第一章 浜辺の訣別〔一九五七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
篇:第1篇 波濤の神光
よみ(新仮名遣い):はとうのしんこう
章:第1章 浜辺の訣別
よみ(新仮名遣い):はまべのけつべつ
通し章番号:1957
口述日:1933(昭和8)年12月20日(旧11月4日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:万里(まで)の大海原に浮かぶ万里の島は、面積八千方里。豊葦原の瑞穂の国の発祥地である。
八十曲津神がこの島に発生し暴威を振るっていたが、八十御樋代神の一人、田族(たから)比女の神が、主の神の命により十柱の女男の神将を率いて荒ぶる曲津神たちを追い伏せ追い払った。
その後、やはり御樋代神である朝香比女の神が万里の島を訪れ、国の形が改まり、また曲神の恐れる天の真火の火打石をもたらした。
この巻では、その後太元顕津男の神が西方の国を治め、朝香比女に国魂神の養育を任せて万里ケ島に降り立ち、田族比女の神と御水火をあわせて国魂神を生み、再び高照山北面の稚国原を修理固成するべく進んで行く、その大略を示す。
朝香比女の神とその従者神男女四柱の神々が、万里ケ島を立ち去ろうとすると、田族比女の神は十柱の神々を率いて御来矢の浜辺まで見送り、別れの歌を互いに交わした。
朝香比女は、万里ケ島の栄を祈り、顕津男の神に出会えたら、田族比女のことを伝えようと歌った。また、天の真火によって国を守るように諭した。
田族比女以下、みな朝香比女への名残おしさと天の真火を賜ったことへの感謝を歌った。
田族比女の従者神、直道比古は、せめて西方の国の国境まで、朝香比女一行を遅らせてくれるようにたのんだ。しかし朝香比女は、残って万里ケ島を守るように諭した。
一同はさらに訣別の歌を交し合い、朝香比女の神と四柱の従者神は、駒とともに磐楠船にひらりと乗り移れば、すがすがしい陽気に満ちた風がたちまち吹いて来て、櫓や櫂を使わずに、舟は海上に静かに動き出した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7801
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 29頁
修補版:
校定版:3頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 万里の大海原に浮びたる万里の島ケ根は、002その面積約八千方里にして、003豊葦原の瑞穂の国の発祥地なりければ、004土地殊に肥え、005春夏秋冬の四季の順序正しく、006万物の発育又極めて良好なりければ、007味よき果物や美しき花に害虫の好んで簇生するが如く、008八十曲津見は千代の棲処と此処に暴威を振ひ居たりけるが、009八十柱の御樋代神の一柱とまします田族比女の神は、010主の大神の神宣を畏み給ひ、011十柱の女男の神将を率ゐて此島ケ根に降臨し、012生言霊の剣を抜き持ちて、013荒ぶる神等を山の尾ごとに追伏せ河の瀬ごとに追攘ひて打ち譴責め給ひ、014心安く心楽しき神国と定め給ひける。015折しもあれ高地秀の宮居に親しく仕へ給ひし八柱御樋代神の中にても最も美はしく最も面勝神と射向ふ神なる朝香比女の神が、016女男四柱の神を従へ、017しばし此土に御跡をとどめ給ひしより俄に国形新まり、018其威光を日に月に加へ給ひけるこそ目出度けれ。019加ふるに曲神の最も忌み恐るる真火を切り出づるべき燧石を、020此国土の御宝として朝香比女の神御手づから授け給ひしより、021日日に国土治まり、022総ての国津神等は其恩恵に浴し、023火食の道を盛んに行ひにける。024主の大神の生み給ひし八十国八十島の中にて、025最も早く火食の道を始めたるは狭野の里なれども、026国内一般に火食の道を開きたるは、027この万里の島をもつて濫觴となす。028故に一名火の国とも称へける。
029 是より程経て朝香比女の神の勧めにより、030太元顕津男の神は西方の国土を治め、031朝香比女の神に国魂神の養育を任せおき、032照男の神をして西方の国土を守らしめ置き、033潮の八百路を渡りて万里ケ島に天降り給ひ、034茲に田族比女の神に御水火を合せ給ひ、035左右りの大神業を終へて国魂神を生ませ給ひ、036国土の基礎定まるを見すまして再び高照山北面の稚国原を修理固成すべく進ませ給ひしなり。037本巻に於て其経緯を略序せむと欲す。
038 朝香比女の神及び女男四柱の神々が、039万里ケ島を立ち去らむとし給ふや、040田族比女の神は十柱の神々を率ゐて御来矢の浜辺まで馬上豊に見送らせ給ひ、041訣別の御歌を互に交し給ひける。
042 茲に朝香比女の神は御舟に乗らせ給はむとして駒を下り、043田族比女の神に対して御歌詠ませ給ふ。
