霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三〇章 岩窟(がんくつ)奇兆(きてう)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記 篇:第4篇 神軍躍動 よみ(新仮名遣い):しんぐんやくどう
章:第30章 岩窟の奇兆 よみ(新仮名遣い):がんくつのきちょう 通し章番号:
口述日:1925(大正14)年08月 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年2月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
岩山を乗り切って高原地帯に出たが、牧草はあっても一滴の水溜りも見つからない。携帯の食料は次第に残り少なくなってきた。
そのうち日出雄は神がかりとなり、山の岩窟の中に瞑目静座してしまった。一向は盧占魁の動きが怪しいこともあり、しばらくこの地に宿営することに決めた。
後から殿の張彦三の部隊がやってきて、盧占魁に代わって日出雄一行を保護しようと申し出、一緒に腰をすえてしまった。しばらくして盧占魁は約五十四里前方に屯営しており、部隊の整理が済み次第、戻って迎えに来ることなどが報じられた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考:2024/2/11出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。 タグ:宣伝師(宣伝使) データ凡例: データ最終更新日:2024-02-11 13:41:26 OBC :rmnm30
愛善世界社版:265頁 八幡書店版:第14輯 644頁 修補版: 校定版:269頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 夏期(かき)相当(さうたう)する二三(にさん)(げつ)(あひだ)は、002蒙古(もうこ)奥地(おくち)西比利亜(シベリヤ)方面(はうめん)(おな)じく()非常(ひじやう)(みじか)い。003西北(せいほく)(そら)夕焼(ゆふやけ)名残(なごり)()えたかと(おも)ふと、004()もなく()東天(とうてん)(くれなゐ)(てう)すると()つた調子(てうし)である。005(つき)なき()でも午前(ごぜん)()()()ぎる(ころ)から、006危険(きけん)山路(やまぢ)でも安全(あんぜん)旅行(りよかう)出来(でき)るのである。007(ちやう)彦三(けんさん)所謂(いはゆる)神譴(しんけん)(あめ)岩影(いはかげ)()けた全軍(ぜんぐん)も、008(その)(うち)(あめ)小歇(こや)みになつたのでヤツと(むね)()(おろ)し、009(ろく)(ぐわつ)七日(なのか)陰暦(いんれき)()(ぐわつ)六日(むいか)午前(ごぜん)()()(はん)(ごろ)全軍(ぜんぐん)出発(しゆつぱつ)命令(めいれい)(つた)はつた。010騎馬(きば)にての旅行(りよかう)()(かく)011二頭(にとう)(あるひ)三頭立(さんとうだて)牛車(ぎうしや)騾馬(らば)と((うま)驢馬(ろば)との混血(あひのこ)にて牽引力(けんいんりよく)(もつと)(つよ)種類(しゆるゐ)三四(さんし)(とう)(だて)轎車(けうしや)が、012(やま)()はず(かは)()はず岩石(がんせき)崎嶇(きく)たる難路(なんろ)を、013相当(さうたう)重量(じゆうりやう)()んで無茶(むちや)苦茶(くちや)(すす)()くのだから、014便乗(びんじよう)した(ひと)中々(なかなか)(やす)(こころ)もなかつた。015(あたま)()ち、016(ひぢ)()ち、017(とき)には転落(てんらく)犠牲(ぎせい)(はら)はねばならぬと()ふのだから……荷物(にもつ)があつては黄金(こがね)大橋(おほはし)(わた)れんぞよ……といふ大本(おほもと)警告(けいこく)(ごと)く、018人世(じんせい)行路(かうろ)はヤハリ身軽(みがる)(かぎ)るてふ(かん)(きん)ずるを()ない。