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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
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第78巻(巳の巻)
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第10巻(酉の巻)
序歌
凡例
総説歌
信天翁(一)
第1篇 千軍万馬
01 常世城門
〔431〕
02 天地暗澹
〔432〕
03 赤玉出現
〔433〕
04 鬼鼻団子
〔434〕
05 狐々怪々
〔435〕
06 額の裏
〔436〕
07 思はぬ光栄
〔437〕
08 善悪不可解
〔438〕
09 尻藍
〔439〕
10 注目国
〔440〕
11 狐火
〔441〕
12 山上瞰下
〔442〕
13 蟹の将軍
〔443〕
14 松風の音
〔444〕
15 言霊別
〔445〕
16 固門開
〔446〕
17 乱れ髪
〔447〕
18 常世馬場
〔448〕
19 替玉
〔449〕
20 還軍
〔450〕
21 桃の実
〔451〕
22 混々怪々
〔452〕
23 神の慈愛
〔453〕
24 言向和
〔454〕
25 木花開
〔455〕
26 貴の御児
〔456〕
第2篇 禊身の段
27 言霊解一
〔457〕
28 言霊解二
〔458〕
29 言霊解三
〔459〕
30 言霊解四
〔460〕
31 言霊解五
〔461〕
第3篇 邪神征服
32 土竜
〔462〕
33 鰤公
〔463〕
34 唐櫃
〔464〕
35 アルタイ窟
〔465〕
36 意想外
〔466〕
37 祝宴
〔467〕
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(三)
余白歌
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第10巻
> 第1篇 千軍万馬 > 第21章 桃の実
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第二一章
桃
(
もも
)
の
実
(
み
)
〔四五一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
篇:
第1篇 千軍万馬
よみ(新仮名遣い):
せんぐんばんば
章:
第21章 桃の実
よみ(新仮名遣い):
もものみ
通し章番号:
451
口述日:
1922(大正11)年02月25日(旧01月29日)
口述場所:
筆録者:
東尾吉雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年8月20日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一方本物の日の出神は、神伊弉諾神の命を奉じ、三軍を率いて黄泉島に進んだ。大自在天・大国彦の軍勢は多くの魔神・魔軍を布陣したが、神軍の前には魔力を発揮することはできなかった。
しかし魔軍の将・美山別らの反撃に、神軍の形成はにわかに不利になった。このとき松代姫、竹野姫、梅ケ香姫の三姉妹の宣伝使は、月・雪・花の三姉妹を従えて、宣伝歌を歌いながら敵の陣中に向かって舞い踊った。
魔軍は女神たちの美しさに心魂を奪われ、武器を地に捨てて見とれていた。魔軍は闘う力を失って、ただ平伏するのみであった。
この三姉妹のはたらきに対し、神伊弉諾命の声が中空から語りかけ、意富加牟豆美神(おほかむづみのかみ)と名を与えた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-06-10 19:20:27
OBC :
rm1021
愛善世界社版:
161頁
八幡書店版:
第2輯 449頁
修補版:
校定版:
168頁
普及版:
75頁
初版:
ページ備考:
001
茲
(
ここ
)
に
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は、
002
神
(
かむ
)
伊邪那諾
(
いざなぎの
)
神
(
かみ
)
の
神勅
(
しんちよく
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
003
三軍
(
さんぐん
)
に
将
(
しやう
)
として
黄泉島
(
よもつじま
)
に
向
(
むか
)
つて
花々
(
はなばな
)
しく
進軍
(
しんぐん
)
せり。
004
石拆神
(
いはさくのかみ
)
、
005
根拆神
(
ねさくのかみ
)
、
006
石筒
(
いはつつ
)
之
(
の
)
男
(
をの
)
神
(
かみ
)
をして
先陣
(
せんぢん
)
を
宰
(
つかさど
)
らしめ、
007
甕速日
(
みかはやび
)
神
(
のかみ
)
、
008
樋速日
(
ひはやびの
)
神
(
かみ
)
、
009
建布都
(
たけふつの
)
神
(
かみ
)
をして
本隊
(
ほんたい
)
の
部将
(
ぶしやう
)
とし、
010
後陣
(
こうぢん
)
には
闇淤加美
(
くらおかみの
)
神
(
かみ
)
、
011
闇御津羽
(
くらみつはの
)
神
(
かみ
)
を
部将
(
ぶしやう
)
とし、
012
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
として
黄泉島
(
よもつじま
)
の
比良坂
(
ひらさか
)
に
向
(
むか
)
つて
進軍
(
しんぐん
)
せしめ、
013
左翼
(
さよく
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
には
正鹿
(
まさか
)
山津見
(
やまづみの
)
神
(
かみ
)
、
014
駒山彦
(
こまやまひこ
)
[
※
駒山彦は第9巻第16章で羽山津見神と改名しているため、遊軍に羽山津見神の名があるのは矛盾している。誤記か?
