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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
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第7巻(午の巻)
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第11巻(戌の巻)
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第13巻(子の巻)
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特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
01 水火訓
02 神示の経綸
03 金剛心
04 微燈の影
05 心の奥
06 出征の辞
07 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
08 聖雄と英雄
09 司令公館
10 奉天出発
11 安宅の関
12 焦頭爛額
13 洮南旅館
14 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
15 公爺府入
16 蒙古の人情
17 明暗交々
18 蒙古気質
19 仮司令部
20 春軍完備
21 索倫本営
第4篇 神軍躍動
22 木局収ケ原
23 下木局子
24 木局の月
25 風雨叱咤
26 天の安河
27 奉天の渦
28 行軍開始
29 端午の日
30 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
31 強行軍
32 弾丸雨飛
33 武装解除
34 竜口の難
35 黄泉帰
36 天の岩戸
37 大本天恩郷
38 世界宗教聯合会
39 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
余白歌
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> 第1篇 日本より奉天まで > 第7章 奉天の夕
<<< 出征の辞
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(N)
聖雄と英雄 >>>
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第七章
奉天
(
ほうてん
)
の
夕
(
ゆふべ
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第1篇 日本より奉天まで
よみ(新仮名遣い):
にっぽんよりほうてんまで
章:
第7章 奉天の夕
よみ(新仮名遣い):
ほうてんのゆうべ
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月15日(旧06月26日)
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
日出雄は真澄別とただ二人、二月十三日午前三時二十八分の綾部発列車の車上の人となった。見送りは湯浅研三、奥村某のただ二人のみであった。
亀岡で名田彦、守高の両人が合流し、四人連れとなって京都に着いた。ここで唐国別と合流し、西行き列車に乗り込んだ。
十三日午後八時、関釜連絡線に登場した。十四日の午前八時、釜山に上陸し、十時発の朝鮮鉄道にて奉天に向かった。
二月十五日午後六時三十分、奉天平安通りの水也商会に入った。そこでは先発していた隆光彦をはじめ、萩原敏明、岡崎鉄首、佐々木弥市、大倉伍一ら水也商会の店員が迎え出た。
岡崎鉄首はとうとうと、中国を押さえるためには蒙古に進出する以外にない、と自説を開陳した。そして、何とか日出雄を盧占魁に同道させて蒙古に展開させようとした。
日出雄は蒙古入りの意思を一同に明らかにし、盧占魁との面会に同意した。その夜の八時半に二台の自動車を連ねて奉天郊外の盧占魁公館へ乗りつけた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2024/1/1出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-01-05 16:05:54
OBC :
rmnm07
愛善世界社版:
57頁
八幡書店版:
第14輯 569頁
修補版:
校定版:
58頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
東魚
(
とうぎよ
)
来
(
きた
)
つて
