第五章 言霊生島〔一九三七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第1篇 万里の海原
よみ(新仮名遣い):までのうなばら
章:第5章 言霊生島
よみ(新仮名遣い):ことたまいくしま
通し章番号:1937
口述日:1933(昭和8)年12月12日(旧10月25日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:朝香比女一行の乗った舟は、櫓も櫂もないまま、島々を右に左に潜り抜け、周囲百里の大きな狭野の島も、いつしか後に見えなくなった。
朝香比女は、狭野の島を任せてきた天中比古、狭野彦を名残惜しみつつ、海を渡って進み行く決意を晴れ晴れと歌った。
従者神たちも、それぞれ朝香比女の大曲津神退治の功績をたたえ、海原の旅を楽しむ歌を歌って順調に進んでいた。
日も傾く頃、海風が起こり、荒波が立ち、舟を左右にゆすり出した。天晴比女の神は、この風は曲津神の仕業であろうと見抜くが、舟は荒波の間を木の葉のように翻弄されつつ漂うほどとなった。
朝香比女は平然として歌を詠み、浪に対して、巌となり島となれ、と歌いかけた。すると不思議にも、猛り狂っていた波は、たちまちのこぎりの歯のような険しい巌山となり、あわ立つ小波は砂となって、一つの島が生まれた。
一行は朝香比女の不思議をたたえ、また言霊の威力を、鋭敏鳴出の神の功徳としてたたえた。神々はおのおの述懐歌を歌いつつ、はるか空にかすむ白馬ケ岳方面さして、船のへさきを向けて進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7705
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 607頁
修補版:
校定版:77頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001御樋代神と生れませる 002朝香比女神の神司
003曲神の島を言向けて 004狭野の神国を拓きつつ
005天中比古神狭野彦を 006後に残して四柱の
007神を伴ひ海原の
009御空に天津日照り渡り
011浪に浮べる真中を
013進ませ給ふぞ畏けれ 014抑霧の海原は
015高地秀山より流れ落つ 016東の河の大流と
018月の大河の清流の
021万里の海とぞ称へられ 022数多の島々碁列して
024曲津見の棲処にふさはしき。
025 朝香比女の神の乗らせる御舟は、026舷に浪の鼓を打ちながら、027艪楫もなきに島々を、028右や左にくぐりぬけ、029周囲百里に余る狭野の島も、030いつしか眼界を離れける。
031 朝香比女の神は後振りかへり、032御空を仰ぎて御歌詠ませ給ふ。
033『仰ぎ見れば狭野の食国山々は
034わが目路遠く消え失せにけり
035天中比古狭野彦今はわがいゆく
036舟を思ひて吐息つくらむ
037われもまた名残惜しけれど神業の
039空を行く百の翼よ心あらば
040狭野の島根にわが心伝へよ
041八千尋の浪を湛へし海原に
042浮びてわれは狭野島を思ふ
043栄城山狭野の島根はわが為に
044忘らへ難き聖所となりける
045一片の雲きれもなき大空を
047雲霧は清くはれつつ百鳥は
049百鳥の翼はことごと輝けり
051荒浪の一つだになき此海を
052渡らふ今日は心晴れつつ
053顕津男の神のまします西方の
054国土は遥けし舟に浮びつ
055この海を東南に渡らひつ
056月の大河の流れを避けむ
057高照山ゆ漲り落つる月の河の
058水は滔々この海に入るも
059百鳥の空たつかげは水底に
060うつりて魚の泳ぐが如し
061水底にむらがり棲めるうろくづも
062天津日の光によみがへりけむ
063月の夜は一入勇まむ海底の
064百のうろくづ浮び出でつつ』
065 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。
066『朝香比女神の御供に仕へつつ
068比女神の造り給ひし狭野の島は
069影遠みつつ紫雲棚引けり
070今日よりは狭野の島根も生き生きて
071紫雲棚引き天国とならむ
072のたりのたり浪に揺られて進み行く
073御舟の上の静かなるかも
074天地の水火はことごと清まりて
076われわれは清けき水火を呼吸して
077永久に天界に住むべき神なり
078天地の水火曇らへば天津神の
079命保たむ糧だにもなし
080今日よりはこの稚国土の雲霧を
081吹き払ひつつ水火を清めむ
082水火清き此海原に舟浮けて
083顕津男の神の御供に進まむ
084凪ぎ渡る大海原の中にして
085われは楽しく比女神と語らふ
086比女神の御水火はことごと光なり
087暗き心のわれは苦しも
088朝夕を御樋代神に仕へつつ
089言霊の水火を清めむとぞ思ふ
090島ケ根ゆ島に渡らふ百鳥も
091鳴く音澄みつつ風清しかり
092吹く風もいとど清しき海原に
093小鳥の声を聞くは楽しも
094見渡せば高地秀山は雲表に
095紫雲被りてひそかに覗けり
096東の空打ち仰げば高照の
097山はかすかに影現はせり
098高山と高山の中を渡りゆく
099此海原の広くもあるかな
100東河月の大河集めたる
101此海原は広かりにけり
102どこまでも御供に仕へ奉らむと
103思ひ出だせば楽しかりけり
104やすやすと磐楠舟に浮びつつ
105紫微天界の国土生みに仕ふ
