第一九章 春野の御行〔一九七五〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
篇:第3篇 葦原新国
よみ(新仮名遣い):あしはらしんこく
章:第19章 春野の御行
よみ(新仮名遣い):はるののみゆき
通し章番号:1975
口述日:1933(昭和8)年12月23日(旧11月7日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:葦原の国の建国祭が終わると、鋭敏鳴出(うなりづ)の神は、ふたたび光となって従神たちとともに天の一方に姿を隠した。葦原比女の神・朝香比女の神は、鋭敏鳴出の神への賛美と感謝を歌った。
そして、葦原比女の神は、天津神・国津神たちを率いて、朝香比女の神一行を舟のある常磐の浜まで見送るべく、続いて行った。
初頭(うぶがみ)比古の神は先頭に立って、これまでの経緯を言霊歌に述懐した。続いて、天津神・国津神たちはそれぞれ述懐の歌に、朝香比女と葦原比女の出会いや、葦原の国の立替え・立直し、新しい国の出発などについて歌いこんだ。
その日の黄昏頃ようやく、常磐の浜辺に近い楠の森に着いて、一行は一夜の宿を取った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7819
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 119頁
修補版:
校定版:341頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 茲に鋭敏鳴出の神は建国祭の祭典を終りたるより、002再び光となりて数多の従神を伴ひ、003紫の雲に乗りて宇宙をウーウーウーと生言霊も爽かに響かせながら天の一方に御姿を隠し給ひける。004其雄々しき厳しき御有様を打仰ぎつつ感激の余り、005葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。
006『天晴れ天晴れ光となりて鋭敏鳴出の
007神は御空に帰りましける
008朝夕に葦原の国土を守らすと
009宣らせし言霊尊くもあるか
010鋭敏鳴出の神のいみじき言霊に
011醜の曲津は姿を隠せり
012鋭敏鳴出の神の功と朝香比女の
013神の光に生れし国土はも
014久方の空行く月も光冴えて
015葦原の国土に恵の露垂る
016天津日の光に森羅万象生ひ育ち
017月読の露に生命を養ふ
018月も日も星もさやけき葦原の
019国土の御空の高くもあるかな
020今日よりは天津神等国津神
021司率ゐて国土を固めむ
022鋭敏鳴出の神の御魂と朝香比女の
023神の御魂を宮居に斎かむ
024主の神の御殿の右に鋭敏鳴出の
025生言霊を祀り仕へむ
026大殿の左の清き聖所に
027朝香の比女の御魂斎かむ
028三柱の神の御魂を永久に
029斎きて国土の守りと崇めむ
030朝香比女の御魂を斎く神社に
031国土の宝の燧石ををさめむ
032葦原の国土の礎固まりて
033三柱の神の御魂光るも
034永年を吾艱みたる醜神も
035姿失せにつつ楽しき今日なり
036吾力及ばざるため醜神の
037醜の荒びに任せけるはや
038今日よりは三柱神を斎かひて
039生言霊の光照らさむ
040神々は力を合せ心ばせを
041一つになして神世に尽せよ
042新しき常磐ケ丘の大宮に
043吾鎮まりて国土拓かばや
044惟神神の功の貴ければ
045葦原の国土は常世なるべし
046弥永久世弥永と拓け行かむ
047三柱神の貴の守りに
048大宮に十曜の神旗翻り
049神世の栄えを照らし居るかも』
050 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。
051『神々の功によりて葦原の
052国土生れたる今日ぞ目出度き
053鋭敏鳴出の神は御空に帰りましぬ
054いざ吾立たむ国土生みの旅に
055葦原の国土の栄えも見えければ
056吾は是より公に別れむ
057葦原比女神の神言よ永遠に
058恙あらせず栄えさせ給へ
059天も地も晴渡りたる今日の日を
060旅立つ吾の心は勇むも
061別れ行く今日の名残の惜しけれど
