第二章 波上の追懐〔一九五八〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
篇:第1篇 波濤の神光
よみ(新仮名遣い):はとうのしんこう
章:第2章 波上の追懐
よみ(新仮名遣い):はじょうのついかい
通し章番号:1958
口述日:1933(昭和8)年12月20日(旧11月4日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:朝香比女の神が乗った磐楠船は、薄霞たなびく初夏の海原を、悠々としてたどって行った。
田族比女の神一行は、名残惜しみつつ、船が見えなくなるまで見送り、歌を歌った。
田族比女は、朝香比女の諭しに万里ケ島の経営に思いを新たにし、また朝香比女の御魂を祭る宮居を立てることを誓った。
従者神たち一同も、それぞれ別れの歌を歌った。
船が見えなくなると、一行は万里の聖所に戻ってきた。そして、さっそく火の若宮の工事に取り掛かったが、十日ほどで荘厳な若宮が完成した。
湯結比女の神はこの火の若宮に仕えて、主の神と朝香比女の神の生魂に、沸かした白湯を笹葉にひたして左右左に打ち振り御魂を清め、湯を奉って、まめやかに仕えた。
これより今の世に至るまで、神社には御巫(みかんのこ、神事に奉仕する未婚の女性)というものがあり、御湯を沸かして神明に奉ることとなった。
一方、朝香比女の神一行は、田族比女の神一行に別れを惜しみ、振り返り振り返り手を上げて歌を歌いつつ、進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7802
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 35頁
修補版:
校定版:25頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 朝香比女の神の乗らせる磐楠舟は、002薄霞棚引く初夏の海原を悠々として辿り行くを、003御影の隠るるまで、004田族比女の神の一行は名残惜しみつつ見送らせ給ひ、005御歌詠ませ給ふ。
006『天晴れ天晴れ光の神は出でましぬ
007浪の秀隈なく照らし給ひつ
008懐かしき光の神に永久に
009訣別ると思へば悲しき吾かも
010美はしき優しき雄々しき比女神の
011御舟を送る悲しき吾なり
012手をあげて訣別を惜しみ給ひつる
013比女の優しき心ばせかも
014顕津男の神の天降らせ給ひてし
015思ひするかな比女の出でましは
016顕津男の神に訣別るる身のつらさ
017思ひ浮べて悲しき吾なり
018此広き神国の親と選まれて
019吾は悲しき今日に逢ひける
020今よりは心の駒を立直し
021比女の心に報ひ奉らむ
022八潮路の潮の八百路の八潮路を
023踏み分け出でます功尊き
024永久に此島ケ根に宮居建てて
025比女の御心安んじ奉らむ
026片時も早く御舎仕へ奉り
027比女の御魂を斎き奉らな
028御姿はよし見えずとも神社に
029御魂祀りて御功偲ばむ
030刻々に遠ざかり行く御舟の
031御影は吾を泣かしめにけり
032万斛の涙湛へて御来矢の
033浜辺に御舟を送り奉るも
034主の神の定めと思へど今一度
036八潮路の浪の秀の旅安かれと
037神言宣りて御神に祈らむ』
038 輪守比古の神は海原を打見やりつつ御歌詠ませ給ふ。
039『天晴れ天晴れ御舟は遠くなりにけり
040吾は悲しさ弥まさりつつ
041幾千代も公の御姿わが胸に
043今日の日は浪平かに天津日は
044うららに照れり御舟幸あれ
045振返り振返りつつ出でませる
046神の姿の優しくもあるか
047高地秀の峰より天降りし神なれば
048一入尊く御在ましける
049御姿に再び見えむ術なしと
050思へば今日の訣別惜しまる
051果しなき大海原の浪別けて
052進ます公の幸かれと思ふ』
053 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。
054『御訣別余り惜しさに悲しさに
055われ言霊を参らせざりける
056万里の島の光を賜ひし比女神の
057出でまし送りて何か淋しき
058朝香比女神の珍しき出でましに
