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霊界物語
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第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
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第18巻(巳の巻)
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海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
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第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第78巻(巳の巻)
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特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
01 水火訓
02 神示の経綸
03 金剛心
04 微燈の影
05 心の奥
06 出征の辞
07 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
08 聖雄と英雄
09 司令公館
10 奉天出発
11 安宅の関
12 焦頭爛額
13 洮南旅館
14 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
15 公爺府入
16 蒙古の人情
17 明暗交々
18 蒙古気質
19 仮司令部
20 春軍完備
21 索倫本営
第4篇 神軍躍動
22 木局収ケ原
23 下木局子
24 木局の月
25 風雨叱咤
26 天の安河
27 奉天の渦
28 行軍開始
29 端午の日
30 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
31 強行軍
32 弾丸雨飛
33 武装解除
34 竜口の難
35 黄泉帰
36 天の岩戸
37 大本天恩郷
38 世界宗教聯合会
39 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
余白歌
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> 第4篇 神軍躍動 > 第27章 奉天の渦
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第二七章
奉天
(
ほうてん
)
の
渦
(
うづ
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第4篇 神軍躍動
よみ(新仮名遣い):
しんぐんやくどう
章:
第27章 奉天の渦
よみ(新仮名遣い):
ほうてんのうず
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
日本で軍資金の調達にあたっていた加藤明子は、日出雄から密書を受け取った。これと思う数名を同道して、滞在場所まで来るように、というものであった。
そこで一同は準備に入ったが、先に奉天に入っていた横尾敬義が戻ってきて、唐国別が言うには、「すでに日出雄先生は蒙古入りしたので、後から来る人々は、先生が大庫倫に到着してから来るように」とのことであったと伝えた。
加藤、国分義一、藤田武寿の三人は予期に反したが、すでに準備が整っていたこともあり、二代教主と相談の上、ともかく日出雄一行の後を追うことにした。
しかし水也商会に着くと、唐国別はこれ以上奥地に日本人を送るなどとんでもない、いくら大先生、二代様の頼みでも、自分の考えに反したことは聞き入れるわけにはいかない、という態度であった。
奥地より日出雄の消息を伝えに来た大倉は、三人に同情し、日出雄先生より来いとのことであれば、万難を排して協力しましょう、と言ってくれたが、唐国別は態度を硬化させ、絶対に反対する旨通告してきた。
仕方なく三人は大連、旅順などを巡覧しながら連絡を待っていた。結局、日出雄よりは「女子の入蒙は困難なので、日本・奉天間を往復して連絡の用務を勤めるように」との連絡があった。また、大倉の協力の言は単なる気休めだと判明した。
仕方なく三人は一度そろって日本に帰った。そして加藤はかつて満蒙に名をとどろかせた緑川貞司に師事して準備を練っていた最中、パインタラの変の報に接したのであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2024/1/31出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-01-31 03:32:23
OBC :
rmnm27
愛善世界社版:
241頁
八幡書店版:
第14輯 635頁
修補版:
校定版:
244頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
日出雄
(
ひでを
)
が
大志
(
たいし
)
を
懐
(
いだ
)
いて
綾
(
あや
)
の
聖地
(
せいち
)
を
出発
(
しゆつぱつ
)
して
以来
(
