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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第10巻(酉の巻)
序歌
凡例
総説歌
信天翁(一)
第1篇 千軍万馬
01 常世城門
〔431〕
02 天地暗澹
〔432〕
03 赤玉出現
〔433〕
04 鬼鼻団子
〔434〕
05 狐々怪々
〔435〕
06 額の裏
〔436〕
07 思はぬ光栄
〔437〕
08 善悪不可解
〔438〕
09 尻藍
〔439〕
10 注目国
〔440〕
11 狐火
〔441〕
12 山上瞰下
〔442〕
13 蟹の将軍
〔443〕
14 松風の音
〔444〕
15 言霊別
〔445〕
16 固門開
〔446〕
17 乱れ髪
〔447〕
18 常世馬場
〔448〕
19 替玉
〔449〕
20 還軍
〔450〕
21 桃の実
〔451〕
22 混々怪々
〔452〕
23 神の慈愛
〔453〕
24 言向和
〔454〕
25 木花開
〔455〕
26 貴の御児
〔456〕
第2篇 禊身の段
27 言霊解一
〔457〕
28 言霊解二
〔458〕
29 言霊解三
〔459〕
30 言霊解四
〔460〕
31 言霊解五
〔461〕
第3篇 邪神征服
32 土竜
〔462〕
33 鰤公
〔463〕
34 唐櫃
〔464〕
35 アルタイ窟
〔465〕
36 意想外
〔466〕
37 祝宴
〔467〕
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(三)
余白歌
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第三六章
意想外
(
いさうぐわい
)
〔四六六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
篇:
第3篇 邪神征服
よみ(新仮名遣い):
じゃしんせいふく
章:
第36章 意想外
よみ(新仮名遣い):
いそうがい
通し章番号:
466
口述日:
1922(大正11)年02月27日(旧02月01日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年8月20日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
酋長夫婦をはじめ村人たちは、石凝姥神らを喜んで迎えた。しかし時公が大法螺を吹きだして、蛇掴をやっつけたのは自分だと、手柄話を始めだした。そして、蛇掴は降参したが、最後に人間の食い納めに、酋長一家を食べにくるのだ、と出鱈目を言い始めた。
酋長一家と村人たちはわっと泣き出すが、時公が冗談だ、というと村人たちは怒って時公に詰め寄った。
石凝姥神は宣伝歌で、昨晩の様子を村人たちに伝えた。石凝姥神の宣伝歌を聴いて、酋長もやっと安心した。そして宣伝使に感謝の意を表すために祝宴を開いた。
酋長の鉄彦は、宣伝使に感謝の歌を歌い、三五教への帰依を誓った。この後、鉄彦は梅ケ香姫の従者となって、アーメニヤに進んで行くことになる。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-07-16 02:24:49
OBC :
rm1036
愛善世界社版:
279頁
八幡書店版:
第2輯 492頁
修補版:
校定版:
286頁
普及版:
127頁
初版:
ページ備考:
001
アルタイ
山
(
さん
)
の
蛇掴
(
へびつかみ
)
002
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
003
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
004
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らされて
曲津見
(
まがつみ
)
は
005
御空
(
みそら
)
も
高
(
たか
)
く
駆
(
か
)
け
上
(
あが
)
り
006
西南
(
せいなん
)
指
(
さ
)
してアーメニヤ
007
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りし
008
後
(
あと
)
に
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
009
胸
(
むね
)
ドキドキと
時公
(
ときこう
)
の
010
供
(
とも
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ
帰
(
かへ
)
り
来
(
く
)
る
011
鉄谷村
(
かなたにむら
)
の
鉄彦
(
かなひこ
)
が
012
館
(
やかた
)
の
前
(
まへ
)
になりければ
013
今
(
いま
)
の
今
(
いま
)
まで
悄気返
(
しよげかへ
)
り
014
弱
(
よわ
)
り
入
(
い
)
つたる
時公
(
ときこう
)
は
015
肩
(
かた
)
を
怒
(
いか
)
らし
肘
(
ひぢ
)
を
張
(
は
)
り
016
俺
(
おれ
)
の
武勇
(
ぶゆう
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
017
鉄谷村
(
かなたにむら
)
の
人々
(
ひとびと
)
よ
018
昔
(
むかし
)
取
(
と
)
つたる
杵柄
(
きねづか
)
の
019
猪
(
しし
)
喰
(
く
)
た
犬
(
いぬ
)
の
時野川
(
ときのがは
)
020
時世
(
ときよ
)
時節
(
じせつ
)
で
是非
(
ぜひ
)
もなく
021
鉄彦
(
かなひこ
)
さまの
門番
(
もんばん
)
と
