第一七章 剣槍の雨〔一九四九〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第3篇 善戦善闘
よみ(新仮名遣い):ぜんせんぜんとう
章:第17章 剣槍の雨
よみ(新仮名遣い):けんそうのあめ
通し章番号:1949
口述日:1933(昭和8)年12月16日(旧10月29日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:保宗比古の神は、進軍歌を歌いながら、谷間伝いに登っていたが、霊山比古が追い払った曲津神の巌が、前後左右に、ものすごい音を立てて落下してきた。その巌つぶての中に、御樋代神・田族比女の神が、巌に圧せられている様が見えた。
とっさに助けに出ようとする保宗比古だったが、空より「待て」と大喝一声が聞こえた。保宗比古は、御樋代神は泉の森の本営にいることを思い起こし、これは曲津神の計略であることを悟ったのである。
保宗比古は、その計略を見破ったと歌に歌うと、曲津神は必死の力を集め、攻撃をはじめた。にわかに黒雲が沸き起こってあたりも見えないほどの闇となり、雨がざっと降り出し風は巌も吹き散らすほどとなり、槍の雨、剣の雨を保宗比古の身辺に降らせた。
保宗比古は猛烈な邪気に囲まれて呼吸もつまり、言霊を使用することもできなくなり、あやうく曲津神のために死に至ろうという状態になってしまった。
そこへ、泉の森の方から、巨大な火光がごうごうと大音響を立て、天地を震動させながら、保宗比古の神の頭上高く光り、前後左右に舞い狂った。すると、谷間の邪気、雨、槍剣の嵐もたちまちに止み、太陽の光がくまなく照りわたった。保宗比古はたちまち心身爽快となって、大勇猛心によみがえった。
保宗比古は、思い上がりの心が曲津神に付け入る隙を与えたことを反省し、また御樋代神の神力をたたえ感謝し、今の戦いを述懐しながら、神言を宣りあげつつ、魔棲ケ谷の森林さして、登って行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7717
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 664頁
修補版:
校定版:289頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001『主の言霊に生り出でし
002紫微天界の中にして
003万里の海に浮びたる
004万里の島根は地稚く
005国内未だに定まらず
006雲霧四方に塞がりて
007時じく邪鬼は跳梁し
008森羅万象の生命を
009損ひ破る忌々しさに
010御樋代神と生れませる
011田族の比女の神柱
012此土の司とましまして
014万里ケ丘なる聖所に
015仮の御舎建て給ひ
017朝な夕なに太祝詞
018宣らせ給へど如何せむ
019国土の初めに生れたる
020邪気のかたまり太刀膚の
021醜の竜神大蛇等は
022吾物顔に跳梁し
023万里の島根は常闇の
025田族の比女の神司
028従へ泉の森林に
029其の本営を定めまし
030白馬ケ岳の南側の
031魔棲ケ谷に立て籠る
032醜の曲津に言霊の
033征矢を放ちつ照らさせつ
034吾等八柱神司
035いよいよ魔棲ケ谷の奥深く
036進ませ給ふ今日こそは
040主の大神の言霊の
042八十の曲津を悉く
043言向け和せ此の国土の
044雲霧も隈なく掃蕩し
047生命を永久に守るべく
048吾言霊に極みなき
049生命と光を賜へかし
050谷の流れは淙々と
051木霊に響き山風は
052吾等の前途に吹き荒ぶ
053八十の曲津は今日の日の
054言霊戦に辟易し
055周章狼狽せし結果
056いろいろ雑多に身を変じ
059此の首途の面白さ
060曲津の奸計の深くとも
061魔棲ケ谷は暗くとも
063道の難所は多くとも
064如何で恐れむ言霊の
065水火の力にいや進み
066曲津の砦に立ち向ひ
068根本的に顛覆し
069此の世の害を除くべし
070吾等は神の子神の宮
074曲津はことごと消え失せむ
076神の依さしの今日の旅
077守らせ給へと主の神の
078御前に慎しみ願ぎ奉る
079御前に慎しみ願ぎ奉る』
080 斯く歌ひつつ、081保宗比古の神は谷間を伝うて登らせ給ふ折もあれ、082霊山比古の神の神力に、083巌と固まりし曲津の化身なる石村は、084雨霰と谷底に向つて矢を射る如く急転直下し来り、085前後左右に落下するさま、086百雷の一時に轟く如く、087百狼の一時に吠え猛るが如く、088川底の石と石と相打ちて迸る火光は、089恰も電光の閃けるが如くにして、090其凄惨のさま、091形容すべからざるに到りける。092岩飛礫の雨の中に悲鳴をあげて号泣する女神あり。093保宗比古の神は、094声する方に眼を注がせ給へば、095豈計らむや、096御樋代神にまします田族比女の神は、097巨巌に圧せられ九死一生の苦難に遇ひ給ふにぞありける。
