梅ケ香姫は、酋長の娘・清姫の身代わりとなって、唐櫃に入った。石凝姥神と時公は唐櫃を担いで、村人と共にアルタイ山に向かった。
アルタイ山の山口にさしかかると、にわかに空は黒く曇り、ものすごい山おろしが吹きすさんできた。村人たちはいっせいに逃げ出した。石凝姥神と時公は、近くの茂みに潜んで、様子を窺っている。
するとアルタイ山一帯に青い火がまたたきはじめ、その中でもひときわ大きな火が唐櫃に向かって降りてきた。しかし唐櫃の中から宣伝歌が聞こえてくると、火光は唐櫃の上を回るだけで降りてこない。
宣伝歌がさらに大きくなると、アルタイ山の青火は次第に小さくなって消えていってしまった。唐櫃の上を回っていた大きな青い火光も、西南の方向に逃げていってしまった。
石凝姥神は梅ケ香姫の唐櫃を開け、悪神が逃げ去ったことを告げた。梅ケ香姫は、石凝姥神を蛇掴に擬して、討ってかかる真似をする。石凝姥神は防戦する。
暗闇の中、梅ケ香姫は時公の近くにばったりと倒れた。時公は驚いて、蛇掴に命乞いをする。それを聞いた石凝姥神は、蛇掴の声色を使って時公をからかいだした。
時公は窮地に陥って、石凝姥神や梅ケ香姫の悪口を並べ立て出した。石凝姥神は元の声に戻って時公をたしなめた。
そうこうするうちに夜が明けてきた。見ると、そこら中に鬼の形をした岩石が散乱している。石凝姥神は辺りの岩で石鎚をつくり、鬼の石像を片っ端から打って砕いて回った。不思議にも、鬼の石からは血煙がさかんに噴出した。
すべての鬼の石像の首を落とすと、三人は凱歌を上げながら村に帰ってきた。