第二三章 天の蒼雲河〔一九七九〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
篇:第4篇 神戦妖敗
よみ(新仮名遣い):しんせんようはい
章:第23章 天の蒼雲河
よみ(新仮名遣い):あまのあおくもがわ
通し章番号:1979
口述日:1933(昭和8)年12月25日(旧11月9日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:磐楠舟は、歎きの島に近づくにつれて次第次第に小さくなり、全くもとの原型に戻った。渚に舟を進ませて、駒とともに一行は無事上陸した。島は黒煙がもうもうと立ちこめて視界をさえぎっていた。
朝香比女の神は天津神事を奏上し、七十五声の生言霊を鳴り出でると、空の黒雲は南北に別れ、月はその正中を渡って晧々とした明るい光を地上に投げかけた。
朝香比女の神は、八岐大蛇が潜んでいた歎きの島も、今日からは生き返ると歌い、鋭敏鳴出の神に、国民の嘆きをとどめて国土が新生するように祈った。一行はひとまず夜をして明け方に進むこととし、おのおの述懐の歌を歌った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7823
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 142頁
修補版:
校定版:428頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 朝香比女の神の召しませる磐楠舟は、002歎きの島の岸辺に近づくにつれて次第々々に其の形量を減じ、003全く原形に復したりければ、004渚辺近く御舟を進ませ給ひ、005駒もろともに無事上陸を遂げ給ひける。
006 歎きの島に上りて見れば、007黒煙濛々と立ち籠めて咫尺を弁ぜず、008黄昏とはいひながら、009御空の月は影を隠し、010脚下に生ふる草木のかげさへも目に入らぬばかりとはなりぬ。
011 ここに朝香比女の神は、012上陸早々天津神言を奏上し、013七十五声の生言霊をなり出で給へば、014御空の黒雲は南北に輪廓正しく別れ、015恰も銀河の如く東西に蒼雲の線を引き、016月読神は恰も其の正中を渡らせ給ひつつ、017明皎々の光を地上に投げ給ひけるにぞ、018朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。
019『はろばろと海原渡り黄昏を
020歎の島に吾来つるかも
021黒雲は天地を包みて烏羽玉の
022黒白も分かぬ歎きの声のみ
023神言を宣り上げ七十五声の言霊を
024放てば四辺の雲は散りける
025大空の黒雲左右に別れつつ
026御空の蒼は西に流るる
027大空の蒼雲の河を渡りゆく
028月舟のかげは冴え渡りたり
029八岐大蛇永久に潜みて荒びたる
030歎きの島も今日より生きむ
031国津神の歎きの声は鎮まりぬ
032わが言霊に曲津の逃げしか
033今宵はも月の下びに夜を明し
034明日さり来れば曲津を払はむ
035鋭敏鳴出の神よ現れませ国民の
036歎き止めて国土を生むべく』
037 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。
038『わが公の生言霊の幸はひに
039天地を包みし雲は別れし
040大空の蒼雲の河を月舟は
042海を吹き風の力の強ければ
043磯端を打つ浪の音高しも
044わが公の御召の舟は磯端に
045かたく繋ぎぬ浪高ければ
046わが公の渡らす万里の海原は
047静かなりけり惟神ならし
048惟神主の大神の御依さしに
049出でます公の功は著し
050天地に著き功を建てまして
051光らせ給ふ御樋代の神よ
052草も木も海吹く風にしばかれて
053片靡きたりこれの島根は
054月読の神よ心しましまさば
055この夜もすがらを照らさせ給へ
056わが公の国魂生みの御行ぞや
057御空の月よ曇らせ給ふな
058歎かひの声は俄にとどまりぬ
059御樋代神の上りましてゆ
060曲神は矛を納めて逃げ仕度
061整へ居るらし風出でにけり
062草の根に終夜なく虫の音も
063悲しく聞ゆ歎きの島は
064向つ尾の茂木の枝に鳴きたつる
065梟の声は悲しかりける
066常磐樹の松の梢に月かけて
067今宵の宿を休らはむかな
068千重の浪押し分け魔神を打ち払ひ
069公に仕へて此処に来つるも
070葦原の島ケ根たちて種々の
071曲津の荒びに遇ひにけらしな
072鋭敏鳴出の神の補けとわが公の
073光に安く此処に来つるも
074曲津見は逃げつ隠れつ行く先に
076大空の黒雲次第に別れゆきて
077天の雲河拡ごりにけり
078月舟の渡らふ御空の雲河に
079真砂の如く星かがよへり
080春の夜の宿りといへど梢吹く
081風の音聞けば冬心地すも
082曲津見は未だ力の残れるか
083公が宿りの松を揺るも』
084 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