022
身
(
み
)
を
下
(
くだ
)
しては
居
(
ゐ
)
たけれど
023
愈
(
いよいよ
)
めぐる
時津風
(
ときつかぜ
)
024
吹
(
ふ
)
いて
吹
(
ふ
)
いて
吹
(
ふ
)
きまはし
025
流石
(
さすが
)
に
強
(
つよ
)
き
蛇掴
(
へびつかみ
)
026
片手
(
かたて
)
に
掴
(
つか
)
んでビシヤビシヤと
027
岩
(
いは
)
に
投付
(
なげつ
)
け
引
(
ひ
)
つ
千切
(
ちぎ
)
り
028
上
(
うへ
)
と
下
(
した
)
との
彼奴
(
きやつ
)
が
顎
(
あご
)
029
右
(
みぎ
)
と
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
を
掛
(
か
)
けて
030
ウンと
一声
(
ひとこゑ
)
きばつたら
031
鰻
(
うなぎ
)
を
断
(
た
)
つたその
如
(
ごと
)
く
032
左右
(
さいう
)
に
別
(
わか
)
れてメリメリメリ
033
時
(
とき
)
の
天下
(
てんか
)
に
従
(
したが
)
へと
034
言
(
い
)
ふ
諺
(
ことわざ
)
を
知
(
し
)
つてるか
035
サアサア
是
(
これ
)
から
時
(
とき
)
さまが
036
時
(
とき
)
の
天下
(
てんか
)
ぢや
殿
(
との
)
様
(
さま
)
ぢや
037
迚
(
とて
)
も
敵
(
かな
)
はぬ
鉄谷
(
かなたに
)
の
038
村
(
むら
)
の
頭
(
かしら
)
の
鉄彦
(
かなひこ
)
も
039
俺
(
おれ
)
に
叶
(
かな
)
はぬ
鉄姫
(
かなひめ
)
よ
040
必
(
かなら
)
ず
是
(
これ
)
から
此
(
この
)
方
(
はう
)
に
041
背
(
そむ
)
いちやならぬぞ
時野川
(
ときのがは
)
042
時
(
とき
)
の
天下
(
てんか
)
は
俺
(
おれ
)
がする
043
時
(
とき
)
の
代官
(
だいくわん
)
日
(
ひ
)
の
奉行
(
ぶぎやう
)
044
時
(
とき
)
にとつての
儲
(
まう
)
け
物
(
もの
)
045
モウ
是
(
これ
)
からはアルタイの
046
山
(
やま
)
の
魔神
(
まがみ
)
の
蛇掴
(
へびつかみ
)
047
此
(
この
)
時
(
とき
)
さまのある
限
(
かぎ
)
り
048
再
(
ふたた
)
び
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
例
(
ためし
)
ない
049
ためしもあらぬ
豪傑
(
がうけつ
)
の
050
此
(
この
)
腕前
(
うでまへ
)
をよつく
見
(
み
)
よ
051
御代
(
みよ
)
は
安
(
やす
)
らか
平
(
たひら
)
かに
052
時公
(
ときこう
)
さまが
治
(
をさ
)
め
行
(
ゆ
)
く
053
「ドツコイシヨウノドツコイシヨ」
054
「ウントコドツコイ、ドツコイシヨ」
055
「ヨイトコヨイトコ、ヨイトコサ」
056
「ヨイトサノ、ヨーイトサ」
057
と
手
(
て
)
を
振
(
ふ
)
り、
058
足
(
あし
)
を
六方
(
ろくぱう
)
に
踏
(
ふ
)
みながら、
059
饒舌
(
しやべ
)
り
散
(
ち
)
らし、
060
鉄彦
(
かなひこ
)
が
門口
(
かどぐち
)
ガラリと
開
(
あ
)
けて
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る。
061
村人
(
むらびと
)
は
今日
(
けふ
)
も
酋長
(
しうちやう
)
の
館
(
やかた
)
に
詰
(
つ
)
めかけて、
062
アルタイ
山
(
さん
)
の
様子
(
やうす
)
如何
(
いか
)
にと
待
(
まち
)
居
(
ゐ
)
たる
折柄
(
をりから
)
なれば、
063
此
(
この
)
法螺
(
ほら
)
を
聞
(
き
)
いて
半信
(
はんしん
)
半疑
(
はんぎ
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られ、
064
喜
(
よろこ
)
ぶ
者
(
もの
)
、
065
顔
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
める
者
(
もの
)
、
066
ポカンとする
者
(
もの
)
など
沢山
(
たくさん
)
に
現
(
あら
)
はれたる。
067
鉄彦
(
かなひこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
娘
(
むすめ
)
清姫
(
きよひめ
)
と
共
(
とも
)
に
慌
(
あわただ
)
しく
宣伝使
(
せんでんし
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
068
鉄彦
『ヤア、
069
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
070
様子
(
やうす
)
は
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
071
吾々
(
われわれ
)
始
(
はじ
)
め
一統
(
いつとう
)
の
者
(
もの
)
、
072
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
如何
(
いか
)
にと、
073
首
(
くび
)
を
長
(
なが
)
くし、
074
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へて