西海
(
せいかい
)
を
呑
(
の
)
む。
002
日
(
ひ
)
西天
(
せいてん
)
に
没
(
ぼつ
)
すること
三百
(
さんびやく
)
七十
(
しちじふ
)
余
(
よ
)
日
(
じつ
)
、
003
西鳥
(
せいてう
)
来
(
きた
)
りて
東魚
(
とうぎよ
)
を
喰
(
は
)
む。
004
右
(
みぎ
)
の
言葉
(
ことば
)
は、
005
聖徳
(
しやうとく
)
太子
(
たいし
)
の
当初
(
たうしよ
)
百王
(
ひやくわう
)
治天
(
ぢてん
)
の
安危
(
あんき
)
を
鑒考
(
かんかう
)
されて
我
(
わ
)
が
日本
(
につぽん
)
一洲
(
いつしう
)
の
未来記
(
みらいき
)
を
書
(
か
)
きおかれたのだと
称
(
しよう
)
せられ、
006
我国
(
わがくに
)
古来
(
こらい
)
聖哲
(
せいてつ
)
が
千古
(
せんこ
)
の
疑問
(
ぎもん
)
として
此
(
この
)
解決
(
かいけつ
)
に
苦
(
くるし
)
みて
居
(
ゐ
)
たのである。
007
日出雄
(
ひでを
)
は
右
(
みぎ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
対
(
たい
)
し
008
我
(
わが
)
国家
(
こくか
)
の
前途
(
ぜんと
)
に
横
(
よこ
)
たはれる
或物
(
あるもの
)
を
認
(
みと
)
めて、
009
之
(
これ
)
が
対応策
(
たいおうさく
)
を
講
(
かう
)
ぜねばならぬことを
深
(
ふか
)
く
慮
(
おもんぱか
)
つた。
010
彼
(
かれ
)
は
真澄別
(
ますみわけ
)
と
唯
(
ただ
)
二人
(
ふたり
)
、
011
二
(
に
)
月
(
ぐわつ
)
十三
(
じふさん
)
日
(
にち
)
の
午前
(
ごぜん
)
三
(
さん
)
時
(
じ
)
二十八
(
にじふはち
)
分
(
ふん
)
聖地
(
せいち
)
発
(
はつ
)
列車
(
れつしや
)
上
(
じやう
)
の
人
(
ひと
)
となつた。
012
駅
(
えき
)
に
見送
(
みおく
)
るものは
湯浅
(
ゆあさ
)
研三
(
けんざう
)
、
013
奥村
(
おくむら
)
某
(
ぼう
)
の
二人
(
ふたり
)
のみであつた。
014
いつも
彼
(
かれ
)
が
旅行
(
りよかう
)
には
大本
(
おほもと
)
の
役員
(
やくゐん
)
信徒
(
しんと
)
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
或
(
あるひ
)
は
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
送
(
おく
)
り
迎
(
むか
)
へのあるのを
常
(
つね
)
として
居
(
ゐ
)
た。
015
然
(
しか
)
るに
此
(
この
)
日
(
ひ
)
は
唯
(
ただ
)
二人
(
ふたり
)
の
信徒
(
しんと
)
に
送
(
おく
)
られて
行
(
い
)
つた
事
(
こと
)
は、
016
此
(
この
)
計画
(
けいくわく
)
の
暫時
(
ざんじ
)
他
(
た
)
に
漏
(
も
)
れむ
事
(
こと
)
を
躊躇
(
ちうちよ
)
したからであらう。
017
列車
(
れつしや
)
は
容赦
(
ようしや
)
なく
亀岡駅
(
かめをかえき
)
に
着
(
つ
)
いた。
018
前日
(
ぜんじつ
)
から
亀岡
(
かめをか
)
の
大道場
(
だいだうぢやう
)
瑞祥閣
(
ずゐしやうかく
)
に
出張
(
しゆつちやう
)
し
諸般
(
しよはん
)
の
準備
(
じゆんび
)
を
調
(
ととの
)
へて
居
(
ゐ
)
た
名田彦
(
なだひこ
)
、
019
守高
(
もりたか
)
の
両氏
(
りやうし
)
は、
020
此処
(
ここ
)
に
搭乗
(
たふじよう
)
して
同行
(
どうかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
相
(
あひ
)
携
(
たづさ
)
へて
京都駅
(
きやうとえき
)
に
着
(
つ
)
いた。
021
而
(
しか
)
して
米倉
(
よねくら
)
嘉兵衛
(
かへゑ
)
、
022
米倉
(
よねくら
)
範治
(
はんぢ
)
が
列車
(
れつしや
)
に
乗込
(
のりこ
)
んで
居
(
ゐ
)
た。
023
京都駅
(
きやうとえき
)
に
着
(
つ
)
いて
朝飯
(
あさはん
)
を
喫
(
きつ
)
し、
024
吹雪
(
ふぶき
)
に
曝
(
さら
