第二四章 天国の旅〔一八五五〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第2篇 高照神風
よみ(新仮名遣い):たかてるしんぷう
章:第24章 天国の旅
よみ(新仮名遣い):てんごくのたび
通し章番号:1855
口述日:1933(昭和8)年10月16日(旧08月27日)
口述場所:水明閣
筆録者:内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:眼知男の神は太元顕津男の神に一部始終を復命する。顕津男の神は、このことは主の神言によって事前に知っており、比女神は美玉姫の命を産んで神業を果たし、主の神の元に帰ったと歌い、眼知男の神を慰める。
続いて、滝の大蛇を言向けて、天界の災いを払わずにはおれない、と決意をあらわにする。
顕津男の神、大物主の神、眼知男の神が奥殿深く入っていくと、そこにはすでに御霊代が祭壇の上に納められていた。顕津男の神はあらかじめ主の神にこの遭難を知らされていたのである。
眼知男の神、大物主の神は、何事も主の神の定めとして過去を嘆かず、如衣比女の神の冥福を祈り、美玉姫の命に仕えていく心を歌う。顕津男の神も、弔いの歌を歌う。
神々は如衣比女の神の昇天を聞いて駆けつけ、各々弔いの歌を歌った。
最後に真澄の神は、滝の大蛇の言向けを提唱した。神々はみな一同賛成し、中津滝に向かって
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7324
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 94頁
修補版:
校定版:234頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 眼知男の神は如衣比女の神の遭難を見て驚き且つ歎きつつ、002一刻も早く高日の宮の神司、003顕津男の神に一伍一什を報ぜむと、004猿も通はぬ巌壁や岩の根樹の根をふみさくみつつ、005辛うじて高日の宮に帰りつき、006轟く胸をおさへ乍ら落着かむとして落着かず、007宮の広庭に呆然として立ち給ひ、008天を拝し地を拝し、009如衣比女の神の冥福を祈る折もあれ、010大物主の神を従へて、011悠々と顕津男の神は御殿の階段を降り給ひ、012目の神の呆然たる姿を見て、
013『汝こそは眼知男の神なれや
015 目の神は初めて此の御歌に心づき、
016『復言申さむ術なき今日の吾を
018如衣比女は滔々落つる中滝の
020滝壺にひそみて住める大蛇神は
021比女の神言を呑みてかくれぬ
022言霊の力に救ひ奉らむと
023吾がねがひさへ水泡となりぬる
024如何にして此の有様を申さむかと
025われは汀にたたずみ居しはや』
026 顕津男の神は泰然自若として、027色をも変じ給はず、028御歌うたはせ給ふ。
029『比女神の今の歎きはかねてより
030我はさとれり主の神言もて
031美玉姫の命を安く産みおきて
032天の宮居に昇りし比女神
033比女神の高き功に報いむと
034我は御霊を祀りて待ちぬ
035何事も神の経綸のみ業なれば
036泣くも悔むも詮なかるべし
037神業を全く終りて御子を産み
038天に昇りし比女ぞ尊し
039さり乍ら滝の大蛇を言向けて
040この天界の禍を祓はむ』
041 目の神はこの御歌に、042はつと胸を撫で下しながら、
043『広きあつき岐美の心に宣直し
045比女神のみ供に仕へただ一人
047比女神の隠れまししを目のあたり
048打ち仰ぎつつ心みだれぬ
049八千尋の水底ふかく隠れましし
050比女の神言の悩みかしこし
051今日よりは女神いまさず如何にして
053 大物主の神は両神の仲に立ちて、054涙ぐみつつ声低に謡ひ給ふ。
055『比古神の今日の心の苦しさを
057貴御子と夫神を遺し神去りし
058比女の神言の心しのばゆ
059如何にして御子を育み奉らむと
061目の神の心遣ひを聞く身には
063わが涙天に昇りて雲となり
064地に降りて雨となるらむ』
065 斯く謡ひて両眼の涙をスーと拭はせ給ひぬ。066目の神も亦悄然として再び謡ひ給ふ。
067『二柱神の神言の言霊に
068吾は言ふべき言の葉もなし
069如何にせむ神の依さしの御使の
070吾は女神を見捨ててかへりし
071この上は滝の大蛇を言向けて
072み代の禍はらはむとおもふ』
073 斯く謡ひ終り、074三柱の神は奥殿深く入らせ給ひ、075祭壇の前に端坐して、076生言霊の神言を宣り給ふ。077顕津男の神は比女の遭難を神命に依りて前知し、078早くも御霊代を造りて祓ひ清め、079祭壇の上に納め、080いろいろの花を供へ、081目の神の帰り来るを待ち給ひたるなりき。082目の神は此のさまを見て驚きながら、
083『岐美こそは真の神よ瑞の神
084比女の遭難前に知りませり
085明けき岐美の神霊を今更に
