第三二章 玉泉の月〔一八六三〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第3篇 東雲神国
よみ(新仮名遣い):しののめしんこく
章:第32章 玉泉の月
よみ(新仮名遣い):ぎょくせんのつき
通し章番号:1863
口述日:1933(昭和8)年10月18日(旧08月29日)
口述場所:水明閣
筆録者:加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:顕津男の神はこの平原一帯を東雲(しののめ)郷と名づけた。そして、世司比女と共に、比女の館、玉泉郷の庭園を散歩し、東南の隅に建てられた三層の高殿に登って四方を見渡し、国生み・神生みが順調に進んでいる喜びを詠った。
顕津男の神、世司比女の神は、国の形を見る歌を互いに交わした。
東雲の国は、常磐木の松、樟が生い茂り、花が咲き乱れ、白梅が常に香っている。また無花果が常に実っている。
日向河が東北から流れ、国土は東南に扇形に広がっている。
高照山は南西にそびえている。
平原には濛々と湯気が立ち上っている。
日が暮れてきたので、二神は高殿を降り、庭の玉泉の傍らに立ってしばし安らった。すると、玉泉は二柱の姿を鏡のように清らかに写した。
顕津男の神と世司比女は、夕暮れの泉に円満晴朗の月が写るのを見て、月の恵みをたたえ、またその結晶である御子神が宿った喜びを歌に交わした。
すると、大物主の神は静かに庭を進み来たり、御子神懐妊の喜びと、自分が御子の後見となってこの東雲の国に留まり仕えようとの心を、恭しく詠った。
各々、玉泉の傍らで述懐の歌を詠い終わり、館に帰っていった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7332
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 127頁
修補版:
校定版:353頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001日向の河の向岸
005玉泉郷に導かれ 006太元顕津男の神は
007大物主神真澄神 008近見男の神照男神
009久しき思ひも明晴の
011河守比女に導かれ
015八十比女神の一柱 016世司比女に廻り逢ひ
017初めて見合す顔と顔
019瑞の言霊のり交し 020神の依さしの神業に
021心を浄め身を清め 022慎み畏み仕へます
023神業ぞ実にも尊けれ 024此平原の一帯を
026世司比女と水火合せ
028鎮まり居ます大神業
029𪫧怜に委曲に述べたつる 030嗚呼惟神々々
031主の大神の御守りに 032古き神代の物語
033漏れなく遺ちなく弥広に
037畏み畏み願ぎまつる 038嗚呼惟神々々
040 茲に顕津男の神は世司比女の神と共に、041常磐木茂る玉泉郷の広き庭園を逍遥したまひつつ、042東南隅に立てられし三層楼の高殿に、043静々登りて四方の国形覧はせ御歌詠ませ給ふ。
044『目路のかぎりこれの大野は紫の
045瑞気漂ふ東雲の国よ
046此国は土地肥えたれば五穀
047ゆたに稔らむ美しの国
048高照の山に湧き立つ紫の
049雲をし見ればわが魂栄ゆも
050見はるかす此国原は東雲の
051御空にも似て清しかりけり
052国造り神を生まむと立ち出でし
053我はうれしも清所を得たり
054西南の空に聳ゆる高照の
055山にかかれる昼月の光
056天渡る月は西より東の
057空に進ます神代なりけり
058我も亦月の御霊と現れて
059国拓かむと東せしかも
060天津日はこれの館を光らしつつ
061御空の月は世を守ります
062主の神の言霊清く凝り凝りて
063空に月日は現れましにける
064わが霊世司比女と水火合せ
066 世司比女の神は欣然として御歌詠はせ給ふ。
067『主の神の神言かしこみ此館に
068けながく待ちし女の子よ吾は
069八十日日はあれども今日の佳日こそ
070天地開くる喜びにみつ
071淡雪の若やる胸をそだだきて
072岐美と寝ねなむ夜の毎々を
073此館は天の浮橋空高く
074神の築きし天の御柱よ
075東南に果てなく広く開けたる
077永久にこれの館に鎮まりて
078国魂神を生ませ給へよ
079見はるかす大野の果に膨れ膨れ
