第三一章 夕暮の館〔一八六二〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第3篇 東雲神国
よみ(新仮名遣い):しののめしんこく
章:第31章 夕暮の館
よみ(新仮名遣い):ゆうぐれのやかた
通し章番号:1862
口述日:1933(昭和8)年10月17日(旧08月28日)
口述場所:水明閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:河守比女の館は、四方に青芝垣をめぐらし、常磐木の松が枝を伸ばし、楠の木は天をつくようにそそり立ち、清清しさに満ち溢れていた。
一行は館のすばらしさを称える歌を詠った。
顕津男一行は館の別殿に休息することとなった。
すると、河守比女は顕津男の神の正面に座り、笑みをたたえながら、実はこの館は自分のものではなく、八十比女の一人、世司比女のものであることを明かす。
顕津男の神はこのようなところに八十比女の一人がひそんでいたことに驚く。次の間より、世司比女は顕津男の神に相聞の歌を送り、姿を現した。
河守比女は場を退いた。あとに顕津男の神と世司比女の神は言霊による神生みを行うと、世司比女はたちまち御子神をはらんだ。
顕津男の神は、御子神誕生まで館に留められ、その間国津神々を招いて、教えを講じた。
顕津男の神に付き従う五柱の神々は、神業がつつがなく進んでいる喜びを歌に詠った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7331
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 123頁
修補版:
校定版:338頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 太元顕津男の神は河守比女の神の心厚き計らひにて、002六頭の白き駿馬を与へられ、003さしもに広き日向河の激流を彼方の岸にやすやす渡りをへ、004河守比女の神に導かれ、005広き大野の末に遠く霞める河守比女の神館に漸くつきて、006駒をひらりと飛び下りつつ奥庭深く進み給ふ。
007 この館は四方に青芝垣を廻らし、008常磐木の松は蜿蜒として、009梢を竜蛇の如く庭にたれ、010楠の大樹は昼も猶小暗きまでに天を封じて、011庭のあちこちに聳り立ち、012折から吹き来る科戸の風に泰平の春をうたふ、013梢のそよぎも床しく見えける。
014 ここに顕津男の神は、015あまり館の清しさにやや驚き給ひつつ御歌よませ給ふ。
016『常磐木の松の青垣めぐらせる
017これの館は何か床しも
018あちこちに空を封じて聳りたつ
019楠の木群の葉末光れる
020百鳥は楠の梢に巣ぐひつつ
021言霊御歌うたひゐるかも
022庭の面に苔青々と蒸しにつつ
023露を宿せるさま素晴らしき
024思ひきや大野の末にかくの如
026河守比女神の館と思へども
027床しき人の籠らふがに見ゆ』
028 大物主の神はうたひ給ふ。
029『広々と果てしも知らぬ青垣の
030中に建たせるこの館はも
031空清く土また清き野の果に
033百鳥は時じく春をうたひつつ
034神代の前途を寿ぐがに思ふ
035ちよちよと囀る小鳥の声冴えて
036楠の木群はそよぎつ光りつ』
037 真澄の神はうたひ給ふ。
038『われは今此処に来りて村肝の
039心真澄の神となりぬる
040庭の面に白砂敷きて水を打ち
041箒目正しき館清しも
042純白の砂を敷きたる清庭に
043白馬の嘶き聞くは清しも
044日向河水瀬をわけて現れましし
045比女神も駒も瑞の御霊か』
046 近見男の神は又うたひ給ふ。
047『天国も早近見男の神われは
048岐美に従ひ清所に来つるも
049久方の高日の宮に比ぶべき
051清庭のもなかに湧ける真清水は
052月日を写す鏡なるらむ
053真清水をたたへし池の底照りて
054真鯉緋鯉の遊ぶ館はや』
055 照男の神は又うたひ給ふ。
056『瑞御霊神の御供に仕へつつ
057広河渡りここに来つるも
058吹く風に松の梢はそよぎつつ
059春の香散らす芳しき館よ
060大空を封じて立てる楠の木の
061この太幹の世に珍しも
062この楠の太りしを見てこの館の
063古きを思ふ神の館かも
064何神のおはしますかは知らねども
065知らず知らずに謹しみのわく
066この館に住ませる河守比女神は
068 かく謡ひ給ふ折しも、069河守比女の神は再び表に現れ来り、
070『掛巻も綾に畏き瑞御霊
