第三五章 四鳥の別れ〔一八六六〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第3篇 東雲神国
よみ(新仮名遣い):しののめしんこく
章:第35章 四鳥の別れ
よみ(新仮名遣い):しちょうのわかれ
通し章番号:1866
口述日:1933(昭和8)年10月18日(旧08月29日)
口述場所:水明閣
筆録者:内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:顕津男の神は、王泉郷の館を立ち出でるにあたり、感謝と別れの歌を歌った。
世司比女、大物主、河守比女は旅立ちを名残惜しむ歌を歌うが、顕津男の神は別れの悲しみを振り払って立ち出でていく。
世司比女は玉泉の前にて述懐の歌を歌い、なおも高殿に上って顕津男の神が向かった南方をはるかにみつつ、顕津男の神を慕う歌を歌った。
そして一切をあきらめ、高殿を降りて玉泉に禊をした。以降、大物主、河守比女らとともに力を合わせて御子を育て、東雲の国をいつまでも守ることとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7335
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 140頁
修補版:
校定版:399頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 茲に顕津男の神は、002主の大御神の依さしの神業の其の一部の成りしをいたく喜び給ひ、003世司比女の神、004日向姫の命の神人を、005大物主の神に頼みおき、006且つ河守比女の神に厚く謝辞をのべ乍ら、007名残惜しくも住みなれし此の館を立ち出でむとして、008御歌詠まし給ふ。
009『久方の天の高宮いや高に
010われは仰がむ神生み終へて
011わが心天津日の如晴れにけり
012国魂神は安く生れまし
013国魂の神の生れます今日よりは
014依さしの神業またも仕へむ
015世司比女神に別れてわれは今
016南の国に進まむとすも
017高照山南にひらく神国は
018あらぶる神の多しとぞ聞く
019この館久見ることはあたはじと
021日向姫の命よ汝はすくすくに
022育ちて国の柱となりませ
023日向姫命の御前を離るとも
025世司の比女神われに別るとも
026歎かせ給ひそ惟神なれば
027われこそは神国をひらき神を生む
028司にしあれば留まり得ずも』
029 此の御歌を聞くより、030世司比女の神は、031追慕の念止みがたく、032御声を曇らせ乍ら御歌うたひ給ふ。
033『みづみづし瑞の御霊の神柱は
035露の間の契と思へば悲しもよ
036夜ごと夜ごとを如何に眠らむ
037高照の峰より高き瑞御霊
038神に別れて何たのしまむ
039年月をけながく待ちて逢ひ初めし
040岐美ははやくも別れ立たすか
041凡神の身におはさねば出でましを
043よしや岐美万里の外におはすとも
044忘れ給ひそわれと御子とを
045日向姫命を育て岐美の前に
047 大物主の神は御歌うたはせ給ふ。
048『二柱神の心をおしはかり
050斯る世にかかる歎きのおはすとは
052この上は御子を守りて比女神に
053安く仕へむ岐美出でまさね
054比女神のあつき心を知りながら
055出でます岐美を雄々しとおもふ』
056 河守比女の神は謡ひ給ふ。
057『この上は神の神業よ妨げじと
058思ひ直しつ名残惜しまる
059玉泉湧き立つ清水真清水は
060岐美の姿を永久に浮べむ
061二柱向ひ立たして御姿を
063月も日も朝夕浮ぶ玉泉
064忘れたまひそこれの真清水
065大空の月も宿らす玉泉
066岐美の姿のうつらであるべき
067常磐木の松の梢の色ふかみ
068岐美の御ゆきを送る今日かも