060浪路遥かに御舟小さくなりにつつ
061吾眼界を離れむとすも』
062 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。
063『白馬ケ岳清き姿は弥永に
064公の御行を送りまつらむ
065吾眼小さくあれば公が行く
066御舟は早くも見えずなりけり
067白馬ケ岳の峰羨ましも比女神の
068御行を永久に送りまつれば
069御来矢の浜辺に立ちて送り奉る
070御舟は早くも目路を離りぬ
071永久に留まりたまへと祈りてし
072光の公は帰りましける
073此上は御樋代神に真心を
074尽して国土に仕へまつらむ
075此国土の宝と比女の賜ひたる
076燧石の光に世をまもらばや』
077 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
078『此国土に光となりて天降りましし
079神は情なく帰りましける
080会ふ事の嬉しきものを今日はしも
081悲しき訣別に御舟送るも
082永久に忘れぬ公となりにけり
083此稚国土に光を賜へば
084朝夕に火の若宮に仕へつつ
085公の功を讃へ奉らむ
086心清く優しくまして雄々しかる
087比女は真言の神なりにけり』
088 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。
089『舷に打寄す浪の響さへ
091輝ける白き優しき御面は
092浪の秀高く隠れましけり
093天津日の浪に沈ます思ひかな
094光の神は目路を離れり
095永遠に仕へ奉ると思ひてし
096朝香の比女は此国土になし
097田族比女神の神言に畏みて
098吾は朝夕仕へまつらむ
099白馬ケ岳の醜の曲津も比女神の
100功に驚き逃げ失せにけむ
101牛頭ケ峰白馬ケ岳の頂を
102振返りつつ御覧すらむ
103白馬ケ岳の麓に小さき吾ありと
104偲ばせ給へ朝香比女の神』
105 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。
106『今となりて惜しみ奉るも詮なけれ
107只真心を捧げ御魂に仕へむ
108御舟の影さへ見えず歎かひの
110此島の森羅万象おしなべて
111公に名残を惜しみつつ泣かむ
112百草の花も萎れて今日の日の
113浜辺の訣別惜しむがに見ゆ
114御空行く陽光も薄ら曇らひつ
115今日の訣別を惜しませ給へる』
116 山跡比女の神は御歌詠ませ給ふ。
117『天も地も照らして隈なき比女神の
118御姿今は見えずなりける
119せめてもの記念と賜ひし燧石は
120万里の神国の光なるかも
121宝石の光は如何に貴くとも
122国土を救はむ代にはならず
123奉るものもなければ止むを得ず
124卑しき宝を奉りける
125心よく受けさせ給ひし比女神の
126優しき心を忝なみ思ふ
127如何にせむ光の神は帰りましぬ
128万里の海原の浪踏み別けて
129永久に公の功を畏みて
130火の若宮に仕へまつらむ』
131 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。
132『国土稚き万里の島根に吾ありて
133今日の悲しき訣別に遇ふも
134懐かしく優しく雄々しき比女神に
136吾魂は公の御身にいつかひて
137海原遠く守り行くらむ
138御功の尊くませば比女神の
139霊衣は広く四方を照らせり
140真心の尊さ始めて覚りけり
141御身に溢るる貴の光に
142天も地も公の宣らする言霊に
143従ひまつると思へば畏し』
144 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。
145『今日よりは比女の賜ひし燧石の
146功に清き湯をむすぶべし
147朝夕に火の若宮に仕ふべく
149みはるかす大海原は広らかに
150御舟の影も見えずなりける
151いざさらば田族比女の神の吾公よ
152万里の聖所に帰りまさずや
153いつまでも浪の秀見つつ偲ぶとも
154詮なきものを早や帰りませ』
