第一五章 笹原の邂逅〔一九四七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第3篇 善戦善闘
よみ(新仮名遣い):ぜんせんぜんとう
章:第15章 笹原の邂逅
よみ(新仮名遣い):ささはらのかいこう
通し章番号:1947
口述日:1933(昭和8)年12月15日(旧10月28日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:谷前清子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:霊山比古の神は、小笹の芝生に曲津神の計略を逃れ、一夜を明かした。ようやく東の空に昇る天津日の光に、蘇生の息をついた。
そこへ、保宗比古、直道比古、正道比古、雲川比古らがやってきて、昨晩の様子を霊山比古に問うた。
一同はやはり、霊山比古同様、曲津神に計略を仕掛けられたのだが、それぞれ敵を見破り、事なきを得た。その話をおのおの交換しあった。
一同は征途のかどでに、神言を上げ、笹原の細谷川でみそぎをなした。そのすがすがしさに、みな元気を取り戻し、曲津神との戦いに備えて気勢を上げる歌を、それぞれ歌った。
そこへ、三柱の比女神たちが現れて、一同に合流した。山跡比女の神は、曲津神が三女神に化けて計略をするだろうとの御樋代神(田族比女神)の計らいにより、わざと後れて進発したのだ、と明かした。
一同は田族比女の神の先見をたたえつつ、部署をそれぞれ定めて、魔棲ケ谷を指してさらに進んでいくこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7715
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 654頁
修補版:
校定版:253頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 霊山比古の神は、002小笹の芝生に曲津見の計略も難なく逃れて一夜を明し給ひけるが、003漸く東の空を照して昇らせ給ふ天津日の光に、004蘇生の息を吐き給ひける。
005 折しも保宗比古の神、006直道比古の神、007正道比古の神、008雲川比古の神の四柱は、009この場に悠々と駒の手綱をかいくりながら現はれ来り、010駒をひらりと飛び下り、011保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。
012『霊山比古の神は事無くおはせしか
013夜半を進みし醜の常闇に
014吾こそは道の行手を塞がれて
015咫尺弁ぜず途中に宿りし
016東雲の空を力に立ち出でて
017駒を急がせここに来つるも』
018 霊山比古の神は答の御歌詠ませ給ふ。
019『待ち待ちし四柱比古の姿見つ
021常闇の小笹ケ原に夜をこめて
022醜の曲津と言問ひしはや
023醜女探女も夜光の玉を照らしつつ
024吾を魔窟に誘はむとせし
025三柱の比女神の姿と体を変へて
027竜神は眼を光らし吾前に
028夜光の玉と偽りにける
029いかにして進まむ由もなかりけり
030咫尺弁ぜぬ黒雲の幕に
031青臭き息に囲まれ玉の緒の
032生きの生命を危ぶみにけり
033これよりは部署を定めて各も各も
034魔棲ケ谷に進まむと思ふ』
035 保宗比古の神は驚きながら御歌詠ませ給ふ。
036『吾も亦とある小さき森蔭に
037やすらひにつつ夜光の玉見し
038三柱の比女神吾にも現はれて
039夜光の玉に誘ひにけり
040如何にしても怪しきものと思ひしゆ
041吾言霊に逐ひやりにけり
042三柱の比女神等の面ざしに
043似たれど少しは怪しと思へり
044兎にもあれ角にもあれや夜の明くるを
045待たむと心定めたりしよ』
046 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
047『吾も亦醜の曲津の化身なる
048三柱比女の神に逢ひける
049曲津見の猛び忌々しければ吾許に
050来れと彼等は誘ひにけり
051よく見れば二つの耳は動きたれば
052正しく曲神の化身と悟りき
053言霊の水火をこらして曲神を
054伊吹き払へば消え失せにけり
055色々と手段を持ちて曲神は
056吾等が征途を防がむとすも』
057 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
058『吾前に三柱比女は見えねども
059夜光の玉の地に落ちゐたるよ
060吾伊行くあたりの闇を射照らして
061夜光の玉はかがやきにけり
062怪しみて吾手にふれず鞭もちて
063打てば夜光の玉は動けり
064闇の夜を照らす真玉と見えけるは
065正しく竜の眼なりけむ
066大いなる騒ぎの音を立てながら
067夜光の玉は千々に砕けぬ
068竜神の眼は砕け破れつつ
069独眼竜となりて逃げしか』
070 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。
071『荒野ケ原に吾も漸く黄昏れて
072やさしき女に出会ひけるかも
073先に立たす比古神等は悉く
074滅び給へば進ますなと宣りし
075怪しかる女神は秋波をよせにつつ
076吾駒の首に飛びつきにけり
077駒に鞭あつれば忽ちをどり上り
078女神を捨てて駆け去りにけり
079ここに来て始めて知りぬ比古神の
080事なく在せしを雄々しき姿に
081いざさらば天津日の光昇りませば
082部署を定めて征途に上らむ
083曲神の醜の奸計はこまやかに
084手筈極めて待ちあぐむらむ
085兎も角も今日の首途に先立ちて
086この笹原に神言宣らむか』
087 霊山比古の神其他の諸神は、088雲川比古の神の提言に賛意を表し、089天地も割るる許りの言霊をはり上げて、090貴の神言を宣らせ給ひぬ。091霊山比古の神は小笹ケ原を流るる細谷川の清水に禊し給へば、092四柱の神も吾後れじと健びの禊を修し給ひ、093各自首途の御歌詠ませ給ふ。
