第一八章 国津女神〔一九五〇〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇:第3篇 善戦善闘
よみ(新仮名遣い):ぜんせんぜんとう
章:第18章 国津女神
よみ(新仮名遣い):くにつめがみ
通し章番号:1950
口述日:1933(昭和8)年12月16日(旧10月29日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:一方、進軍歌を歌いつつ進んで行く直道比古の神は、とつぜんすさまじい猪の群れに取り囲まれてしまった。直道比古は臍下丹田に息を凝らして端然として座し、言霊歌を歌った。
すると、あたりの雲きりは次第に薄らいで、日の光がほのぼのと谷間を照らし始めた。直道比古の神は、苦境を救った御樋代神・三柱女神の言霊の霊威に感謝の歌を歌った。
すると、大巌のかげから、泣き沈みながら降って来る女神があった。女神は直道比古の前に進んで来ると、両手を合わせてうずくまり、泣き崩れた。
直道比古が問うと、女神は、白馬ケ岳の国津神であると名乗り、曲津神に攻められ苦しんでいたところ、天津神が曲津神征伐にやってきたと聞いて、助けを求めてきたのだ、と答えた。
そして、大巌のかげの庵に直道比古を導き、庵に招きいれようとした。直道比古は、すぐさま曲津神の計略と悟り、天之数歌を歌えば、女神はたちまち長大な蛇神と化し、黒雲を起こして魔棲ケ谷へと逃げていった。
庵の片の大巌は、直道比古が再度天之数歌を唱え終わらぬうちに、枯れ木が倒れるように谷間に向かって転落し、ものすごい音を立てて砕け散って渓流に流されてしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7718
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 669頁
修補版:
校定版:305頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001『永久に動かぬ万里ケ丘
002下津岩根に立たせます
003御樋代神の大御前
004仕へ奉りて荒野原
006泉の森に立ち向ひ
008月下の清水に禊しつ
009一夜の露の雨宿り
010魔棲ケ谷の曲神を
012御樋代神はこの森を
014輪守の比古神左守とし
015若春比古を右守とし
016五男三女の吾々は
017白馬ケ岳の曲津見を
018征服せむと勇み立ち
019駒の手綱を引きしぼり
020馬背に鞭を当てながら
021果しも知らぬ萱野原
022一目散に馳せ渡り
023小笹ケ原の楠の森
024此処に一行相会し
025いよいよ作戦計略を
026定めて各一条の
028今日の生日は御空晴れ
030谷間を落つる滝津瀬の
031音淙々と聞ゆなり
032吾はヰ声の言霊に
033鳴り出で茲に神となり
034御樋代神に従ひて
035万里の島根に仇をなす
036八十曲津見の禍を
039岩石崎嶇たる近道を
040岩の根木の根踏みさくみ
042今まで晴れし大空は
044天日光を失ひつ
045谷間に湧き立つ深霧は
048煙の如く燃え上り
052醜の曲津見の曲業を
053退け散らし元の如
054清くさやけき天津日の
055光を照らさせ給へかし
058曲津見の邪気はものすごく
064 斯く歌はせたまひつつ、065谷川の難路を攀ぢのぼりたまふ折しもあれ、066前後左右より飛び出したる凄じき猪の群は、067直道比古の神の前後左右を取り巻き、068鳥のごとく頭上を飛び交ひ、069鋭利なる爪をとがらせ、070比古神の両眼を掻きやぶらむと迫り来るにぞ、071今はこれまでなりと、072直道比古の神は臍下丹田に息をこらし、073芝生の上に端坐しながら、074天に向つて両手をあはせ、
075『一二三四五六七八
076九十百千万の神よ
078曲津見の征途に立ち向ふ
081追ひそけ給へ惟神
082主の大神の御前に
083赤き清けき村肝の
084心照らして願ぎ奉る
086水火の力に光あれ』
087 斯く歌はせ給ふや、088四辺を包みし雲霧は次第々々にうすらぎて、089天津日の光はほのぼのと谷間を照らし給ひければ、090直道比古の神は神徳の宏大なるに感泣しつつ、091道の傍の巌の上に端坐して息を休め、092且つ御歌詠ませ給ふ。
093『わが行手閉ぢふさぎたる雲霧も
094宣る言霊に散り失せにけり
095曲神はわが行く先にさやりつつ
096力かぎりに刃向ひ来るも
097醜草を薙ぎて放りて進みゆかむ
099万里の島の曲津見悉集まりし
100魔棲ケ谷は清めでおくべき
101醜神を斬りて放りて万里の島の
103濁りたる水火に包まれ森羅万象は
104生気褪せつつ萎びゐるかも
105雨となり雲霧となり巌となりて
106曲津見は前途をさへぎらむとすも
107霊山比古保宗比古の二柱
108神の功を知りたくぞ思ふ
109谷べりの荊蕀分けて進み行く