]
、
015
右翼
(
うよく
)
には
奥山津見
(
おくやまづみの
)
神
(
かみ
)
、
016
志芸山
(
しぎやま
)
津見
(
づみの
)
神
(
かみ
)
を
部将
(
ぶしやう
)
とし、
017
遊軍
(
いうぐん
)
として
闇山津見
(
くらやまづみの
)
神
(
かみ
)
、
018
羽山津見
(
はやまづみの
)
神
(
かみ
)
、
019
原山津見
(
はらやまづみの
)
神
(
かみ
)
、
020
戸山津見
(
とやまづみの
)
神
(
かみ
)
の
十六
(
じふろく
)
神将
(
しんしやう
)
をして
鶴翼
(
かくよく
)
の
陣
(
ぢん
)
を
張
(
は
)
り、
021
魚鱗
(
ぎよりん
)
の
備
(
そな
)
へ
勇
(
いさ
)
ましく、
022
天
(
あま
)
の
鳥船
(
とりふね
)
、
023
岩樟船
(
いはくすぶね
)
に
乗
(
の
)
せて
雲霞
(
うんか
)
の
如
(
ごと
)
き
大軍
(
たいぐん
)
を
送
(
おく
)
り、
024
天地
(
てんち
)
も
震動
(
ゆる
)
ぐばかりの
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
せしめたり。
025
茲
(
ここ
)
に
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
のロッキー
城
(
じやう
)
に
現
(
あら
)
はれたる
大国彦
(
おほくにひこ
)
は、
026
自
(
みづか
)
ら
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
偽称
(
ぎしよう
)
し、
027
美山別
(
みやまわけ
)
をして、
028
大雷
(
おほいかづち
)
、
029
黒雷
(
くろいかづち
)
、
030
火雷
(
ほのいかづち
)
、
031
拆雷
(
さくいかづち
)
の
勇将
(
ゆうしやう
)
を
遣
(
つか
)
はし、
032
数多
(
あまた
)
の
魔軍
(
まぐん
)
を
指揮
(
しき
)
せしめ、
033
照山彦
(
てるやまひこ
)
は
伏雷
(
ふしいかづち
)
、
034
土雷
(
つちいかづち
)
の
部将
(
ぶしやう
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
左翼
(
さよく
)
となり、
035
竹島彦
(
たけしまひこ
)
は
鳴雷
(
なるいかづち
)
、
036
若雷
(
わかいかづち
)
の
部将
(
ぶしやう
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
右翼
(
うよく
)
となり、
037
国玉姫
(
くにたまひめ
)
、
038
田糸姫
(
たいとひめ
)
、
039
杵築姫
(
きつきひめ
)
をして
醜女
(
しこめ
)
探女
(
さぐめ
)
を
引率
(
いんそつ
)
せしめ、
040
爆弾
(
ばくだん
)
、
041
弓矢
(
ゆみや
)
、
042
槍
(
やり
)
、
043
剣
(
つるぎ
)
などの
兇器
(
きようき
)
を
以
(
もつ
)
て
山上
(
さんじやう
)
に
攻
(
せ
)
め
登
(
のぼ
)
り、
044
一挙
(
いつきよ
)
に
黄泉島
(
よもつじま
)
を
占領
(
せんりやう
)
せむと
猛虎
(
まうこ
)
の
勢
(
いきほひ
)
凄
(
すさま
)
じく
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
る。
045
天
(
てん
)
震
(
ふる
)
ひ
地
(
ち
)
動
(
ゆる
)
ぎ、
046
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
激戦
(
げきせん
)
は
茲
(
ここ
)
に
開始
(
かいし
)
されける。
047
桃
(
もも
)
の
実
(
み
)
に
擬
(
なぞら
)
へたる
国玉姫
(
くにたまひめ
)
、
048
田糸姫
(
たいとひめ
)
、
049
杵築姫
(
きつきひめ
)
の
婉麗
(
ゑんれい
)
並
(
なら
)
びなき
姿
(
すがた
)
も、
050
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじゆう
)
の
神軍
(
しんぐん
)
に
対
(
たい
)
しては、
051
その
魔力
(
まりよく
)
を
発揮
(
はつき
)
するの
術
(
すべ
)
更
(
さら
)
になかりけり。
052
中空
(
ちうくう
)
よりは、
053
神軍
(
しんぐん
)
として
月照彦
(
つきてるひこの
)
神
(
かみ
)
、
054
足真彦
(
だるまひこの
)
神
(
かみ
