第三六章 荒野の駿馬〔一八六七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第3篇 東雲神国
よみ(新仮名遣い):しののめしんこく
章:第36章 荒野の駿馬
よみ(新仮名遣い):あらののはやこま
通し章番号:1867
口述日:1933(昭和8)年10月18日(旧08月29日)
口述場所:水明閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:顕津男の神は王泉郷よりはるかにやってきたが、再び大きな河に行く手を阻まれた。
するとそこへ、以前南に派遣した部下、近見男の神が、共を連れて顕津男の神を迎えにやってきた。
近見男の神は、荒ぶる神々を言向け和して共としていたのであった。近見男の神は真っ先に河にざぶんと飛び込むと、顕津男をはじめ皆が続き、向こう岸に渡りきった。
近見男の神と共の神々あわせて十一柱の神々が、顕津男の神に合流した。なかでもとくに背の高い神が、圓屋(まるや)比古の神と名乗った。
近見男の神、圓屋比古の神がそれぞれ行進歌をうたいつつ、白馬の一行は草原を南へ南へと進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7336
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 144頁
修補版:
校定版:414頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001高地秀山の大宮と
004輝き給ひし神司
005主の大神の神言もて 006貴の神業仕へむと
008美玉の姫の命をば
010命に名残惜しみつつ
011五柱の神従へて
013激流渡り漸くに
015玉泉郷に身をよせて 016日向の姫の命をば
018今日は淋しき独旅
022如衣の比女には先だたれ
023世司比女には生き別れ
029出でます姿ぞ勇ましき 030右も左も荒野原
031目路の限りは萱草の
033瑞の御霊は馬上より
039千里の野路を渡り終へ 040此処に横ふ広河の
044遠き神代の天界の
045国生み神生みの神業は
047迚も及ばぬ難事なり。
048 先に渡り給ひし日向河に比ぶれば、049約二十分の一の流ながら、050相当に広く、051水瀬深く、052やや薄濁りて西方に流れゐたり。053顕津男の神は堤上に立たせ給ひて、
054『国造り神を生まむとわれは今
055此の横河に行き当りける
056河守比女神の出でましあるならば
058村肝の心淋しも黄昏れて
059この河土手にわが独り立つ
060如何にしてこれの流を渡らむや
062雷の轟く如き滝津瀬の
063音にわが駒驚き騒ぐも
064黄昏の河の岸辺に佇めば
065河風そよぐ篠の笹原
066さらさらと小笹揺りて吹きまくる
067風は強しも物騒がしも
068河の辺にわれ黄昏れて是非もなし
069東雲の空待ちわびむかな
070ひた濁るこれの流は物凄し
071醜の大蛇の潜むがに見ゆ
072主の神の教を守る神生みの
074世司の比女神今や高殿に
075上りてわが名呼びたつるらむ
076大物主神の心をおしはかり
078折々に水瀬の音の変るこそ
080 かく御歌詠ます折しもあれ、081近見男の神は数多の神々を従へ、082白馬に跨がり此処に現れ来り、083瑞の御霊をうやうやしく迎へながら、084御歌詠まし給ふ。
085『天晴々々瑞の御霊は出でましぬと
087小夜更けの河辺に独ゐますこそ
088畏れ多しもこの駒に召せ
089瑞御霊乗らせる駒は疲れ居り
090この早河を渡るにふさはじ』
091 この御歌に、092顕津男の神は勇みたち、093直に御歌もて応へ給ふ。
094『小夜更けの此の河辺になづみてし
095われ迎へむと来りし公はや
096横河の流れはひたに濁らひて
097大蛇の神の潜むがに思ふ
098只独り荒風そよぐ河の辺に
099心淋しく夜を更かしぬる』
100 近見男の神はうたひ給ふ。
101『玉泉貴の館を立ち出でで
102吾は荒ぶる神を和めつ
103今此処に従ひ来る神達は
104何れも荒ぶる神なりしなり
105言霊の厳の力にまつろひて
106神業に仕ふる神とならせる
107われも亦ただ一柱白駒の
108背に跨りて此処に来りし
