第四章 焼野の行進〔一九六〇〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
篇:第1篇 波濤の神光
よみ(新仮名遣い):はとうのしんこう
章:第4章 焼野の行進
よみ(新仮名遣い):やけののこうしん
通し章番号:1960
口述日:1933(昭和8)年12月20日(旧11月4日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:東の空がようやくしののめて、日が上ってくると、真鶴の声、カササギの声が冴えて、朝香比女の一行を迎え出るごとくであった。
朝香比女の神は船を巌が並んだ浜辺に寄せると、一行は駒に乗って上陸した。そこは、萱草、葦がぼうぼうと道なきまでに生い茂った原野であった。一同は、この草原が曲神の隠れ家になっていると見て取った。
朝香比女の神は、この草原に真火を放って清めようと、初頭比古の神に命を下した。初頭比古の神は火打石を受け取ると、神言を奏上しつつカチリカチリと打ち出せば、枯草に真火は燃え移った。
おりしも、海面より激しく風が吹いてきて、火は四方八方にみるみる広がっていった。幾千里の大原野は見る見る黒焦げになり、竜、大蛇、猛獣等の焼け滅びた姿が無残の光景をとどめた。神々はそのなきがらを土中に埋め、数多の月日を費やした。
グロノス、ゴロスは鷹巣の山を指して逃げ去った。朝香比女の神は、焼き清めたこの大野原に、国魂神を移住させて島を拓こう、と歌った。
一同は、真火のいさおしをたたえ、大野原から曲神を追い払ったことを喜んだ。グロノス、ゴロスの逃げた行方を気にしつつ、この島に住むという御樋代神・葦原比女の神をたずねて、一行は進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2018-08-17 00:26:17
OBC :rm7804
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 46頁
修補版:
校定版:66頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 東の空は漸く東雲めて、002海面を飛交ふ鴎の声は彼方此方よりものやさしく響き来り、003グロスの島ケ根はカラリと明けて鷹巣の山は屹然と島の東方に聳えたち、004天津日は悠然として紅の幕を別けながら昇らせ給ひ、005昨夜の物凄き光景はあとなく消え失せ、006真鶴の声、007鵲の声、008冴えに冴えつつ、009朝香比女の神の一行を迎へまつるものの如し。
010 朝香比女の神は御舟を千引巌の碁列せる浜辺に静々と寄せ給ひ、011駒諸共に御舟を出でて陸地に一行出でさせ給ひ、012初頭比古の神は御舟を浜辺の片方にかたく結びつけ、013起立比古の神外二柱の女神と共に陸に上らせ給ひつつ、014萱草、015葦の莽々と道のなきまで生ひ茂りたる原野を御覧しつつ初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。
016『荒れ果てし島にもあるか萱草の
017生ひ茂りたる野は限りなし
018よしあしの道を塞ぎて茂りたる
019島根は曲津の潜むも宜なり
020駒の脚いるる隙さへなきまでに
021生ひ茂りたるよしあし原よ
022わが公に畏れ多けれどいや先に
023駒をうたせて道別けせむかな』
024 朝香比女の神は馬上に跨り、025御歌詠ませ給ふ。
026『見はるかす島のことごと醜草に
027包まれけるかも曲津の棲処は
028曲神はこの草原に潜みゐつ
029百の災起すなるらむ
030見の限り雲立ち昇り霧湧きて
031風さへ冷ゆるあらき国原よ
032この国土を拓かむとして葦原比女
033神は早くも渡らせ給へる
034葦原比女神の神言のみあらかに
035進み語らむ時の待たるる
036グロノスやゴロスの潜むこの島は
037鳥の鳴く音も悲しげに聞ゆ
038真鶴は翼揃へて鷹巣山の
039尾根をよぎりつ近づき来るも
040この島も真鶴数多棲みけるか
041翼の音の近づき来るも』
042 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
043『御樋代の神に仕へて今日も亦
044御樋代神に会ふぞ目出度き
045目路の限り生ひ茂りたる草の生に
046真火を放ちて曲津を焼かばや
047この島にありとしあらゆる曲津見を
048焼き滅すと思へば楽しき
049曲神の眼を醒す真火の光りは
050又と世になき宝なるかも』
051 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
052『曲神といへどももとは主の神の
053水火より出でし神なりにけり
054鋭敏鳴出の神のたまひしこの真火は
055曲津を清むる剣なるかも
056比女神の生言霊にグロスの島の
058ひろびろと限りも知らぬグロス島の
059雑草の野に風さやぐなり』
060 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
061『黒雲の覆ひし昨夜に引替へて
062御空晴れつつ日光清しも
063曲津見は天津日の光に驚きて
065いろいろに言霊宣りてさとせども
066曲津の耳は木耳なりしよ
067かくならばこの生島を拓く為に
068真火の荒びも是非なかるらむ
