第一六章 天降地上〔一九七二〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
篇:第3篇 葦原新国
よみ(新仮名遣い):あしはらしんこく
章:第16章 天降地上
よみ(新仮名遣い):てんこうちじょう
通し章番号:1972
口述日:1933(昭和8)年12月22日(旧11月6日)
口述場所:大阪分院蒼雲閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:一行は忍ケ丘の上に葦の畳を敷き並べ、おのおの生言霊を宣り、また歌を詠みながら、夜が明けるのを待った。
天の一方を眺めると、一塊の雲もない空に、上弦の月が下界を照らし、月の右下方に金星が寄り添って燦爛と輝き、月の右上方三寸ばかりのところに土星が、光薄く光っていた。これは三千年に一度やってくる天の奇現象であり、稀有のことであると神々はおのおの空を仰ぎ、葦原の国を改革すべき時が来たことを感知した。
葦原比女の神は、朝香比女の神にこの現象の意味の言解きを願った。朝香比女の神は答えて、土星は天津神の言霊が濁り、光があせていることを現している、と解いた。金星は、国津神の中から光が現れて世を守る、と言解きをした。そして、月は葦原比女自身を現している、と。
葦原比女の従者神、真以(まさもち)比古は驚いて、知らず知らず心がおごり、主の神に仕える道を怠っていたことに思い至った。そして、今まで邪神が荒んでいたのも、葦原比女につかえる天津神たちの曇りが原因だったことを悟り、御樋代神に許しを乞うた。
葦原比女の神は、土星に光が戻るまで地に下って世に尽くす役目を真以比古の神に命じ、代わって忍ケ丘の国津神・野槌彦の神を司に取り立て、野槌の神を改名するよう命じた。
野槌彦は辞退するが、葦原比女の神は、謹んで命を受けるように改めて命じた。そして、国津神の中からも、清く正しい御魂を選んで、天津神業を任せるように用いる、と宣言した。
朝香比女の神はこの英断に感じて歌を詠じた。葦原比女に仕えていたその他の天津神たちも、自らの心持に思いを致して驕り高ぶりの罪を認め、今までの罪を悔い、野槌彦の魂の清さを認め、野に下って田畑を拓く決心を述懐した。
朝香比女の神は、葦原の国に天の時・地の時が至ったことを宣言し、今日から葦原の国の標章をスの玉(⦿)とし、玉を十並べて「真言の国土の標章」と定めるように命じた。葦原比女の神は、国の旗標まで朝香比女より賜ったことに感謝の歌を歌った。
野槌比古の神は、国津神の中から高彦、照彦、清彦、晴彦を選んで、天津神に連なる国の補佐として推薦した。葦原比女は、それぞれ高比古の神、照比古の神、清比古の神、晴比古の神と改名するように命じた。そして、急遽召集を受けた四柱の国津神たちは、夜がふける頃忍ケ丘に到着し、葦原比女の神の宣旨のもとに、天津神の列に加わった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2023-07-07 12:25:19
OBC :rm7816
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 102頁
修補版:
校定版:281頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 葦原比女の神の一行は、002朝香比女の神の一行を送りまゐらせつつ、003忍ケ丘の山麓に春の永日は黄昏れければ、004ここに一夜の露の宿りを定めまし、005常磐樹生へる丘の上に各自登らせ給ひ、006葭葦をもて国津神の編み作りたる清畳を、007いやさやさやに敷き並べ、008御空の月のさやけさに溶け入りながら、009各自に生言霊を宣り、010或は御歌を詠ませつつ暁の至るを待たせ給ひける。
011 天の一方を眺むれば、012一塊の雲片もなき紺青の空に、013上弦の月は下界を照し給ひ、014月舟の右下方に金星附着して燦爛と輝き渡り、015月舟の右上方三寸ばかりの処に土星の光薄く光れるを打ち眺めつつ、016三千年に一度来る天の奇現象にして稀有の事なりと、017神々は各自御空を仰ぎ、018葦原の国土の改革すべき時の到れるを感知し給ひつつ、019御歌詠ませ給ふ。
020 葦原比女の神の御歌。