)
されて
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
余
(
あま
)
り
西行
(
にしゆき
)
列車
(
れつしや
)
を
待
(
ま
)
つた。
025
茲
(
ここ
)
には
唐国別
(
からくにわけ
)
夫妻
(
ふさい
)
が
先着
(
せんちやく
)
して
居
(
ゐ
)
た。
026
各
(
かく
)
望遠鏡
(
ばうゑんきやう
)
を
一個
(
いつこ
)
宛
(
づつ
)
携帯
(
けいたい
)
し、
027
手荷物
(
てにもつ
)
を
大
(
だい
)
トランクに
納
(
をさ
)
め、
028
茲
(
ここ
)
に
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
唐国別
(
からくにわけ
)
夫人
(
ふじん
)
や、
029
米倉
(
よねくら
)
嘉兵衛
(
かへゑ
)
、
030
範治
(
はんぢ
)
に
袂
(
たもと
)
を
分
(
わか
)
ち、
031
汽笛
(
きてき
)
の
声
(
こゑ
)
も
勇
(
いさ
)
ましく
西下
(
せいか
)
する
事
(
こと
)
となつた。
032
十三
(
じふさん
)
日
(
にち
)
午後
(
ごご
)
八
(
はち
)
時
(
じ
)
関釜
(
くわんぷ
)
連絡船
(
れんらくせん
)
昌慶丸
(
しやうけいまる
)
に
搭乗
(
たふじよう
)
した。
033
天地
(
てんち
)
の
神明
(
しんめい
)
はこの
一行
(
いつかう
)
の
壮図
(
さうと
)
を
擁護
(
えうご
)
するものの
如
(
ごと
)
く、
034
関釜間
(
くわんぷかん
)
の
航海
(
かうかい
)
は
極
(
きは
)
めて
平穏
(
へいおん
)
であつた。
035
翌
(
よく
)
十四日
(
じふよつか
)
午前
(
ごぜん
)
八
(
はち
)
時
(
じ
)
釜山港
(
ふざんかう
)
に
無事
(
ぶじ
)
上陸
(
じやうりく
)
し、
036
十
(
じふ
)
時
(
じ
)
発
(
はつ
)
朝鮮
(
てうせん
)
鉄道
(
てつだう
)
の
一等室
(
いつとうしつ
)
に
納
(
をさ
)
まりかへつて
奉天
(
ほうてん
)
に
向
(
むか
)
ふ
事
(
こと
)
となつた。
037
車中
(
しやちう
)
には
本荘
(
ほんじやう
)
少将
(
せうしやう
)
及
(
およ
)
び
日出雄
(
ひでを
)
、
038
真澄別
(
ますみわけ
)
、
039
唐国別
(
からくにわけ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
であつた。
040
而
(
しか
)
して
名田彦
(
なだひこ
)
、
041
守高
(
もりたか
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
二等室
(
にとうしつ
)
の
客
(
きやく
)
となつた。
042
二
(
に
)
月
(
ぐわつ
)
十五
(
じふご
)
日
(
にち
)
安東県
(
あんとうけん
)
の
税関
(
ぜいくわん
)
も
無事
(
ぶじ
)
通過
(
つうくわ
)
して、
043
午後
(
ごご
)
六
(
ろく
)
時
(
じ
)
三十分
(
さんじつぷん
)
奉天
(
ほうてん
)
平安通
(
へいあんどほ
)
りの
水也
(
みづや
)
商会
(
しやうくわい
)
に
入
(
い
)
る
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
た。
044
彼
(
かれ
)
が
車中
(
しやちう
)
に
於
(
お
)
ける
和歌
(
わか
)
の
一二首
(
いちにしゆ
)
を
紹介
(
せうかい
)
する。
045
蓬来
(
ほうらい
)
の
島
(
しま
)
をやうやく
立出
(
たちい
)
でて
見
(
み
)
なれぬ
国
(
くに
)
の
旅
(
たび
)
をなすかな
046
水也
(
みづや
)
商会
(
しやうくわい
)
に
到着
(
たうちやく
)
すると、
047
先着
(
せんちやく
)
の
隆光彦
(
たかてるひこ
)
、
048
萩原
(
はぎはら
)
敏明
(
びんめい
)
及
(
およ
)
び
数名
(
すうめい
)
の
店員
(
てんゐん
)
が
停車場
(
ていしやぢやう
)
に
出迎
(
でむか
)
へた。
049
待設
(
まちまう
)
けて
居
(
ゐ
)
た
満州
(
まんしう
)
浪人
(
らうにん
)
の
岡崎
(
をかざき
)
鉄首
(
てつしゆ
)
や
佐々木
(
ささき
)
弥市
(
やいち
)
、
050
大倉
(
おほくら
)
伍一
(