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ました。
075
はやく
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さいませ』
076
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
に
両手
(
りやうて
)
をついて
頼
(
たの
)
み
入
(
い
)
つた。
077
石凝姥
(
いしこりどめ
)
はニツコと
笑
(
わら
)
ひ、
078
石凝姥神
『ヤア、
079
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ、
080
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
も
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました』
081
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『ヤア、
082
これは
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
さま、
083
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたナ。
084
これと
申
(
まを
)
すも
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
が
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
通
(
つう
)
じたので
御座
(
ござ
)
いませう。
085
オー
時公
(
ときこう
)
、
086
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なん
)
だか
偉
(
えら
)
う
元気張
(
げんきば
)
つて
唄
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
たなア。
087
早
(
はや
)
く
様子
(
やうす
)
を
聴
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れよ』
088
時公
(
ときこう
)
『
只今
(
ただいま
)
の
時公
(
ときこう
)
は、
089
昨日
(
きのふ
)
迄
(
まで
)
の
時公
(
ときこう
)
とは、
090
ヘン
一寸
(
ちよつと
)
違
(
ちが
)
ひますよ。
091
其
(
その
)
積
(
つも
)
りで
聴
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ひませう。
092
何時
(
いつ
)
までも
人間
(
にんげん
)
は
金槌
(
かなづち
)
の
川流
(
かはなが
)
れ、
093
頭
(
あたま
)
が
上
(
あが
)
らぬといふ
理屈
(
りくつ
)
はない。
094
此
(
この
)
時公
(
ときこう
)
の
手柄話
(
てがらばなし
)
、
095
よつく
承
(
うけたま
)
はりなさい……オイオイ、
096
時野川
(
ときのがは
)
の
言霊
(
ことたま
)
をよつく
聞
(
き
)
けよ。
097
中々
(
なかなか
)
以
(
もつ
)
て
素適
(
すてき
)
滅法界
(
めつぽふかい
)
な……』
098
鉄彦
(
かなひこ
)
『オイ
時公
(
ときこう
)
、
099
前置
(
まへおき
)
は
好
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
にして、
100
早
(
はや
)
く
本当
(
ほんたう
)
のことを
言
(
い
)
はぬか』
101
時公
『ヤア、
102
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ました』
103
鉄彦
『エツ』
104
時公
『
折角
(
せつかく
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
清姫
(
きよひめ
)
様
(
さま
)
のお
身代
(
みがは
)
りになつてやらうとの
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
のお
志
(
こころざし
)
、
105
吾々
(
われわれ
)
始
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
は
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
感謝
(
かんしや
)
の
至
(
いた
)
りに
堪
(
た
)
へませぬ。
106
併
(
しか
)
しながら
蛇掴
(
へびつかみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
107
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
からやつて
来
(
き
)
て、
108
唐櫃
(
からびつ
)
の
廻
(
まは
)
りをフンフンと
嗅
(
か
)
ぎまはり「ヤア
此奴
(
こいつ
)
は
香
(
にほひ
)
が
違
(
ちが
)
ふ、
109
酸
(
す
)
いぞ
酸
(
す
)
いぞ、
110
酸
(
す
)
いも
甘
(
あま
)
いも
知
(
し
)
り
抜
(
ぬ
)
いた
此
(
この
)
蛇掴
(
へびつかみ
)
に、
111
身代
(
みがは
)
りを
立
(
た
)
てて
誤魔化
(
ごまくわ