)
、
055
少彦名
(
すくなひこなの
)
神
(
かみ
)
、
056
弘子彦
(
ひろやすひこの
)
神
(
かみ
)
、
057
雄姿
(
ゆうし
)
を
現
(
あら
)
はし
神軍
(
しんぐん
)
を
指揮
(
しき
)
しつつあり。
058
美山別
(
みやまわけ
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
は、
059
この
神軍
(
しんぐん
)
の
応援
(
おうゑん
)
に
進
(
すす
)
み
兼
(
か
)
ね、
060
稍
(
やや
)
躊躇
(
ちうちよ
)
の
色
(
いろ
)
ありしが、
061
中空
(
ちうくう
)
より
聞
(
きこ
)
ゆる
森厳
(
しんげん
)
なる
言霊
(
ことたま
)
の
響
(
ひびき
)
に、
062
頭
(
あたま
)
は
痛
(
いた
)
み
胸
(
むね
)
は
裂
(
さ
)
けむばかり
苦
(
くる
)
しみ
悶
(
もだ
)
えて、
063
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
坂
(
さか
)
の
上
(
うへ
)
より
退却
(
たいきやく
)
を
始
(
はじ
)
めたれば、
064
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
率
(
ひき
)
ゆる
神軍
(
しんぐん
)
は、
065
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
比良坂
(
ひらさか
)
を
下
(
くだ
)
りて、
066
美山別
(
みやまわけ
)
の
魔軍
(
まぐん
)
を
追跡
(
つゐせき
)
すること
益々
(
ますます
)
急
(
きふ
)
なり。
067
美山別
(
みやまわけ
)
の
一隊
(
いつたい
)
は、
068
八種
(
やくさ
)
の
雷神
(
いかづちがみ
)
に
数万
(
すうまん
)
の
魔軍
(
まぐん
)
を
添
(
そ
)
へて
生命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りに
盛
(
も
)
り
返
(
かへ
)
し
来
(
きた
)
るを、
069
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
左翼
(
さよく
)
部隊
(
ぶたい
)
なる
正鹿山津見
(
まさかやまづみ
)
、
070
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
一隊
(
いつたい
)
を
割
(
さ
)
いて、
071
迂廻
(
うくわい
)
して
魔軍
(
まぐん
)
の
背面
(
うしろ
)
に
向
(
むか
)
はしめたるに、
072
魔軍
(
まぐん
)
は
不意
(
ふい
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
再
(
ふたた
)
び
胆
(
きも
)
を
抜
(
ぬ
)
かれ、
073
萎縮
(
ゐしゆく
)
して
思
(
おも
)
はず
大地
(
だいち
)
に
俯伏
(
ふふく
)
する。
074
月照彦
(
つきてるひこ
)
、
075
足真彦
(
だるまひこ
)
らの
神軍
(
しんぐん
)
の
活動
(
くわつどう
)
を
称
(
しよう
)
して
蒲子
(
ゑびかづらのみ
)
生
(
な
)
りきと
云
(
い
)
ひ、
076
駒山彦
(
こまやまひこ
)
、
077
正鹿山津見
(
まさかやまづみ
)
の
一隊
(
いつたい
)
の
活動
(
くわつどう
)
を
称
(
しよう
)
して、
078
湯津津間
(
ゆづつま
)
櫛
(
ぐし
)
を
引闕
(
ひきか
)
きて
投棄
(
なげう
)
て
給
(
たま
)
へば
乃
(
すなは
)
ち
笋
(
たかむら
)
生
(
な
)
りきと
云
(
い
)
ふなり。
079
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は、
080
軽々
(
かるがる
)
しく
進
(
すす
)
み
敵
(
てき
)
の
術中
(
じゆつちう
)
に
陥
(
おちい
)
らむ
事
(
こと
)
を
恐
(
おそ
)
れ、
081
此
(
こ
)
の
機
(
き
)
に
乗
(
じやう
)
じて
元
(
もと
)
の
本陣
(
ほんじん
)
に
大部隊
(
だいぶたい
)
の
神軍
(
しんぐん
)
を
還
(
かへ
)
し、
082
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
高唱
(
かうしやう
)
して、
083
敵
(
てき
)
の
襲撃
(
しふげき
)
に
備
(
そな
)