069雲をぬく鷹巣の山の山麓に
070御樋代神はおはしますらむ
071御樋代の神のまします清宮居は
072広き流れにかこまると聞く
073この野辺に火を放つとも御樋代の
074神の宮居は恙無からむ』
075 朝香比女の神は再び御歌詠ませ給ふ。
076『科戸辺の風は出でたりいざさらば
077真火を放てよこの草の野に』
078『吾公の神言畏みいざさらば
079真火を放たむ初頭比古われは』
080 かく御歌もて応へ給ひつつ初頭比古の神は、081朝香比女の神の御手よりうやうやしく燧石を受取り、082荒金の如き石もて燧石を、083神言を奏上しつつカチリカチリと打ち出で給へば、084真火は辺りに飛散し忽ち幾年ともなく積れる萱草の茂れる根もとの枯草に真火は移りける。085折しもあれ、086海面よりはげしく吹き来る風に吹きまくられ、087見る見る四方八方にひろごり、088紅蓮の舌は四辺かまはず、089木も草も生物もあとを絶てよとばかり舐めまはりける。
090 幾千里に亘る大原野は、091見る見る黒焦げとなりて彼方此方に竜神、092大蛇、093猛獣等の焼け亡びたる姿、094天日に曝され、095無残の光景をとどめけるにぞ、096御樋代神は四柱の神に命じて各自その遺骸を土中に埋めさせ給ひつつ、097数多の月日を費し給ひけるぞ畏けれ。
098 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。
099『あはれなる醜の魔神は亡びたり
101グロノスやゴロスの曲津の司等は
102未だ滅びず逃げ失せにける
103曲津見は鷹巣の山の空指して
104雲を起して逃げ去りしはや
105かくの如焼き浄めたる大野原は
106国魂神を移すによろしも
107国魂の神をこの土に移し植ゑて
108グロスの島を拓かむと思ふ
109よしあしの群がり生ひしこの島は
110土自ら肥えにけらしな
111曲神の棲処はことごと焼かれたり
113 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。
114『御樋代の神の姿の雄々しさよ
115燃ゆる火の如輝きましつつ
116わが公は光の神にましませば
117常世の闇も晴れ渡るなり
118御空飛ぶ百鳥千鳥も驚きて
120目路の果てに白煙たつはまさしくや
122風のあし如何に速けく走るとも
123燃えつつ進む真火はおくれむ
124上べのみは燃え尽せども草の根は
125未だ燃えつつ煙たちたつ』
126 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。
127『御供に仕へまつりて今日の如
128雄々しき楽しき日はあらざりき
129燃えさかる野火の勢ながめつつ
130公の力の功をおもふ
131何よりも尊きものと悟りけり
132公が持たせるこれの燧石は
133万里の島も公の賜ひし燧石にて
134魔神の潜む棲処は絶えむ
135ここに来て真火の力の功績を
136さとりけるかな起立比古われは
137数十里の野辺はみるみる焼け失せぬ
138風の力と真火の功に』
139 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。
140『黒雲の包みしグロスの島ケ根も
141晴れ渡りつつ月日かがよふ
142昼月の光冴えにつつ大空に
143吾等が振舞ひを見つつ笑ませり
144わが駒の脚下広くなりにけり
145百草千草焼きはらはれて
146大野原にすくすくたてる太幹の
147松と楠とは蒼く残れり
148火にさへもひるまぬ常磐樹の心こそ
149朝香の比女の操に似たるも』
150 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。
151『曲神の醜の棲処は悉く
152真火の力に払はれにけり
153海ゆ吹く潮の風の強くして
154見る見る荒野は浄まりしはや
155今日よりは如何に曲津見荒ぶとも
156恐れざるべし真火の功に
157火を吹きて吾等をおどせしグロノスや
158ゴロスの曲津はいづらへ行きけむ
159グロノスとゴロスの曲津見罰めずば
160この国原は安からざるべし
161葦原比女神のみあらかを今よりは
162勇み進みて探ねゆくべし
163いざさらば御前に立ちて仕ふべし
164天晴比女の神はうたひつ
165果てしも知らぬ大野原
166真火の力に悉く
167焼き払はれし面白さ
169真火は忽ち四方八方に
171火焔の舌を吐きながら
174馬背に跨り眺むれば
175火の海原の如くなり
177御樋代神の御尾前に
178仕へて進む焼野原
181この稚国土の稚野原
183靄の如くに棚引けり
184常磐の松や楠は
185彼方此方の原頭に
189鷹巣の山に雲湧きて
190峰の百樹は青々と
191緑に映ゆる目出度さよ
192御樋代神と天降ります
193葦原比女の神司
194五柱の神従へて
195鷹巣の山の山麓に
197朝香の比女の出でましを
200この高原の末遠く
201鷹巣の山の麓まで
205鷹の如くに天翔り
208吾等は気ながく進むべし
210公の御行に幸あれよ
211公の御行に光あれ』
212 かく歌はせつつ、213大野ケ原を五柱の神は吹き来る風に御髪を梳りつつ意気揚々と、214葦原ケ丘の聖所を指して進ませ給ひける。
215(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)