)
さうとは
不都合
(
ふつがふ
)
千万
(
せんばん
)
な
鉄彦
(
かなひこ
)
奴
(
め
)
、
112
モウ
了簡
(
れうけん
)
ならぬ。
113
是
(
これ
)
から
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
出張
(
しゆつちやう
)
して、
114
鉄彦
(
かなひこ
)
親子
(
おやこ
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
115
村中
(
むらぢう
)
の
奴
(
やつ
)
を
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
区別
(
くべつ
)
なく
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
から
皆
(
みんな
)
喰
(
く
)
つて
了
(
しま
)
ふ」と
云
(
い
)
つて、
116
ドエライ
声
(
こゑ
)
で
呶鳴
(
どな
)
りよつた
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
の
凄
(
すさま
)
じさ。
117
何
(
なん
)
とも
彼
(
か
)
とも
云
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれぬ、
118
大抵
(
たいてい
)
の
者
(
もの
)
なら
皆
(
みんな
)
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かして、
119
到底
(
たうてい
)
この
時公
(
ときこう
)
の
様
(
やう
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
ることは
出来
(
でき
)
ないのですが、
120
そこは
流石
(
さすが
)
は
時公
(
ときこう
)
だ。
121
鬼
(
おに
)
をも
掴
(
つか
)
んで
喰
(
く
)
ふやうな
蛇掴
(
へびつかみ
)
の
前
(
まへ
)
に、
122
何
(
なん
)
の
怖
(
おそ
)
るる
色
(
いろ
)
もなく
悠然
(
いうぜん
)
として
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ひ「ヤイ、
123
蛇掴
(
へびつかみ
)
とやら、
124
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
申渡
(
まをしわた
)
す
仔細
(
しさい
)
がある。
125
貴様
(
きさま
)
は
蛇
(
へび
)
の
代
(
かは
)
りに
結構
(
けつこう
)
な
人間
(
にんげん
)
様
(
さま
)
を
喰
(
く
)
ふ
奴
(
やつ
)
だ。
126
モウ
是
(
これ
)
からは
人間
(
にんげん
)
を
喰
(
く
)
ふ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すと
了簡
(
れうけん
)
ならぬぞ」と
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて、
127
ポンと
擲
(
なぐ
)
る
積
(
つも
)
りぢやつたが、
128
擲
(
なぐ
)
るのだけは
止
(
や
)
めておいた。
129
「モウ
人間
(
にんげん
)
を
喰
(
く
)
ふ
事
(
こと
)
は
罷
(
まか
)
りならぬ」と
言
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
、
130
蛇掴
(
へびつかみ
)
の
奴
(
やつ
)
四
(
よ
)
つの
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
くしよつて「ヘイヘイ
時公
(
ときこう
)
さまの
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
には
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
131
モウ
是
(
これ
)
が
人間
(
にんげん
)
の
喰
(
くら
)
ひをさめ、
132
一人
(
ひとり
)
だけは
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい」と
頼
(
たの
)
みやがる。
133
そこで
此
(
この
)
方
(
はう
)
も「ヨシ
分
(
わか
)
つた、
134
割
(
わり
)
と
融通
(
ゆうづう
)
のきく
奴
(
やつ
)
だ。
135
サア
此処
(
ここ
)
へ
清姫
(
きよひめ
)
を
伴
(
つ
)
れて
来
(
き
)
た、
136
これを
喰
(
くら
)
つて
満足
(
たんのう
)
せよ」と
云
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
、
137
蛇掴
(
へびつかみ
)
の
奴
(
やつ
)
「
此奴
(
こいつ
)
は
酸
(
す
)
い
贋物
(
にせもの
)
だ、
138
本当
(
ほんたう
)
の
清姫
(
きよひめ
)
をよこせ」とほざきやがる。
139
「ヤアそれも
尤
(
もつと
)
もだ」と
云
(
い
)
つて
請合
(
うけあ
)
つて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのだ。
140
サア
清姫
(
きよひめ
)
さま、
141
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ながら
