前に朝夕を仕へつつ、188天の時到るを待たせ給ふぞ畏けれ。
189(昭和八・一〇・一一 旧八・二二 於水明閣 内崎照代謹録)