098 保宗比古の神は、099素破一大事、100身命を賭しても御樋代神の御身を救ひ奉らむと、101今や谷間に向つて飛び込まむとし給ひし刹那、102何神の声とも知らず、103空より一口「待て」との大喝一声耳に響きければ、104保宗比古の神は、105はつと気が付き、106御樋代神は泉の森の本営におはしまして、107一歩も進ませ給はざれば、108かかる谷間におはす筈なし、109全く醜神の吾等を苦しめむとする奸計なるべしと思ほすより、110俄に勇気百倍し、111谷底に雨霰と時じく落ちくだつ巌の雨を打ち見やりつつ、112平然として御歌詠ませ給ふ。
113『面白し魔棲ケ谷の曲津見の
114力限りの演劇なるかも
115千引巌の降るよと見しは曲神の
116醜の輩の断末魔なる
117霊山比古神の宣らせる言霊に
118曲津は石となりて落ちしよ
119斯くならば此の谷沿ひ曲津見の
121三柱の比女神たちの宣り給ふ
122生言霊かあたり明るし
123耳すませ滝津瀬の音を窺へば
124三柱神の御声響けり
125百条の谷の流れを集めたる
126この大谷の水は濁れり
127谷底ゆ湧き立つ霧は膨れ膨れ
128竜の形となりて昇り来
129面白く姿を変ふる谷の間の
130霧は次第に薄らぎゆくも』
131 斯く御歌詠ませ給ふ折しも、132空俄に黒雲襲ひ来り、133咫尺を弁ぜず常闇となり、134雷轟き電光走り、135驟雨沛然として臻り、136白馬下しの風は、137さしもに重き千引の巌を木の葉の如く吹き散らし、138槍の雨、139剣の雨、140間断なく保宗比古の神の身辺に向つて殊更しげく降り注ぎ、141その危険到底言語のつくし得べからざるに迫りける。142曲津神は此処を先途と全力を尽して保宗比古の神の征途を扼し、143且つ滅亡せしめむと、144必死の力をここに集注せしなり。
145 保宗比古の神は、146曲神の猛烈なる邪気に囲繞されて、147呼吸つまり胸苦しく、148頭は痛み出し手足の働き全く止まり、149生言霊に使用すべき天の瓊矛なる舌は、150硬ばりて如何ともするに由なく進退ここにきはまりて唯曲津見の為すがままに任せ死を待つより外何の手段もなかりける。
151 かかる所へ泉の森の彼方より、152巨大なる火光轟々と大音響をたて、153天地を震動させながら、154保宗比古の神の頭上高く光りて、155前後左右に舞ひ狂ひければ、156谷間の邪気は跡形もなく消え失せ、157巌の雨も槍剣の暴雨も影をかくし、158天地寂然として太陽の光隈なく伊照らし給ひければ、159ここに始めて保宗比古の神の生言霊は活動の自由を得、160身心忽ち爽快となりて、161幾千億の敵にも屈せざる大勇猛心に蘇へり給ひけるぞ畏けれ。
162『面白き曲津の神のすさびかな
163醜言霊のわざをぎ始めし
164剣槍巌の雨を降らせつつ
165吾身の周囲を驚かせける
166吾もまた醜の曲津に囲まれて
168曲津見も侮り難き力もちて
170時じくに生言霊を唱ふべき
171道忘れをり心あせりて
172吾神魂進退ここにきはまりしを
173助けたまひぬ御樋代の神は
174知らず識らず心驕りて曲津見の
176今更に吾魂線の緩みたる
177こと悔ゆれども詮なし恥づかし
178今よりは心の駒を引きしめて
179時じく宣らむ貴の神言を
180曲津見の影はあとなく消え失せて
181谷間を渡る風の音清しき
182淙々と落ちて流るる滝津瀬の
183水音さへも冴え渡りける
184曲津見は第一戦に敗北し
185魔棲ケ谷の奥に隠れしか
186飽くまでも追撃戦を継続し
187神の依さしの神業を遂げむ
188向ふ岸の巌の上に言霊の
189光を放ちて霊山比古は立たすも
190霊山比古神の祈りに御樋代神は
192霊山比古神の著けき神力に
193比べて吾は小さきものなり
194知らず識らず曲神をきたむと吾心
195驕りしものか憂き目に遇ひしよ
196第一の曲津の作戦かくのごと
198次々に醜の曲津は全力を
199尽して吾等に迫り来るらむ
200寡をもちて衆に対する此の神業
202霊山比古神の姿はつぎつぎに
203小さく見えつ高のぼりませり
204吾もまた生言霊の光にて
205これの谷間をのぼり進まばや
206谷の間を深く包みし黒雲の
207影消え去りて輝く日の光』
208 保宗比古の神はかく述懐歌をうたひながら、209岩根木根踏みさくみつつ神言を不断的に宣りあげて、210魔棲ケ谷の森林さしてのぼらせ給ひける。
211(昭和八・一二・一六 旧一〇・二九 於大阪分院蒼雲閣 白石恵子謹録)