第八章 善悪不可解〔四三八〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
篇:第1篇 千軍万馬
よみ(新仮名遣い):せんぐんばんば
章:第8章 善悪不可解
よみ(新仮名遣い):ぜんあくふかかい
通し章番号:438
口述日:1922(大正11)年02月21日(旧01月25日)
口述場所:
筆録者:北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年8月20日
概要:
舞台:常世城
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:蟹彦は遠山別の到着を注進に行き、上司たちを相手に馬鹿口を叩いている。
常世神王は奥の間から出てきて、遠山別の労をねぎらった。するとどこからともなく声が響き、一同に、足元に注意せよ、と呼ばわった。
常世神王はじめ一同が気がつくと、みな常世城の馬場にへたりこんで、泥にまみれている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2020-12-24 01:45:26
OBC :rm1008
愛善世界社版:72頁
八幡書店版:第2輯 416頁
修補版:
校定版:76頁
普及版:33頁
初版:
ページ備考:
001 鳩、002雀、003鵯、004つむぎ脅かす、005鷹取別の秘蔵の臣下、006間の国に使して、007片道さへも三百里、008山河荒野を打渉り往復したる遠山別、009漸う此処に月、010雪、011花の三人を、012肩肘はる山彦の館より、013意気揚々として駒に跨り、014濁流漲る高野川を打渡り、015門前に立ち現れ、
016遠山別『遠山別帰城せり、017門番早く此門開放せよ』
019蟹彦『エー、020矢釜しいワイ。021奥から一寸来て呉れ、022門外からも開けて呉れ、023之だから人気男になるのも困るワ。024彼方からも袖を引かれ、025此方からも袖を引かれ、026去んでは嬶にボヤかれ困つた事だ。027アヽア、028色男も辛いものだなア。029オイ赤熊、030その方に門番を申し付ける、031この方は奥へ行つて休息致す』
032赤熊『洒落るない。033この赤熊は今日只今より中依別と申すお歴々の役人様、034ヤア蟹彦、035その方に門番を申し付くる』
037と言ひながら両人は、038中門ガラリと開いて奥殿に進み入る。
048蟹彦『ヤアヤア、049中依別が申付くる。050鼻ベチヤの鷹取別は門番を仕れ。051ヨウ照山彦、052その方も同然、053門番に昇級させる。054有難く思へ』
055照山彦『オイ蟹彦、056赤熊、057その方は気が違うたのか。058血迷うたか。059確り致せ』
060蟹彦『ワツハツハヽヽヽ、061血迷ひもせぬ。062呆けも致さぬ。063この方の申す事、064一時も早く承はり、065門番となつて表門を堅く守れ。066イヤ何、067竹山彦殿、068今日よりは貴下と同役、069今後はお心安くお願ひ申す』
070竹山彦『これはこれは痛み入つたる御挨拶、071何分よろしく御願ひ申す』
072 鷹取別は呆けたる顔をシヤクリながら、
073鷹取別『ハテさて合点のゆかぬ事だワイ。074天が変つて地となり、075地が天となり、076山は海となり、077海は山となり、078桑園化して湖水となり、079墓場は化して観劇場となる。080何と合点のゆかぬ事で御座るワイ』
081竹山彦『ヤア鷹取別、082照山彦、083何をグヅグヅ致して居るか、084早く表門を開けぬか。085中依別は何故この場を立ち去らぬか』
086 何時の間にやら表門をガラリと開いて、087威勢よく入り来る遠山別、088三人の娘を引つたてながら此場に現はれ、
089遠山別『ヤア、090某は間の国に使して首尾よく御用を仕遂げ、091華々しき功名手柄を顕はして帰城致せしものぞ』
095遠山別『何ぢや、096その方は蟹彦、097門番の身として、098畏くも奥殿に入り居るさへあるに、099この方に向つて恰も臣下を扱ふが如き雑言不礼、100何と心得居るか』
101蟹彦『ヤア、102何とも、103カニとも心得居らぬ。104一時も早く月、105雪、106花の三人をこの場に御案内申せよ』
107遠山別『何だツ、108怪体な、109訳の分らぬ事になつて来たワイ。110ヤア、111鷹取別のその鼻は如何なされた。112照山彦、113その頭は如何なされしか』
114蟹彦『エイ、115頭も顔もあつたものか、116早く此場へ姫を出さぬか、117何は兎もあれ、118某が三人の娘の首実検いたさむ』
119と玄関先に据ゑられたる駕籠を一寸開き、120中を窺いて呆れ声、
121蟹彦『ヤア、122赤熊よ、123何とも彼とも言へぬ。124呆れ果てたるばかりなりけりだ』
127蟹彦『照るの照らぬのと、128イヤもう偉い照りで御座る。129空照り渡る秋月姫、130眩き許りの真白けの深雪姫、131四季時を論ぜず咲き匂ふ橘姫、132某も腰抜かさむ許りビツクリ仰天致した』
133赤熊『コラ蟹彦、134タカが知れた三人の女、135何だ恐ろしさうに何をビクつく』
136 三人の娘は悠然として此場に現はれ、
137月雪花の三人『ヨー、138遠山別とやら、139お迎へ大儀であつた。140その褒美として今日ただ今より常世城の重役を免じ、141門番に命ずる。142一時も早く門番部屋へお下りあれ』
143 この時奥殿より常世神王を始め、144松、145竹、146梅の三人の局は此場に現はれ来り、
147常世神王『ヤア、148遠山別、149御苦労御苦労』
150遠山別『ハイ、151実に以て遅なはり候段、152平にお許し下さいませ。153愈松、154竹、155梅の三人、156アー否々、157月、158雪、159花の三人の乙女、160これへ引き連れ申候。161篤と御実検下さいませ』
162 何処ともなく、163何神の声とも知らず、164中空より、
165声『ワツハツハヽヽヽ、166オツホツホヽヽヽ、167常世神王をはじめ一同の者、168足許に注意致せよ』
169と呼はるにぞ、170常世神王は此声にハツと気がつき四辺を見れば、171常世城の馬場にヘタ張り、172その他一同の役人も泥にまみれて蠢いて居る。173またもや中空に声あつて、
181(大正一一・二・二一 旧一・二五 北村隆光録)