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第2巻(丑の巻)
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特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
01 水火訓
02 神示の経綸
03 金剛心
04 微燈の影
05 心の奥
06 出征の辞
07 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
08 聖雄と英雄
09 司令公館
10 奉天出発
11 安宅の関
12 焦頭爛額
13 洮南旅館
14 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
15 公爺府入
16 蒙古の人情
17 明暗交々
18 蒙古気質
19 仮司令部
20 春軍完備
21 索倫本営
第4篇 神軍躍動
22 木局収ケ原
23 下木局子
24 木局の月
25 風雨叱咤
26 天の安河
27 奉天の渦
28 行軍開始
29 端午の日
30 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
31 強行軍
32 弾丸雨飛
33 武装解除
34 竜口の難
35 黄泉帰
36 天の岩戸
37 大本天恩郷
38 世界宗教聯合会
39 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
余白歌
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第三章
金剛心
(
こんがうしん
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第1篇 日本より奉天まで
よみ(新仮名遣い):
にっぽんよりほうてんまで
章:
第3章 金剛心
よみ(新仮名遣い):
こんごうしん
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月15日(旧06月26日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
熱烈なる信仰と燃えるがごとき希望と抱負は、日出雄の肉体を駆ってついに大本という殻を破って脱出せざるを得ないほどになってきた。日出雄の心中の一端は、ここに蒙古入りとなって現れた。
当時日出雄は、司法の誤認によって最高五年の懲役を言い渡され、そのため大阪控訴院に控訴し、裁判中の身であった。その間、厳正なる当局の監視を受けていたのである。
この間、日出雄が大本の指揮をとるようになってから、エスペラント語を採用し、ブラバーサに普及を命じ、日支親善のために五大教道院を神戸に開き、隆光彦を主任者に任じ、蒙古の開発には真澄別を参謀長として時代進展の事業を進めていた。
蒙古入りについては、王仁蒙古入記として霊界物語六十七巻に編入した。しかしながら様々な障害のために事実を明らかにする便を得ないため、上野公園著として、別に天下に発表した。
本巻は六十七巻の代著として口述し、もっぱら内面的方面の事情を詳細に記した。そのため、文中には変名を用いたものである。読者の諒を得られんことを。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2023/12/28出口王仁三郎全集第6巻をもとに校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-12-28 19:55:32
OBC :
rmnm03
愛善世界社版:
23頁
八幡書店版:
第14輯 556頁
修補版:
校定版:
23頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
錐
(
きり
)
襄中
(
のうちう
)
にあれば
必
(
かなら
)
ず
頴脱
(
えいだつ
)
し
[
※
史記に出る「嚢中の錐(のうちゅうのきり)」のこと。「才能のある人はたちまち外に現れることのたとえ」〔広辞苑〕
]
、
002
空気球
(
くうきまり
)
に
熱
(
ねつ
)
を
加
(
くは
)
ふれば
膨張
(
ばうちよう
)
して
破裂
(
はれつ
)
せざれば
止
(
や
)
まず、
003
熱烈
(
ねつれつ
)
なる
信仰
(
しんかう
)
と
燃
(
も
)
ゆるが
如
(
ごと
)
き
希望
(
きばう
)
と
抱負
(
はうふ
)
は、
004
日出雄
(