今晩
(
こんばん
)
ぜひ
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
にならねばなりませぬワイ』
142
鉄彦
『エヽ、
143
それは
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
ぢや。
144
主人
(
しゆじん
)
が
門番
(
もんばん
)
に
手
(
て
)
を
下
(
さ
)
げて
頼
(
たの
)
むのだから、
145
マ
一度
(
いちど
)
お
前
(
まへ
)
蛇掴
(
へびつかみ
)
に
会
(
あ
)
つて
談判
(
だんぱん
)
をして
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れまいか』
146
時公
『なかなか
以
(
もつ
)
て……
抜
(
ぬ
)
かりのない
時公
(
ときこう
)
は「オイ
蛇掴
(
へびつかみ
)
、
147
モウ
人間
(
にんげん
)
の
一
(
ひと
)
つイヤ
一人
(
ひとり
)
くらゐ
喰
(
く
)
つても
喰
(
く
)
はいでも、
148
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
ぢやないか、
149
モウ
是
(
これ
)
で
諦
(
あきら
)
めて
了
(
しま
)
へ」と
千言
(
せんげん
)
万語
(
ばんご
)
を
尽
(
つく
)
して
云
(
い
)
うて
聞
(
き
)
かした
処
(
ところ
)
「モウ
是
(
これ
)
が
喰
(
くら
)
ひをさめだから、
150
是非
(
ぜひ
)
喰
(
く
)
はして
貰
(
もら
)
ひたい。
151
蛇掴
(
へびつかみ
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
改心
(
かいしん
)
したから
喰
(
く
)
ひたくないが、
152
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
の
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
喰
(
く
)
ひたいと
申
(
まを
)
すに
依
(
よ
)
つて、
153
女子
(
をなご
)
の
代
(
かは
)
りに
時公
(
ときこう
)
を……ヤ
違
(
ちが
)
ふ
違
(
ちが
)
ふ……
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
代
(
かは
)
りに、
154
清姫
(
きよひめ
)
と
鉄彦
(
かなひこ
)
、
155
鉄姫
(
かなひめ
)
を
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
いから
一緒
(
いつしよ
)
に
喰
(
く
)
はして
呉
(
く
)
れ」と
云
(
い
)
ひよつたのだ。
156
ナア
鉄彦
(
かなひこ
)
さま、
157
貴方
(
あなた
)
は
此
(
この
)
村
(
むら
)
を
守
(
まも
)
る
御
(
おん
)
方
(
かた
)
、
158
今迄
(
いままで
)
は
吾々
(
われわれ
)
が
集
(
よ
)
つて
働
(
はたら
)
いて、
159
酋長
(
しうちやう
)
さまと
敬
(
うやま
)
つて
養
(
やしな
)
つて
上
(
あ
)
げたのだから、
160
今夜
(
こんや
)
は
其
(
その
)
勘定
(
かんぢやう
)
をなさるのだ。
161
たつた
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
命
(
いのち
)
を
棄
(
す
)
てて
此
(
この
)
村
(
むら
)
は
愚
(
おろ
)
か、
162
国中
(
くにぢう
)
の
者
(
もの
)
が
助
(
たす
)
かると
思
(
おも
)
へば
安
(
やす
)
い
生命
(
いのち
)
だ、
163
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
さま……』
164
鉄彦
(
かなひこ
)
、
165
鉄姫
(
かなひめ
)
、
166
清姫
(
きよひめ
)
は
一度
(
いちど
)
にワツと
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
す。
167
時公
(
ときこう
)
は、
168
時公
『ワツハヽヽヽ、
169
オツホヽヽヽ』
170
村
(
むら
)
の
者
(
もの
)
『オイ
時公
(
ときこう
)
、
171
何
(
なに
)
が
可笑
(
をか
)
しい。
172
貴様
(
きさま
)
不届
(
ふとど
)
きな
奴
(
やつ
)
だ。
173
こんな
悲
(
かな
)
しい
時
(
とき
)
に
可笑
(
をか
)
しいのか、
174
貴様
(
きさま
)
を
村中
(
むらぢう
)
集
(
よ
)
つてたかつて
成敗
(
せいばい
)
してやらう。
175
覚悟
(
かくご
)
せい』
176
時公
『ヤア、
177
騒
(
さわ
)
ぐな
騒
(
さわ
)
ぐな、
178
皆
(
みな
)
嘘
(
うそ
)
だ』
179
村の者
『
嘘
(
うそ
)
とは
何
(
なん
)
だ、
180
冗談
(
じやうだん
)
も
時
(
とき
)
に
依
(
よ
)
る』
181
時公
『ヤア
時公
(
ときこう
)
が
言
(
い
)
つたのぢやない、
182
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
云
(
い
)
つたのだよ。
183
みんな
嘘
(
うそ
)
だ
嘘
(
うそ
)
だ』
184
石凝姥
(
いしこりどめ