021『澄みきらふ御空の海を照らしつつ
022月の御舟は静かに懸れり
023よく見れば月の真下にきらきらと
024光の強き金星懸れり
025月舟の右りの上方に光薄く
026輝く土星の光のさみしも
027天界にかかる異変のあるといふは
028葦原の動くしるしなるべし
029光り薄き土星は天津神にして
030金星即ち国津神なり
031上に立つ土星の光は光り薄し
032月の光に遮られにつつ
033下に照る金星の光はいと強し
034月の御舟の光支へて
035葦原の国土に天降りし天津神の
036心をただす時は近めり
037朝香比女神の神言よ月と星の
038今宵の状を言解き給はれ』
039 朝香比女の神は御歌もて詠ませ給ふ。
040『天津神の言霊濁り水火濁り
041光の褪せし土星なりけり
042国津神の中より光り現はれて
043世を守るてふ金星の光よ
044月舟の清き光は葦原比女の
045神の御魂の光りなるぞや
046此処にます天津神等心せよ
047朝な夕なに神を斎きて
048天津神は神を認めず国津神は
049真言の神を斎きまつれる
050千早振る神は光に在しませば
052神を背にし信仰の道欠くならば
053神魂の光り次ぎ次ぎに失せむ』
054 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。
055『有難し光の神の神宣を
057二十年を曲津の神に艱みしも
058神に離れし報いなりける
059主の宮居に仕ふる天津神等は
060心を清め魂を磨けよ
061主の神は天津御空に奇なる
062兆を見せて警め給ふも』
063 真以比古の神は驚きて御歌詠ませ給ふ。
064『知らず識らず心傲りて主の神に
065仕ふる道を怠りにけり
066朝香比女神の神言の御教に
068国津神の艱みを思ひて朝夕に
069主の大神に祈りまつらむ
070葦原比女神の御魂は御空行く
071月の光と輝き給へる
072かくの如輝き給ふ葦原比女の
073神とは知らず過ぎにけらしな
074光薄き土星の魂を持ちながら
075月の光の上にのぼりつ
076貴身小身の道を乱しし報いかも
077今まで曲津の猛びたりしは
078葦原の国土の守りの吾にして
079御樋代司をうとみけるかも
080御樋代神よ許させ給へ今日よりは
081真言をもちて仕へまつらむ』
082 御樋代神は御歌もて答へ給ふ。
083『汝こそは真言をもちて大前に
085曲津見に清き御魂を曇らされ
086土星の如く薄らぎて居り
087とにかくに土星の光出づるまで
088地に降りて世に尽せかし
089金星は国津神等の仰ぎつる
090野槌の彦の御魂なりける
091今日よりは野槌彦をば天津神の
092列に加へて司と為さむ
093真以比古其他の神々悉く
094地に降りて魂を清めよ
095野槌彦は今日より其の名を改めて
096野槌の神と仕へまつれよ』
098『国津神賤しき吾は如何にして
099国土の宮居に仕へ得べきや
100如何に吾金星の光保つとも
101一柱もて仕へむ術なし』
102 葦原比女の神はこれに答へて、103御歌詠ませ給ふ。
104『天津神の野槌の神よわが宣れる
105言霊謹み国土に仕へよ
106国津神の清き正しき魂選りて
107天津神業を言依さすべし
108葦原の国土のことごとまぎ求め
109清き御魂を選びて用ひむ』
110 朝香比女の神は、111葦原比女の神の大英断に感じて御歌詠ませ給ふ。
112『葦原比女神の神言の雄々しさよ
113天と地とを立替へ給ひぬ
114光なくば黒雲包む葦原は
115黒白も分かぬ闇の世なるよ
116常世ゆく万の災群起きるも
118御樋代神の上に輝く神々の
119土星の御魂を浄めさせ給へ
120今すぐに金星の如光らねど
121倦まずば遂に御楯とならむ
122久方の空に奇瑞の現はれしは
123我国土生かさむ御神慮なりける』
124 成山比古の神は驚きて御歌詠ませ給ふ。
125『桜ケ丘の宮居に二十年仕へ来て
126わが魂線は世を濁らせる
127今となりうら恥づかしく思ふかな
128御空に魂の性現はれつ
129御樋代の神の言葉を畏みて
130吾今日よりは地に降らむ
131国津神の列に加はり斎鋤を
132持ちて田畑を耕し生きむ
133葦原の国土に涌き立ちし黒雲も
134吾等が為めと思へば恐ろし