ひでを
)
の
肉体
(
にくたい
)
をかつて
遂
(
つひ
)
に
大本
(
おほもと
)
と
云
(
い
)
ふ
殻
(
から
)
を
打破
(
うちやぶ
)
つて
脱出
(
だつしゆつ
)
せざるを
得
(
え
)
ざらしめた。
005
ポンプも
強力
(
きやうりよく
)
なる
圧迫
(
あつぱく
)
によつて
滝
(
たき
)
の
如
(
ごと
)
く
空中
(
くうちう
)
に
水柱
(
みづばしら
)
を
立
(
た
)
て、
006
油
(
あぶら
)
は
圧搾器
(
あつさくき
)
に
押
(
おさ
)
へつけられて
滲
(
し
)
み
出
(
で
)
る、
007
僅
(
わづ
)
かに
五
(
ご
)
尺
(
しやく
)
の
空殻
(
くうがい
)
に
宇宙
(
うちう
)
我
(
われ
)
にあり
的
(
てき
)
の
精魂
(
せいこん
)
を
宿
(
やど
)
しその
放出
(
はうしゆつ
)
を
防
(
ふせ
)
ぐに
苦心
(
くしん
)
すること、
008
ここに
五十
(
ごじふ
)
年
(
ねん
)
。
009
山
(
やま
)
も
裂
(
さ
)
けよ、
010
岩
(
いは
)
も
飛
(
と
)
べよ、
011
天
(
てん
)
を
地
(
ち
)
となし、
012
地
(
ち
)
を
天
(
てん
)
となす
日出雄
(
ひでを
)
が
心中
(
しんちう
)
の
抱負
(
はうふ
)
の
一端
(
いつたん
)
は、
013
ここに
蒙古入
(
もうこいり
)
となつて
現
(
あら
)
はれたのである。
014
明治
(
めいぢ
)
三十一
(
さんじふいち
)
年
(
ねん
)
以来
(
いらい
)
、
015
教養
(
けうやう
)
して
来
(
き
)
た
役員
(
やくゐん
)
信徒
(
しんと
)
の
霊性
(
れいせい
)
を
一々
(
いちいち
)
点検
(
てんけん
)
すれば、
016
愚直
(
ぐちよく
)
と
因循
(
いんじゆん
)
固陋
(
ころう
)
排他
(
はいた
)
と
誇大
(
こだい
)
妄想狂
(
まうさうきやう
)
と
罵詈
(
ばり
)
讒謗
(
ざんばう
)
等
(
とう
)
、
017
あらゆる
悪徳
(
あくとく
)
の
暗影
(
あんえい
)
を
現
(
あら
)
はすのみにて、
018
真
(
しん
)
の
勇
(
ゆう
)
なく
智
(
ち
)
なく
愛
(
あい
)
なく
親
(
しん
)
なし。
019
あゝ
斯如
(
かくのごとく
)
ならば
蜆貝
(
しじみがひ
)
を
以
(
も
)
つて
大海
(
だいかい
)
の
水
(
みづ
)
を
汲
(
く
)
み
出
(
だ
)
し、
020
その
干
(
ひ
)
るを
待
(
ま
)
つが
如
(
ごと
)
く、
021
駱駝
(
らくだ
)
を
針
(
はり
)
の
穴
(
あな
)
に
通
(
とほ
)
すが
如
(
ごと
)
く、
022
たとへ
数万
(
すうまん
)
年
(
ねん
)
を
費
(
つひや
)
すと
雖
(
いへど
)
も、
023
その
獲得
(
くわくとく
)
する
所
(
ところ
)
は
苦労
(
くらう
)
と
失敗
(
しつぱい
)
とにして
寸効
(
すんかう
)
なきを
看破
(
かんぱ
)
した
日出雄
(
ひでを
)
は、
024
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
神
(
かみ
)
の
島
(
しま
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
筑紫島
(
つくしじま
)
に
渡
(
わた
)
りて
阿蘇
(
あそ
)
の
噴火口
(
ふんくわこう
)
を
探
(
さぐ
)
り、
025
三韓
(
さんかん
)
征伐
(
せいばつ
)
に
由緒
(
ゆいしよ
)
ある
息長
(
おきなが
)
帯
(
たらし
)
比女
(
ひめの
)
命
(
みこと
)
の
入浴
(
にふよく
)
されしと
伝
(
つた
)
ふる
杖立
(
つえたて
)
の
霊泉
(
れいせん
)
に
心魂
(
しんこん
)
を
清
(
きよ
)
め、
026
志賀瀬
(
しがせ
)
川
(
がは
)
の
清流
(
せいりう
)
に
禊
(
みそぎ
)
をなし、
027
鏡
(
かがみ
)
の
池
(
いけ
)
の
清泉
(
せいせん
)
に
己
(
おのれ
)
が
姿
(
すがた
)
を
写
(
うつ
)
し
眺
(
なが
)
め、
028
阿蘇
(
あそ
)
の
噴煙
(
ふんえん
)
の
如
(
