第一〇章 樹下の雨宿〔一九四二〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第2篇 十一神将
よみ(新仮名遣い):じゅういちしんしょう
章:第10章 樹下の雨宿
よみ(新仮名遣い):じゅかのあまやどり
通し章番号:1942
口述日:1933(昭和8)年12月13日(旧10月26日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:山跡(やまと)比女の神は馬上の歌にあたりの様子を詠み込んだ。
白馬ケ岳の山頂には紫の雲が横なびき、南の深い谷間には、曲津の水火(いき)であろうか、黒雲が立っている。
霧を通して望む魔棲ケ谷に、虫の音も悲しき霧の野路。笹の葉には白露が置き、冷え冷えと冷気が背に襲い来る。
久方の天の高宮を立ち出でて、はるばるとやってきたのは、曲津神の猛り狂う万里の島を、生言霊で照らすため。田族比女に従い、曲津見の征途に上る今の楽しきことよ。
続いて、千貝(ちかい)比女、湯結(ゆむすび)比女、正道比古、雲川比古が行進歌にあたりの様子、征途の由来と決意を歌いこんだ。
そうするうちに、白馬山麓の雲霧はようやく晴れてきた。一行は行く手にあたって、楠の大樹が茂る、やや広い森があるのを見つけ、しばしこの森に息を休めることとなった。楠の樹下に湧き出る珍しい清泉に禊の神事をおのおの修しながら、一夜をここに宿り、明日の準備と天津祝詞を奏上し、英気を養った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7710
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 631頁
修補版:
校定版:165頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 山跡比女の神は馬の背に跨りながら、002御歌詠ませ給ふ。
003『仰ぎ見れば白馬ケ岳の頂に
004紫の雲横なびきつつ
005南の深き谷間に群がりて
006立つ黒雲は曲津の水火かも
007この島に生きとし生けるもの皆を
008そこなひ破るも醜神の水火は
009魔棲ケ谷の辺りに群れたつ黒雲を
010吹き払ふべき時は近めり
011われは今御樋代神に仕へつつ
012魔神の砦に勇み進むも
013久方の御空は黒雲塞がりて
014荒金の地に霧籠むるなり
015霧の幕透して見ゆる魔棲ケ谷の
016南の谷間の雲は怪しも
017御樋代神旅にたたせる今日の日は
018湧き立つ霧も稍薄らげり
019科戸辺の風よ吹け吹け公がゆく
020道にさやれる霧吹き払ひて
021草の根にひそみて鳴ける虫の音も
022一入悲しき霧こむ野路なり
023笹の葉に置く白露の冷え冷えと
024襲ひ来るかも駒の背まで
025久方の天の高宮立ち出でて
027この島を𪫧怜に委曲に清めつつ
029御樋代の神の天降りし無かりせば
030万里の島根は永久に亡びむ
031曲津神の伊猛り狂ふ万里の島を
032生言霊に照らさむ旅はも
033田族比女神の神言に従ひて
034曲津の征途に上る楽しさ』
035 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。
036『駒並めて曲津の征途に上りゆく
037今日の生日に幸よあれかし
038仰ぎ見れば空を包みし黒雲も
039公の出でましに稍薄らぎぬ
040薄らげる雲の帳を押し開けて
041ほのかに見ゆる天津日の光
042次ぎ次ぎに御空の雲も散りゆきて
043天津日の神吾等を照らせり
044曲津見を言向け譴責め斬り放る
045今日の出で立ちを守らせよ日の神
046万里の島を日並べて包む黒雲の
047怪しき水火は総てを悩ませり
048言霊の水火に生れし吾等はも
049水火の濁れば苦しかりける
050曲津神の怪しき水火を科戸辺の
051風の力に伊吹き払はせ
052東の空に聳ゆる牛頭ケ峰の
053頂ほのかに日光は照るも
054牛頭ケ峰白馬ケ岳の中をゆく
055吾等が旅路に永久の幸あれ
056万里の丘老樹の茂る清森も
057遥けくなりて霧籠むるなり
058万里の島の大川小川悉く
059魔神の水火に濁らへるかな
060清らけき泉しあれば禊して