いらい
)
、
002
満蒙
(
まんもう
)
の
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
めては、
003
日夜
(
にちや
)
憧憬
(
どうけい
)
の
思
(
おも
)
ひを
抱
(
いだ
)
きつつ、
004
軍資金
(
ぐんしきん
)
の
調達
(
てうたつ
)
に
苦労
(
くらう
)
してゐた
加藤
(
かとう
)
明子
(
はるこ
)
は、
005
日出雄
(
ひでを
)
出発後
(
しゆつぱつご
)
三
(
さん
)
週間
(
しうかん
)
を
経
(
へ
)
た
頃
(
ころ
)
、
006
日出雄
(
ひでを
)
よりの
密書
(
みつしよ
)
を
受取
(
うけと
)
つた。
007
それには
旧
(
きう
)
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
三日
(
みつか
)
迄
(
まで
)
に
横尾
(
よこを
)
敬義
(
ゆきよし
)
、
008
西村
(
にしむら
)
輝雄
(
てるを
)
、
009
国分
(
こくぶ
)
義一
(
ぎいち
)
、
010
藤田
(
ふぢた
)
武寿
(
たけとし
)
、
011
佐藤
(
さとう
)
六合雄
(
くにを
)
其
(
その
)
他
(
た
)
之
(
こ
)
れと
思
(
おも
)
ふ
人々
(
ひとびと
)
の
中
(
うち
)
、
012
四五
(
しご
)
名
(
めい
)
同道
(
どうだう
)
して
我
(
わが
)
滞在
(
たいざい
)
の
場所
(
ばしよ
)
迄
(
まで
)
来
(
きた
)
れとの
命令
(
めいれい
)
が
認
(
したた
)
めてあつた。
013
加藤
(
かとう
)
は
天
(
てん
)
にも
昇
(
のぼ
)
る
心地
(
ここち
)
し
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
右
(
みぎ
)
の
人々
(
ひとびと
)
に
其
(
その
)
旨
(
むね
)
を
伝
(
つた
)
へた。
014
此
(
この
)
中
(
うち
)
佐藤
(
さとう
)
は
用務
(
ようむ
)
の
為
(
た
)
め、
015
内地
(
ないち
)
に
残留
(
ざんりう
)
し、
016
西村
(
にしむら
)
は
大庫倫
(
だいクーロン
)
へ
一行
(
いつかう
)
到着
(
たうちやく
)
迄
(
まで
)
待
(
ま
)
つと
云
(
い
)
ひ、
017
横尾
(
よこを
)
は
他
(
た
)
に
要件
(
えうけん
)
があるので
先
(
さき
)
んじて
奉天
(
ほうてん
)
へ
向
(
むか
)
ひ、
018
国分
(
こくぶ
)
、
019
藤田
(
ふぢた
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
早速
(
さつそく
)
関係
(
くわんけい
)
事業
(
じげふ
)
の
整理
(
せいり
)
に
取掛
(
とりかか
)
つた。
020
尚
(
なほ
)
加藤
(
かとう
)
の
通告
(
つうこく
)
に
依
(
よ
)
り
是非
(
ぜひ
)
此
(
この
)
一行
(
いつかう
)
に
加
(
くは
)
はらむと
決心
(
けつしん
)
した
広瀬
(
ひろせ
)
義邦
(
よしくに
)
は、
021
万難
(
ばんなん
)
を
排
(
はい
)
して
渡満
(
とまん
)
し、
022
場合
(
ばあひ
)
に
依
(
よ
)
つては
大連
(
だいれん
)
若
(
も
)
しくは
奉天
(
ほうてん
)
に
職
(
しよく
)
を
求
(
もと
)
めて
時機
(
じき
)
の
至
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
つ
事
(
こと
)
とした。
023
加藤
(
かとう
)
も
蝟集
(
ゐしふ
)
し
来
(
きた
)
る
故障
(
こしよう
)
を
凌
(
しの
)
いで
出発
(
しゆつぱつ
)
準備
(
じゆんび
)
を
急
(
いそ
)
いでゐる
折柄
(
をりから
)
、
024
先
(
さき
)
に
渡満
(
とまん
)
した
横尾
(
よこを
)
が
帰来
(
きらい
)
し、
025
横尾敬義
『
日出雄
(
ひでを
)
先生
(
せんせい
)
は
既
(
すで
)
に
入蒙
(
にふもう
)
せしこと、
026
唐国別
(
からくにわけ
)
の
言
(
げん
)
に
依
(
よ
)
れば
後
(
あと
)
の
連中
(
れんちう
)
は
大庫倫
(
だいクーロン
)
到着後
(
たうちやくご
)
、
027
来
(
く
)
る
様
(
やう
)
に』
028
との
事
(
こと
)
などを
伝
(
つた
)
へた。
029
加藤
(
かとう
)
は
予期
(
よき
)
に
反
(
はん
)
したので、
030
取敢
(
とりあ
)
へず
国分
(
こくぶ
)
、
031
藤田
(
ふぢた
)
に
其
(
その
)
旨
(
むね
)
を
通
(
つう
)
ずると、
032
二人
(
ふたり
)
は
既
(
すで
)
に
準備
(
じゆんび
)
全
(
まつた
)
く
成
(
な
)
り、
033
今更
(
いまさら
)
如何
(
どう
)
することも
出来
(
でき
)
ぬといふ
始末
(
しまつ
)
なので、
034
已