062国土生みの旅は留まる由なき
063今よりは又も曲津の荒ぶなる
064万里の海原浪分け進まむ』
065 葦原比女の神は再び御歌詠ませ給ふ。
066『願はくは公の出立ちを浜辺まで
067送らせ給へ許したまはれ
068亡び行く国土を生かせし神故に
069一入吾は別れ惜しまる
070雄々しくて優しく清しくおはします
071公に別るる今日の悲しさ』
072 茲に朝香比女の神一行の御供として、073葦原比女の神は十柱の天津神国津神等を率ゐて、074朝香比女の神の御舟を繋ぎし常磐の浜まで御見送り申すべく続かせ給ひける。
075 初頭比古の神は先頭に立ちて、076生言霊を宣り上げ給ひつつ御歌詠ませ給ふ。
077『万里の海原渡り来て
079天地に塞がる悪神の
080醜の黒雲吹き払ひ
081沼底深く潜みたる
084月日も清く輝きて
085常世の春は生れたり
086百花千花は咲き匂ひ
087小鳥は歌ひ蝶は舞ひ
089梅桃桜一時に
090咲き匂ひつつ天国の
091光景を忽ち現したり
092朝香の比女神諸共に
093桜ケ丘に花を愛で
094三日三夜を逗留し
097稚き国原生れけり
098此島ケ根に永遠に
099住ませ給へる神々は
100国土の生れを言祝ぎて
101彼方此方ゆ寄り集ひ
102歓呼の声は天に満ち
103地上を流れて果もなし
105吾等は公を守りつつ
106再び万里の海原を
107雲霧分けて進まむと
108今日の生日の出立ちを
109送り奉ると宣り給ひ
110葦原比女の神司
111諸神等を従へて
112公の御行を送ります
113其真心は天地に
114響き渡りて天津日は
117大野を渡る春風は
118真綿の如く軟かに
119百鳥千鳥虫の音も
123今日の御行に光あれ
124今日の御行に幸あれよ。
125朝香比女神の御尾前に仕へつつ
126葦原の国土を別れむとすも
127珍しき春の眺めにひたされし
128葦原の国土はなつかしきかも
129御樋代神の優しき心に包まれて
130思はず知らず日を経りにけり
131空高く地亦広き新国土の
132山野に別るる惜しき今日なり』
133 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
134『果しなき大野ケ原に駒並めて
135進むも楽し常磐の浜辺に
136野の奥に陽炎燃えてそよそよと
137面吹く風は春をひびかふ
138梓弓春の弥生の大野原を
139吾は霞とともに立つなり
140雲の奥霞の果も葦原比女の
141神の知らさむ食国天晴れ』
142 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。
143『尊しや朝香比女神の御後辺に
144従ひて行く今日の嬉しさ
145朝香比女神の後姿仰ぎ見れば
146御身隈なく光にませるも
147御姿は光となりて葦原の
148国土の天地を照らし給ひつ
149朝香比女神の光に比ぶれば
150吾は小さき螢火なるも
151螢火の吾に賜ひし燧石こそ
152吾に光を賜ひたるなり
153賜ひてし燧石の功に吾魂は
154光放ちて国土を治めむ
155乱れたる吾世を清く生かしたる
156公は惜しくも帰らむとすも
157朝香比女神の恵を忘れじと
158神社建てて永遠に斎かむ』
159 野槌比古の神は馬上豊かに御歌詠ませ給ふ。
160『御樋代の葦原比女に仕へつつ
161光の公を送る嬉しさ
162御樋代の神は神国に止まらで
163遠く行かすか名残惜しきも
164大野原吹き来る風もなごやかに
165光の公を静かに送るも
166百鳥も公の出でまし惜しむにや
167木々の梢に鳴き叫ぶなり
168草の根に潜みて鳴ける虫の音も
169今日は淋しく聞え来るかも
170天も地も森羅万象もおしなべて
171公の旅立を惜しみ歎ける』
172 高比古の神は御歌詠ませ給ふ。
173『駒並めて帰り行きます御光の
174神を送りつ悲しき吾なり
175御光の神現れしより葦原の
176国土新しく生れ出でしよ
177高比古は光の神の恵にて
178御側に仕ふる神となりけり
179御光の神の恵は永遠に
180天地失するも忘れざるべし
181天は裂け地は沈むとも御光の
182神の恵は如何で忘れむ
183諸々の国津神等も御光の
184神の功に蘇りつつ