ごと
)
く
大気焔
(
だいきえん
)
を
吐
(
は
)
き
乍
(
なが
)
ら
九州一
(
きうしういち
)
の
都会
(
とくわい
)
熊本
(
くまもと
)
城外
(
じやうぐわい
)
に
立帰
(
たちかへ
)
るや
否
(
いな
)
や、
029
山本
(
やまもと
)
権兵衛
(
ごんべゑ
)
内閣
(
ないかく
)
の
出現
(
しゆつげん
)
、
030
東都
(
とうと
)
の
大震災
(
だいしんさい
)
大火災
(
だいくわさい
)
のいたるに
会
(
あ
)
ふ。
031
あゝ
世界
(
せかい
)
改善
(
かいぜん
)
の
狼火
(
のろし
)
は
天地
(
てんち
)
の
神霊
(
しんれい
)
によりて
揚
(
あ
)
げられたり。
032
奮起
(
ふんき
)
すべきは
今
(
いま
)
なり。
033
重大
(
ぢうだい
)
なる
天命
(
てんめい
)
を
負
(
お
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
034
何
(
なに
)
を
躊躇
(
ちうちよ
)
逡巡
(
しゆんじゆん
)
するか、
035
日本
(
やまと
)
男子
(
だんし
)
の
生命
(
せいめい
)
は
何処
(
いづこ
)
にあるかと、
036
日出雄
(
ひでを
)
の
精霊
(
せいれい
)
は
彼
(
かれ
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
叱咤
(
しつた
)
するのであつた。
037
日出雄
(
ひでを
)
は
匆々
(
さうさう
)
として
従者
(
じうしや
)
と
共
(
とも
)
に
聖地
(
せいち
)
に
帰
(
かへ
)
り、
038
世上
(
せじやう
)
の
毀誉
(
きよ
)
褒貶
(
はうへん
)
を
度外
(
どぐわい
)
におき、
039
一切
(
いつさい
)
の
因
(
とらは
)
れより
離
(
はな
)
れ、
040
人界
(
じんかい
)
を
超越
(
てうゑつ
)
して
愈
(
いよいよ
)
神業
(
しんげふ
)
遂行
(
すゐかう
)
の
腸
(
はら
)
をきめた。
041
その
結果
(
けつくわ
)
、
042
支那
(
しな
)
五大教
(
ごだいけう
)
との
提携
(
ていけい
)
となり、
043
朝鮮
(
てうせん
)
普天教
(
ふてんけう
)
との
提携
(
ていけい
)
となり、
044
国際語
(
こくさいご
)
エスペラントの
宣伝
(
せんでん
)
となり、
045
精神
(
せいしん
)
的
(
てき
)
世界
(
せかい
)
統一
(
とういつ
)
の
一歩
(
いつぽ
)
を
走
(
はし
)
り
出
(
だ
)
した。
046
旧習
(
きうしふ
)
に
因
(
とら
)
はれ
不徹底
(
ふてつてい
)
なる
信仰
(
しんかう
)
上
(
じやう
)
よつぱらつた
役員
(
やくゐん
)
信徒
(
しんと
)
の
中
(
なか
)
には、
047
男
(
をとこ
)
らしくもない、
048
蔭
(
かげ
)
に
潜
(
ひそ
)
んで、
049
ブツブツ
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つてゐるものも
沢山
(
たくさん
)
に
現
(
あら
)
はれた。
050
今迄
(
いままで
)
独断
(
どくだん
)
的
(
てき
)
排他
(
はいた
)
的
(
てき
)
気分
(
きぶん
)
に
漂
(
ただよ
)
ひ、
051
高
(
たか
)
き
障壁
(
しやうへき
)
や
深
(
ふか
)
き
溝渠
(
こうきよ
)
を
繞
(
めぐ
)
らしてゐた
大本
(
おほもと
)
の
信徒
(
しんと
)
団体
(
だんたい
)
も、
052
此
(
この
)
時
(
とき
)
よりやや
解放
(
かいはう
)
気分
(
きぶん
)
となり、
053
圏外
(
けんぐわい
)
の
空気
(
くうき
)
を
多少
(
たせう
)
吸収
(
きふしう
)
することとなつたのも、
054
全
(
まつた
)
く
日出雄
(
ひでを
)
の
英断
(
えいだん
)
的
(
てき
)
行動
(
かうどう
)
によるものであつた。
055
開祖
(
かいそ
)
の
神諭
(
しんゆ
)
に
曰
(
いは
)
く、
056
『
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
し、
057