094 霊山比古の神の御歌。
095『天晴れ天晴れ細谷川に禊して
096吾言霊は清まりしはや
097斯く迄も禊の神事の畏さを
098悟らざりしよ愚かなる吾は
099みそぎして吾気体も魂線も
100清めし上は恐るる事なし
101吾魂は冴えに冴えつつ鳴り出づる
102生言霊の力満ちぬる
103玉の緒の生きの生命もさやさやに
104清まりにつつ光を増しけり
105奴婆玉の闇より黒き曲神の
106魂を照らして勝鬨あげむか
107はてしなき生言霊の力もて
108進まむ今日の出で立ち楽しも
109曲神の醜の砦も近づきぬ
110いざや進まむ言霊照らして
111八十曲津谷間に深くひそむとも
112現はしくれむ言霊の光に
113鷲の棲みしこの森林の谷間を
114安く開きて吾は進まむ』
115 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。
116『禊して吾身はあかくなりにけり
117いざや進まむ魔棲ケ谷に
118万里の島に永久にさやりし曲神の
119滅ぶる時は今や来にけり
120雲を起し霧を湧かしてすさびたる
121曲神滅ぶと思へば楽し
122千引巌あまた並べて構へゐる
123醜の砦も何か恐れむ
124黒雲の中にかくれて邪気を吐く
125八十の曲津の終りなるかも
126主の神のたまひし厳の言霊を
127今日の禊に清めて進まむ
128月も日も包みかくして荒びたる
129魔棲ケ谷の砦を放らむ』
130 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
131『白馬ケ岳の頂までも黒雲を
132起して曲津は待ち構へ居り
133白馬ケ岳百谷千谷に黒雲を
134湧かせて曲津は吾等を遮れり
135アオウエイの生言霊に荒び狂ふ
136竜も大蛇も生命をたたむか
137おとなしく服従ひ来れば吾も亦
138愛のこころを起して救はむ
139御樋代の神の天降りし万里の島を
140清むも吾等が務なりける
141田族比女神は泉の森蔭に
142吾戦を守りますらむ
143溪川をおつる滝津瀬高けれど
144水は残らず赤濁りたり
145溪川の流れを見れば曲津見の
147この水の流るる所浸みる所
148木草は育たず穀物実らず
149曲神の醜の砦を打ち破り
150清き清水の滝津瀬とせむ
151さりながらこの一筋の細谷川は
152禊の為に澄みきらひたり
153主の神の禊せよとて造らしし
154小川と思へば尊かりける』
155 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
156『両肩に重荷を負ひし心地して
157神の神言をかしこみ進むも
158夕されば曲津の荒び強からむ
159真昼の間によく戦はむ
160昨夜の如曲津の化身現はれて
161吾等を迷はす事の憎ければ
162曲神は真昼を恐れ真夜中を
163吾世となして猛び狂ふも
164夕されば戦休み時じくに
165生言霊を宣りて明さむ』
166 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。
167『雲霧となりて天地を塞ぎたる
168曲津見今や滅びむとすも
169五男三女の雄々しき神の行く道に
170いかなる曲津もさやる術なけむ
171兎も角も醜の曲津と戦はむ
172陽のある間ぞ勝利なるべし
173ほしいままに伊猛り狂ふ真夜中に
174曲津を攻むるは益なかるべし
175曲津見は真昼の光を恐れつつ
176雲霧となりて地を包むなり』
177 斯く御歌詠ませ給ふ折しも、178三柱の比女神は駒の轡を並べてこの場に悠々と現はれ給ひ、179山跡比女の神は馬上より御歌詠ませ給ふ。
180『五柱の比古神ここに在せしか
181昨夜の闇を案じつつ来し
182吾こそは御樋代神の計らひに
183後れて征途に上り来しはや
184曲神は吾等三柱比女神の
185姿まねぶと思ひて後れしよ
186御樋代の神の言葉に従へば
187曲津は吾等に身を変へしと聞く』
188 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。
189『御樋代神の水ももらさぬ御計らひに
191山跡比女神の宣らせる言の葉の
192畏さ吾身に迫るものあり
193曲津見は三柱比女の神と化し
194吾誘ふと計らひしはや
195さりながら吾魂線はささやきぬ
196曲神の化身よ心許すなと
197吾魂の囁き言葉に従ひて
198曲の奸計の罠をのがれし』
199 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。
200『五柱比古神等に後れ来しも
201曲の奸計を思ひてなりけり
202田族比女神の神言のさとき目に
203吾も今更驚きにけり
204吾来る道はほのぼの明るみて
206小笹原芝生に五柱神ますと
207宣らせ給ひぬ御樋代の神は
208御言葉の如く五柱比古神は
209小笹ケ原に待ち給ひける
210斯くの如神の守りの強ければ
211醜の曲神も何か恐れむ』
212 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。
213『三柱の比女神夜の大野ケ原を
214ほのかな月に照らされて来し
215吾来る大野ケ原に夜は明けて
216駒の歩みも早くなりける
217言霊の天照り助くる神の世に
218醜の曲神のいかで栄えむ
219いざさらば諸神等と言霊の
220水火を合せて進みに進まむ』
221 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。
222『斯くの如五男三女の神柱
223集ひし上は急ぎ進まむ
224さりながら神々等は各も各も
225部署を定めて攻め上らむかな』
226 ここに五男三女の神は各の部署を定め、227遥か彼方の空に巍峨として峙つ魔棲ケ谷さして進み給ふ事とはなりぬ。
228(昭和八・一二・一五 旧一〇・二八 於大阪分院蒼雲閣 谷前清子謹録)