080拡ごる常磐の森の清しも
081目路遠く限りもしらぬ国原の
082光となりて生れし岐美はも
083一夜さの左り右りの契りにて
084御子はわが身に宿らせ給へり
085此上は赤き心を岐美の辺に
086捧げて朝夕仕へまつらむ』
087 顕津男の神は御歌もて答へ給ふ。
088『久方の月の恵の露うけて
089早や孕すかいとこやの比女
090栲綱の白きただむき淡雪の
091若やる胸を抱きてしはや
092股長に寝ねし一夜の夢さめて
093今比女神とゐ向ひ立つも
094東雲の神の国こそ目出たけれ
095弥長々に栄ゆる常磐木
096常磐木の松と樟との生ひ茂る
097みくにを彩る百花千花よ
098白梅は非時香り無花果は
099永久に実りて美し国原
100高照の山の緑におくられて
101わが東雲の公に逢ふかな
102浮橋に公と立たして見はるかす
103この東雲の国は果てなき
104昼夜を慎み仕へて主の神の
105御霊を守れ御子生まるまで』
106 世司比女の神は謡ひ給ふ。
107『主の神の御霊を宿せし岐美こそは
108永久にましませよこれの館に
109久方の天の浮橋高殿に
110岐美と吾とは国形見るも
111村肝の心清めて国形を
113日向河東北に流れ東雲の
114国は東南に果てなく広し
115西南に高照山は聳え立ち
116日向の河は東北をかぎる
117濠々と此国原は湯気立ちて
118永久に生きたり勇ましの国よ
119いざさらば比古遅の神よ浮橋を
120下りたまへよ夕近めば』
121と先に立ちて、122三層楼の高殿を下りつつ、123二神は再び庭の清所に出で給ひ、124玉泉の傍に立ちて、125稍しばし安らひ給ふ。126玉泉の清泉は女男二柱の御姿を清くすがしく其儘に写して、127鏡の如く澄みきらふ。128男神は、129夕暮れこの清泉に円満清朗の月の御影浮べるを覧はして謡ひ給ふ。
130『久方の御空の月も此水に
131写りて清しく輝きいますも
132大空をここに写して月夜見は
133恵の露を湛へたまふか
134仰ぎ見る月にあれども今を見る
135月は眼下に輝きたまふ
136久方の月の恵の露こそは
137汝が御腹に宿りたまひぬ
138月満ちてあれ出でし御子の顔は
139これの鏡に写る月はや
140いとこやの妹の御姿其ままに
141泉の底に立つが清しも』
142 世司比女の神は謡ひ給ふ。
143『水底も天津御空の光ありて
144月日渡らふ玉泉かも
145清々し岐美の姿の頭辺に
147仰ぎ見つうつむきて見つ大空の
148月は清しも岐美と吾に似て
149天も地も一つになりて月の露
151玉泉に清き姿を写しつつ
152玉の神の子宿らせたまへり
153高照のみ山のごとく厳めしく
154日向の流れの清しき岐美はも』
155 斯く二神は玉泉の両側に立ちて、156御子の宿らせ給ひし嬉しさを祝ぎ給ふ折もあれ、157大物主の神は庭の真砂を静に囁かせながら進み来り、158恭々しく声朗かに謡ひ給ふ。
159『玉泉に立たせる神は月と月
160天と地との御姿なるも
161久方の御空の月を宿したる
162これの泉は世司比女よ
163常磐木の梢うつして玉泉
165天渡る月も泉に下りまし
166露を宿せる目出度き館はも
167高照山高日の宮を立ち出でで
168玉の泉の月を見るかな
169二柱ここに鎮まりましまして
170御子を生ませよ星の如くに
171大空の星も下りて玉泉に
172影漂はせ月を守らせり
173吾こそは大物主の神司
174この神国を永久に守らむ
175比古神の御楯となりて此国に
176永久に仕へむ大物主吾は』
177 顕津男の神は謡ひ給ふ。
178『畏しや大物主の神宣
179我にかなへり魂に響けり
180神生みの業を遂げなば東雲の
181国は栄えむ豊栄のぼりに
182天津日の豊栄のぼる東雲の
183国はさやけし常春の国よ
184常春の国の司とまけられて
185ここに下らす大物主なれ』
186 大物主は謡ひ給ふ。
187『御子生みの神業委曲に終へましし
188神の御後をわれは守らむ』
189 世司比女の神は謡ひ給ふ。
190『永久に月の恵の露あびて
191御腹の御子を育みまつらむ』
192 かく各も各も玉泉の傍に立ちて述懐歌を謡ひ終り、193静々と奥まりたる御殿に入らせ給ひぬ。
194(昭和八・一〇・一八 旧八・二九 於水明閣 加藤明子謹録)