069万年の齢たもてる大幹の
070楠の梢は露垂らしつつ
071楠の木の葉末の露は岐美を送る
073 顕津男の神は暗然として両眼に涙を湛え乍ら、074ひらりと馬背に跨り御歌詠まし給ふ。
075『足曳の山の百草八千草も
077東雲の国は広けし比女神よ
079住みなれしこれの館に別れ行く
080苦しき我の心をさとらせ
081朝夕に御子の声聞きし楽しさも
082今日より聞き得ず我は淋しも
083いざさらば名残は尽きじ神たちよ
085と謡ひ給ひて、086馬背に鞭ち神姿勇しく玉泉郷を立ち出で給ふ。087世司比女の神は御後見送りながら、088ハツとばかりに泣き伏し給ふ其の真心ぞあはれなりけり。089大物主の神は御後遥かに見送りながら、
090『天晴々々貴き瑞の御霊はや
091只一柱大野を馳せます
092紫の瑞気ただよふ東雲の
093広き国原独り進ますも
094瑞御霊これの館に現れまして
095命生みませし事の畏き
096千万のなやみに耐へて瑞御霊
097国つくります神業尊し
098百神の醜のさやぎをよそにして
099国つくります雄々しき神よ
100大空にかがやく月の光澄みて
102瑞御霊これの館にまさずとも
103この玉泉を御霊と仰がむ
104村肝の心淋しき夕ぐれは
105玉の泉の月を仰がむ
106せめてもの岐美の名残と玉泉
107夕べ夕べを仰ぎまつらな』
108 世司比女の神は、109やうやう心をとり直し儼然として立ち上り、110玉泉の前に近寄り御歌詠まし給ふ。
111『永久に澄みきり漂ふこの泉は
112瑞の御霊か月宿ります
113比古神のこれの館にまさずとも
115仰ぎ見れば空に月読俯して見れば
116玉の泉にやどらす月かげ
117久方の御空を渡る月読の
118御霊にそひて御子を生みけり
119この御子はいたづら事に生れ出でし
120命にあらず神の御霊よ
121駿馬に鞭ち出でし比古神は
123わが霊は岐美の乗らせる駿馬に
124いそひて行くも月照る野辺を
125夢現露のちぎりの岐美送る
126今日の夕のはかなき思ひよ
127村肝の心を洗ふ玉泉
129 河守比女は御歌詠ませ給ふ。
130『雄々しくも神の御業に仕へむと
131妻子をあとに岐美立ちにけり
132ただ一人果しも知らぬ国原に
133鞭たす岐美の雄々しさおもふ
134雄々しくも優しくませし瑞御霊
135かたみと泉に月を浮かせり
136今よりは日向の姫の命をば
137育みまつり国を治めむ
138大物主の神の御稜威に日向姫
139国の柱と生ひ立ちまさむ』
140 いづれも述懐の歌詠み給ひつつ、141主の立ち出でし館に神言を奏上し、142其の夜は淋しく語り明し給ひけるが、143比古神を恋ふる心の愈々深く悲しく、144世司比女の神は東雲の空近く、145三層楼の高殿に登り、146南方を遥かに打ち見やりつつ御歌詠まし給ふ。
147『天晴々々雲のあなたに出でましし
149むらさきの雲は南にたなびけり
150ああこの清しき紫の雲はや
151東雲の国魂神を生みおきて
152雄々しき岐美は立たせけるかも
153恋ほしさの心は同じわが岐美の
155ままならば瑞の御霊と諸共に
157南の空にかがやき給ふべく
159かりごもの乱れ果てたる国原を
160治めますらむ岐美の稜威は
161岐美は今いづらの空を駈けますか
163比古神に再び逢はむ術もなき
165愛善の光に満つる神代にして
167村肝の心の駒をたて直し
168われは歎かじ神の御前に
169なげかへばひたに曇らむ国原と
171主の神よ瑞の御霊の行先に
172幸あれかしと守り給ひね』
173 世司比女の神は、174一切をあきらめ給ひ、175高殿を降りて玉の泉に禊しつ、176是より二柱の神と共に朝夕心を配り、177力を合せ、178御子を守り育て、179東雲の国を千代に八千代に守り給ひしぞ畏けれ。
180(昭和八・一〇・一八 旧八・二九 於水明閣 内崎照代謹録)