(
や
)
むなく
其
(
その
)
処置
(
しよち
)
を
大本
(
おほもと
)
二代
(
にだい
)
教主
(
けうしゆ
)
に
謀
(
はか
)
り、
035
遂
(
つひ
)
に
国分
(
こくぶ
)
、
036
藤田
(
ふぢた
)
、
037
加藤
(
かとう
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
038
一命
(
いちめい
)
を
賭
(
と
)
して
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
の
跡
(
あと
)
を
逐
(
お
)
ふ
事
(
こと
)
に
決定
(
けつてい
)
したのである。
039
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
十六
(
じふろく
)
日
(
にち
)
奉天
(
ほうてん
)
なる
唐国別
(
からくにわけ
)
より
西王母
(
せいわうぼ
)
の
服装
(
ふくさう
)
を
携行
(
けいかう
)
せよとの
来電
(
らいでん
)
があつたので、
040
其
(
そ
)
の
用務
(
ようむ
)
をも
兼
(
か
)
ね、
041
右
(
みぎ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
十八
(
じふはち
)
日
(
にち
)
奉天
(
ほうてん
)
に
向
(
むか
)
つて
出発
(
しゆつぱつ
)
し、
042
門司
(
もじ
)
よりは
偶々
(
たまたま
)
満韓
(
まんかん
)
視察
(
しさつ
)
の
途次
(
とじ
)
にありし
大谷
(
おほたに
)
恭平
(
きようへい
)
が
加
(
くは
)
はつて
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
となり、
043
心
(
こころ
)
は
既
(
すで
)
に
蒙古
(
もうこ
)
の
大原野
(
だいげんや
)
に
馳
(
は
)
せ、
044
汽船
(
きせん
)
や
汽車
(
きしや
)
も
間
(
ま
)
ドロキ
心地
(
ここち
)
で
二十
(
にじふ
)
日
(
にち
)
夕
(
ゆふ
)
奉天駅
(
ほうてんえき
)
に
着
(
ちやく
)
した。
045
予
(
かね
)
て
打電
(
だでん
)
してあつたので、
046
萩原
(
はぎはら
)
、
047
西島
(
にしじま
)
並
(
ならび
)
に
折柄
(
をりから
)
在奉中
(
ざいほうちう
)
の
唐国別
(
からくにわけ
)
夫人
(
ふじん
)
等
(
とう
)
が
一行
(
いつかう
)
を
出迎
(
でむか
)
へ、
048
其
(
その
)
筋
(
すぢ
)
の
警戒
(
けいかい
)
厳
(
げん
)
なればとて、
049
四辺
(
あたり
)
を
憚
(
はばか
)
り
乍
(
なが
)
ら
稲葉
(
いなば
)
町
(
ちやう
)
の
中野
(
なかの
)
といふ
宅
(
たく
)
に
案内
(
あんない
)
された。
050
翌
(
よく
)
二十一
(
にじふいち
)
日
(
にち
)
一行
(
いつかう
)
は
水也
(
みづや
)
商会
(
しやうくわい
)
に
趣
(
おもむ
)
き、
051
王
(
わう
)
天海
(
てんかい
)
なる
唐国別
(
からくにわけ
)
と
会見
(
くわいけん
)
したところが、
052
王
(
わう
)
は
不機嫌
(
ふきげん
)
な
面色
(
おももち
)
で、
053
藤田
(
ふぢた
)
に
向
(
むか
)
ひ、
054
唐国別
(
からくにわけ
)
『
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
は
一体
(
いつたい
)
奥地
(
おくち
)
へ
入
(
はい
)
る
積
(
つも
)
りで
来
(
こ
)
られたのですか』
055
藤田
(
ふぢた
)
『
左様
(
さやう
)
です、
056
勿論
(
もちろん
)
』
057
唐国別
(
からくにわけ
)
『
左様
(
さやう
)
です……なんて……
冗談
(
じようだん
)
ぢやないよ。
058
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
はさう
容易
(
やす
)
々々
(
やす
)
と
奥地
(
おくち
)
へ
這入
(
はい
)
れると
思
(
おも
)
はれるのか。
059
そりや
誰
(
たれ
)
だつて
先生
(
せんせい
)
の
側
(
そば
)
へ
行
(
ゆ
)
きたいのは
当然
(
たうぜん
)
だよ、
060
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
だけぢやない。
061
しかし
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
との
複雑
(
ふくざつ
)
な
関係
(
くわんけい
)
を
知
(
し
)
りもしないで、
062
ヤレ
吾
(
われ
)
もソレ
私
(
わし
)
もとやつて
来
(
こ
)
られて
耐
(
たま
)
るものか、
063
僕
(
ぼく
)
の
苦心
(
くしん
)
は
並大抵
(
なみたいてい
)
ぢやないよ』
064
と
前置
(
まへおき
)
して
日出雄