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
き、
058
神
(
かみ
)
は
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
は
嫌
(
きら
)
ひである、
059
大
(
おほ
)
きな
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
す
神
(
かみ
)
であるぞよ。
060
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
は
胴
(
どう
)
据
(
す
)
え、
061
大
(
おほ
)
きな
腹
(
はら
)
で
居
(
を
)
らねば
到底
(
たうてい
)
神
(
かみ
)
の
思惑
(
おもわく
)
は
立
(
た
)
たぬぞよ。
062
サツパリ
世
(
よ
)
の
洗替
(
あらひかへ
)
であるから、
063
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
を
申
(
まう
)
して
居
(
を
)
つては、
064
いつ
迄
(
まで
)
も
世
(
よ
)
は
開
(
ひら
)
けぬぞよ。
065
此
(
この
)
ものと
思
(
おも
)
うて
神
(
かみ
)
が
綱
(
つな
)
かけて
引寄
(
ひきよ
)
して
見
(
み
)
ても、
066
心
(
こころ
)
が
小
(
ちひ
)
さいから、
067
肝腎
(
かんじん
)
の
御用
(
ごよう
)
の
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬぞよ。
068
誠
(
まこと
)
のものが
三
(
さん
)
人
(
にん
)
あつたならば、
069
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
大望
(
たいまう
)
は
成就
(
じやうじゆ
)
いたすぞよ』
070
と
示
(
しめ
)
されてある。
071
あゝ
偉大
(
ゐだい
)
なるかな、
072
高遠
(
かうゑん
)
なるかな、
073
神
(
かみ
)
の
宣示
(
せんじ
)
よ。
074
大神
(
おほかみ
)
の
神示
(
しんじ
)
を
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
理解
(
りかい
)
したる
日出雄
(
ひでを
)
の
身
(
み
)
は、
075
有司
(
いうし
)
の
誤認
(
ごにん
)
によつて
極刑
(
きよくけい
)
五
(
ご
)
年
(
ねん
)
の
懲役
(
ちようえき
)
を
云
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
され、
076
大阪
(
おほさか
)
控訴院
(
こうそゐん
)
に
控訴
(
こうそ
)
し、
077
厳正
(
げんせい
)
なる
裁判
(
さいばん
)
を
受
(
う
)
け、
078
厳重
(
げんぢう
)
なるその
筋
(
すぢ
)
の
監視
(
かんし
)
を
受
(
う
)
けてゐた。
079
新聞
(
しんぶん
)
雑誌
(
ざつし
)
の
日々
(
ひび
)
の
銃先
(
つつさき
)
揃
(
そろ
)
へての
大攻撃
(
だいこうげき
)
、
080
世間
(
せけん
)
の
非難
(
ひなん
)
、
081
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
の
反抗
(
はんかう
)
離背
(
りはい
)
、
082
加
(
くは
)
ふるに
財政
(
ざいせい
)
の
圧迫
(
あつぱく
)
、
083
かてて
加
(
くは
)
へて
大国賊
(
だいこくぞく
)
、
084
乱臣
(
らんしん
)
賊子
(
ぞくし
)
、
085
大山師
(
おほやまし
)
、
086
大
(
おほ
)
馬鹿者
(
ばかもの
)
、
087
曰
(
いは
)
く
何
(
なに
)
、
088
曰
(
いは
)
く
何
(
なに
)
、
089
あらゆる
悪名
(
あくめい
)
を
附与
(
ふよ
)
せられ
天下
(
てんか
)
皆
(
みな
)
是
(
こ
)
れ
敵
(
てき
)
たるの
境涯
(
きやうがい
)
にあつた。
090
されど
日出雄
(
ひでを
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
小
(
せう
)
なりと
雖
(
いへど
)