085『起立比古吾は御側に侍らひて
086百の神業珍しみ見つ
087力なき吾なりながらわが公の
088功に歎きの島根に来つるも
089雲霧を起して醜の曲津見の
091艱みたる大海原の黒雲の
092言霊匂ふと思へば安けし
093主の神のなり出で給ひし言霊に
094刃向ふ曲津は亡びゆくかも
095天渡る月の面はいやますに
097草の根に鳴く松虫も見ゆるまで
098輝き強し月舟の光は
099万里の島も葦原の島もわが公の
100光の水火に治まりしはや
101この島も必ず清く治まらむ
102光の公の出でましし上は
103この島に醜の曲津の集まりて
104国津神等をなやめ居るらし
105草も木も鳥も獣もことごとく
106蘇るらむ公の光に
107暁を待ちて進まむわが公の
108御供仕へて島の奥まで』
109 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
110『草の野に立つ夜嵐は強けれど
111何かおそれむ言霊の吾は
112吾も亦主の大神の言霊の
113力になり出でし小さき神なり
114妖邪の気凝り固まりて曲津見と
116主の神の水火の濁りの固まりし
117曲津見なれば憐れ催す
118さりながら曲津見天地に蔓延らば
119紫微天界は闇となるべし
120よしあしの差別なけれど天界を
121乱す曲津は払ふべきかな
122払へども又湧き出づる曲津見の
123醜の黒雲詮術もなき
124善き事の裏には悪しき曲業の
126大空は次第々々に雲晴れて
127御空は蒼く星は満ちぬる
128吹く風も次第々々にをさまりて
129光の神の宿りは安けし』
130 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
131『天晴れ天晴れ光の神の言霊に
132ぬぐふが如く御空晴れつつ
133見の限り月のしたびに輝ける
134歎の島の山野は清し
135大空の黒雲晴れて島ケ根は
136小夜更けながら明るくなりぬ
137夕さりて月読の神のなかりせば
138この天地に曲津は荒びむ』
139 朝香比女の神は御空の隈なく晴れ渡りしを、140主の大神に感謝しながら御歌詠ませ給ふ。
141『有難や主の大神の御恵に
142わが言霊は照り渡りたり
143次ぎ次ぎに雲霧退きて大空も
145夜ながら小鳥の声も冴えにつつ
146生れむとする島を寿ぐ
147この島に国津神等沢に住むか
148歎かひの声彼方此方聞えし
149彼方此方の歎きの声もをさまりて
150草野を渡る風はかそけし
151月は今常磐の松の茂り枝に
152かからひましつ夜は冷え渡る
153漸くに小夜更け渡り大空の
154月は傾き初めにけらしな
155明日されば駒を並べて島ケ根の
157国津神の艱みを救ひ曲神の
158棲処を焼かむ真火の力に
159山も野も草生ひ茂り手も足も
160入るる由なき島ケ根なるらし
161曲津見は隙を窺ひ襲ひ来む
162四柱の神眠らで守らへ』
163 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。
164『わが公の神言畏み終夜
165守り仕へむ目を見張りつつ
166あめつつ千鳥ましととの如わがさける
167敏眼もて曲津を睨みやらはむ
168只ならぬ吾の鋭き円き眼の
169光に曲津は照らされ滅びむ
170さりながら御樋代神の御光に
171比ぶる時は螢火なりけり
172わが公の御身の周りを見張りつつ
173曲津の襲ひを固く守らむ』
174 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
175『面白き旅路なるかな万里の海の
176曲津を払ひて終日来つるも
177天津日の光はなけれど月読の
178清き光に冴え渡る島よ
179明日されば言霊戦に出で立たむと
180思へば楽しくわが眼は冴ゆる
181駿馬の轡並べて草の野を
182焼き払ひつつ又も進まむ
183炎々と燃え拡ごれる草の野の
184眺めは実にも雄々しかりけり
185明日もまた野火の燃えたつ勢を
186見むと思へば心勇むも』
187 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
188『神々よ月の下びに草の野に
189火をかけ給へば面白からむを
190燃ゆる火の勢見れば面白く
191心の駒も勇みたつなり
192さりながら国津神等の住ひたる
193宿に及べば憐れなるべし』
194 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
195『燃ゆる火の面白くあれど国津神の
196艱みしあれば明日を待たなむ
197この島も小さき丘のところどころ
199莽々と生え茂りたる草の原に
200数多の大蛇は潜むなるらむ
201吾は今夜の明方を待ち佇びて
202心勇みつ雄健びなすも』
203(昭和八・一二・二五 旧一一・九 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)