)
『アハヽヽヽヽ』
185
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『ホヽヽヽヽ』
186
石凝姥
(
いしこりどめ
)
は
声
(
こゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げて、
187
石凝姥神
『
山路
(
やまぢ
)
険
(
けは
)
しきアルタイの
188
岩窟
(
いはや
)
の
前
(
まへ
)
に
送
(
おく
)
られし
189
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
唐櫃
(
からびつ
)
を
190
巌
(
いはほ
)
の
上
(
うへ
)
に
据
(
す
)
ゑ
置
(
お
)
きて
191
村人
(
むらびと
)
達
(
たち
)
は
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
192
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
は
唐櫃
(
からびつ
)
の
193
中
(
なか
)
に
潜
(
ひそ
)
みて
宣伝歌
(
せんでんか
)
194
歌
(
うた
)
ふ
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
中天
(
ちうてん
)
に
195
轟
(
とどろ
)
き
渡
(
わた
)
り
曲神
(
まがかみ
)
は
196
幾百千
(
いくひやくせん
)
の
火
(
ひ
)
となりて
197
見
(
み
)
まもり
居
(
ゐ
)
たる
折柄
(
をりから
)
に
198
忽
(
たちま
)
ち
来
(
きた
)
る
一
(
ひと
)
つ
火
(
び
)
の
199
玉
(
たま
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれて
200
唐櫃
(
からびつ
)
の
上
(
へ
)
を
右
(
みぎ
)
左
(
ひだり
)
201
前
(
まへ
)
や
後
(
うしろ
)
に
舞
(
ま
)
ひ
狂
(
くる
)
ひ
202
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しき
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
203
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
204
恐
(
おそ
)
れて
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
くアーメニヤ
205
跡形
(
あとかた
)
もなき
暗
(
やみ
)
の
空
(
そら
)
206
吾
(
われ
)
は
木蔭
(
こかげ
)
に
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
び
207
此
(
この
)
光景
(
ありさま
)
を
窺
(
うかが
)
へば
208
臆病風
(
おくびやうかぜ
)
に
襲
(
おそ
)
はれし
209
胸
(
むね
)
もドキドキ
時公
(
ときこう
)
が
210
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かして
啜
(
すす
)
り
泣
(
な
)
く
211
彼
(
かれ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
唐櫃
(
からびつ
)
の
212
前
(
まへ
)
に
致
(
いた
)
りて
蔽蓋
(
おひぶた
)
を
213
開
(
ひら
)
くや
忽
(
たちま
)
ち
暗
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
を
214
透
(
す
)
かして
立
(
た
)
てる
白姿
(
しろすがた
)
215
髪
(
かみ
)
振
(
ふ
)
り
乱
(
みだ
)
す
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
216
神
(
かみ
)
の
姿
(
すがた
)
に
仰天
(
ぎやうてん
)
し
217
狼狽
(
うろた
)
へ
騒
(
さわ
)
ぐ
面白
(
おもしろ
)
さ
218
吾
(
われ
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
可笑
(
をか
)
しさに
219
魔神
(
まがみ
)
となつて
声
(
こゑ
)
を
変
(
か
)
へ
220
嚇
(
おど
)
して
見
(
み
)
れば
時公
(
ときこう
)
は
221
訳
(
わけ
)
も
分
(
わか
)
らぬくどき
言
(
ごと
)
222
女房
(
にようばう
)
が
悔
(
くや
)
む
助
(
たす
)
けてと
223
ほざく
男
(
をとこ
)
の
涙声
(
なみだごゑ
)
224
腹
(
はら
)
を
抱
(
かか
)
へる
可笑
(
をか
)
しさを
225
こらへて
漸
(
やうや
)
う
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
226
帰
(
かへ
)
りて
見
(
み
)
れば
時公
(
ときこう
)
は
227
俄
(
にはか
)
に
肩
(
かた
)
で
風
(
かぜ
)
を
切
(
き
)
り
228
大
(
おほ
)
きな
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
きかけて
229
煙
(
けむり
)
に
巻
(
ま
)
いた