109この河は未だ渡らず大蛇棲むと
110思へば今日までためらひにける
111海原をさぐり求めて水走る
112雄々しき駒を引きて来りぬ
113いや先に嘶く駒に岐美召せよ
114主の御水火より生れし駒なる』
115 顕津男の神は応へて謡ひ給ふ。
116『主の神の御水火に生れし駒なれば
118主の神の御霊の水火の凝り凝りて
120横河の流は如何に高くとも
121これの神馬は安く渡らむ』
123『いざさらば瑞の御霊よ百神よ
124われに続かひ渡らせ給へよ』
125と、126謡ひもあへず、127ザンブとばかり激流めがけて駒を追ひやり給へば、128顕津男の神も百神も、129われ後れじと手綱ひきしめ鞭をあて、130大竜の激流を渡るがごとく、131驀地に南の岸にのぼらせ給へり。
132 顕津男の神は渡り来りし流を振り返りながら、
133『近見男の神の神言と主の神の
134守りに安く渡りけるかも
135この駒や主の大神の言霊の
136凝りしと思へば尊かりけり
137言霊の力に物は成り出づと
138深く悟りぬ今の河越に
139百神は一柱もおちず速河を
140渡り給へり勇ましきかも』
141 近見男の神は答へて謡ひ給ふ。
142『瑞御霊神の神言の言挙げに
144主の神の神言かしこみ駿馬を
145岐美の御為に招き来しのみ
146今日よりはわれも御側に侍りつつ
147貴の神業あななひまつらむ』
148 顕津男の神はうたひ給ふ。
149『大野原独淋しく来しものを
150今賑しく汝に会ひぬる
151今よりは十一柱神伴ひて
152南の国原拓かむとぞ思ふ
153行く先に如何なる山河横ふも
154この駒なれば安く渡らむ』
155 ここに、156十一柱の神の中より勝れて御背の高き神、157御側近く駒を進め、158左手を天にさしかざし右手を馬の背に向けながら、159御前に御歌うたひ給ふ。
160『われこそはアの言霊になり出でし
161圓屋比古の神御供に仕へむ
162この国を造らむとして朝夕に
164近見男の神の出でましありしより
166瑞御霊神のみあとに仕へむと
167われは幾年幾日待ちしよ
168願はくば御供に使ひ給へかし
169真心清く光る神はや』
170 顕津男の神は御歌うたひ給ふ。
171『かねて聞く圓屋比古の神は公なるか
172雄々し勇ましうづの御姿
173国造り神生む業を助けむと
174汝圓屋比古現れましにけむ
175主の神の御心なりと喜びて
176われは許さむ旅の御供を』
177 圓屋比古の神は、178儼然として謡ひ給ふ。
179『有難し岐美の言霊聞くにつけ
181赤き清き正しき心を楯として
182仕へまつらむ岐美の御側に』
183 いや先には近見男の神、184草をふみしだきつつ進ませ給ひ、185次に太元顕津男の神、186次に、187圓屋比古の神は九柱の神々を従へ、188駒の轡を並べて、189未だ神跡なき大曠原を、190言霊歌を宣りながら進み給ふ。191近見男の神は馬上ゆたかに、
192『果てしも知らぬ薄原
194瑞の御霊と諸共に
197圓屋比古神百神よ
198瑞の御霊をよく守り
199心を注ぎて出でませよ
200嵐は如何に強くとも
201醜草如何に繁るとも
202大蛇は処々に潜むとも
203如何で恐れむ主の神の
204厳の言霊幸ひて
205道の隈手も恙なく
208行く手に如何なる難関の
210水火を照して取りのぞき
211神の依さしの神業を
212𪫧怜に委曲に為し遂げて
213天津御祖の御前に
214復命言葉白すまで
215撓まず屈せず進むべし
216天津祝詞の太祝詞
224厳の言霊尊けれ』
225 圓屋比古の神は謡ひ給ふ。226その歌、
227『主の大神の神霊より
229水火固まりてなり出でし
231瑞の御霊の神生みの
233大峡小峡に身を潜め
236山の尾上や河の瀬に
239如何に言向け和さむと
241高日の宮より降ります
242近見男の神現れまして
243互に真言を語りつつ
244心を合せ神力を
248瑞の御霊の出でましを
250近見男の神諸共に
251九つ神を引連れて
255瑞の御霊のます限り
260厳の御霊の幸ひて
261吾等十柱神達を
263神業に使ひ給へかし
265偏に願ひ奉る』
266 ここに、267瑞の御霊顕津男の神一行十二柱は、268白馬の轡を並べ、269南へ南へと進ませ給ふ。
270(昭和八・一〇・一八 旧八・二九 於水明閣 林弥生謹録)