第一六章 妖術破滅〔一九四八〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第3篇 善戦善闘
よみ(新仮名遣い):ぜんせんぜんとう
章:第16章 妖術破滅
よみ(新仮名遣い):ようじゅつはめつ
通し章番号:1948
口述日:1933(昭和8)年12月15日(旧10月28日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:征服戦主将である霊山比古の神は、三柱の比女神による言霊戦部署を、広原の片に立つ楠の根元に定めた。そしてどんなことがあろうと、アオウエイの言霊が聞こえるまでは、一歩もその場を動くことなく、男神の戦闘を助けるように生言霊の光を放つよう、命じおいた。
霊山比古は深谷川の右側、保宗比古は左側、直道比古は第二の谷間の右側、正道比古は左側、雲川比古は最左翼を、それぞれ言霊を絶え間なく宣りあげつつ、登っていくこととなった。
曲津神たちは、登山道に千引きの岩となって立ちふさがったが、神世無双の英雄神である一同はものともせず、強行的に生言霊を上げながら、おのおの進んでいく。
霊山比古は、駒をとどめおき、心静かに言霊歌を歌った。自ら、ヲ声より生まれた主の神の生き宮居であり、主の神の御手代である、と名乗り上げた。
霊山比古は、行く手をさえぎる巌の上を飛び越えていくが、そのたびに曲津神の巌は、綿のように揺らいだ。その中のもっとも大きな巌の上に突っ立ち、タトツテチ、カコクケキの生言霊を宣りあげると、曲津神は本当の巌となり、動くことができなくなってしまった。
霊山比古は勝利の歌を歌った。すると、曲津神の化けた巌々は、いっせいに大音響をたてて、谷底へ落ちくだりはじめた。霊山比古がふと見下ろすと、三柱の比女神たちが登ってくるのが見えた。そして、落ち下る巌に、押し潰されそうになり、泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
霊山比古はすぐさま助けに下りて行こうとしたが、三柱の比女神は、楠の下で言霊を照らして鎮まり待機しているはずなので、谷を登ってくるはずがない。自分が下りていったら、上から押し潰そうという曲津神の計略と気づき、霊山比古は、大巌の上で四股を踏み鳴らし、曲津神の大巌を地中に深くめりこませ、埋めてしまった。
霊山比古が作戦計画に時を移そうと、しばし息を休めていると、田族比女の神がにわかに現れ、竜の岩窟へ進め、と指令を下した。霊山比古はカコクケキの言霊を発すれば、田族比女の神に変化した邪神は、答えにつまり、身体震え、次第に細くなって煙のごとく消えてしまった。
霊山比古はふたたび勝利の歌を歌った。そして、向かいの谷辺にわたり、保宗比古の神業を助けようと、次の行動計画を練った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7716
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 660頁
修補版:
校定版:273頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 一行の先頭にたち、002醜の曲津に対し征服戦主将と任けられたる霊山比古の神は、003思ふところありてか、004三柱比女神の言霊戦の部署を、005広原の片方にこんもりと立てる楠の樹の根元と定め、006如何なる事ありともアオウエイの言霊の聞ゆる迄は、007一歩も此処を動き給はず、008吾等が戦闘を援くべく生言霊の光を放ち、009ひかへさせ給へと、010かく命じ置き、011霊山比古の神は深谷川の右側を、012保宗比古の神は左側を、013直道比古の神は第二の谷間の右側を、014正道比古の神は第二の谷川の左側を、015雲川比古の神は最左翼を、016各自言霊を間断なく宣り上げつつ登らせ給ふこととはなりける。
017 ここに曲津神等は、018五柱の神の激しき鋭き清き赤き照り渡る言霊の水火の力に怖ぢ恐れ、019登山を防がむとして八十の曲津見を駆り集め、020何れも巨大なる千引の巌と化せしめ、021神々の登らす道の前途に、022折り重なりて遮りたれば、023一歩も進みたまふこと能はざるに至りたり。024されど神々は何れも神世に於ける無双の英雄神におはしましければ、025かかる曲津神の全力をつくしての防禦も何のものかはと、026強行的に生言霊を宣り上げながら各自に進ませ給ふぞ雄々しかりける。
027 ここに霊山比古の神は、028駒を小笹ケ原の楠の樹蔭に遊ばせ置き、029右側の谷間を強行的に攀ぢ登らせ乍ら、030心静かに言霊歌を詠ませ給ふ。
032魔棲ケ谷は深くとも
034山気は怪しく濁るとも
035主の大神のヲの声に
036なり出でここに霊山比古の神と
037御名を賜ひし吾なれば
038如何でひるまむ魔の山も
039霊の神山と浄めつつ
040万里の島根の雲霧を
041生言霊に伊吹き払ひ
042雲霧隈なく晴らしつつ
043国土にわざ為す太刀膚の
044大蛇を始め肝向ふ
045心きたなき大蛇の輩を
048百段千段に斬り放り
049国土の災をば永久に
051神は吾等と倶にあり
053ヲ声の言霊御子なれや
054永久に鎮まる主の神の
055貴の宮居なり生の宮居よ
057水火を保ちて世に出でし
058われは真言の主の神の
059貴の御樋代御手代よ