、
091
彼
(
かれ
)
が
心中
(
しんちう
)
にかかへたる
天下
(
てんか
)
救済
(
きうさい
)
の
抱負
(
はうふ
)
と
信念
(
しんねん
)
は
火
(
ひ
)
も
焼
(
や
)
く
能
(
あた
)
はず、
092
水
(
みづ
)
も
溺
(
おぼ
)
らす
能
(
あた
)
はず、
093
巨砲
(
きよはう
)
も
之
(
これ
)
を
粉砕
(
ふんさい
)
し
得
(
え
)
ず、
094
鬼
(
おに
)
、
095
大蛇
(
だいぢや
)
、
096
虎
(
とら
)
、
097
熊
(
くま
)
、
098
唐獅子
(
からしし
)
、
099
駒
(
こま
)
、
100
数百千
(
すうひやくせん
)
の
攻撃
(
こうげき
)
も
意
(
い
)
に
介
(
かい
)
するに
足
(
た
)
らなかつた。
101
現代人
(
げんだいじん
)
より
見
(
み
)
て
如何
(
いか
)
なる
悲運
(
ひうん
)
の
域
(
ゐき
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
するとも
大困難
(
だいこんなん
)
に
陥
(
おちい
)
るとも、
102
その
精神
(
せいしん
)
を
飜
(
ひるがへ
)
さず、
103
強
(
つよ
)
き
者
(
もの
)
には
強敵
(
きやうてき
)
あり、
104
大
(
だい
)
なる
器
(
うつは
)
には
大
(
だい
)
なる
影
(
かげ
)
のさすの
見地
(
けんち
)
に
立
(
た
)
ち、
105
寧
(
むし
)
ろ
之
(
これ
)
を
壮快
(
さうくわい
)
となし
天下
(
てんか
)
を
睥睨
(
へいげい
)
してゐた。
106
凡
(
すべ
)
ての
人間
(
にんげん
)
には、
107
何
(
いづ
)
れも
長所
(
ちやうしよ
)
と
短所
(
たんしよ
)
とがある。
108
各人
(
かくじん
)
は
各
(
おのおの
)
人
(
ひと
)
の
短所
(
たんしよ
)
を
見
(
み
)
て
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
非難
(
ひなん
)
攻撃
(
こうげき
)
し、
109
吾
(
わが
)
意
(
い
)
に
合
(
あ
)
はざるを
見
(
み
)
て
罵詈
(
ばり
)
し
排斥
(
はいせき
)
するものである。
110
人
(
ひと
)
はその
面貌
(
めんばう
)
の
異
(
こと
)
なる
如
(
ごと
)
く
愛善
(
あいぜん
)
の
徳
(
とく
)
も
信真
(
しんしん
)
の
光
(
ひかり
)
もその
度合
(
どあひ
)
がある。
111
従
(
したが
)
つて
智慧
(
ちゑ
)
証覚
(
しようかく
)
も
優劣
(
いうれつ
)
等差
(
とうさ
)
がある。
112
おのが
小
(
ちひ
)
さき
意志
(
いし
)
に
従
(
したが
)
はしめむとして、
113
之
(
これ
)
に
和
(
わ
)
するものを
善人
(
ぜんにん
)
となし、
114
和
(
わ
)
せざるものを
悪人
(
あくにん
)
と
見
(
み
)
なすのは
凡人
(
ぼんじん
)
の
常
(
つね
)
である。
115
大本
(
おほもと
)
の
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
にも、
116
世間
(
せけん
)
の
御
(
ご
)
多分
(
たぶん
)
に
洩
(
も
)
れず
此
(
この
)
種
(
しゆ
)
の
人物
(
じんぶつ
)
が
蝟集
(
ゐしふ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
117
日出雄
(
ひでを
)
は
各人
(
かくじん
)
特有
(
とくいう
)
の
長所
(
ちやうしよ
)
短所
(
たんしよ
)
を
知悉
(
ちしつ
)
してゐる。
118
故
(
ゆゑ
)
にその
長所
(
ちやうしよ
)
を
見
(
み
)
て
適材
(
てきざい
)
を
適所
(
てきしよ
)
に
用
(
もち
)
ゐむとした。
119
頑迷
(
ぐわんめい
)
固陋
(
ころう
)
にして
小心
(
せうしん
)
翼々
(
よくよく
)
たる
凡俗
(
ぼんぞく
)
的
(
てき
)
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
の
目
(
め
)
には、
120