110道の隈手を守らせたまへ
111仰ぎみれば魔棲ケ谷の空高み
112醜の黒雲しきりに湧き立つ
113百千谷飛び越え草むら分け登る
114わが行く道に恙あらすな
115御樋代の神の御稜威に守られて
116曲津のすみかを吾登り行くも
117尾の上吹く風の響もさやさやに
118わが踏む山路の草はなびけり
119雲霧となりてさやりし曲津見は
120魔棲ケ谷に逃げ去りにけむ
121曲津神の醜の奸計のあさければ
122またもや破れむ生言霊に
123五柱の神の打ち出す言霊に
124千万の曲津は遂に滅びむ
125御樋代神三柱比女神遠くより
126生言霊の光照らせり
127御樋代の神の御稜威の尊さを
128初めて知りぬおろかしき吾は
129遠くおもひ深く計りて御樋代の
130神は泉の森にいますか
131清水湧く泉の森は主の神の
132水火の凝りたる御舎ならむ
133夕されば曲津は猛ばむ天津日の
134ある間に進まむ魔棲ケ谷に』
135 斯く歌ひ給ふ折しも、136大いなる巌の蔭より、137朱に染みたる布を抱へながら、138両眼を腫らせ、139泣き沈みつつ降り来る女神あり。140この女神は直道比古の神の御前に近み来り、141両手を合せ、142うづくまり、143嗚咽涕泣し、144何事か訴ふるものの如く、145全身に波を打たせゐる。
146 直道比古の神は、147こは様子あらむと女神の背を撫でさすり、148言葉淑かに、
149『何神におはしますかは知らねども
150名乗らせ給へ汝がありかを
151邪神棲むこの高山に如何にして
152一人いますかいぶかしみ思ふ』
153女神『吾こそは白馬ケ岳の峡に住む
154尾上と申す国津神なり
155時じくに醜の曲津に攻められて
156吾は一人を苦しみつづくる
157天津神曲津の征途にのぼりますと
158聞くより吾は迎へ奉りぬ
159朝夕を涙に暮らす国津神の
160淋しき境遇を助けたまはれ
161御樋代の神に仕へし汝が神の
162力にすがると迎へ来つるも
163わが庵は千引の巌の片蔭よ
165いざさらばわが住む庵に導かむ
166続かせ給へ天津大神』
167 斯く歌もて答へつつ静々と前に立ち、168立居物腰も淑かに進むにぞ、169直道比古の神は怪しき者御参なれと思召しつつ、170さあらぬ体にて女神の後に従ひ、171千引の巌蔭のささやかなる萱もて葺きたる庵の前に近づき、172内にも入らず佇ませ給ひける。
173 比女神は庵の内より、174細き悲しき声を張り上げて、
175『直道比古神の神言よみにくけれど
176わが家に入りて休ませ給へ
177願ひたきことの山々ありぬれば
178入らせ給へよ庵の内に
179父も母もわが同胞もことごとく
180ほろびてかなしき一人住居よ
181曲津の棲む魔棲ケ谷は道遠し
182しばしを休らひ出で立ちまさね
183雄々しかる神の助けに吾もまた
184邪神の棲処を知らせ奉らむ
185兎も角も曲津の奸計のことごとを
186さとりし吾をうべなひ給はれ』
187 女神は小さき庵の内より細き優しき声を張り上げて、188頻りに比古神を庵の内に入らせ給へと勧めたりけれども、189直道比古の神は頭脳明敏にして容易に迷ひ給はず、190万一この庵に吾入りなば、191千引の巌は忽ちわが頭上に倒れ来り、192身体を木端微塵に打ち砕くべき邪神の計略ならむと一歩も動き給はず、193御歌詠ませ給ふ。
194『くさぐさの甘き言葉に誘ふも
195吾は迷はず曲津見の罠には
196汝こそは大蛇の化身よ巌ケ根に
197永久にひそみて禍なせし神よ
198いざさらば汝が正体をあらはして
199神の力を照らして見むかも
200一二三四五六七八九十
201 百千万千万の神よ
202 生言霊の光り照らさせ給へ
203 惟神御霊幸倍おはしませ』
204と大音声に呼ばはり給へば、205以前の女神は忽ちものすごき長大身と還元し、206黒雲を起し、207魔棲ケ谷の方面さして一瀉千里の勢をもつて逃げ出すこそ恐ろしき。
208『醜神は奸計の裏を看破られ
209生言霊に逃げ失せにけり
210比女神となりてわが身をあざむきし
211大蛇の奸計は破れけるかも
212千引巌そよ吹く風にもゆらゆらと
213動き出せり邪神の化身か
214邪神ならばわが言霊に吹き散れよ
215一二三四五六七八九十』
216百千万と皆まで宣らせ給はぬに、217さしもに高き広き大いなる千引の巌ケ根は、218枯木の倒れる如く谷間に向つて顛落し、219百雷の落つるが如き声たてて百千万の破片となり、220脆くも溪流に落ち入りにける。
221『曲津見の醜の奸計のあさはかさ
222千引の巌も千々に砕けつ
223大空の雲もやうやく吹き散りて
225百千花道の左右に咲き満ちて
226吹きくる水火も芳ばしきかな
227澄みきらふ水火をくまなく呼吸して
229今よりは天津祝詞を奏上し
230邪神の砦を粉砕せむかな』
231(昭和八・一二・一六 旧一〇・二九 於大阪分院蒼雲閣 内崎照代謹録)