(
ひでを
)
来奉
(
らいほう
)
以後
(
いご
)
の
事情
(
じじやう
)
を
縷々
(
るる
)
と
弁
(
べん
)
じ、
065
此
(
この
)
際
(
さい
)
日本人
(
につぽんじん
)
の
入蒙
(
にふもう
)
することは
絶対
(
ぜつたい
)
に
断
(
ことは
)
ると
云
(
い
)
ふ、
066
甚
(
はなは
)
だ
意外
(
いぐわい
)
な
言葉
(
ことば
)
であつた。
067
加藤
(
かとう
)
『
妾
(
わたし
)
達
(
たち
)
は
決
(
けつ
)
して
自分
(
じぶん
)
勝手
(
かつて
)
に
先生
(
せんせい
)
のお
側
(
そば
)
へ
行
(
ゆ
)
かうと
云
(
い
)
ふのではありませぬ。
068
先生
(
せんせい
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
参
(
まゐ
)
りましたのです。
069
貴方
(
あなた
)
も
御存
(
ごぞん
)
じの
筈
(
はず
)
ですが……』
070
とて
日出雄
(
ひでを
)
より
来
(
き
)
た
親展書
(
しんてんしよ
)
と、
071
二代
(
にだい
)
教主
(
けうしゆ
)
よりの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
入蒙
(
にふもう
)
依頼書
(
いらいしよ
)
を
差出
(
さしだ
)
した。
072
唐国別
(
からくにわけ
)
は、
073
唐国別
『あゝさうですか、
074
私
(
わたし
)
は
些
(
ち
)
つとも
知
(
し
)
らなかつた。
075
さうすると
又
(
また
)
新
(
あらた
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
大先生
(
だいせんせい
)
を
引受
(
ひきう
)
けた
様
(
やう
)
なものだ。
076
中々
(
なかなか
)
の
大任
(
たいにん
)
だ。
077
先生
(
せんせい
)
の
入蒙
(
にふもう
)
に
就
(
つい
)
ては、
078
どんな
苦心
(
くしん
)
をしたか
分
(
わか
)
りやしない』
079
とてこれから
入蒙
(
にふもう
)
苦心談
(
くしんだん
)
に
夜
(
よ
)
を
更
(
ふ
)
かし、
080
更
(
かう
)
闌
(
た
)
けてから
一行
(
いつかう
)
は
宿
(
やど
)
に
引取
(
ひきと
)
つた。
081
然
(
しか
)
るに
其
(
その
)
後
(
ご
)
第二回
(
だいにくわい
)
の
会見
(
くわいけん
)
に
於
(
おい
)
ては
唐国別
(
からくにわけ
)
の
態度
(
たいど
)
激変
(
げきへん
)
し、
082
唐国別
『
先生
(
せんせい
)
の
現在
(
げんざい
)
の
御
(
ご
)
在所
(
ざいしよ
)
は
自分
(
じぶん
)
には
分
(
わか
)
りませぬ。
083
また
仮令
(
たとへ
)
大先生
(
だいせんせい
)
、
084
二代
(
にだい
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
でも、
085
自分
(
じぶん
)
の
考
(
かんが
)
へに
反
(
はん
)
した
事
(
こと
)
は
聞
(
き
)
き
容
(
い
)
れる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬ』
086
とて
断乎
(
だんこ
)
として
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
入蒙
(
にふもう
)
を
拒絶
(
きよぜつ
)
した。
087
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
其
(
その
)
傍若
(
ばうじやく
)
無人
(
ぶじん
)
の
言辞
(
げんじ
)
に
驚
(
おどろ
)
き
呆
(
あき
)
れ、
088
且
(
かつ
)
憤慨
(
ふんがい
)
したが、
089
扨
(
さて
)
何
(
なん
)
と
詮術
(
せんすべ
)
もないので、
090
スゴスゴと
引取
(
ひきと
)
る
外
(
ほか
)
はなかつた。
091
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
廿六
(
にじふろく
)
日
(
にち
)
に
至
(
いた
)
り、
092
大倉
(
おほくら
)
奥地
(
おくち
)
より
日出雄
(
ひでを
)
の
消息
(
せうそく
)
を
齎
(
もた
)
らし
帰
(
かへ
)
れりとの
報告
(
はうこく
)
を
唐国別
(
からくにわけ
)
より
受
(
う
)
けたので、
093
一縷
(
いちる
)
の
望
(
のぞ
)
みもやと、
094
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
急
(
いそ
)
いで
唐国別
(
からくにわけ
)
の
店舗
(
てんぽ
)
を
訪
(
おとづ
)
れ
大倉
(
おほくら
)
に
面会
(
めんくわい
)
した。
095
大倉
(
おほくら
)
は
愛想
(
あいそ
)
よく
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