019(この)()岩山(いはやま)()()つて次第(しだい)々々(しだい)高原(かうげん)地帯(ちたい)を、020(やま)(やま)との(あひだ)()ふて(すす)んでゆく。021(そら)(やうや)()れて赫々(かくかく)たる太陽(たいやう)冬服(ふゆふく)その(まま)全軍(ぜんぐん)(てら)しつける。022(しか)()けども()けども牧草(ぼくさう)はあつても、023一滴(いつてき)溜水(たまりみづ)見付(みつ)からない。024携帯(けいたい)食糧(しよくりやう)(すで)(のこ)(すくな)くなつてゐる。025無論(むろん)人家(じんか)見付(みつ)からず『アーア』と()歎息(たんそく)(こゑ)何処(どこ)からともなく(きこ)えて()る。026(みづ)(たづ)ねて(うま)(いそ)がす(もの)027食糧車(しよくりやうしや)()(あは)(もの)028(たい)(つひ)三々(さんさん)五々(ごご)となつた。029(この)(とき)日出雄(ひでを)(そば)には真澄別(ますみわけ)030守高(もりたか)031坂本(さかもと)032白凌閣(パイリンク)033(をん)長興(ちやうこう)034(わう)瓚璋(さんしやう)035(かう)国宝(こくほう)(しち)(にん)(くつわ)(つら)ねて()た。036坂本(さかもと)()へかねて、
037坂本(さかもと)先生(せんせい)(みな)(さき)()つて(しま)つた(やう)ですけれども、038先生(せんせい)のお荷物(にもつ)食糧品(しよくりやうひん)()んだ轎車(けうしや)はまだ(おく)れてますから、039どつかそこらで一服(いつぷく)したらどうでせう。040(ひと)(うま)もこれではヘトヘトになつて(しま)ひますよ』
041日出雄(ひでを)『さうだね、042では此処(ここ)()なり牧草(ぼくさう)もある(やう)だから一休(ひとやす)みしよう』
043坂本(さかもと)先生(せんせい)044(わたし)(いま)(すこ)(ぐらひ)辛抱(しんばう)(いた)しませうが045富士(ふじ)ちやんが可愛相(かあひさう)です』
046 富士(ふじ)()ふのは坂本(さかもと)乗馬(じようば)()で、047実際(じつさい)交通(かうつう)機関(きくわん)不備(ふび)地方(ちはう)旅行(りよかう)すると(うま)唯一(ゆゐいつ)(とも)であり、048(うま)(また)騎乗者(のりて)(した)ひ、049人間(にんげん)同士(どうし)(この)情愛(じやうあい)(たも)てさへすれば、050喧嘩(けんくわ)など(ゆめ)にも(おこ)らないであらうと(おも)はれる(くらゐ)だ。051(しか)して日出雄(ひでを)(うま)白金竜(はくきんりう)052真澄別(ますみわけ)(うま)白銀竜(はくぎんりう)053守高(もりたか)(うま)金剛(こんがう)命名(めいめい)され(みな)白馬(はくば)であつた。054(うま)(くら)(はづ)されて牧草(ぼくさう)(あひだ)(はな)たれ、055(ひと)はポケツトに(のこ)つた煙草(たばこ)(ゆづ)()ひつつ青草(あをくさ)(うへ)()ころび、056(むらさき)(けむ)りを(てん)(むか)つて()()(なが)ら、057相変(あひかは)らず()らず(ぐち)叩合(たたきあひ)をして轎車(けうしや)()つてゐる。058(しか)轎車(けうしや)(なん)()故障(こしよう)(おこ)つたものか、059中々(なかなか)()ひついて()ない。060(おく)(きた)兵士(へいし)()いても『まだまだ大分(だいぶん)後方(こうはう)だ』と()ふ。061日出雄(ひでを)は『ナアニ(うし)(うま)()(もの)人間(にんげん)()へない(はづ)はない』とて、062其処(そこ)()(くさ)引抜(ひきぬ)いては美味(うま)美味(うま)いと()(はじ)める。063附添(つきそ)人々(ひとびと)も『なる(ほど)そらさうだ』とムシヤリムシヤリとやり()した。
