第一一章 望月の影〔一九四三〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第2篇 十一神将
よみ(新仮名遣い):じゅういちしんしょう
章:第11章 望月の影
よみ(新仮名遣い):もちづきのかげ
通し章番号:1943
口述日:1933(昭和8)年12月13日(旧10月26日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:そもそもこの万里の島は、まだ大地が若く国土は完全には固まっておらず、そのため河川の水はにごって飲料に適さなかった。しかし今、この泉の森に、水底まで澄み切った泉が滾々と湧き出ている様を見て、神々一行は禊に格好の場所と喜び勇み立ち、勇気百倍となった。
この森は、目も届かぬほどに広がった広大な森で、所々に清泉が沸き出で、地は一面の真砂であり、爽快な聖所となっていた。
田族比女の神は泉の森をたたえる歌を歌った。そして、森に湧き出る泉の傍らに立つと、ちょうど月が晧晧として泉の面に輝いた。田族比女はその光景に顕津男の神の御霊を感じ、すがすがしき夕べに征途の成功を願う歌を歌った。
従者神たちもそれぞれ、望月照る泉の森の美しい様に、神業の成就の予感を歌った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7711
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 635頁
修補版:
校定版:182頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001御樋代神の一柱 002田族の比女の神司
003万里の島根に降りまし 004荒ぶる神を言向けて
005永久にすまへる百の蛙
007万里の大河に沿ひてたつ 008風光妙なる万里ケ丘に
009永久の棲処を定めまし 010白馬ケ岳の南側に
011ひそみて邪気を吹き散らし
014十柱の女男の神等を
015従へ給ひ魔棲ケ谷に
017言向け和すと出で給ひ 018千里の野辺を駿馬の
021楠の大樹の茂りたる 022泉の森に着き給ひ
024一夜の露の宿りをば
026月照る夜半の森かげに
028休ませ給ふぞ畏けれ。
029 抑この万里の島ケ根は、030未だ地稚く国土また完全に固まらざりせば、031いづれの大河小川も池水も濁り汚れて、032飲料に適せざりしが、033今ここに泉の森に降り立ち給ひて、034水底までも澄みきらへる泉の滾々としてつきざるさまを見給ひて、035神々等は禊に恰好の場所なりと喜び勇みたち、036勇気日頃に百倍し給ひける。037この森は目もとどかぬばかりの広さにて、038所々に清泉わき出で、039地上一面の真砂にして、040夜目にも爽快なる聖所なりける。
041 ここに田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。
042『常磐樹の楠の大樹の下かげに
043たまの命の清水は湧くも
044万里の島渡らひ来りてかくの如
045清き泉はわれ見ざりしよ
046月かげは楠の梢にさへぎられ
047かげうつらねど清き真清水よ
048木かげなき玉の泉に禊して
049月の光をむねに宿さむ』
050 かく歌はせ給ひて、051樹立まばらなる真砂の中に、052わき出づる清き泉の傍に立ち給へば、053月は皎々として泉の面に輝き給ひぬ。
054 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。
055『仰ぎ見れば月読の舟俯して見れば
056泉に浮ぶ月読の舟
057顕津男の神の御霊と仰ぎつつ
058泉の波に月を見るかも
059主の神の神言畏こみわれは今
060万里の島根に国土生みするも
061顕津男の神はいづくにましますか
062月は照れども語らふ術なし
063真清水に浮びて清き月光を
064わが背の岐美と仰ぎぬるかも
065苔むして神さび立てる常磐樹は
067主の神の生り出でましし初めより
068早や千万の年を経にけり
069八雲立ち八重霧まよふ万里の島も
070今日初めての月を見るかな
071楠の樹の梢の葉毎に置く露を
072くまなく照してさゆる月光
073かくの如心清しき夕暮は
075ざくざくと真砂を踏める駿馬の
076蹄の音にも生くる言霊よ
077斯の如冴え渡りたる月の夜を
078眠らむ事の惜しくもあるかな
079月読のかげを初めて見たりけり
080わが背にまみゆる日も近からむ
081白馬ケ岳にひそむ曲津見言向けて
082この国原を安く守らむ
083十柱の神の力に守られて
084曲津の征途にのぼるわれはも
085木々の葉にしつとりと置く白露の
086光り妙なり月のしたびは
087仰ぎ見れば御空に星は真砂如して
089いざさらば楠の大樹の下蔭を
090一夜の宿となして休まむ』