044『新しき国土の栄えを祈りつつ
045別れてゆかむ西方の国土へ
046田族比女御樋代神は平けく
047安らけくませ国魂生ますと
048四方八方の雲霧晴れて月日稚き
049国土の栄の思はるるかな
050顕津男の神にしあへば汝が神の
051功を審さに語り伝へむ
052美はしく雄々しくいます田族比女の
053神の真心伝へまつらな
054短かけれどこの新国土に留まりて
055吾が魂線は足らひけるかな
056御樋代神手づからたまひし宝石を
057清き御魂と朝夕仰ぐも
058曲津神荒び狂はむ事あらば
059真火の力に追ひそけたまへ
060海原の雲霧晴れて浪の秀は
061天津日光にかがやき渡るも
062別れゆく今日の名残は惜しめども
063留まるよしなき吾なりにけり』
064 田族比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。
065『雄々しくて優しくいます朝香比女の
066神に別ると思へば悲しも
067顕津男の神に吾事まつぶさに
068宣らすと言ひし公に感謝す
069此国土の千代の固めの宝なる
070燧石をたまひし嬉しさに泣く
071何よりの貴の宝よ燧石もて
072治まる国土に曲神はなし
073公が御行天津日光も祝ぎまして
074大海原を晴らさせたまへり
075朝宵に公の御幸を祈りつつ
076神の御前に仕へまつらむ
077万里ケ丘に公が記念と美はしき
078宮居造りて仕へまつるも
079八柱の御樋代神の天降りましし
080此の島ケ根は特に尊し
081万世に伝へ伝へて朝香比女の
082御魂を祀り守り神とせむ
083火の神と御名を称へて朝香比女の
084大宮柱太しく仕へむ
085永久に公が御魂を止めおきて
086この新国土を守らせたまへよ
087千早振る神世も聞かず朝香比女の
088八柱神のいでまし尊し
089今日よりは御空の月日も光清く
090照り渡るらむ公の御稜威に』
091 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。
092『御来矢の浜辺に公を見送りて
093名残惜しさに涙こぼるる
094如何にしても止めむよしなき朝香比女の
096永久にこの新国土に御魂を
097止めて吾等を守らせたまへ
098新しき国土の宝を賜ひつつ
099旅に立たすよ光の神は
100いざさらば潮の八百路も恙なく
101進ませたまへ面勝の神』
102 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。
103『天晴れ天晴れ光の神は帰りますかと
104思へば惜しき今日の別れよ
105田族比女神に賜ひし燧石は
106公の光と千代を照らさむ
107天地に又なき宝を賜ひつつ
108出で立たす公を送る淋しさ
109曲神は如何に伊猛り狂ふとも
110光賜ひし国土はやすけむ
111曲津見の伊猛り狂ふ暁は
112焼き滅さむ山に火をかけて
113百万の曲の猛びも何かあらむ
114ただ一点の真火の光りに』
115 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。
116『国土稚く春の陽気の漂へる
117国土に仕ふる若春の神
118若春の神も悲しくなりにけり
119朝香の比女の旅立ち送りて
120瑞御霊一日も早く天降りませと
121伝へたまはれ面勝の神よ
122かくのごと雄々しく優しく美はしき
123女神に別ると思へば悲しも
124惟神また時あらば此の島に
125天降らせたまへ光の女神よ』
126 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。
127『天地の一度に晴れし思ひせし
128公帰らすと思へば淋し
129田族比女神に賜ひし御宝に
130吾は仕へむ公と仰ぎて
131万里の島の生の命の燧石こそ
132千代万代の宝なりけり
133国向の鋒にもまして尊きは
134公の賜ひし燧石なりける』
135 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
136『久方の御空はさやかに晴るれども
137吾魂線は曇らひにけり
138幾千代も万里の島根におはしませと
139祈りし心も夢となりしか
140尊かる八柱神の天降りましし
141万里の国原は輝きにけり
142此の島の森羅万象おしなべて
143今日の別れを惜しみつつなく
144許しあればせめて西方の国境まで
145御樋代神を送りたきかな
146田族比女神の功は尊けれど
147一入貴き公が御光
148万世の記念と公が賜はりし
149燧石は国土の光なるかも』
150 田族比女の神は朝香比女の神に向ひて御歌詠ませ給ふ。
151『朝香比女神の神言よ直道比古の
153直道比古神の御供に仕ふるは
154吾御手代と思し召しまして』