ごいち
)
の
三
(
さん
)
名
(
めい
)
と、
051
揚
(
やう
)
萃廷
(
すゐてい
)
と
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
が
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
た。
052
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
日出雄
(
ひでを
)
に
対
(
たい
)
し、
053
先
(
ま
)
づ
初
(
しよ
)
対面
(
たいめん
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
を
了
(
を
)
はり、
054
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
の
知己
(
ちき
)
の
如
(
ごと
)
き
打
(
う
)
ち
解
(
と
)
けた
態度
(
たいど
)
にて、
055
満蒙
(
まんもう
)
の
現状
(
げんじやう
)
や、
056
肇国会
(
てうこくくわい
)
の
主意
(
しゆい
)
や
蒙古
(
もうこ
)
事情
(
じじやう
)
などを
滔々
(
たうたう
)
と
弁
(
べん
)
じ
立
(
た
)
てたのである。
057
岡崎
(
をかざき
)
『
私
(
わたし
)
は
日露
(
にちろ
)
戦争
(
せんそう
)
に
従軍
(
じうぐん
)
したきり
支那
(
しな
)
に
留
(
とど
)
まつて、
058
第一
(
だいいち
)
革命
(
かくめい
)
から
引続
(
ひきつづ
)
き
東亜
(
とうあ
)
の
為
(
ため
)
に、
059
革命
(
かくめい
)
事業
(
じげふ
)
にのみ
熱中
(
ねつちゆう
)
して
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
です。
060
併
(
しか
)
し
支那人
(
しなじん
)
は
個人
(
こじん
)
としては
生活
(
せいくわつ
)
して
行
(
ゆ
)
くだけの
力
(
ちから
)
は
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
るが、
061
国家
(
こくか
)
とか
国体
(
こくたい
)
とかとして
生存
(
せいぞん
)
する
資質
(
ししつ
)
が
具
(
そな
)
はつて
居
(
を
)
りませぬ。
062
それ
故
(
ゆゑ
)
に
幾度
(
いくど
)
革命
(
かくめい
)
を
行
(
や
)
つても、
063
骨折損
(
ほねをりぞん
)
の
疲労儲
(
くたびれまう
)
けとなつて
了
(
しま
)
ひ、
064
実効
(
じつかう
)
を
収
(
をさ
)
むる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないのであります。
065
支那
(
しな
)
と
云
(
い
)
ふ
国
(
くに
)
は
頭
(
あたま
)
から
日本
(
につぽん
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
る、
066
さうして
自分
(
じぶん
)
に
利益
(
りえき
)
のある
事業
(
じげふ
)
と
見
(
み
)
れば
喉
(
のど
)
を
鳴
(
な
)
らして
飛
(
と
)
びつくが、
067
其
(
その
)
利益
(
りえき
)
と
相反
(
あひはん
)
する
場合
(
ばあひ
)
は
義理
(
ぎり
)
も
人情
(
にんじやう
)
も
捨
(
す
)
てて
直
(
す
)
ぐ
離
(
はな
)
れ
去
(
さ
)
つて
了
(
しま
)
ひます。
068
併
(
しか
)
しながら
日本
(
につぽん
)
と
支那
(
しな
)
は
唇歯
(
しんし
)
輔車
(
ほしや
)
の
関係
(
くわんけい
)
があり、
069
何
(
ど
)
うしても
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
を
携
(
たづさ
)
へて
国運
(
こくうん
)
の
発展
(
はつてん
)
を
図
(
はか
)
らねばならないのです。
070
日本
(
につぽん
)
の
為政者
(
いせいしや
)
の
中
(
なか
)
では
日支
(
につし
)
親善
(
しんぜん
)
とか、
071
共存
(
きようぞん
)
共栄
(
きようえい
)
とか
種々
(
しゆじゆ
)
の
支那
(
しな
)
の
御
(
ご
)
機嫌取
(
きげんと
)
りの
文句
(
もんく
)
を
並
(
なら