へつつありき。
084
美山別
(
みやまわけ
)
の
一隊
(
いつたい
)
は、
085
ここを
先途
(
せんど
)
と
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
し、
086
魔軍
(
まぐん
)
の
力
(
ちから
)
を
集中
(
しふちう
)
し、
087
一団
(
いちだん
)
となつて
驀地
(
まつしぐら
)
に
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る。
088
一進
(
いつしん
)
一退
(
いつたい
)
、
089
容易
(
ようい
)
に
勝負
(
しようぶ
)
も
見
(
み
)
えざりける。
090
美山別
(
みやまわけ
)
は
勝
(
かち
)
に
乗
(
じやう
)
じ、
091
あらゆる
精巧
(
せいかう
)
なる
武器
(
ぶき
)
を
以
(
もつ
)
て
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
るを、
092
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
神軍
(
しんぐん
)
は、
093
各自
(
おのおの
)
両刃
(
もろは
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
携
(
たづさ
)
へをれども、
094
素
(
もと
)
より
折伏
(
しやくふく
)
の
剣
(
つるぎ
)
にあらず、
095
摂取
(
せつしゆ
)
不捨
(
ふしや
)
の
利剣
(
りけん
)
なれば、
096
敵
(
てき
)
の
鋒鋩
(
ほうばう
)
に
対
(
たい
)
しても
容易
(
ようい
)
にこれを
用
(
もち
)
ゐず、
097
ただ
至誠
(
しせい
)
至実
(
しじつ
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
応用
(
おうよう
)
して、
098
これに
対抗
(
たいかう
)
するのみ。
099
されども
人
(
ひと
)
盛
(
さかん
)
なれば
天
(
てん
)
に
勝
(
か
)
ち、
100
悪
(
あく
)
は
善
(
ぜん
)
を
虐
(
しひた
)
げ、
101
暴
(
ばう
)
は
柔
(
じう
)
を
苦
(
くる
)
しめ、
102
時
(
とき
)
ならずして
神軍
(
しんぐん
)
の
形勢
(
けいせい
)
は
益々
(
ますます
)
悲境
(
ひきやう
)
に
陥
(
おちい
)
りぬ。
103
この
時
(
とき
)
桃上彦
(
ももがみひこ
)
の
娘
(
むすめ
)
、
104
松代姫
(
まつよひめ
)
、
105
竹野姫
(
たけのひめ
)
、
106
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
は
月
(
つき
)
、
107
雪
(
ゆき
)
、
108
花
(
はな
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女将
(
めがみ
)
を
従
(
したが
)
へ、
109
数多
(
あまた
)
の
美
(
うつく
)
しき
女人
(
によにん
)
を
率
(
ひき
)
ゐて、
110
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら、
111
敵
(
てき
)
の
陣中
(
ぢんちう
)
を
目
(
め
)
がけて
長袖
(
ちやうしう
)
淑
(
しとやか
)
に
踊
(
をど
)
り
舞
(
ま
)
ひ
狂
(
くる
)
ふにぞ、
112
遉
(
さすが
)
の
魔軍
(
まぐん
)
も、
113
容色
(
ようしよく
)
端麗
(
たんれい
)
にして
天女
(
てんによ
)
の
如
(
ごと
)
き
清楚
(
せいそ
)
なる
姿
(
すがた
)
に
眼
(
まなこ
)
眩
(
くら
)
み、
114
魂
(
こん
)
奪
(
うば
)
はれ、
115
呆然
(
ばうぜん
)
として
各
(
おのおの
)
武器
(
ぶき
)
を
地
(
ち
)
に
投
(
な
)
げ
見
(
み
)
つめ
居
(
ゐ
)
る。
116
松
(
まつ
)
、
117
竹
(
たけ
)
、
118
梅
(
うめ
)
、
119
月
(
つき
)
、
120
雪
(
ゆき
)
、
121
花
(
はな
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
122
魔軍
(
まぐん
)
の
陣中
(
ぢんちう
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
飛
(
と
)
び
廻
(
まは