061われは進まむ魔棲ケ谷に
062玉の緒の命の限りわが公に
063仕へまつりて生きむとぞ思ふ
064山と海諸々越えてわが公の
065御後に従ひ此処に来つるも
066千早振る神も守らせ給ふらむ
067わが行く旅の言霊の幸を
068霊幸はふ神の御水火に守られて
069猛き曲津見を言向け和さむ
070太刀膚の猛き竜神醜の大蛇
071群がり棲むとふ魔棲ケ谷かな
072力無きわれにはあれど十柱の
073神を力に進みゆくなり』
074 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。
075『御樋代の神に従ひ十柱の
076言霊神は征途に上るも
077万里の島を荒び破りし曲津神は
079言霊の水火を清めて白馬ケ岳の
080魔棲ケ谷にわれ進むなり
081久方の御空の雲は次ぎ次ぎに
082散り失せにつつ日光はさしけり
083四方八方を深く包みし雲霧も
084いや次ぎ次ぎに晴れ渡りつつ
085いやらしき冷たき風もをさまりて
086肌ぬくとき水火の満つるも
087大空に円を描きて隼は
088今日の門出を祝ひつつ舞へり
089真鶴は翼を揃へてわが伊行く
090空高々に舞ひ遊び居るも
091百鳥の声勇ましくなりにけり
092御空の雲の吹き散りしより
093草も木も蘇りたる心地かな
094葉末の露は日にかがやきて
095公が行く生言霊の旅なれば
096御空晴るるも宜よと思ふ
097この島は田族の島と聞くからは
098白馬の山は七宝満つらむ
099白馬山雪と見えしは白駒の
100伊寄り集ひし影なりにけり
101白駒は猛き獣の牙の剣
102神の恵みに逃れたりけむ
103牛と馬の群がり棲めるこの島は
104田族の島よ穀物生らむ
105魔棲ケ谷の醜の竜神曲津大蛇
106言向け和して生国とせむ
107御樋代の神と諸共十柱の
108力合せて国土を浄めむ
109谷深く黒き煙の立ち昇る
110魔棲ケ谷は峻しかるらむ』
111 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
112『勇ましや駒を並べて曲津見の
113征途に上る今日の旅路は
114御樋代の神に従ひ言霊の
115軍進めむ魔棲ケ谷に
116天も地も生言霊になり出でし
117言霊の国土よ何をおそれむ
118天地の正しき道を踏みてゆく
120白馬山麓を包みし雲霧は
121漸く晴れて光充ちけり
122天津日の光直刺し白馬ケ岳は
124わが行かむ道を照して天津日は
125大空高くかがやき給へり
126昼月の光の白けて久方の
127御空かすかに渡らひ給ふ
128山も野も雲霧はれて隈もなく
129目路の限りはよみがへりたる』
130 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。
131『御樋代神の出でませる
132曲津の征途を守らすか
133科戸の風の御水火にて
134空に塞がる黒雲は
135跡形もなく散り失せて
136青き御空の奥深く
137天津日の神月読の
138神の光は冴え冴えに
140伊照らし給ひ百草の
141露を照して荒金の
143常世の春の光景を
145今まで萎みし百草の
147白赤黄色紫の
148花は地上に隈もなく
149開き初めたり惟神
154言向け和し斬り放り
155天地の災除くべく
156御樋代神の出でましを
157天地の神は嘉しまし
158四方の雲霧吹き払ひ
159月日の光を地の上に
163勇み進まむ吾等が旅路
164道の隈手も恙なく
166千峡八百峡集めたる
167流れ激しき八十の滝
168隈なく越えて竜神の
169永久に潜みてわざを為す
170魔棲ケ谷にいち早く
175 かくして一行十一柱の神々は、176白馬ケ岳の南麓、177魔棲ケ谷の竜神の巣窟指して進ませ給ふ。178行手に当りて楠の大樹の茂れる稍広き森の横はれるを見給ひ、179暫しこの森に息を休めて樹下に湧き出づる珍しき清泉に禊の神事を各自に修し給ひつつ一夜を此処に宿らせ、180明日の準備と天津祝詞を奏上し、181無限絶対的の英気を養はせ給ふぞ畏けれ。
182(昭和八・一二・一三 旧一〇・二六 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)