064坂本(さかもと)(しか)()占魁(せんくわい)()しからぬ(やつ)ですな、065先生(せんせい)(なん)(こたへ)もなしで自分(じぶん)大将面(たいしやうづら)をして轎車(けうしや)()つて(さき)()つて(しま)ひよつた。066自分(じぶん)護衛(ごゑい)直接(ちよくせつ)(まを)()げるから、067(ほか)(もの)(そば)()()しにならぬ(やう)になんて()つておき(なが)ら……』
068守高(もりたか)(なん)でも(りう)陞三(しようさん)()占魁(せんくわい)との(あひだ)に、069先生(せんせい)中心(ちうしん)として勢力(せいりよく)(あらそ)ひが(おこ)つてるといふ評判(ひやうばん)もあるがね』
070坂本(さかもと)『それなら(なほ)(さら)先生(せんせい)のお(そば)(はな)れなきや()いぢやありませぬか』
071真澄別(ますみわけ)『マアそれはそれとして()(かく)072(すこ)(ぐらゐ)(みづ)のある場所(ばしよ)がないとも(かぎ)らぬから、073モウ一息(ひといき)(すす)みませう。074(その)(うち)轎車(けうしや)(まゐ)りませうから』
075日出雄(ひでを)『それが()からう』
076(ふたた)鞍上(あんじやう)(ひと)となり、077宣伝歌(せんでんか)やら出鱈目(でたらめ)(うた)(うた)(なが)(かう)(つづ)けた。078()益々(ますます)()(わた)綿入(わたいれ)肌着(はだぎ)愈々(いよいよ)(ねつ)して()る。079(あめ)(すく)なく空気(くうき)乾燥(かんさう)してゐる地方(ちはう)だから(あま)(あせ)()ないが、080(のど)(かは)(こと)(おびただ)しい。081()うしたものか(この)()(かぎ)つて(みづ)らしい(もの)(うま)小便(せうべん)(たまり)すら見付(みつ)からぬ、082さりとて()()るべき手段(しゆだん)もない、083行路(ゆくて)(うま)(まか)せつつ(すす)むうち、084奇岩(きがん)()(かさ)ねた()うな岩山(いはやま)(ふもと)(たつ)した。085(とき)(すで)午後(ごご)()()()ぐる(ころ)であつた。086岩山(いはやま)()()(ふもと)青野原(あをのはら)一部(いちぶ)に、087土地(とち)一間(いつけん)(ばか)陥落(かんらく)した場所(ばしよ)があり、088地下層(ちかそう)解氷(かいひやう)(ため)真黒(まつくろ)(みづ)()きこぼれてゐる。089(うま)(その)(あぜ)近付(ちかづ)けて()ると、090(うま)(よろこ)(さき)(あらそ)うてガブガブと()()した。091スルト如何(いか)にしけん日出雄(ひでを)は『(わし)はモウ此処(ここ)から(うご)かぬのだ』と大喝(だいかつ)したかと(おも)へば、092もう(その)姿(すがた)()えず、093(その)(うま)素知(そし)らぬ(かほ)(くさ)()むでゐる。094坂本(さかもと)早速(さつそく)下馬(げば)してウロウロと(さが)(まは)り、095(やが)()(きた)つて真澄別(ますみわけ)(むか)ひ、
096坂本(さかもと)先生(せんせい)()(やま)(はら)岩窟(がんくつ)がありますが、097(その)(なか)瞑目(めいもく)静坐(せいざ)してゐられます。098()うしたら()いでせう』
099 真澄別(ますみわけ)守高(もりたか)(とも)(ただ)ちに岩窟(がんくつ)(いた)()れば、100日出雄(ひでを)神懸(かみがかり)全集(6巻p204)と愛世版は「神懸」、校定版は「帰神(かむがかり)」。となつてゐる。101真澄別(ますみわけ)はその()(さと)り、
102真澄(ますみ)守高(もりたか)さん、103(いま)進路(しんろ)吾々(われわれ)(おも)うて()るのと(ちが)(やう)だし、104大分(だいぶん)(あや)しい(てん)もあるから、105(しばら)此処(ここ)根城(ねじろ)とする(こと)にしようぢやないか』