)
り、
123
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
へば、
124
魔軍
(
まぐん
)
の
将
(
しやう
)
美山別
(
みやまわけ
)
を
始
(
はじ
)
めとし、
125
八種
(
やくさ
)
の
雷神
(
いかづちがみ
)
に
至
(
いた
)
るまで、
126
女神
(
めがみ
)
の
姿
(
すがた
)
に
恍惚
(
くわうこつ
)
として
戦
(
たたか
)
ひの
場
(
には
)
にある
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
るるに
至
(
いた
)
りぬ。
127
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
に
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は、
128
諸将
(
しよしやう
)
を
引率
(
いんそつ
)
して
黄泉
(
よもつ
)
比良坂
(
ひらさか
)
の
坂
(
さか
)
の
上
(
うへ
)
に
退却
(
たいきやく
)
し、
129
ここに
一
(
いち
)
時
(
じ
)
休養
(
きうやう
)
せり。
130
魔軍
(
まぐん
)
は
何
(
いづ
)
れも
戦
(
たたか
)
ふの
力
(
ちから
)
なく
平伏
(
へいふく
)
するを、
131
松
(
まつ
)
、
132
竹
(
たけ
)
、
133
梅
(
うめ
)
以下
(
いか
)
の
女神
(
めがみ
)
は、
134
悠々
(
いういう
)
として
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
屯
(
たむろ
)
せる
黄泉
(
よもつ
)
比良坂
(
ひらさか
)
の
坂
(
さか
)
の
上
(
うへ
)
に
還
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
り、
135
戦況
(
せんきやう
)
を
具
(
つぶ
)
さに
奏上
(
そうじやう
)
せり。
136
この
時
(
とき
)
空中
(
くうちう
)
に
声
(
こゑ
)
あり、
137
神伊邪那諾命
『
吾
(
われ
)
は
神
(
かむ
)
伊邪那諾
(
いざなぎの
)
命
(
みこと
)
、
138
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
をして
黄泉軍
(
よもついくさ
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
さしめたれども、
139
魔軍
(
まぐん
)
の
勢
(
いきほひ
)
強
(
つよ
)
くして
容易
(
ようい
)
にこれを
帰順
(
きじゆん
)
せしむ
可
(
べ
)
からず。
140
諸神
(
しよしん
)
将卒
(
しやうそつ
)
は
戦
(
たたか
)
ひに
労
(
つか
)
れ
艱
(
なや
)
みたる
折
(
をり
)
しも、
141
汝
(
なんぢ
)
松
(
まつ
)
、
142
竹
(
たけ
)
、
143
梅
(
うめ
)
の
桃
(
もも
)
の
実
(
み
)
現
(
あらは
)
れ
来
(
きた
)
りて
魔軍
(
まぐん
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
吾
(
わが
)
神軍
(
しんぐん
)
を
救
(
すく
)
ひたるは、
144
この
戦
(
たたか
)
ひに
於
(
お
)
ける
第一
(
だいいち
)
の
功名
(
こうみやう
)
なり。
145
これより
松
(
まつ
)
、
146
竹
(
たけ
)
、
147
梅
(
うめ
)
の
桃
(
もも
)
の
実
(
み
)
は、
148
吾
(
わが
)
軍
(
ぐん
)
を
助
(
たす
)
けたる
如
(
ごと
)
く、
149
世人
(
せじん
)
の
悪魔
(
あくま
)
に
悩
(
なや
)
まされ、
150
憂瀬
(
うきせ
)
に
落
(
お
)
ちて
苦
(
くる
)
しまむ
者
(
もの
)
あらば、
151
汝
(
なんぢ
)
が
言霊
(
ことたま
)
を
以
(
もつ
)
てこれを
救
(
すく
)
へよ。
152
汝
(
なんぢ
)
ら
三柱
(
みはしら
)
に
対
(
たい
)
して、
153
意富
(
おほ
)
加牟豆美
(
かむづみの
)
神
(
かみ
)
といふ
御名
(
みな
)
を
賜
(
たま
)
ふ』
154
と
宣
(
の
)
らせ
給
(
たま
)
ひぬ。
155
(
大正一一・二・二五
旧一・二九
東尾吉雄
録)
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