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
230
あゝ
鉄彦
(
かなひこ
)
よ
鉄姫
(
かなひめ
)
よ
231
心
(
こころ
)
も
清
(
きよ
)
き
清姫
(
きよひめ
)
よ
232
御心
(
みこころ
)
安
(
やす
)
く
平
(
たひら
)
けく
233
思召
(
おぼしめ
)
されよ
三五
(
あななひ
)
の
234
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
救
(
すく
)
はれし
235
鉄谷村
(
かなたにむら
)
はまだ
愚
(
おろか
)
236
四方
(
よも
)
の
国々
(
くにぐに
)
民草
(
たみぐさ
)
の
237
憂
(
うれ
)
ひはここに
払
(
はら
)
はれぬ
238
歓
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
め
諸人
(
もろびと
)
よ
239
喜
(
よろこ
)
び
祝
(
いは
)
へ
神
(
かみ
)
の
恩
(
おん
)
』
240
この
歌
(
うた
)
に
鉄彦
(
かなひこ
)
始
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
はヤツト
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し、
241
三五教
(
あななひけう
)
の
神徳
(
しんとく
)
に
感
(
かん
)
じ、
242
かつ
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
義侠心
(
ぎけふしん
)
を
深
(
ふか
)
く
謝
(
しや
)
し、
243
茲
(
ここ
)
に
村内
(
そんない
)
集
(
あつ
)
まつて
賑々
(
にぎにぎ
)
しく
祝
(
いはひ
)
の
酒宴
(
さかもり
)
開
(
ひら
)
きたり。
244
やがて
鉄彦
(
かなひこ
)
の
座敷
(
ざしき
)
を
開放
(
かいはう
)
して
大祝宴
(
だいしゆくえん
)
が
開
(
ひら
)
かれ、
245
鉄彦
(
かなひこ
)
は
立
(
た
)
つて
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
するため
歌
(
うた
)
をうたふ。
246
鉄彦
『
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
三五
(
あななひ
)
の
247
神
(
かみ
)
の
誠
(
まこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
248
世人
(
よびと
)
を
救
(
すく
)
ふ
赤心
(
まごころ
)
の
249
岩
(
いは
)
より
堅
(
かた
)
き
神司
(
かむつかさ
)
250
石凝姥
(
いしこりどめ
)
や
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
251
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
のアルタイ
山
(
さん
)
の
252
峰
(
みね
)
より
高
(
たか
)
く
海
(
うみ
)
よりも
253
深
(
ふか
)
き
恵
(
めぐみ
)
に
助
(
たす
)
けられ
254
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
清姫
(
きよひめ
)
の
255
生命
(
いのち
)
ばかりか
国々
(
くにぐに
)
の
256
人
(
ひと
)
の
禍
(
わざはひ
)
悉
(
ことごと
)
く
257
払
(
はら
)
ひ
給
(
たま
)
ひし
大御
(
おほみ
)
稜威
(
いづ
)
258
汝
(
なれ
)
が
命
(
みこと
)
は
久方
(
ひさかた
)
の
259
天
(
あま
)
の
河原
(
かはら
)
に
棹
(
さをさ
)
して
260
下
(
くだ
)
り
給
(
たま
)
ひし
神
(
かみ
)
ならめ
261
あゝ
有難
(
ありがた
)
や
有難
(
ありがた
)
や
262
深
(
ふか
)
き
恵
(
めぐ
)
みに
報
(
むく
)
いむと
263
心
(
こころ
)
ばかりの
此
(
この
)
莚
(
むしろ
)
264
酒
(
さけ
)
は
甕瓶
(
みかのへ
)
たかしりて
265
百
(
もも
)
の
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
は
横山
(
よこやま
)
の
266
如
(
ごと
)
く
御前
(
みまへ
)
に
奉
(
たてまつ
)
り
267
心
(
こころ
)
の
丈
(
たけ
)
を
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
268
受
(
う
)
けさせ
給
(
たま
)
へ
宣伝使
(
せんでんし
)
269
果実
(
このみ
)
の
酒
(
さけ
)
はさわさわに
270
あかにの
穂
(
ほ
)
にときこし
召
(
め
)
せ
271
あゝ
諸人
(
もろびと
)
よ
諸人
(
もろびと
)
よ
272
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
は
三五
(
あななひ
)
の
273
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
の
二柱
(
ふたはしら
)
274
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とになぞらへて