)
べて
居
(
ゐ
)
るものがありますが、
072
支那人
(
しなじん
)
は
却
(
かへ
)
つて
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に
対
(
たい
)
し
嫌忌
(
けんき
)
の
情
(
じやう
)
を
抱
(
いだ
)
き
且
(
か
)
つ
侮辱
(
ぶじよく
)
するやうな
傾向
(
けいかう
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
ります。
073
何
(
ど
)
うしても
支那人
(
しなじん
)
の
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし、
074
日本
(
につぽん
)
と
相
(
あひ
)
提携
(
ていけい
)
して
行
(
ゆ
)
かねばならぬと
云
(
い
)
ふ
理由
(
りいう
)
を
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
悟
(
さと
)
らしむるには、
075
普通
(
ふつう
)
の
計画
(
けいくわく
)
では
駄目
(
だめ
)
です。
076
東三省
(
とうさんしやう
)
の
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
だつて、
077
直隷
(
ちよくれい
)
の
呉
(
ご
)
佩孚
(
はいふ
)
だつて、
078
表
(
おもて
)
に
親日派
(
しんにちは
)
を
標榜
(
へうばう
)
して
居
(
ゐ
)
るが、
079
其
(
その
)
内心
(
ないしん
)
は
決
(
けつ
)
して
然
(
さ
)
うではない、
080
政治
(
せいぢ
)
上
(
じやう
)
の
便宜
(
べんぎ
)
の
為
(
ため
)
に
或
(
ある
)
時機
(
じき
)
迄
(
まで
)
親日
(
しんにち
)
を
装
(
よそほ
)
うて
居
(
ゐ
)
るのです。
081
現
(
げん
)
に
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
の
顧問
(
こもん
)
となつて
居
(
ゐ
)
る
日本人
(
につぽんじん
)
も
沢山
(
たくさん
)
ありますが、
082
肝腎
(
かんじん
)
の
相談事
(
さうだんごと
)
は
日本人
(
につぽんじん
)
以外
(
いぐわい
)
の
顧問
(
こもん
)
と
密議
(
みつぎ
)
し、
083
義理
(
ぎり
)
一遍
(
いつぺん
)
の
報告
(
はうこく
)
を
日本
(
につぽん
)
の
顧問
(
こもん
)
にする
位
(
くらゐ
)
のものであります。
084
是
(
これ
)
を
見
(
み
)
ても
癪
(
しやく
)
に
触
(
さは
)
るのは
支那
(
しな
)
の
日本
(
につぽん
)
に
対
(
たい
)
する
遣
(
や
)
り
方
(
かた
)
であります。
085
それだから
支那人
(
しなじん
)
を
心底
(
しんてい
)
より
我
(
わが
)
帝国
(
ていこく
)
に
倚
(
よ
)
らしむるには、
086
彼
(
かれ
)
の
最
(
もつと
)
も
難治
(
なんぢ
)
として
居
(
ゐ
)
る
蒙古
(
もうこ
)
に
於
(
おい
)
て
一大
(
いちだい
)
新
(
しん
)
王国
(
わうこく
)
を
建設
(
けんせつ
)
し
日本
(
につぽん
)
の
威力
(
いりよく
)
を
現
(
あら
)
はしてからでなくては、
087
何時
(
いつ
)
までかかつても
支那
(
しな
)
は
日本
(
につぽん
)
に
信頼
(
しんらい
)
しないだらうと
思
(
おも
)
ひます。
088
それ
故
(
ゆゑ
)
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
は
犬養
(
いぬがひ
)
先生
(
せんせい
)
や、
089
頭山
(
とうやま
)
先生
(
せんせい
)
、
090
内田
(
うちだ
)
先生
(
せんせい
)
、
091
末永
(
すゑなが
)
節
(
せつ
)
等
(
とう
)
の
国士
(
こくし
)
と
計
(
はか
)
つて、
092
肇国会
(
てうこくくわい
)
なるものを
創立
(
さうりつ
)
し、
093
肇国会
(
てうこくくわい
)
の
徽章
(
きしやう
)
を
二十万
(
にじふまん
)
個
(
こ
)
許
(
ばか
)
り
朝鮮
(
てうせん
)
、
094
満州
(
まんしう
)
、
095
西比利亜
(
シベリヤ
)
方面
(
はうめん
)
にバラ
撒
(
ま
)
いて
大