155 朝香比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。
156『雄々しかる直道比古の真心を
157吾嘉すれど許すすべなし
158惟神神の定めし十柱の
159万里の島根の柱ならずや
160束の間も十柱神の欠くるあらば
161万里の島根は又も動かむ
162四柱の神を従へ出でてゆく
163吾には何の艱みなければ
164十柱の神を手足と朝夕を
165国土生みの神業に使はせ給へ
166御樋代神の御言葉否むにあらねども
167万里の新国土思ふが故なり』
168 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。
169『明らけき公の言葉に照らされて
170答の言葉吾なかりけり
171御教を畏みまつり十柱の
172神と諸共国土を拓かむ
173直道比古の神よ心を落ち付けて
174公の御教に従ひまつれよ』
175 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
176『二柱の女神の神言畏みて
177高鳴る胸の火を鎮めなむ
178万里の海は到る処に曲津棲めば
179心し行きませ朝香比女の御神』
180 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
181『浪の音はいやさやさやに響かへど
182心の海に浪たち騒ぐも
183公が御舟かくるるまでも佇みて
185浪の上潮の八百路も安かれと
186吾真心に祈るのみなる
187果しなき広き稚国土万里ケ島の
188記念と賜ひし燧石はも
189田族比女神の御言葉をかしこみて
190公が宮居を仕へまつらむ』
191 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。
192『顕津男の神に会はすと出でたたす
193公が旅路の遥けくもあるか
194八潮路の潮の八百路も恙なく
195進ませたまへ朝香比女の神
196四柱の御供の神等おはしませば
197心やすけく御舟を送るも
198をりをりは思ひ出して万里ケ島に
199清き御魂を通はせたまはれ』
200 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。
201『田族比女神の神言の真心に
202別れの涙止めあへぬも
203朝香比女神の神言の御尾前を
204守り進まむ御心安かれ
205いろいろと生言霊のもてなしに
207なつかしき万里の島ケ根を後にして
208潮の八百路を進みてゆかむ
209此島は紫微天界の真秀良場と
210千代に八千代に栄えますらむ
211朝香比女の神に仕へて美はしき
212万里ケ島根の国形見しはや
213いざさらば名残は尽きじ吾公の
214御尾前守りて神国に別れむ』
215 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
216『幾年もこの島ケ根に村肝の
217心清けく住ままく思ひし
218吾公の御供なれば村肝の
219心に任せぬ吾なりにけり
220牛頭ケ峰白馬ケ岳に立つ雲を
221遠行く舟に仰ぎて偲ばむ
222霊幸はふ神世の初めの田族国と
223吾は思ひぬ万里の島根を
224雲霧を吹き払ひたる万里ケ島は
225光にみつる貴の国原よ
226吾は今光の国土を後にして
227光の公と海原進まむ
228田族比女神は光の神とまして
229万里の新国土を照らさせたまへ』
230 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
231『新しき国土の光を見ながらに
232吾は御供に仕へて行くも
233鳥獣草木の端に至るまで
234なつかしく思ふ万里の島根は
235森羅万象皆吾友と親しみし
236この新国土に別れむとすも
237主の神の許しありせば吾も亦
238この新国土に再び来らむ
239田族比女神の神言の顔を
240いや永久に若く守らむ
241この島の別れにのぞみ田族比女の
242神の優しさ若さを守らむ
243十柱の神の御姿永久に
244いや若かれと吾は祈るも』
245 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
246『田族比女の神十柱の神いざさらば
247名残を惜しみて今や別れむ
248心若く永久にましませ万里ケ島の
249守りの神と光らせたまひつ』
250 かく互に歌もて訣別の辞を述べたまひ、251朝香比女の神初め四柱の神は駒諸共に磐楠舟にひらりと移らせたまへば、252春とも初夏とも知れぬ陽気にみてる清しき風は忽ち吹き来り、253艪櫂を用ひたまはぬに御舟は波上静に動き出でにける。
254(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 加藤明子謹録)