275
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
仕
(
つか
)
へ
奉
(
たてまつ
)
れ
276
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
崇
(
あが
)
め
奉
(
たてまつ
)
れ
277
あゝ
尊
(
たふと
)
しや
神
(
かみ
)
の
恩
(
おん
)
278
あゝ
尊
(
たふと
)
しや
君
(
きみ
)
が
恩
(
おん
)
279
たとへ
天地
(
てんち
)
は
変
(
かは
)
るとも
280
栄
(
さか
)
え
五六七
(
みろく
)
の
末
(
すゑ
)
迄
(
まで
)
も
281
娘
(
むすめ
)
を
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ひたる
282
此
(
この
)
御恵
(
みめぐみ
)
は
忘
(
わす
)
れまじ
283
さはさりながら、あゝわれは
284
三年
(
みとせ
)
の
前
(
まへ
)
に
清姫
(
きよひめ
)
が
285
姉
(
あね
)
と
生
(
うま
)
れし
照姫
(
てるひめ
)
を
286
魔神
(
まがみ
)
の
為
(
ため
)
に
呪
(
のろ
)
はれて
287
損
(
そこな
)
はれたる
悲
(
かな
)
しさよ
288
三年
(
みとせ
)
の
前
(
まへ
)
に
二柱
(
ふたはしら
)
289
ここに
現
(
あら
)
はれましまさば
290
あゝ
照姫
(
てるひめ
)
も
清姫
(
きよひめ
)
の
291
如
(
ごと
)
くに
無事
(
ぶじ
)
に
救
(
すく
)
はれむ
292
返
(
かへ
)
す
返
(
がへ
)
すも
恐
(
おそ
)
ろしく
293
返
(
かへ
)
す
返
(
がへ
)
すも
悲
(
かな
)
しけれ
294
石凝姥
(
いしこりどめ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
よ
295
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
よ
296
かへらぬ
事
(
こと
)
を
繰返
(
くりかへ
)
し
297
愚
(
おろか
)
な
親
(
おや
)
とおもほすな
298
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
何
(
なに
)
よりも
299
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
に
勝
(
まさ
)
る
宝
(
たから
)
なし
300
あゝさりながらさりながら
301
それに
勝
(
まさ
)
りて
尊
(
たふと
)
きは
302
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
ぞ
御
(
おん
)
道
(
みち
)
ぞ
303
あゝ
是
(
これ
)
よりは
三五
(
あななひ
)
の
304
道
(
みち
)
の
教
(
をしへ
)
を
宝
(
たから
)
とし
305
四方
(
よも
)
の
民草
(
たみくさ
)
導
(
みちび
)
かむ
306
あゝ
村人
(
むらびと
)
よ
村人
(
むらびと
)
よ
307
神
(
かみ
)
に
斉
(
ひと
)
しき
宣伝使
(
せんでんし
)
308
唯
(
ただ
)
一言
(
ひとこと
)
も
洩
(
も
)
らさずに
309
御教
(
みのり
)
を
聴
(
き
)
けよ、いざ
聞
(
き
)
けよ
310
聞
(
き
)
いて
忘
(
わす
)
れな
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
311
聴
(
き
)
いて
行
(
おこな
)
へ
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
312
心
(
こころ
)
を
治
(
をさ
)
め
魂
(
たま
)
研
(
みが
)
き
313
月日
(
つきひ
)
の
如
(
ごと
)
く
明
(
あきら
)
かに
314
照
(
てら
)
して
御神
(
みかみ
)
を
讃
(
ほ
)
めたたへ
315
誠
(
まこと
)
の
御神
(
みかみ
)
を
讃
(
ほ
)
めよかし
316
祈
(
いの
)
れよ
祈
(
いの
)
れ
唯
(
ただ
)
祈
(
いの
)
れ
317
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
三五
(
あななひ
)
の
318
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
によく
祈
(
いの
)
れ』
319
と
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
向
(
むか
)
ひ、
320
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
感謝
(
かんしや
)
する。
321
これより
鉄彦
(
かなひこ
)
は
神恩
(
しんおん
)
に
報
(
むく
)
ゆるため、
322
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
従者
(
とも
)
となつて、
323
アーメニヤに
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くこととなりける。
324
(
大正一一・二・二七
旧二・一
松村真澄
録)
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