106守高(もりたか)『さうだ、107(ぼく)賛成(さんせい)108此処(ここ)高熊山(たかくまやま)岩窟(がんくつ)()()てもゐるし、109尋常事(ただごと)ぢやなからう』
110 一行(いつかう)此処(ここ)当分(たうぶん)宿営(しゆくえい)決心(けつしん)()め、111(わう)瓚璋(さんしやう)をして(この)(こと)報告(はうこく)せしむべく()占魁(せんくわい)(あと)()はしめた。112日出雄(ひでを)荷物(にもつ)(すなは)西王母(せいわうぼ)(ふく)113宣伝師(せんでんし)(ふく)宣伝師服の「師」は底本通り。全集、校定版、愛世版とも。その()手廻(てまは)(ひん)(ならび)食糧(しよくりやう)残品(ざんぴん)()んだ二台(にだい)轎車(けうしや)114(やく)(いち)時間(じかん)(はん)(おく)れて此処(ここ)到着(たうちやく)した。115(この)二台(にだい)轎車(けうしや)山田(やまだ)文次郎(ぶんじらう)第13章の山田文治郎と同一人物か?便乗(びんじよう)監督(かんとく)し、116洮南(たうなん)より軍需品(ぐんじゆひん)(とう)積載(せきさい)して索倫(ソーロン)(きた)り、117(その)(まま)帰途(きと)危険(きけん)(おもんぱか)つて随伴(ずゐはん)したのである。118轎車(けうしや)より材料(ざいれう)取出(とりだ)して野営(やえい)準備(じゆんび)着手(ちやくしゆ)される、119一方(いつぱう)120(うま)(かつ)()やした真黒(まつくろ)(みづ)は、121明礬(みやうばん)利用(りよう)して飲料用(いんれうよう)浄化(じやうくわ)せられる。122枯木(かれき)(えだ)(あつ)めて(これ)()かす、123(ちや)()れたら(くろ)インキになつたから、124こら鉄鉱泉(てつくわうせん)ですよ』と(さわ)()てるのは坂本(さかもと)である。
125 ()(やうや)西(にし)臼搗(うすつ)(そら)(ほし)(かがや)()むる(ころ)126(ちやう)彦三(けんさん)部隊(ぶたい)殿(しんが)りとして到着(たうちやく)(きた)り、127真澄別(ますみわけ)より事情(じじやう)聴取(ききと)り、
128(ちやう)彦三(けんさん)『それでは(わたくし)()(かは)つて()保護(ほご)申上(まをしあ)げます、129(わたし)(はう)には()(こめ)牛肉(ぎうにく)(いく)らかあります、130先生(せんせい)がお(うご)きにならねば、131(わたし)何時(いつ)(まで)もお(そば)(とど)まつて()保護(ほご)いたします』
132とて部下(ぶか)(めい)じて()()しを開始(かいし)し、133スツカリ(こし)()ゑて(しま)つた。134やがて日出雄(ひでを)岩窟(がんくつ)より()(きた)135(にぎ)やかな野天(のてん)食堂(しよくだう)(ひら)かれた。
136 (この)(とき)(わう)瓚璋(さんしやう)()(かへ)り、137()以下(いか)全部隊(ぜんぶたい)(やく)五十(ごじふ)支里(しり)前方(ぜんぱう)屯営(とんえい)()り、138其処(そこ)には人家(じんか)四五(しご)(けん)あれど飲料水(いんれうすゐ)不足(ふそく)なる(こと)や、139()(みづ)(もと)めて(いそ)いだのであるが部隊(ぶたい)整理(せいり)次第(しだい)()(むか)ひに()(こと)など報告(はうこく)した。140真澄別(ますみわけ)(さら)岡崎(をかざき)萩原(はぎはら)(たい)何事(なにごと)名刺(めいし)(うら)(したた)め、141(をん)長興(ちやうこう)使(つかひ)として前方(ぜんぱう)駐屯所(ちうとんしよ)(むか)(うま)(いそ)がしめ、142(ここ)一同(いちどう)(しん)()くこととなつた。
143大正一四、八、筆録)
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