(
おほい
)
に
画策
(
くわくさく
)
して
居
(
ゐ
)
るのです。
096
大体
(
だいたい
)
日本
(
につぽん
)
政府
(
せいふ
)
殊
(
こと
)
に
外務省
(
ぐわいむしやう
)
の
腰
(
こし
)
が
弱
(
よは
)
いものだから
097
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
計画
(
けいくわく
)
は
成功
(
せいかう
)
しない。
098
そこで
何
(
ど
)
うしても
東亜
(
とうあ
)
の
聯盟
(
れんめい
)
を
計
(
はか
)
るには
蒙古
(
もうこ
)
に
根拠
(
こんきよ
)
を
置
(
お
)
かねばならぬ。
099
蒙古
(
もうこ
)
は
最
(
もつと
)
も
古
(
ふる
)
い
国
(
くに
)
で
喇嘛教
(
らまけう
)
の
盛
(
さか
)
んな
土地
(
とち
)
です。
100
而
(
そ
)
して
蒙古人
(
もうこじん
)
は
支那人
(
しなじん
)
や
露西亜
(
ろしあ
)
人
(
じん
)
を
非常
(
ひじやう
)
に
嫌
(
きら
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
101
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
は
日本人
(
につぽんじん
)
と
何
(
ど
)
うかして
完全
(
くわんぜん
)
な
提携
(
ていけい
)
をなし、
102
殆
(
ほと
)
んど
亡国
(
ばうこく
)
に
瀕
(
ひん
)
せる
蒙古
(
もうこ
)
を
再興
(
さいこう
)
せむと
焦慮
(
せうりよ
)
して
居
(
ゐ
)
るのです。
103
吾々
(
われわれ
)
満州
(
まんしう
)
浪人
(
らうにん
)
の
生命
(
せいめい
)
とする
所
(
ところ
)
は
104
蒙古
(
もうこ
)
の
大平野
(
だいへいや
)
に
新王国
(
しんわうこく
)
を
建設
(
けんせつ
)
するにあるのです。
105
慓悍
(
へうかん
)
なる
蒙古人
(
もうこじん
)
を
心服
(
しんぷく
)
させるには
何
(
ど
)
うしても
宗教
(
しうけう
)
で
無
(
な
)
くては
駄目
(
だめ
)
です。
106
何
(
ど
)
うか
先生
(
せんせい
)
済南
(
さいなん
)
行
(
ゆ
)
きも
結構
(
けつかう
)
でせうが、
107
それは
後
(
あと
)
に
廻
(
まは
)
して
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
蒙古
(
もうこ
)
の
一部
(
いちぶ
)
なりとも
探検
(
たんけん
)
して
貰
(
もら
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きますまいか。
108
決
(
けつ
)
して
之
(
これ
)
は
一個人
(
いちこじん
)
の
為
(
た
)
めではない、
109
我
(
わが
)
同胞
(
どうはう
)
一般
(
いつぱん
)
の
安全
(
あんぜん
)
の
為
(
た
)
め、
110
東亜
(
とうあ
)
の
民衆
(
みんしう
)
の
為
(
た
)
めですから』
111
日出雄
(
ひでを
)
『お
説
(
せつ
)
を
承
(
うけたま
)
はつて
私
(
わたし
)
は
益々
(
ますます
)
入蒙
(
にふもう
)
の
決心
(
けつしん
)
が
固
(
かた
)
まつたやうです。
112
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
五大教
(
ごだいけう
)
道院
(
だうゐん
)
紅卍字
(
こうまんじ
)
会
(
くわい
)
や、
113
悟善社
(
ごぜんしや
)
から
迎
(
むか
)
ひに
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
ますので、
114
隆光彦
(
たかてるひこ
)
さんに
一歩先
(
ひとあしさき
)
へ
行
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ひ、
115
準備
(
じゆんび
)
の
整
(
ととの
)
つた
上
(
うへ
)
先
(
ま
)
づ
北京
(
ペキン
)
済南
(
さいなん
)
に
出張
(
しゆつちやう
)
したいのです。
116
而
(
そ
)
して
何
(
ど
)
うしても
神戸
(
かうべ
)
道院
(
どうゐん
)
の
開院式
(
かいゐんしき
)
には
帰
(
かへ
)
らなくてはなりません。