060ああ勇ましき今日の旅
063百津石村の千引巌
064吾等が行手を囲むとも
069天地開けし初めより
071万里の島根を永久に
073魔神の征途に向ふこそ
074実に勇ましき次第なり
077かく御歌詠ませ給ひつつ 078さしもに嶮しき荊蕀の道を
079深谷川に添ひ乍ら
081進ませ給へば曲津見の 082群は見上ぐるばかりの巨石となり
083幾百千とも限りなく 084道の前途を塞ぎつつ
085崩れかからむと揺ぎ出す
087霊山比古の神は曲津見の
090登らせ給へば百千々の
091千引の巌は各も各も
095霊山比古の神は其の中の 096最も巨大なる巌の上に
098化身の巌を悉く
100生言霊を宣り上げて
101真言の巌と為し給へば 102さすがの邪鬼も動き得ず
104進退不動となりにける。
105『曲津見の醜の奸計の浅はかさ
107曲津神は数の限りを集めつつ
109さやりたる曲津見の神の化け巌を
110わが言霊に真巌と固めし
111かくならば曲津神等も動くべき
113曲津神の奸計は深く見ゆれども
114生言霊に容易く亡ぶる
115亡ぶべき運命を持てる曲津見の
117わが立ちしこれの巌も曲津見の
118中に勝れし輩なりける
119東側の谷間の悪魔ことごとを
120率ゐし曲津を足下にふまへるも
121曲津神は身動きならぬ常巌と
123 かく歌はせ給ふ折しも、124百千の巌は谷間に向つて百雷の落つるが如き大音響をたて、125佐久那太理に落ちくだち始めたり。
126 霊山比古の神は、127この光景を面白しと大巌の上に立ちて瞰下し給ふ折しもあれ、128三柱比女の神は静かに登り来まし、129千引の巌に圧せられ泣き叫び給ふ声、130天地も割るるばかり聞えける。131ここに霊山比古の神は三柱比女神を救はむと、132巨巌の上より飛び下り給はむとせしが、133俄に心付き給ひて、134待てしばし、135三柱の比女神は楠の大樹の下蔭に言霊照して鎮まりいませば、136この谷間を登り来まさむ理由なし。137曲津神は一計を案じ、138吾目をくらまし、139三柱比女神と見せかけわが救ひゆく谷道に、140上より巨巌となりし悪魔は落ち来て、141わが気魂を砕かむ奸計なるべしと思召すより、142平然として三柱の神の悲鳴を瞰下し給ひつつ御歌詠ませ給ふ。
143『三柱比女の神にはあらで醜神の
144醜の奸計よ面白きかな
145如何程に泣き叫ぶとも曲津神の
146醜の奸計よ比女は無事なり
147比女神をわれ救はむと下りなば
149永久にこの巌ケ根を地深く
150埋めて千代のこらしめとせむ』
151 ここに霊山比古の神は、152大巌の上に四股踏みならし給へば、153未だ地稚きこの谷川辺は、154一足踏ます毎に巨巌は土中に一尺余りも、155め入り込みて遂には其の表面を地上に現はすばかりとなりにける。
156 ここに霊山比古の神は、157この巌を憩所とし、158暫し水火を休めて、159作戦計画に時を移し給ふ。160折しもあれ、
161『霊山比古神の功の尊さを
162見むとてわれは天翔り来つ
163清水湧く泉の森を立ち出でて
164われいや先に此処に来つるも
165かくの如功のしるき汝なれば
166いざや進まむ竜の巌窟へ
167われこそは御樋代神の田族比女よ
168ゆめ疑ふな霊山比古の神』
169 霊山比古の神は御歌もて応へ給ふ。
170『御樋代の神と白すは偽りなるよ
171わが眼は清しわが魂明し
172曲津見は御樋代神と身を変じ
173われ亡ぼすと奸計み居るも
174わが敏き眼迷はさむとする曲津神の
175奸計の罠の浅はかなるも
176真汝は御樋代神にあるならば
178カコクケキ輝き渡る主の神の
179水火の力に曲津を照らさむ
180汝こそは魔棲ケ谷にたてこもる
181竜に仕ふる魔神なるべし』
182 かく歌ひ給へば、183御樋代神に変装したる邪神は、184何の応へもなく、185言句つまり、186身体震ひ戦き、187次第々々に姿細り、188煙の如く消え失せにける。
189『面白し曲津の神の奸計は
190今や煙となりて消えぬる
191百千々の巌と変り三柱の
192比女神と化りさやぐ曲津かも
193曲津見は再び御樋代神となり
195言霊の水火の力に敵しかねて
196煙と失せけり曲津見の神は
197白馬ケ岳百谷千谷に潜みたる
198曲津はしきりに黒雲吐くかも
199曲津神もここを先途と戦ふか
200百谷千谷に黒雲たちたつ
201巌となりてころげ落ちたる曲津神の
202猛びの音は天にとどけり
203いざさらば生言霊の剣もて
204曲津の砦に直に向はむ
205見渡せば千峡八百峡ことごとく
206あやめもわかぬ黒雲包みぬ
207わが立てるこの巌ケ根の四方八方は
208雲霧晴れてそよ風渡るも
209三柱の比女神もしも登りませば
211三柱の神は何処までも動かじと
212誓ひ給へばわれ憚らじ
213三柱の神の悩みと見せかけて
214われを奸計らふ曲津ぞ浅まし
215御樋代の田族の比女の神柱と
216なりて曲津は欺かむとせり
217田族比女神は泉の清森に
218いまして光を送らせ給ふも
219曲津神の奸計は深く見ゆれども
220為す業見れば浅はかなるも
221曲津見の一部は巌と固まりて
223今よりは向つ谷辺に渡らひて
224保宗比古の神業たすけむ』
225(昭和八・一二・一五 旧一〇・二八 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)