135天地の神の御恵深くして
136わが過を許させ給ひぬ』
137 霊生比古の神は御歌詠ませ給ふ。
138『吾も亦土星の魂となり果てて
140これよりは土星の性にふさはしき
141地に降りて田畑を拓かむ
142地の性持てる賤しき魂線の
143如何で御空に光るべしやは
144今迄は真言の天津神なりと
145心傲りつつ年を経にけり
146わが魂の曇りは土星と現はれて
147忍ケ丘の地に墜ちける
148御樋代の神の言葉は主の神の
149御水火なりせば背かむ由なし
150国津神の照れる御魂を引き上げて
151豊葦原の国土守りませ
152御供に仕へまつるも畏しと
153思へばわが身戦き止まずも
154久方の天津空より荒金の
155地に降りし今宵の吾かも
156知らず識らず御魂曇りて天津神の
157位置は地上にうつらひにけり』
158 栄春比女の神は御歌詠ませ給ふ。
159『栄春比女神と仕へて朝夕に
160御樋代神の御魂汚せし
161主の神の尊き御前を知らず識らず
162礼なく仕へしわが罪恐ろし
163鷹巣山に雲わき立ちて葦原の
164この稚国土は風荒びたり
165野槌比古神の清しき魂線は
166御樋代神の司となりませり
167今日よりは野槌の神の御光の
168隈なく照らむ葦原の国土に
169曇り果て乱れ果てたる国原を
170救ふは野槌の神の功よ』
171 八栄比女の神は御歌詠ませ給ふ。
172『東の国土の果てなる桜ケ丘に
173仕へし吾の終りは来にけり
174おほけなくも女神の身ながら宮居の辺に
175仕へまつりし事を悔ゆるも
176今となりて何を歎かむ村肝の
177心の曇りの報いなりせば
178朝夕に神の供前に太祝詞
179吾怠りつ今に及べり
180主の神の御水火になりし葦原比女の
181神さげしみし罪を恐るる
182吾なくば葦原の国土は治まらじと
184愛善の神は今までわが罪を
185許させ給ひし事のかしこさ
186畏しと宣る言の葉も口籠り
187わが胸の火は燃え盛るなり
188今宵限り天津神なる位置を捨てて
189野に降りつつ田畑を拓かむ』
190 朝香比女の神は又もや御歌詠ませ給ふ。
191『天の時地の時到りて葦原の
192国土の光は現はれにけり
193葦原の国土の標章と今日よりは
194⦿の玉の旗を翻しませ
195⦿の玉を並べ足らはし十と為し
196真言の国土の標章と定めよ』
197 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。
198『有難し国土の始めの旗標まで
199賜ひし公の功は貴し
200万世に吾は伝へてこの旗を
201国土の生命と祀らせまつらむ
202天津神の野槌の神は国の柱
203定めて吾に奉れかし』
204 野槌比古の神は御歌詠ませ給ふ。
205『有難し葦原比女の神宣
206吾選ぶべし四柱の神を
207天津神の列に加はる神柱は
208高照清晴彦を選ばむ』
209 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。
210『高彦を高比古の神照彦を
211照比古の神と名を改めよ
212清彦は清比古の神晴彦は
213晴比古の神と名乗り仕へよ』
214 野槌比古の神は感謝しながら御歌詠ませ給ふ。
215『有難し天津神の位置に選まれし
216吾等五柱は身をもて仕へむ
217今宵すぐに駿馬使を馳せにつつ
218四柱神を招き仕へむ』
219 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。
220『一時も早く此の場に招き寄せて
221この葦原の神柱たてよ』
222 かくして、223四柱の神は小夜更くる頃、224駿馬に鞭うたせつつ、225此処に集り来り、226葦原比女の神の宣示のもとに、227かしこまり天津神の列に加はり給ひぬ。
228 夜は森々と更け渡り、229暁近く百鳥の声は爽かに響き、230春野を渡る風は、231かむばしき梅ケ香を送り田鶴は九皐に瑞祥をうたひ、232鵲は常磐の松の梢に黎明を告げて寿ぐが如し。
233 ああ惟神恩頼ぞ畏けれ。
234(昭和八・一二・二二 旧一一・六 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)