106天も地も風も清めて天界の
107国土を固むる国土生みの旅なり
108国魂の神を生まむと出で給ふ
109朝香比女神の心雄々しも
110天界に尊きものは国魂を
111清けく生ます神業なりけり
112幾万年末の世までも礎を
113固むる為の神生みなりけり』
114 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
115『四方八方に朝夕雲霧立世比女の
116神の心も晴れわたりたり
117御樋代の神の側女と仕へつつ
118広き清しき海原わたるも
119栄城山貴の社を立ち出でて
120今は嬉しも公に仕へつ
121御樋代の神に仕へて朝夕を
122笑み栄えつつわれは生くるも
123生き生きて亡びを知らぬ天界の
124今日の旅路の幸多きかも
125魔の島は曲津見の猛びに伸び立ちて
126濁りし言霊吐き出でにけり
127目も口も鼻も揃はぬ曲津見の
128宣る言霊は雷の如かり
129天地を揺がすばかりの雷声も
131曲神の姿は忽ち巌となり
132堅磐常磐の島ケ根を生めり
133曲神はわが為にたくみ知らず識らず
134神の神業に仕へゐるらし
135朝香比女神の神言のおはさずば
136此魔の島は栄えざるべし
137魔の島は生言霊に神島と
138忽ち変りて水火栄えつつ
139朝香比女生言霊の御光に
140四方の雲霧あとなく晴れつつ
141かくのごと言霊清き比女神の
142御供に仕ふと思へば嬉しも
143わがいゆく道にさやらむ曲津見も
144朝香比女の神の御水火に亡びむ
145かくの如雄々しき強き美しき
146わが公坐ませばこころ安けし
147仰ぎ見れば遠の海原にかすみたる
148山は正しく白馬ケ岳かも
149峰高く白雪つもりて永久に
150冷たき風を吹きおろす島
151仰ぎ見れば白馬ケ岳の尾の上より
152黒き煙を吐き出でにけり
153白馬ケ岳わが目に入りて狭野の島
155漸くに日は傾けど白馬ケ岳の
156島根はろけし浪をどりつつ』
157 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
158『大空は真澄の空と晴れにつつ
159高地秀山に日は傾けり
160高照の山より出でし天津日は
161高地秀山の尾根に近みつ
162海風にあほられ荒浪立ちそめて
163磐楠舟を左右にゆするも
164此風は八十曲津見のたくみたる
165醜のわざかも御舟をさゆらす
166如何程に八十曲津見の荒ぶとも
167何のものかは言霊の旅
168曲神は言霊の光恐れつつ
169風を起して公に刃向ふ』
170 かく歌ひ給ふ折しも、171大海原の浪は刻々に高まり来り、172殆んど御舟を呑まむとす。173御舟は荒浪の間を木の葉の如く翻弄されつつ海中に漂ふ。
174 朝香比女の神は、175平然として御歌詠ませ給ふ。
176『曲津見はまたも手を替へ品を替へて
178千丈の浪猛るとも何かあらむ
179わが言霊に巌と固めむ。
180浪よ浪巌となれなれ浪よ浪
182生言霊の助くる国ぞ
183生言霊の天照る国ぞ
184生言霊の幸ふ国ぞ生くる国ぞ
188 かく歌ひ給ふや、189伊猛り狂ひし浪は、190吹く風にも何のさはりなく、191忽ち鋸の歯の如き嶮峻なる巌山となり、192泡立つ小波は真砂となりて、193一つの生島は生れけるぞ畏けれ。
194 起立比古の神は驚きて御歌詠ませ給ふ。
195『今更に比女の神言の言霊の
197天界は言霊の国水火の国と
198言ふ理を今悟りけり
199狭野の島を生みましまたも巌の島を
200今生まします功かしこき
201此島は浪の小島と命名けませ
202御樋代神の水火に生りせば
203此山を鋸山と宣り給へ
204頂ことごと尖りてあれば』
205 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。
206『わが宣りし生言霊に生れし島よ
207言霊生島とわれは命名けむ
208浪の秀は鋸のごとさかしければ
209鋸山とわれも命名けむ』
210 初頭比古の神はまたもや驚き給ひて、211御歌詠ませ給ふ。
212『天晴れ天晴れ浪は忽ち山となり
213泡は忽ち真砂となりぬ
214言霊の水火の尊さ今更に
215𪫧怜に悟りぬ初頭比古われは
216かくのごと功尊き比女神に
217仕へてわが魂ふくれけるかも』
218 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
219『久方の天津高宮ゆ降りましし
220鋭敏鳴出の神の御助けなるらむ
221鋭敏鳴出の神は御空にありありと
222清きみかげを現はし給ひぬ
223比女神の神業を助け守らむと
224かげにまします鋭敏鳴出の神はも』
225 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。
226『鋭敏鳴出の神の御水火に守られて
227わが言霊は冴え渡りつつ
228御姿はたしに見えねど鋭敏鳴出の
230 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
231『海原を御供に仕へまつりつつ
233天も地も晴れ渡りたる海原に
235鋭敏鳴出の神の功は海中に
236また生島を生み出でにけり』
237 かく神々は各自に御歌詠ませつつ、238遥かの空に霞む白馬ケ岳の方面さして、239舟の舳先を向け給ひける。
240(昭和八・一二・一二 旧一〇・二五 於大阪分院蒼雲閣 白石恵子謹録)