第一章 常世城門〔四三一〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
篇:第1篇 千軍万馬
よみ(新仮名遣い):せんぐんばんば
章:第1章 常世城門
よみ(新仮名遣い):とこよじょうもん
通し章番号:431
口述日:1922(大正11)年02月19日(旧01月23日)
口述場所:
筆録者:加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年8月20日
概要:
舞台:常世城
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:ロッキー山のふもとの常世城では、大自在天・大国彦が自ら常世神王と称していた。大国彦はまた、自ら日の出神に化け、妻を伊邪那美命と偽って、世を欺いていた。
鷹取別を宰相とし、広国別を常世神王の影武者として、体主霊従の政策を行わせていた。
鷹取別の部下・照山彦、竹山彦(=実は鬼武彦の化身)は、間の国で捕らえた松・竹・梅の宣伝使を護送して常世城にやって来た。そして門番に開門を要求し、自らの手柄を常世神王に奏上せんとした。
門番の蟹彦は、常世神王の指図がなければ門は開けられぬ、しばらく待て、と照山彦・竹山彦一行をさえぎった。竹山彦は通せと蟹彦をしかりつけるが、蟹彦は常世城門番の職掌を楯に、通さない。
蟹彦は松代姫の駕籠を除いて、姫の美貌にしりもちをつき、すっかり肝を奪われてしまった。そして同僚の赤熊に、ちょっとのぞいて見よ、と誘いかける。
剛直無比の赤熊は、蟹彦の体を見てしかりつけた。蟹彦は、この天女の美しさが分からぬ奴は枯木か岩石だ、と逆に赤熊をなじる。
二人がやりあっているところへ、門内から常世神王の入城許可が下りたと報せの声がした。照山彦、竹山彦は松・竹・梅の宣伝使を護送して場内に入っていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2020-07-16 13:56:40
OBC :rm1001
愛善世界社版:13頁
八幡書店版:第2輯 395頁
修補版:
校定版:17頁
普及版:6頁
初版:
ページ備考:
001東と西の荒海の 002浪に漂ふ常世国
004吹く木枯に烏羽玉の
005暗にも擬ふ曲神が 006暗き心を押し隠し
007白地に葵の紋所
010この世を欺く神柱
011太しく立てむと種々に 012心を砕き身を藻掻き
014勝鬨あげて一つ島
015浪高砂の島の面
017豊葦原の瑞穂国 018醜の剣を抜き持ちて
019常世の国の神力を
021夫の命を日の出神に擬へて 022大国姫は伊弉冊の
024心も驕る鷹取別を
025暫し止めて常世神王が宰相となし 026体主霊従の政策を
028天下を偽る常世神王とこそ称へけり。
029 ロッキーの峰分け昇る天津日に、030丸い頭も照山彦や、031竹山彦は勇ましく、032松、033竹、034梅の宣伝使、035輿に舁がせ数多の供人引き連れて、036勝誇りたる手柄顔、037肩を怒らし帰り来る。
038 常世城の表門に現はれ出でたる二人の上使は、039声を張り上げ、
040照山彦、竹山彦『ヤアヤア門番。041照山彦、042竹山彦が帰城。043一時も早くこの大門を開けよ』
044 折から荒ぶ木枯の風。045門番の蟹彦、046赤熊の両人は、
048と答へて表門をサラリと開けば、049長途の旅に疲れ果てたる照山彦、050竹山彦も功名心に煽られて、051馬上裕に門番を睥睨し、
052照山彦、竹山彦『ヤア蟹彦、053赤熊の両人、054一時も早く常世神王に、055吾等が手柄を奏聞せよ』
056と云ひ捨て中門に進み入る。057蟹彦はその名の如く横歩きをしながら大股に中門さして走り来り、
058蟹彦『これはこれは照山彦、059竹山彦の御両所様、060暫くお待ち下さいませ。061常世神王に奏上した上、062お指図に任せ下さいますやう』
063竹山彦『エイ、064何を愚図々々、065横さの道を歩むに妙を得たる蟹彦の門番、066何彼につけて邪魔をひろぐか、067平家蟹のやうな六かしさうなその面は、068泣いて居るのか怒つて居るのか恥かしいのか恐いのか、069但は酒に酔つたのか、070顔の色まで赤熊の、071赤門守る腰抜け門番、072絶世の美人、073松、074竹、075梅の天女の降臨、076常世神王に伺ふも何もあつたものか、077早くこの門を開けよ』
078と馬上ながら叱りつけたり。079赤熊はきつとなり、
080赤熊『ヤア竹山彦様、081それはあまり傍若無人と申すもの。082吾等は卑しき門番と雖も、083城内の規則を厳守致す大切の役目、084たとへ天女の降臨にもせよ、085城主常世神王の許しもなく、086漫りにこの中門を開くこと罷りならぬ』
087と渋々顔。088蟹彦はその間に松代姫の輿を一寸覗いて、089大地にどつかと尻餅をつき、
090蟹彦『ヤアヤアヤア、091ヒヽヽヽ光るぞ光るぞ、092光の強い、093ダイヤモンドか、094天に輝く日輪か、095牡丹の花か、096菫か、097菖蒲か、098黒白も分かぬ常世の国に、099こんな女神があらうとは、100思ひがけない蟹彦の、101泡吹き廻つてヘタばつた。102ヤイヤイ、103赤熊の大将、104黒熊のやうな黒い顔を、105真赤に致して怒るより、106一寸この輿覗いて見よ。107白いと言はうか、108清しと言はうか、109春の弥生の梅か桜か、110桃の花か、111鼻筋通つて口許締り、112紅の唇、113月の眉毛、114清しい眼玉は三五の月か、115髪は烏の濡羽色、116いろいろ女もある世の中に、117情婦を持つなら、118まア、119まア、120まア……』
121 剛直律儀の赤熊は、122蟹彦のこの体を見て苦笑ひ、
123赤熊『常世城の鉄門を守る役目仰せつけられながら、124汝の醜態は何の態、125確り致せよ』
126蟹彦『オイオイ赤熊、127さう赤くなつて怒るものぢやない。128この蟹面の六かしき蟹彦の顔の紐でもサラリと解いた天女の姿、129堅いばかりが能ではないぞ。130貴様は常から枯木の如く、131岩石の如く、132味もなければ色もない、133冷酷無残の人足だ。134一寸お顔を拝んで見よ、135貴様の心の枯木にも春の花が開くであらう。136それにつけても、137貴様の鼻は、138一入黒い鼻高野郎、139それに不思議や、140今日この頃は鼻柱がまつ赤いけ、141鼻息荒い表現であらうか、142朝瓜、143鴨瓜、144南瓜のやうな妙な面して、145茄子のやうにお色の黒い色男、146高い鼻をば眺めて見れば、147瓜や茄子の顔に似合はず、148鼻赤いな』
149 赤熊は声を荒らげ、
150赤熊『千騎一騎のこの場合、151何を吐す』
152と睨め付け居る。153忽ち門内より声あつて、
154声『照山彦殿、155竹山彦殿、156常世神王の御機嫌最も麗しく、157首を伸ばして待たせたまふ。158早くお入りあれ』
159 言下に中門サラリと開けたれば照山彦は、
160照山彦『ヤアヤア皆の者共、161遠路の処御苦労なりしよ。162各部屋に立ち帰り緩りと休息せよ、163ヤア竹山彦殿、164続かせられい』
165と先に立ち、166輿を舁がせ、167奥殿深く進み入る。
168(大正一一・二・一九 旧一・二三 加藤明子録)