いて
語
(
かた
)
る。
096
大倉
『
先生
(
せんせい
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
御
(
お
)
元気
(
げんき
)
ですから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさい。
097
併
(
しか
)
し
現在
(
げんざい
)
入蒙
(
にふもう
)
は
余程
(
よほど
)
困難
(
こんなん
)
ですが、
098
先生
(
せんせい
)
より
来
(
こ
)
いとのお
言葉
(
ことば
)
なれば、
099
万難
(
ばんなん
)
を
排
(
はい
)
して
奥地
(
おくち
)
へお
送
(
おく
)
り
申
(
まを
)
しませう。
100
又
(
また
)
先生
(
せんせい
)
のお
言葉
(
ことば
)
なく
共
(
とも
)
、
101
強
(
し
)
ひて
入蒙
(
にふもう
)
せられると
云
(
い
)
ふのなら、
102
同胞
(
どうはう
)
の
誼
(
よしみ
)
として
捨
(
す
)
ておく
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きませぬでなア』
103
加藤
(
かとう
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
大倉
(
おほくら
)
の
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に
稍
(
やや
)
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
み、
104
先
(
さき
)
に
唐国別
(
からくにわけ
)
夫人
(
ふじん
)
が『
強
(
し
)
いて
入蒙
(
にふもう
)
する
者
(
もの
)
は
途中
(
とちう
)
で
殺
(
や
)
つて
了
(
しま
)
ふと
某
(
ぼう
)
浪人
(
らうにん
)
が
言
(
い
)
つてますよ』との
話
(
はなし
)
の
裏切
(
うらぎ
)
られた
嬉
(
うれ
)
しさと、
105
『
先生
(
せんせい
)
のお
言葉
(
ことば
)
なら
万難
(
ばんなん
)
を
排
(
はい
)
して
云々
(
うんぬん
)
』といふ
信者
(
しんじや
)
ならでは
聴
(
き
)
く
事
(
こと
)
の
出来
(
でき
)
ぬ
言葉
(
ことば
)
を
大倉
(
おほくら
)
の
口
(
くち
)
から
発
(
はつ
)
せられた
嬉
(
うれ
)
しさに、
106
此
(
こ
)
の
機
(
き
)
を
外
(
はづ
)
してはと
思
(
おも
)
ふ
矢先
(
やさき
)
、
107
唐国別
(
からくにわけ
)
は、
108
唐国別
『
当地
(
たうち
)
に
居
(
ゐ
)
て
一切
(
いつさい
)
の
事情
(
じじやう
)
に
精通
(
せいつう
)
してゐる
吾輩
(
わがはい
)
の
言
(
げん
)
に
従
(
したが
)
はず、
109
まだ
入蒙
(
にふもう
)
を
主張
(
しゆちやう
)
するのは
不都合
(
ふつがふ
)
だ』
110
と
詰
(
なじ
)
る。
111
今迄
(
いままで
)
口
(
くち
)
を
噤
(
つぐ
)
んで
一言
(
いちごん
)
も
挟
(
はさ
)
まなかつた
国分
(
こくぶ
)
は
此
(
この
)
時
(
とき
)
初
(
はじ
)
めて
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
112
国分
『
此
(
この
)
先生
(
せんせい
)
からの
御
(
お
)
手紙
(
てがみ
)
が
貴方
(
あなた
)
の
手
(
て
)
を
経
(
へ
)
て
来
(
き
)
たのなら
貴方
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひもしませうが、
113
之
(
こ
)
れはさうぢやないのですから、
114
一応
(
いちおう
)
先生
(
せんせい
)
に
御
(
ご
)
照会
(
せうくわい
)
願
(
ねが
)
ひたいものですな』
115
と
言
(
い
)
へば
唐国別
(
からくにわけ
)
は
頗
(
すこぶ
)
る
昂奮
(
かうふん
)
の
態度
(
たいど
)
であつたが、
116
翌日
(
よくじつ
)
自分
(
じぶん
)
を
訪問
(
はうもん
)
した
藤田
(
ふぢた
)
を
介
(
かい
)
し、
117
左
(
さ
)
の
如
(
ごと
)
き
意味
(
いみ
)
の
通告
(
つうこく
)
を
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
与
(
あた
)
へたのである。
118
唐国別
『
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
入蒙
(
にふもう
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
に
拒絶
(
きよぜつ
)
する。
119
自分
(
じぶん
)
から
手紙
(
てがみ
)
で
先生
(
せんせい
)
の
方
(
はう
)
へ……
