第二一章 泉の森出発〔一九五三〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第4篇 歓天喜地
よみ(新仮名遣い):かんてんきち
章:第21章 泉の森出発
よみ(新仮名遣い):いずみのもりしゅっぱつ
通し章番号:1953
口述日:1933(昭和8)年12月16日(旧10月29日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:谷前清子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:一同は、魔棲ケ谷の曲津神たちを根絶したことによろこび、御樋代神・田族比女の神をはじめ、それぞれ戦いの述懐と、これからの神業に思いを馳せる歌を歌った。
歌っているうちに、空は明けはなれ、木々に鳥がさえずり、朝露は朝日に照らされて七色に光り、たとえようもない美しい朝を迎えた。そこへ、霊山比古の神を先頭に、五柱の神々は無事に帰陣し、御樋代神の前に、凱旋報告の歌を奏上することとなった。男神たちは、御樋代神の言霊の神力をたたえ、戦いを述懐し、そして勝利を祝い喜ぶ歌を、それぞれ歌った。
最後に雲川比古は、今や御樋代神の聖所へ帰って行く時である、と歌い宣言し、一同は万里ケ原の聖所目指して帰りの途についた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7721
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 684頁
修補版:
校定版:361頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 田族比女の神始め二男三女の神等は、002魔棲ケ谷の曲神の跡もなく全滅したるを喜び給ひて、003月照りかがよふ泉の森の真砂を踏みしめ乍ら心朗かに各自御歌詠ませ給ふ。
004 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。
005『千早振る神の御水火の澄みきらひ
006万里の島根も蘇へりたり
007時じくに雲の包みし大空も
008晴れて清しき万里の島ケ根
009主の神の依さし給へる御樋代の
010神の神業も成り初めにけり
011かくならば恋しきものは顕津男の
012神の神言の御姿なりけり
013長年を待ちつ暮せど背の岐美は
014万里の外にいますがつれなき
015国津神を万里の島根に植ゑ移し
016国魂神を生まむとぞ思ふ
017八十柱の御樋代神と選まれて
018吾はさみしく月日を送るも
019高地秀の宮を立ち出で遥々と
020この稚国土に来りて久しも
021年さびむ事をおそれつ今日迄も
022岐美の出でまし待ち佗びしはや
023仰ぎ見る御空の月のさやけさに
024恙あらせぬ岐美を思ふも
025天渡る月の面を仰ぎつつ
026夜な夜な恋ふる淋しき吾なり
027ややややに万里の島根は固まりぬ
028いざこれよりは国魂生まむか
029国魂の神を生まむと思へども
030背の岐美まさねばせむ術もなき
031この島の永久の司と定まりし
032鶴もゑらぎて御空に立ち舞ふ
033はてしなき思ひ抱きて岐美を待つ
034吾魂線は御空の白雲
035折々は思ひ悩みて吐息しつ
037さらさらと梢に風は流れつつ
038露照る月はきらめき渡る』
039 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。
040『御樋代の神に仕へて吾は今
041泉の森の月下に遊ぶも
042いやさゆる月の下びに夜もすがら
043歌うたひつつ眠らえぬ吾よ
044嬉しさと楽しさ一度に迫り来て
045春の短夜さへも眠り得ず
046白梅の月にかがよふあで姿は
047御樋代神の粧ひに似し
048未だ春は若くあれども桜木の
049梢の蕾はほぐれ初めつつ』
050 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。
051『小夜更けて月の下びに歌詠みつ
052踊りつ舞ひつ楽しき吾なり
053真清水の泉に浮ぶ月光を
054砕きて過ぎぬ春の夜風は
055余りにも月の光りのさやかなれば
056楠の樹蔭は一入暗きも
057紫の花匂ひつつ池の辺に
059真白なる花を交へて池の辺の
060菖蒲は春の夜を匂ひつつ
061所どころ水鏡照る湧き水を
063曲神の影は地上に消え失せて
065 山跡比女の神は御歌詠ませ給ふ。
066『曲神の征途の戦をさまりて
067泉の森の聖所に遊ぶも
068村肝の心も魂も清々し
069泉の森に公と遊びて
070心安の国土のしるしか真砂照る
071泉の森に月は冴えつつ』
072 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。
073『草も木も若返りたる心地かな
074空に澄みきる月の下びに
075仰ぎ見れば幾億万の星の砂
076俯してし見れば真砂に星照る
077星と星月と月との中空に
078雲の如くにうけるこの森
079常磐樹の梢の濡葉にきらめきて
080千々に照らせる今宵の月光
081新しく蘇へりたる心地すも
082曲神征途の戦終りて
083吾駒も疲れたるらむ草の生に
084身を横たへて安く眠れり
085はてしなき荒野を渡り進みてし