091 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。
092『御樋代の神に仕へて草枕
093旅の今宵の楽しきろかも
094四方八方を深く包みし雲霧は
095はれて御空に月出でましぬ
096乗りて来し駒も勇みて嘶けり
097風澄みきらふ月のしたびに
098あちこちに月の浮べる真清水は
099魂洗へとの神示なるかも
100村肝の心清しくわれなりぬ
101そよ吹く風に囁く木々の葉
102濁りきり曇りきりたる万里の島に
103かかる聖所のあるとは知らざりき
104虫の音もいやさやさやに聞ゆなり
105小鳥は塒に帰りてささやく
106百鳥も初めて月の冴ゆる夜を
108われもまた心は勇み胸をどり
109二つの腕のうなり止まずも
110天も地も澄みきらひつつ月読は
111われ等がかしらべを照し給へり
112滾々と果しも知らに湧き出づる
113甘き清水はわが命かも』
114 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。
115『わが魂は果なくふくれ拡ごりぬ
116御空の月の露をあみつつ
117天渡る月の光のさやけさに
119またとなき望月の光いや清み
120守りて更かさむこれの聖所に
121点々と生ひたつ楠の黒きかげは
122月に照らされ墨絵の如し
123大空の月は聖所にくろぐろと
124楠の大樹のかげを描くも
125明日の日は魔棲ケ谷に進まむと
126思へば心いさみて眠れず
127御樋代の神の御尾前に仕へつつ
128今日新らしき月を見るかも』
129 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。
130『永久の命の公に従ひて
131泉の森の月を見るかな
132言霊の命をみたす御樋代の
133神の功は月と冴えつつ
134百八十の曲津の棲みし万里の島も
135いや清まりて月日照らへり
136月と日の光をかくせし黒雲は
137醜の曲津の水火なりにけり
138白馬ケ岳の頂かすかに見えにけり
139空ゆく月のさやけき光に
140何となく心清しき夕べなり
141命の清水ゆたに掬びつ
142大空の月も清けき真清水を
143嘉し給ふかかげを浮かせり』
144 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。
145『八千歳の齢を経にし楠の樹の
146森の樹かげに露の宿りすも
147久方の高天原を立ち出でて
148初めて見たる月の森はも
149地稚き万里の国土にもかくの如
150浄き聖所の在るは珍し
151久方の天も清けく地浄し
152御空を渡る月またさやけし
153村肝の心の曇りさやさやに
154晴れわたりけり望月の光に
155望月の光は清しくうつろひぬ
156玉の泉の波にさゆれて
157目のしたに輝く月とは言ひながら
159仰ぎ見れば御空の奥のその奥の
160青海原に浮べる月舟
161俯して見れば玉の泉の底深く
162波に浮べる明るき月舟
163明日の日は曲津の征途にのぼらむと
165曲津見は万里の島根の貴宝
166残らず奪ひて持てりとぞ聞く
167国魂の神ともいふべき貴宝
168光の宝を抱ける曲津見よ
169貴宝いかにさやけく光るとも
170御空の月の光には及ばじ
171さらさらと科戸の風の梢をもむ
172音響かひて泉の月ゆるる
173ちらちらと月のしたびにわくら葉は
174わが足の辺に散りつ乱れつ
175かくの如清けき清水真清水に
176浮くわくら葉の忌々しもよ』
177 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
178『久方の高天の原を後にして
179遥かに来つる万里の島かも
180御樋代神の国魂神をまつぶさに
181生まさむよき日の待たれけるかも
182大空にかがやき渡る月光に
183瑞の御霊の出でまし思ふ
184遠からず瑞の御霊は天降りまさむ
185これの泉に月宿らせば
186水底は深からねども果しなく
187湧ける清水のかがやき強し』
188 山跡比女の神は御歌詠ませ給ふ。
189『女神われは御樋代神に従ひて
190月照り渡る森に来つるも
191白馬ケ岳頂冴えて大空の
192月は漸く傾きにけり
193西へ行く月のみかげを仰ぎつつ
194更けゆく夜半の宿りを惜しむも
195静かなる月の夜なるかな梢もむ
197千万の真砂は御空の星の如
198月の光りにきらめき渡れる
199大空ゆ月の玉露しとしとと
200庭の真砂を潤して照るも
201幾千代も生きながらへてかくの如
202冴えきる月を仰ぎたきかも
203玉の緒の生きの命は永久に
204いや栄えつつ神業に仕へむ
205果しなき広けき万里の島ケ根を
206隈なく照して澄める月はも』
207(昭和八・一二・一三 旧一〇・二六 於大阪分院蒼雲閣 白石恵子謹録)