来奉者
(
らいほうしや
)
は
追
(
お
)
ひ
返
(
かへ
)
しますから
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
ありたし……と
申遣
(
まうしつか
)
はし、
120
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
には……
軍
(
ぐん
)
の
行動
(
かうどう
)
の
邪魔
(
じやま
)
になる
事
(
こと
)
は
先生
(
せんせい
)
の
言
(
げん
)
と
雖
(
いへど
)
も
聴従
(
ちやうじゆう
)
するな……と
伝
(
つた
)
へ、
121
尚
(
なほ
)
使者
(
ししや
)
に
対
(
たい
)
しては……
万一
(
まんいち
)
先生
(
せんせい
)
から
自分
(
じぶん
)
の
考
(
かんが
)
へと
違
(
ちが
)
つた
御
(
ご
)
返辞
(
へんじ
)
のある
場合
(
ばあひ
)
には
途中
(
とちう
)
で
握
(
にぎ
)
り
潰
(
つぶ
)
せ……と
命
(
めい
)
じて
置
(
お
)
いた。
122
それでも
尚
(
なほ
)
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
を
取
(
と
)
り
入蒙
(
にふもう
)
せられるなら、
123
途中
(
とちう
)
の
危険
(
きけん
)
に
対
(
たい
)
して
吾々
(
われわれ
)
は
責任
(
せきにん
)
を
負
(
お
)
はない』
124
此
(
こ
)
の
通告
(
つうこく
)
を
受
(
う
)
けた
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
熟議
(
じゆくぎ
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
125
唐国別
(
からくにわけ
)
の
口吻
(
こうふん
)
に
女子
(
ぢよし
)
の
従軍
(
じうぐん
)
禁制
(
きんせい
)
の
旨
(
むね
)
もあつた
様
(
やう
)
だから、
126
此
(
この
)
際
(
さい
)
加藤
(
かとう
)
は
断念
(
だんねん
)
し、
127
国分
(
こくぶ
)
、
128
藤田
(
ふぢた
)
の
二人
(
ふたり
)
だけ
入蒙
(
にふもう
)
を
取計
(
とりはから
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
にしようと
一決
(
いつけつ
)
し、
129
加藤
(
かとう
)
は
大倉
(
おほくら
)
を
訪問
(
はうもん
)
して
之
(
これ
)
を
語
(
かた
)
つた
所
(
ところ
)
が
大倉
(
おほくら
)
は
同情
(
どうじやう
)
して『
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
先生
(
せんせい
)
の
御
(
お
)
指図
(
さしづ
)
を
仰
(
あふ
)
ぐ
迄
(
まで
)
、
130
地方
(
ちはう
)
見物
(
けんぶつ
)
でもなさいませ』との
事
(
こと
)
に
一縷
(
いちる
)
の
望
(
のぞ
)
みを
残
(
のこ
)
し
131
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
廿九
(
にじふく
)
日
(
にち
)
から
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
二日
(
ふつか
)
まで、
132
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
撫順
(
ぶじゆん
)
、
133
大連
(
だいれん
)
、
134
旅順
(
りよじゆん
)
などを
巡覧
(
じゆんらん
)
した。
135
此
(
この
)
間
(
かん
)
に
萩原
(
はぎはら
)
は
写真機
(
しやしんき
)
を
携帯
(
けいたい
)
して
入蒙
(
にふもう
)
の
途
(
と
)
に
就
(
つ
)
いたのである。
136
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
再
(
ふたた
)
び
奉天
(
ほうてん
)
へ
帰来
(
きらい
)
した
日
(
ひ
)
、
137
王
(
わう
)
敬義
(
けいぎ
)
は
唐国別
(
からくにわけ
)
の
旨
(
むね
)
を
含
(
ふく
)
んで
来訪
(
らいほう
)
し、
138
王敬義
『
唐国別
(
からくにわけ
)
に
無断
(
むだん
)
で
何故
(
なぜ
)
大倉
(
おほくら
)
を
訪問
(
はうもん
)
したか、
139
それから
旅順
(
りよじゆん
)
、
140
大連
(
だいれん
)
などと
出歩
(
である
)
くのは
不謹慎
(
ふきんしん
)
ぢやないですか』
141
と
詰
(
なじ
)
る。
142
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
王
(
わう
)
敬義
(
けいぎ
)
を
同情者
(
どうじやうしや
)
と
信
(
しん
)
じて
居
(
ゐ
)
たので、
143
三人の中の一人(加藤?)