086仰ぎぬるかな目の神吾は
087語らはむ術なき身ぞと思ひしを
088前に知らせるあはれ岐美はも
089何事も主の大神のみさだめと
091滝津瀬の音滔々と吾が耳に
092今も聞ゆる恨めしきかな
093恨むまじ歎くまじとは思へども
094霊代拝せばひとしほ恋ほし』
095 大物主の神は拍手を終り、096声さはやかに謡ひ給ふ。
097『八洲河のみ底ゆ安く生れましし
098如衣の比女はあはれ世になし
099春駒を曳きて仕へし如衣比女
100神の神言をおもへば悲しも
101幾年を高日の宮に住みまして
102御子を生ませし功績おもふ
103これよりは御子の命にかしづきて
104岐美の神業をつがせ奉らむ
105比女神の御霊は天津高宮に
106帰れど此処にいます如おもふ
107比古神の御手代となりいやますに
108仕へ奉らむ比女よ安かれ』
109 比古神の顕津男の神は、110儼然として霊代の前に謡ひ給ふ。
111『幾年を吾に仕へてつつがなく
112御子を生ませる公ぞかしこき
113一柱御子の命のある上は
114我は力を落さざるべし
115比女よ比女あとに心を残さずに
116主の大神の大宮にゆけ
117汝に逢ひし日を思ひつつ今茲に
119さり乍ら神の定めは詮もなし
121せめてもの我が志と霊代の
122比女神これの供物を召せよ』
123 八百万の神々は、124如衣比女の神の昇天と聞きて吾先にと、125高日の宮に集り給ひ、126弔ひの歌を次々謡はせ給ふ。127遠津御幸の神、
128『歎くとも詮なきものか比女神は
129天津神国に昇りましぬる
130如衣比女天国に帰りましませど
131霊は高日の宮を照らさむ
132姫御子を後に遺して神去りし
133比女神の心いたはしきかも
134神の国にかかる歎きのあらむとは
135おもはざりしよ御幸の神は』
136 次に大御母の神は、137比女神の昇天をいたく悼ませ給ひて、138御歌詠ませ給ふ。
139『八洲河の清水に生れし比女神は
140惜しや天国に昇りましける
141主の神の貴の経綸か知らねども
143幾千代も共にみわざに仕へむと
145顕津男の神の神言のみ心を
147白銀の駒にまたがり迎へたる
148よき日おもへば夢か現か
149歎くとも最早詮なしこの上は
150美玉の姫を育み仕へむ
151比女神の神去りましし此宮は
152月日の光もうすら曇りつ
153天津日も月も歎かせ給ふらむ
154今日の御空はうすらくもれり』
155 日の本の神は誄歌詠み給ふ。
156『高照の山もくもりて比女神の
158からたまの神生みましし功績を
159のこして比女は神去りにけり
160神去りし比女の神言のけなげさよ
161平然として大蛇に呑まれぬ
162吾は今比女の神言の訃を聞きて
163日の本山より降り来にけり
164諸々の神一柱おちもなく
165比女の昇天惜しまざるなし
166比古神の心如何にと思ひつつ
167空に知られぬ涙の雨降る
168主の神の大みよさしにまつろひて
169如衣の比女は神去りにけむ』
170 片照の神はまた謡ふ。
171『おもひきや高日の宮の神柱
172如衣の比女の神去りますとは
173一度は見らくおもひつ比女神に
174あはで別るる事の惜しさよ
175比女神の昇天ききて吾はただ
177紫微界に姿見えずも比女神は
178天の高宮に輝き居まさむ
179吾はしも片照の神高地秀の
180尾の上をわけて来り弔ふ
181主の神の神言畏み今日はしも
182比女弔ふと降り来しはや
183比女神の神去り給ふは惜しかれど
184神の経綸とおもへば尊し』
185 明晴の神はまた謡ひ給ふ。
186『比女神のここに現れましてより
187この天界は明晴の神
188あきらけく晴れ渡りたる天界の
189今日は曇りぬ比女いまさねば
190あけくれを仕へ奉りし比女神の
191かげだに見えず淋しき今日なり
192比古神の雄々しき心きくにつけ
194美玉姫神の命に従ろひて
195吾は神国をひらき照らさむ』
196 近見男の神は謡ひ給ふ。
197『中滝の大蛇の神の醜業を
198比女神のために退はむと思ふ
199愛善の光に満つる天界に
200仇報ゆるは如何あるべき
201さり乍ら世の禍を打ち祓ふ
202みわざは神も許させ給はむ
203これに在す百の神達きこし召せ
204世のため大蛇の神のぞかばや』
205 茲に真澄の神は声高々と謡ひ給ふ。
206『ます鏡真澄の神の言霊に
207切り放るべし滝の大蛇を
208天も地も真澄に澄みてある世なり
209醜の曲霊を清めずあるべき
210われここに真澄の神と現れて
211比女を弔ひ言はかりすも
212天界に禍をなす醜神を
213打ちきためずば神世は栄えじ』
214 斯く滝の大蛇の言向けを提唱し給へば、215百神は一度に「オー」と答へて、216真澄の神の御謀り事に参じ、217これより百の神々は、218中津滝に向つて大蛇を言向けやはすべく、219さしも難路の高照山の谿間を進ませ給ふぞ畏けれ。
220(昭和八・一〇・一六 旧八・二七 於水明閣 内崎照代謹録)