117
僅
(
わづ
)
か
半月
(
はんつき
)
斗
(
ばか
)
りの
間
(
あひだ
)
に
蒙古
(
もうこ
)
にも
行
(
ゆ
)
き、
118
北京
(
ペキン
)
、
119
済南
(
さいなん
)
にも
行
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ますまい。
120
今回
(
こんくわい
)
は
蒙古
(
もうこ
)
のお
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いただけに
止
(
と
)
めておいて、
121
最初
(
さいしよ
)
の
目的
(
もくてき
)
たる
北京
(
ペキン
)
、
122
済南
(
さいなん
)
に
旅行
(
りよかう
)
したいと
思
(
おも
)
ひます』
123
隆光彦
(
たかてるひこ
)
『
先生
(
せんせい
)
124
是非
(
ぜひ
)
北京
(
ペキン
)
済南
(
さいなん
)
の
方
(
はう
)
から
片附
(
かたづ
)
けて
貰
(
もら
)
ひたいものです。
125
侯
(
こう
)
延爽
(
えんさう
)
に
先生
(
せんせい
)
のお
出
(
いで
)
になる
事
(
こと
)
を、
126
前以
(
まへもつ
)
て
発電
(
はつでん
)
しておきました、
127
此処
(
ここ
)
で
貴方
(
あなた
)
を
取
(
と
)
り
逃
(
に
)
がし
蒙古
(
もうこ
)
にやつては
128
紅卍字
(
こうまんじ
)
会
(
くわい
)
の
諸氏
(
しよし
)
に
対
(
たい
)
し
私
(
わたくし
)
の
顔
(
かほ
)
が
立
(
た
)
ちませぬから、
129
蒙古
(
もうこ
)
は
後
(
あと
)
に
廻
(
まは
)
して
貰
(
もら
)
ひたいものです。
130
道院
(
だうゐん
)
の
開院式
(
かいゐんしき
)
には
先生
(
せんせい
)
が
帰
(
かへ
)
つて
居
(
を
)
られねば
遠近
(
ゑんきん
)
の
信者
(
しんじや
)
が
非常
(
ひじやう
)
に
力
(
ちから
)
を
落
(
おと
)
しますから』
131
日出雄
(
ひでを
)
『それもさうだな。
132
乩示
(
けいじ
)
によつて
神戸
(
かうべ
)
道院
(
だうゐん
)
の
責任
(
せきにん
)
統掌
(
とうしやう
)
に
任
(
にん
)
ぜられて
居
(
ゐ
)
るのだから、
133
此方
(
こつち
)
を
後
(
あと
)
にする
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないだらう』
134
岡崎
(
をかざき
)
『それもさうでせうが、
135
北村
(
きたむら
)
さまは
副統掌
(
ふくとうしやう
)
ぢやありませぬか、
136
統掌
(
とうしやう
)
に
差支
(
さしつかへ
)
のあつた
時
(
とき
)
事務
(
じむ
)
を
代弁
(
だいべん
)
するための
副統掌
(
ふくとうしやう
)
でせう。
137
国家
(
こくか
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
には
代
(
か
)
へられますまい。
138
まげて
蒙古入
(
もうこいり
)
を
願
(
ねが
)
ひたいのです。
139
そして
蒙古
(
もうこ
)
の
英雄
(
えいいう
)
、
140
馬賊
(
ばぞく
)
の
大頭目
(
だいとうもく
)
たる
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
が、
141
もう
既
(
すで
)
に
既
(
すで
)
に
先生
(
せんせい
)
のお
出
(
いで
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ますから、
142
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
今晩
(
こんばん
)
の
中
(
うち
)
に
面会
(
めんくわい
)
して
頂
(
いただ
)
きたいものです。
143
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
られる
揚
(
やう
)
萃廷
(
すゐてい
)
氏
(
し
)
は
旧
(
もと
)
は
某県
(
ぼうけん
)
の
知事
(
ちじ
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
た
人
(
ひと
)
で、
144
今
(
いま
)
は
某
(
ぼう
)
新聞
(
しんぶん
)
記者
(
きしや