『
唐国別
(
からくにわけ
)
より
最後
(
さいご
)
の
通牒
(
つうてふ
)
を
受
(
う
)
けましたので
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
大倉
(
おほくら
)
さんに
縋
(
すが
)
つたのです、
144
そして
大倉
(
おほくら
)
さんのお
勧
(
すす
)
めに
依
(
よ
)
つて
見物
(
けんぶつ
)
に
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
りました』
145
と
答
(
こた
)
ふれば、
146
王
(
わう
)
敬義
(
けいぎ
)
『
唐国別
(
からくにわけ
)
の
言
(
げん
)
は
一
(
ひと
)
つの
試練
(
しれん
)
とは
考
(
かんが
)
へないですか』
147
加藤
(
かとう
)
『さう
思
(
おも
)
ひませぬでした』
148
王
(
わう
)
敬義
(
けいぎ
)
『
唐国別
(
からくにわけ
)
の
言
(
げん
)
は
瑞霊
(
ずゐれい
)
の
神懸
(
かむがかり
)
と
認
(
みと
)
めませぬか』
149
加藤
(
かとう
)
は『ハイ、
150
さうは
思
(
おも
)
ひませぬ』とて
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
の
経過
(
けいくわ
)
を
精
(
くは
)
しく
述
(
の
)
べたので、
151
王
(
わう
)
敬義
(
けいぎ
)
も
漸
(
やうや
)
く
心
(
こころ
)
解
(
と
)
けて、
152
種々
(
しゆじゆ
)
の
便宜
(
べんぎ
)
を
計
(
はか
)
らふ
事
(
こと
)
となつた。
153
此
(
この
)
時
(
とき
)
国分
(
こくぶ
)
は
憤然
(
ふんぜん
)
色
(
いろ
)
をなして
言
(
い
)
ふ、
154
国分
『
唐国別
(
からくにわけ
)
の
言
(
げん
)
を
瑞霊
(
ずゐれい
)
の
神懸
(
かむがかり
)
とは
何
(
なん
)
のこつた。
155
王
(
わう
)
敬義
(
けいぎ
)
の
価値
(
かち
)
も
茲
(
ここ
)
に
至
(
いた
)
つては
零
(
ぜろ
)
だね、
156
共
(
とも
)
に
語
(
かた
)
るに
足
(
た
)
る
信仰
(
しんかう
)
ぢやないね。
157
若
(
も
)
しあの
時
(
とき
)
加藤
(
かとう
)
さんが……
承認
(
しようにん
)
します……とでも
云
(
い
)
はうものなら、
158
今後
(
こんご
)
断然
(
だんぜん
)
事
(
こと
)
を
共
(
とも
)
にせない
積
(
つも
)
りだつた』
159
と
意気
(
いき
)
軒昂
(
けんかう
)
たるものがあつた。
160
斯
(
か
)
くして
奥地
(
おくち
)
よりの
消息
(
せうそく
)
を
待
(
ま
)
つ
中
(
うち
)
に、
161
日出雄
(
ひでを
)
より『
此
(
この
)
際
(
さい
)
女子
(
ぢよし
)
の
入蒙
(
にふもう
)
は
困難
(
こんなん
)
なれば、
162
日奉間
(
につぽうかん
)
を
往復
(
わうふく
)
して
連絡
(
れんらく
)
の
用務
(
ようむ
)
を
勤
(
つと
)
めよ』との
伝達
(
でんたつ
)
あり、
163
国分
(
こくぶ
)
、
164
藤田
(
ふぢた
)
に
関
(
くわん
)
しては
何
(
なん
)
等
(
ら
)
の
伝言
(
でんごん
)
なく、
165
大倉
(
おほくら
)
の
同情
(
どうじやう
)
は
全
(
まつた
)
く
一時
(
いちじ
)
の
気安
(
きやす
)
めであつた
事
(
こと
)
判明
(
はんめい
)
し、
166
藤田
(
ふぢた
)
は『ナアニ、
167
構
(
かま
)
ふものか、
168
それでは
飛行機
(
ひかうき
)
を
用意
(
ようい
)
して
来
(
く
)
る』とて
単身
(
たんしん
)
帰国
(
きこく
)
して
了
(
しま
)
つた。
169
其
(
その
)
後
(
あと
)
へ
名田彦
(
なだひこ
)
が
使者
(
ししや
)
として
奥地
(
おくち
)
より
来奉
(
らいほう
)
し、
170
種々
(
しゆじゆ
)
消息
(
せうそく
)
を
伝
(
つた
)
へたが、
171
主
(
しゆ
)
として
自身
(
じしん
)
の
苦心談
(
くしんだん
)