日出雄
(
ひでを
)
が
人
(
ひと
)
を
用
(
もち
)
ゆる
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
て
大
(
おほ
)
いに
不平
(
ふへい
)
を
漏
(
もら
)
してゐる。
121
故
(
ゆゑ
)
に
日出雄
(
ひでを
)
が
近
(
ちか
)
く
用
(
よう
)
を
命
(
めい
)
ずる
役員
(
やくゐん
)
は
一般
(
いつぱん
)
の
目
(
め
)
より
不正者
(
ふせいしや
)
或
(
あるひ
)
は
悪人
(
あくにん
)
と
見
(
み
)
えたのである。
122
乍然
(
しかしながら
)
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
は
人間
(
にんげん
)
の
意志
(
いし
)
に
従
(
したが
)
ふべきものでない。
123
神
(
かみ
)
の
命
(
めい
)
じ
玉
(
たま
)
ふ
人物
(
じんぶつ
)
こそ
神
(
かみ
)
の
御用
(
ごよう
)
をつとむるに
適
(
てき
)
したものである。
124
因襲
(
いんしう
)
や
情実
(
じやうじつ
)
や
外形
(
ぐわいけい
)
的
(
てき
)
行為
(
かうゐ
)
を
見
(
み
)
て
人
(
ひと
)
を
左右
(
さいう
)
すべきものでない、
125
敢然
(
かんぜん
)
として
所信
(
しよしん
)
を
遂行
(
すゐかう
)
してこそ
初
(
はじ
)
めて
神業
(
しんげふ
)
の
一端
(
いつたん
)
に
奉仕
(
ほうし
)
し
得
(
え
)
らるるのである。
126
多数者
(
たすうしや
)
の
非難
(
ひなん
)
を
斥
(
しりぞ
)
け、
127
エス
語
(
ご
)
を
採用
(
さいよう
)
しブラバーサを
以
(
もつ
)
て
之
(
これ
)
が
普及
(
ふきふ
)
の
主任
(
しゆにん
)
に
任
(
にん
)
じ
日支
(
につし
)
親善
(
しんぜん
)
の
楔
(
くさび
)
たる
五大教
(
ごだいけう
)
道院
(
だうゐん
)
を
神戸
(
かうべ
)
に
開
(
ひら
)
き、
128
隆光彦
(
たかてるひこ
)
を
以
(
もつ
)
て
主任者
(
しゆにんしや
)
となし、
129
蒙古
(
もうこ
)
の
開発
(
かいはつ
)
には
真澄別
(
ますみわけ
)
を
参謀長
(
さんぼうちやう
)
となして
時代
(
じだい
)
進展
(
しんてん
)
の
挙
(
きよ
)
を
進
(
すす
)
めたのである。
130
扨
(
さ
)
て
蒙古入
(
もうこいり
)
に
就
(
つ
)
いては、
131
昨冬
(
さくたう
)
王仁
(
おに
)
蒙古
(
もうこ
)
入記
(
にふき
)
と
題
(
だい
)
し
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
第
(
だい
)
六十七
(
ろくじふしち
)
巻
(
くわん
)
に
編入
(
へんにふ
)
した。
132
乍然
(
しかしながら
)
飜
(
ひるがへ
)
つて
考
(
かんが
)
ふれば
種々
(
しゆじゆ
)
の
障害
(
しやうがい
)
のため、
133
事実
(
じじつ
)
を
闡明
(
せんめい
)
するの
便
(
べん
)
を
得
(
え
)
ず、
134
不得已
(
やむをえず
)
上野
(
うへの
)
公園
(
こうゑん
)
著
(
ちよ
)
として
天下
(
てんか
)
に
発表
(
はつぺう
)
する
事
(
こと
)
としたのである。
135
故
(
ゆゑ
)
に
本巻
(
ほんくわん
)
は
六十七
(
ろくじふしち
)
巻
(
くわん
)
の
代著
(
だいちよ
)
として
口述
(
こうじゆつ
)
し
専
(
もつぱ
)
ら
内面
(
ないめん
)
的
(
てき
)
方面
(
はうめん
)
の
事情
(
じじやう
)
を
詳記
(
しやうき
)
する
考
(
かんが
)
へである。
136
文中
(
ぶんちう
)
変名
(
へんめい
)
を
用
(
もち
)
ゐたのも
思
(
おも
)
ふ
所
(
ところ
)
あつての
故
(
ゆゑ
)
である。
137
読者
(
どくしや
)
幸
(
さいはい
)
に
諒
(
れう
)
せられむ
事
(
こと
)
を。
138
(
大正一四、八、一五
、
北村隆光
筆録)
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