071とく吾館に休ませ給へ
072この館は外はすぶすぶ中見れば
074六柱の神の住居に叶ひたる
075わが館永く留まりませよ』
076 顕津男の神はうたひ給ふ。
077『比女神の厚き心にほだされて
078神生みの旅を立寄りにけり
079いざさらば比女の言葉に従ひて
080御殿を深く進み入るべし
081大物主の神の神言よ比女神の
082心そむかず早や入りませよ
083大空も真澄の神よわれと共に
084奥に進まむこれの館を
085近見男の神も諸共進みませ
087常磐木の梢の露も照男神
089 かく謡ひて、090顕津男の神は長き廊下を伝ひながら、091かけ離れたる清しき館に進み入り給ふ。092五柱の神は、093この館の侍女の神に導かれて別殿に息を休め給ふ。
094 ここに河守比女の神は顕津男の神を正座に直し、095満面に笑みをたたへ給ひて、096御歌詠ませ給ふ。
097『久方の天の高日の大宮ゆ
098下り給ひし岐美ぞ尊き
099天地の永き月日を待ちわびし
100比女神ありと岐美は知らずや
101皇神の深き経綸にこの館は
102建てられにける吾家にあらねど
103この館の主は正しく世司の
104比女神います清所なるぞや』
105 顕津男の神はこの御歌に驚き給ひ、
106『世司の比女はわが妻何故に
108八十比女の一つ柱と主の神の
109給ひし比女よ疾く出でまさめ』
110 かく歌ひ給へば、111次の間より比女神の御歌清しく聞え来たる。112その御歌、
113『岐美待ちてけながくなりぬ吾は今
114花の蕾の開かむとすも
115御顔もまだしら梅の花なれば
116早く手折らせ比古遅の神よ
117主の神の神言畏み今日までも
118岐美を待ちにし心の苦しさ』
119と謡ひ終り、120しとやかに此の間に現れ給ふ女神は、121艶麗譬ふるに物無く、122宛然梅花の露に綻ぶ如き容姿なりける。
123 顕津男の神は今迄の退嬰心を放棄し比女神の前に近づき寄り、124その手を固く握りて、125二度三度左り右りにさゆらせ給へば、126世司比女の神はパツと面に赤き血潮を漲らせ、127稍俯きておはしける。
128 ここに河守比女の神は、
129『二柱みあひますなるこの蓆
131主の神の依さし給ひし神業よ
132ためらひ給ふな神のまにまに』
133と謡ひつつ、134廊下を伝ひて五柱の神の休らへる居間へと退き給ふ。
135 あとに二柱の神は、136互に言霊の水火を凝り固め、137左り右りの神業を行ひ給へば、138忽ち、139御腹ふくらみて呼吸も苦しげになり給ひけるぞ目出たけれ。
140 これより顕津男の神は御子の生れますまで比女に止められて、141ここに国津神を招き、142百の教を垂れ給ひける。
143 五柱の神はこのさまを垣間見ながら、144満面に笑みを湛へ、145天を拝し、146地に伏し、147歓び給ひて先づ大物主の神は御歌うたひ給ふ。
148『主の神の恵の露の固まりて
149瑞の御霊の水火となりぬる
150世司の神の御水火は凝り凝りて
151貴の神の子宿し給はむ
152あら尊とこれの館に世司の
153比女神ますとは知らざりにけり』
154 真澄の神はうたひ給ふ。
155『此処に来て神の経綸を悟りけり
156八十比女神の忍びます館
157八十比女の中の一つとあれませる
158世司比女は細女なるも』
159 近見男の神はうたひ給ふ。
160『比女神の貴の姿は見るからに
162瑞御霊これの細女賢女を
163御樋代として御子を生まさむ
164生れませる御子は必ず国魂の
165神にしあれば雄々しくあらむ』
166 明晴の神はうたひ給ふ。
167『天も地も茲に漸くあけはるの
168神の神言も寿ぎまつらむ
169今となり主の大神の御心を
170たしに悟りぬこの館に来て
171こんもりと青芝垣をめぐらせる
173二柱天の御柱めぐりあひ
174ウとアの言霊ひらき給はむ』
175 照男の神は又うたひ給ふ。
176『久方の空に月日も照男神
177今日は御供の神と仕へつ
178常磐木の松の梢の色深く
179千代万代を祈りこそすれ
180常磐木の松葉は枯れて落つるとも
181双葉は必ず離れぬものを
182何時までもこれの館に留りて
183御子の数々生ませと祈る
184わが祈る生言霊を主の神よ
186 斯く五柱の神々は今日のみあひを祝しつつ、187香具の木の実を机代に置き足らはして、188語りあひつつ食ませ給ふ。
189 折しもあれ、190高照山の山頂を明るく染めながら、191円満清朗の月は、192めでたきこれの館をのぞかせ給ひぬ。
193(昭和八・一〇・一七 旧八・二八 於水明閣 林弥生謹録)