185此島に生きとし生ける悉は
186神の恵に霑はぬはなし』
187 照比古の神は御歌詠ませ給ふ。
188『雲霧も隈なく晴れて照比古の
189吾は御側の神となりける
190御光の神を送りて駒の上に
192御光の神天降りしゆグロスの島は
194道遠み駒の脚並早くとも
195浜辺に着かば日は黄昏れむ
196彼方此方と大野ケ原にそそり立つ
197常磐の松の光新し』
198 清比古の神は御歌詠ませ給ふ。
199『天も地も澄みきらひたる大野原を
200公を送ると駒に鞭うつ
201葦原比女神に親しく仕へつつ
202光の神を送る楽しさ
203紺青の底ひも知らぬ空の海を
204昼月の舟は冴え渡るなり
205天津日は御空に清く輝きて
206光の神の御行守れり
207足引の鷹巣の山の空晴れて
208公の御行を遥かに拝む
209陽炎の燃ゆる春野を進み行く
210駒の蹄の音の清きも』
211 晴比古の神は御歌詠ませ給ふ。
212『雲霧も光の神の功績に
213隈なく晴れし葦原清しも
214葦原の国土の柱と任けられて
215光の神を今日送るかも
216神業の沢におはせる御光の
217神を留むる由なき吾なり
218朝香比女神を送りて春の野を
219駒に進めば陽炎燃ゆるも
220有難き神世は漸く生れたり
221朝香の比女の現れませしより』
222 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
223『主の神の経綸の糸に操られ
224新しき国土の国形見たりき
225鋭敏鳴出の神の功と吾公の
226貴の光に驚きしはや
227吾魂は蘇りたる心地して
228今日の御行の御供仕ふる
229葦原の国土の天地は清まりて
230御空に冴ゆる昼月の光
231天津日の光は清し葦原の
232国土を隈なく照り渡しつつ』
233 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
234『梅桜桃の花咲く稚国土に
235吾楽もしく蘇りけり
236非時に梅も匂へよ桃も咲け
237桜も散らで神国を祝へ
238名残惜しき神々等に別れ行く
239今日の広野の旅は淋しも
240グロノスやゴロスの曲の亡びたる
241鏡の沼を思へば恐ろし
242醜草を焼き払ひたる島ケ根を
243旅行く駒は安かりにけり』
244 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
245『天晴れ天晴れ澄みきらひたる稚国土の
246野辺を渉りて帰り路につくも
247鋭敏鳴出の神の守らす吾公の
248功思へばひたに尊き
249吾公と共にしあれば曲津見の
250伊猛る国土も恐るることなし
251磐石の上に佇む心地して
252吾は朝夕御供に仕へつ』
254『真以彦吾も後方に従ひて
255光の神を送り奉るも
256地に降り国津神等と倶に住む
258雲の上にありし吾身も荒金の
259地に降りて覚る楽しさ
260卑しかる吾身なれども御光の
261神の御行を送る畏さ』
263『成山彦吾は神言を畏みて
264卑しき身ながら公を送るも
265荒金の地に親しむ身となりて
266吾魂線の安きを楽しむ
267二柱御樋代神の後辺に
268仕へて道行く今日の嬉しさ
269国津神の卑しき司も捨てまさず
270御供に召さす神の尊さ
271天も地も睦び親しみ葦原の
272国土拓けとの御心なるかも』
274『村肝の心曇りし吾にして
275御供に仕ふる畏さ思ふ
276国津神の司となりし吾にして
277今日の御行を送る嬉しさ』
279『北の国土の神の司の吾ながら
280忝なくも御供に仕ふる
281葦原比女神の恵は永久に
282忘れざるべし真心尽して
283国津神の司となりて村肝の
284心はややに落付きにけり』
286『忍ケ丘を廻れる近き国土の長と
287吾任けられて嬉しさに叫ぶ
288何事も神の依さしの儘なれば
289吾は嬉しく仕へ奉らむ
290二柱御樋代神を守りつつ
291御供に仕ふる嬉しさに泣く』
292 斯く天津神国津神等は各自御歌詠ませ給ひつつ、293其日の黄昏るる頃、294漸くにして常磐の浜辺に近づき楠の森に着かせ給ひ、295茲に一夜の露の宿を定め給ひける。
296(昭和八・一二・二三 旧一一・七 於大阪分院蒼雲閣 森良仁謹録)