や、
172
愚痴
(
ぐち
)
のみにて
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
ず、
173
只
(
ただ
)
僅
(
わづか
)
に『
暫
(
しばら
)
く
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
を
採
(
と
)
つて
時機
(
じき
)
を
待
(
ま
)
て』との
伝言
(
でんごん
)
が
含
(
ふく
)
まれてゐるらしく
思
(
おも
)
はれたので、
174
加藤
(
かとう
)
、
175
国分
(
こくぶ
)
の
両人
(
りやうにん
)
も
遂
(
つひ
)
に
時機
(
じき
)
の
到来
(
たうらい
)
せざるを
察
(
さつ
)
し、
176
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
八日
(
やうか
)
意
(
い
)
を
決
(
けつ
)
して
帰国
(
きこく
)
の
途
(
と
)
に
就
(
つ
)
いたのである。
177
途々
(
みちみち
)
国分
(
こくぶ
)
は
微笑
(
びせう
)
しながら、
178
国分
『
藤田
(
ふぢた
)
君
(
くん
)
の
飛行機
(
ひかうき
)
入蒙
(
にふもう
)
計画
(
けいくわく
)
もよからうが、
179
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
黄金
(
こがね
)
の
弾丸
(
だんぐわん
)
に
限
(
かぎ
)
るよ、
180
金
(
かね
)
さへあれば
浪人
(
らうにん
)
の
鬼面
(
きめん
)
も
直
(
す
)
ぐ
恵比須
(
ゑびす
)
顔
(
がほ
)
に
変
(
かは
)
るよ。
181
さうすりや
門番神
(
もんばんがみ
)
を
出
(
だ
)
しぬいて、
182
道案内
(
みちあんない
)
させる
位
(
ぐらゐ
)
は
朝飯前
(
あさめしまへ
)
の
仕事
(
しごと
)
だ』
183
と
加藤
(
かとう
)
を
顧
(
かへり
)
みて
笑
(
わら
)
つた。
184
帰来後
(
きらいご
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
三様
(
さんやう
)
の
活動
(
くわつどう
)
方針
(
はうしん
)
を
取
(
と
)
つたが、
185
其
(
その
)
後
(
ご
)
加藤
(
かとう
)
は
米倉
(
よねくら
)
範治
(
はんぢ
)
の
紹介
(
せうかい
)
で
嘗
(
かつ
)
て
満蒙
(
まんもう
)
の
野
(
の
)
に
驍名
(
げうめい
)
を
轟
(
とどろ
)
かせた
劉
(
りう
)
武林
(
ぶりん
)
事
(
こと
)
緑川
(
みどりかは
)
貞司
(
ていじ
)
に
師事
(
しじ
)
し、
186
馬術
(
ばじゆつ
)
の
稽古
(
けいこ
)
をはじめ、
187
緑川
(
みどりかは
)
を
案内者
(
あんないしや
)
として
入蒙
(
にふもう
)
の
意
(
い
)
を
果
(
はた
)
すべく
湯浅
(
ゆあさ
)
清高
(
きよたか
)
、
188
谷前
(
たにまへ
)
清子
(
きよこ
)
、
189
松村
(
まつむら
)
清香
(
きよか
)
、
190
東尾
(
ひがしを
)
輝子
(
てるこ
)
等
(
ら
)
を
招集
(
せうしふ
)
すべく
準備中
(
じゆんびちう
)
、
191
通遼
(
つうれう
)
[
※
パインタラのこと
]
の
異変
(
いへん
)
に
接
(
せつ
)
したのである。
192
唐国別
(
からくにわけ
)
等
(
ら
)
が
加藤
(
かとう
)
等
(
ら
)
の
入蒙
(
にふもう
)
を
拒
(
こば
)
んだのは、
193
加藤
(
かとう
)
等
(
ら
)
の
入蒙
(
にふもう
)
は
大
(
だい
)
庫倫
(
クーロン
)
着
(
ちやく
)
の
後
(
のち
)
と、
194
予
(
かね
)
て
日出雄
(
ひでを
)
から
聴
(
き
)
いてゐた
外
(
ほか
)
、
195
何
(
なん
)
等
(
ら
)
の
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けなかつたからであつた。
196
(
大正一四、八
、筆録)
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