第二八章 心内大蛇〔一八五九〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第3篇 東雲神国
よみ(新仮名遣い):しののめしんこく
章:第28章 心内大蛇
よみ(新仮名遣い):しんないおろち
通し章番号:1859
口述日:1933(昭和8)年10月17日(旧08月28日)
口述場所:水明閣
筆録者:谷前清子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:ここに、顕津男の神は、これからはいかなる批判にもはばからず神業を遂行することを現そうと、斎戒沐浴し、誓いの祝詞を唱えた。
神々は顕津男の神に、心の大蛇を切って先に進んでほしいと歌を詠った。
顕津男の神は、如衣比女の命を奪った大蛇は、顕津男の神自身の暗い心であったと宣し、中津滝の滝壺に身をひたし、自らを戒める歌を詠った。
こうして顕津男の神は七日七夜の禊を修し、国魂神・美玉姫の命の養育を大御母の神に預け、神々を率いて東の国原を目指して高照山を後にした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7328
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 110頁
修補版:
校定版:289頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 ここに顕津男の神は、002今迄の退嬰的政策を採りし弱き心を悔ひ給ひ、003心の駒を立直し、004大勇猛心を発揮して、005世に憚らず、006阿らず、007偽らず、008清き赤き正しき心のままを輝かし、009生言霊の幸ひに国魂神を生まむやと、010再び主の神の祭壇に斎戒沐浴して、011海河山野種々の美味物を八足の机代に所狭き迄置き足はし、012生言霊も朗かに、013太祝詞宣り給ひぬ。
014『掛巻も綾に畏き、015久方の天津高日の宮に厳の御柱立て給ひ、016高天原に千木多加知りて、017弥永遠に領有ゐます、018天津大御祖の大神の大前に、019高日の宮の神司、020太元顕津男の神は、021謹み敬ひ天に蹐まり地に跼して願ぎ白さく。022抑々此の天界は、023天之道立の神紫微の宮居に鎮まり在して、024神々の心を治むる道を依さし給ひ、025我はしも主の大神の神宣以て、026東の宮の神司と任けられ、027弱き心のたへがてに、028神の依さしに背きつつ、029高照山の麓なる此の宮居にうつろひて、030神の依さしの神業に仕へ奉らふ折もあれ、031如衣の比女を女と定め、032美玉姫の命を生みて喜び勇む間もあらず、033比女の神言は高照山の、034中津滝に忍ばひ棲める、035大蛇の神にあへなくも玉の緒の生命を奪はれぬれば、036我はしも心の穢れを悔いにつつ、037己が御霊を清めつつ醜の曲霊を退はむと、038主の大神を祈る折、039天の雲路をかき分けて、040いと厳かに下り給ひし主の神の神宣畏み、041これよりは心の駒を立て直し、042百神等のささやきを浜の千鳥と聞きながし、043空吹く風とみなしつつ、044神の依さしの神業に、045身もたなしらに仕ふべし。046仰ぎ願はくば主の大神の清き正しき言霊の、047貴の力をたび給ひて、048我神業を遺ちもなく、049𪫧怜に委曲に遂げさせ給へ。050今日の良き日の佳き辰に、051高日の宮の神司顕津男の神謹み敬ひ祈願奉らくと白す』
052 大御母の神は、053神前に向ひ御歌よまし給ふ。
054『主の神の貴の神宣を畏みて
055今たたすかも瑞の御霊は
056主の神の神宣畏み吾も亦
057瑞の御霊の神業助けむ
058吾言葉正しと思ひ居たりしを
059今や悟りぬ偽りなりしと
060凡神の心をもちて主の神の
061御心如何に悟らひ得べきや
062中津滝の醜の大蛇は逃げぬれど
064神々のくらき心の固まりて
065大蛇の神は生れ出でにけむ
066水清き中滝の淵に沈みたる
067曲は吾にもあらずやと思ふ
068澄きれる高日の宮に仕ふ吾は
069淵の大蛇にさも似たるかな』
070 大物主の神は又謡ひ給ふ。
071『この宮は見る目清しき中滝の
072淵にも似まして曲のわれをり
073神業を力限りにさまたげし
074吾は大蛇の霊魂なるらし
075神々の心のくもり晴れぬれば
076醜の大蛇は生れざるべし
077如衣比女を悩まし奉りし大蛇こそ
078吾等が心の曲にぞありける
079主の神に言とく由もなき迄に
080吾言霊は閉ざされにけり』
081 明晴の神は又謡ひ給ふ。
082『思ひきや吾魂に中ツ滝の
083大蛇の深く潜み居しとは
084比女神を悩ましたるも吾胸に
085住む大蛇よと思へば悲しき
086日に夜に比女を悲しむ心もて
087心の大蛇斬りはふるべき
088滔々と滝の清水のおつる如
089清しかれよと心を祈る
090吾心くもりゐし事恥かしと
091思へど詮なし魂洗はばや
092身を責むる鬼も大蛇も他になし
093皆吾魂ゆ生れ出づるも』
094 近見男の神は又謡ひ給ふ。
095『神々の言霊歌を聞きながら
096吾面映ゆくなりまさりつつ
097今日までの事を思へば恥かしも
098面ほてりつつ言葉さへ出でず
099他を悪しと思ひし事の浅ましさ
100皆吾魂ゆ生み出でしものを
101愛善の真言の心照る身には
102御魂さやけく四方を照さむ
103照すべき貴の魂を持ち乍ら
104曇らせ奉りし罪を悔ゆるも
105善き事と思ひひがめて日に月に
106吾為せし業曲にぞありける
107今日よりは心の駒を引き立てて
108愛善世界に進まむと思ふ』
109 真澄の神は又御歌よませ給ふ。
110『万丈の岩根にかかる清滝の
111清き心を持たまほしけれ
112真清水の澄みて溜れる深淵は
113底の底まで澄みきらひたり
114この滝とこの深淵は主の神の
115御霊の凝りて集へるならむか
116魂にひそむ大蛇を言向けて
117輝き給へ瑞の御霊よ』
118 ここに顕津男の神は、119憮然として謡ひ給ふ。
120『愛恋の如衣の比女を悩ませし
121大蛇はくらき我魂なりけり
122今日よりは曲の影だにあらせじと
123生言霊のひかり照らさむ
124朝夕に神前に言霊宣りつれど
125心の曲は放れざりしよ
126この滝の清きが如く瑞御霊
127四方の神国うるほし奉らむ
128国魂の神となるべき御子生むと
129我は今日より霊魂磨かむ
130如衣比女み罷りたるも主の神の
131我を教ゆる鞭なりにけり
132我心清く正しくありしならば
133如衣の比女は罷らざりしを
134我心小さく汚くくもらひて
136我は今月の御霊と現れて
137国の八十国隈なく恵まむ』
138 斯く謡ひ終り、139中津瀬の滝壺に身をひたし給ひつつ、
140『仰ぎ見れば万丈の滝よ伏して見れば
141千尋の淵よわが魂をののく
142戦ける心のおくにあるものは
143曲の大蛇の片割れならむや
144清く赤き真言の魂持つ身には
145千尋の淵もおどろかざるらむ』
146 斯く謡ひ給ひつつ、147百神と共に七日七夜の禊を修し、148大御母の神に美玉姫の命の養育をたのみ置きて、149高照の峰を後に、150神々を率ゐて東の国原目ざしつつ、151いそいそとして御山を降り給ふぞ畏けれ。
152(昭和八・一〇・一七 旧八・二八 於水明閣 谷前清子謹録)