155 茲に田族比女の神一行は、156目路を離りし御舟に諦めの心を定め、157雄々しくも駿馬の背に跨り蹄の音も勇ましく、158其日の黄昏るる頃、159無事万里の丘の聖所に帰り着き給ひ、160時を移さず夜を日に継いで火の若宮の工事にかからせ給ひけるが、161旬日ならずして神の幸ひ弥厚く、162荘厳なる若宮は築かれにける。
163 茲に湯結比女の神は朝夕火の若宮に仕へまし、164主の神を始め火の神と称へまつりし朝香比女の神の生魂に白湯を沸かして笹葉に浸し、165左右左に打振り朝々の身魂を清め御湯を御前に奉りて忠実に仕へ給ひける。166是より今の世に到るまで何れの神社にも御巫なるものありて、167御湯を沸かせ、168神明に奉る事とはなりたるなり。
169 朝香比女の神は御来矢の浜を立出で給ひ、170御舟の中より田族比女の神の一行に訣別を惜しみつつ、171振返り振返り御手を挙げさせ給ひ御歌詠ませ給ふ。
172『天晴れ天晴れ御樋代神の現れませる
173万里の島根に訣別れむとすも
174神々の優しき心に絆されて
175思はず月日を重ねけるかも
176永久に住みたく思へど主の神の
177依さしに背く術なき吾なり
178雄心の大和心を振り起し
179惜しき訣別を告げにけるかな
180いつまでも訣別るる機会のなかるらむ
181雄々しき健き心持たずば
182神々の心知らぬにあらねども
183神業思ひて吾は訣別れし
184神々は浜辺に立ちて吾舟を
185心優しく見送り給へる
186万世の末の末まで忘れまじ
187真言輝く神々の心は
188百年の親しき友に会へる如
189隔てなかりし神々を思ふ
190吾舟は浪路遥けくなりにける
191島の神々安くましませ
192真鶴の声も悲しく聞えけり
193万里の新国土去らむと思へば』
194 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。
195『二柱比女神等の神宣
197斯の如優しき清き神々の
198生言霊を聞かざりにけり
199比女神は斯くあるべきを大方の
200心は嫉み妬みに満つるも
201御樋代の神と神との言問ひの
202其優しさに涙ぐまれつ
203御来矢の浜辺にはろばろ見送りし
204神の優しき心ばせを思ふ
205地稚き国土を拓かす苦しさを
206思へば吾は心畏む
207真心の限りを尽し愛善の
208道に進ます百神天晴れ
209吾舟は浪の秀遠く離りつつ
210浜辺に立たす神見えまさず
211次々に舟遠ざかり行く海原に
212益々近く親しき神々よ
213神々の御姿見えなくなりにけり
214白馬ケ岳の峰は光りつ
215白馬ケ岳聳立つ国土におはします
216神々等の御姿なつかし』
217 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
218『広き稚き国土は吾目路離りつつ
219白馬ケ岳の峰のみ光れる
220万里の海に浮べる万里の生島は
221永遠に栄えよ天地と共に
222刻々に遠ざかり行く島ケ根を
223懐かしみつつ吾は行くなり
224果しなき此海原の中にして
225万里の島根は恋しき国土なり』
226 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
227『御樋代の神に仕へて万里ケ島の
228聖所に清く吾は遊びぬ
229草も木も百鳥千鳥も稚国土の
231雲霧も隈なく晴れて天津日の
232御影清しき万里の国土はや
233御樋代の神御自ら御来矢の
234浜辺に公を見送りたまひし
235吾舟は浪の鼓を打ちながら
236比女に訣別を告げにけらしな
237比女神の優しき姿目に浮きて
239顕津男の神に見合ひす其日まで
240若く優しくいませと祈るも』
241 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
242『天も地も晴れ渡りたる海原を
243公に訣別れて行くは淋しも
244比女神を始め十柱神等の
245優しき心仰がるるかな
246優しくて雄々しくいます神々は
247醜の曲神を退ひ給ひし
248漸くに御来矢の浜も遠くなりて
250吾舟は太平の浪を辿りつつ
251公を守りていや進むなり
252海原を包みし霧も晴れ渡り
253楽しき今日の舟の旅かも』
254(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 森良仁謹録)