086駒の功を照らす月光
087小夜更けて森の傍のこもり枝に
089これの世に吾生れ来て始めての
090清しき思ひに満たされにける』
091 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。
092『鷲馬の背に跨りて御空はろか
093渡りし思へば怖気立つかも
094村肝の心威猛り曲神の
095醜の砦に空よりのぞみし
096心安き神世にありせば斯くの如
097放れし危ふき業はなさじを
098玉の緒の生命の限り吾公に
099真言捧げて仕へ奉らむ
100月冴ゆる泉の森に夜もすがら
101御樋代神と楽しく遊ぶも
102東雲の空は漸く明るみて
104五柱比古神やがて駿馬の
105轡並べて帰り来まさむ』
106 斯く歌はせ給ふ折しも、107東の空はからりと明け放れ、108百鳥の声は樹々の梢に囀り、109朝露はさし昇る天津日に照らされて七色の光りを放ち、110その美しさ譬ふるにものなかりける。
111 かかる所へ霊山比古の神を先頭に保宗比古の神、112直道比古の神、113正道比古の神、114雲川比古の神の五柱は、115勇気を満面に充たせつつ、116この度の戦に大本営と定まりし泉の森の聖所に無事帰陣し給ひける。117霊山比古の神は御樋代神の側近く進みより、118恭しく拝跪しながら凱旋報告の御歌を詠ませ給ふ。
119『天晴れ天晴れ尊きろかも吾公の
120水火の光りに曲津は滅びし
121千万の曲津の奸計をふみ越えて
122神の力に勝鬨あげしよ
123曲津見は千引の巌と身を変へて
124吾登りゆく道を塞ぎし
125三柱の比女神となりて曲津見は
126吾を詳に謀らむとせり
127曲津見の化身の巌を踏み固め
128暫しの憩所と吾なしにけり
129御樋代の神と曲津は変じつつ
131村肝の心の玉をとぎすまし
133三柱の比女神等の放れ業に
134もろくも曲津は滅び失せぬる
135七宝をとり散らしつつ曲津見は
136雲井の空に消え失せにけり
137心地よく曲津の軍を滅ぼして
138御前に復命するぞ嬉しき
139五柱の比古神いづれも曲津見に
141なかなかに侮り難き曲津見の
142禍のがれしも公の功績
143かなはじと思ひて神言宣りつれば
144光りとなりて助けし吾公
145遥かなる泉の森の空照らし
146吾戦を助け給ひぬ
147年古く曲津の棲まひし魔棲ケ谷は
148堅磐常磐の巌城なりける
149曲神の砦をことごと言霊の
150水火に退ひし心の清しさ』
151 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。
152『千万の悩みしのびて曲津見を
153討ち滅ぼして帰りし嬉しさ
154御樋代の神と変じて曲津見は
155吾魂線を迷はせにけり
156曲津見は女神と変じて吾行手に
158何事も公の言葉に従ひし
159功は曲津に欺かれざりしよ』
160 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
161『遥々と大野を渡り醜神の
162百の奸計を踏みにじりつつ
163曲津見の浅き奸計の可笑しさに
164吹き出すばかり思はれにける
165太刀膚の竜神大蛇数限り
166百谷千谷に潜みて戦ふ
167溪々ゆのこる隈なく黒雲を
168吐き出でにつつ吾等を悩めし
169曲神の水火の黒雲は十重二十重
170包みて行く手を閉したりけり
171千万の曲津の砦に立ち向ひ
172神の恵に事なく勝ちしよ
173ありがたき尊きものは言霊の
174水火の光りと深く悟りぬ』
175 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
176『公がます泉の森に帰り来て
177朝の空に復命せむ
178天津日は豊栄昇り四方八方の
179草木諸々蘇へりたり
180何となく心勇まし曲神を
181跡なく討ちて帰りし朝は
182種々の醜の奸計に悩まされ
183漸く曲津をきため帰りぬ
184海を抜く八万尺の白馬ケ岳に
185登りて見はらす国土は遥けし
186曲津見の滅びし後の清しさに
187四方の国形望み見しはや
188牛頭ケ峯の頂いよいよ高くして
189白馬ケ岳と丈をくらべつ
190空に飛ぶ鷹も烏も百鳥も
191はろかに吾より下空にありき
192魔棲ケ谷の丘に登りて見渡せば
193万里の海原波かがやけり
194ここに来て心漸く和みけり
195御樋代神の御前に仕へて』
196 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。
197『吾は今申上ぐべき事もなし
198四柱神の復命ありせば
199勇ましき曲津を征途の戦して
200吾天地の心を悟りぬ
201天地の心を永久に抱きつつ
202稚国原を拓かむと思ふ
203限りなきこの広き国土を如何にして
204造りまさむかと公を思ひぬ
205曲津見は雲井の奥に消えし上は
207天津日は豊栄昇り吾公の
208功を清く照らさせ給へり
209いざさらば万里ケ丘なる吾公の
210聖所をさして急ぎ帰らむ』
211 斯く雲川比古の神の提言的御歌に、212田族比女の神を始め一行十一柱の神々は、213朝日照る大野ケ原を駒の嘶き勇ましく、214万里ケ丘さして一目散に帰らせ給ひけるぞ目出度けれ。
215(昭和八・一二・一六 旧一〇・二九 於大阪分院蒼雲閣 谷前清子謹録)