)
です。
145
此
(
この
)
人
(
ひと
)
が
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
の
代理
(
だいり
)
として
見
(
み
)
えたのですから、
146
盧
(
ろ
)
氏
(
し
)
の
心
(
こころ
)
も
酌
(
く
)
み
取
(
と
)
つて
抂
(
ま
)
げて
入蒙
(
にふもう
)
して
頂
(
いただ
)
きたいものです』
147
日出雄
(
ひでを
)
『
盧
(
ろ
)
は
蒙古
(
もうこ
)
の
英雄
(
えいゆう
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
予
(
か
)
ねて
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ますが、
148
満蒙
(
まんもう
)
に
於
(
お
)
ける
盧
(
ろ
)
の
勢力
(
せいりよく
)
は
何
(
ど
)
んなものでせうか』
149
岡崎
(
をかざき
)
『
盧
(
ろ
)
の
位置
(
ゐち
)
は
日本人
(
につぽんじん
)
で
云
(
い
)
へば
伊藤
(
いとう
)
博文
(
はくぶん
)
の
様
(
やう
)
な
名望家
(
めいばうか
)
です。
150
そして
蒙古
(
もうこ
)
の
王族
(
わうぞく
)
や、
151
住民
(
ぢうみん
)
や、
152
馬賊
(
ばぞく
)
などは
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
を
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
如
(
ごと
)
く
尊敬
(
そんけい
)
して
居
(
ゐ
)
ます。
153
子供
(
こども
)
が
泣
(
な
)
いた
時
(
とき
)
、
154
盧
(
ろ
)
が
来
(
く
)
ると
云
(
い
)
へば
子供
(
こども
)
が
泣
(
な
)
きやむと
云
(
い
)
ふ
如
(
ごと
)
き
勢力
(
せいりよく
)
で、
155
沢山
(
たくさん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
有
(
いう
)
し、
156
其
(
その
)
部下
(
ぶか
)
は
盧
(
ろ
)
の
為
(
た
)
めには
一
(
ひと
)
つよりない
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てても
構
(
かま
)
はないと
云
(
い
)
ふ
位
(
くらゐ
)
ですから、
157
彼
(
かれ
)
をお
使
(
つか
)
ひになつて、
158
マホメツト
式
(
しき
)
に
蒙古
(
もうこ
)
に
大本
(
おほもと
)
王国
(
わうごく
)
を
建設
(
けんせつ
)
し、
159
帝国
(
ていこく
)
の
新
(
しん
)
植民地
(
しよくみんち
)
を
拓
(
ひら
)
く
事
(
こと
)
に
努力
(
どりよく
)
せられたならば
屹度
(
きつと
)
成功
(
せいこう
)
するでせう。
160
肇国会
(
てうこくくわい
)
に
於
(
おい
)
ても
此
(
この
)
事業
(
じげふ
)
に
付
(
つ
)
いては
全力
(
ぜんりよく
)
を
傾注
(
けいちう
)
して
居
(
ゐ
)
ますが、
161
何分
(
なにぶん
)
中堅
(
ちうけん
)
となつて
蒙古
(
もうこ
)
に
進出
(
しんしゆつ
)
する
人物
(
じんぶつ
)
が
無
(
な
)
いので
困
(
こま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのです』
162
日出雄
(
ひでを
)
『
私
(
わたし
)
は
単
(
たん
)
なる
宗教家
(
しうけうか
)
であつて
政治
(
せいぢ
)
に
疎
(
うと
)
く、
163
且
(
か
)
つ
軍隊
(
ぐんたい
)
に
関
(
くわん
)
する
智識
(
ちしき
)
はゼロですから
駄目
(
だめ
)
だらうと
思
(
おも
)
ひます』
164
岡崎
(
をかざき
)
『
先生
(
せんせい
)
そんな
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
はいりますまい。
165
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
数万
(
すうまん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
有
(
いう
)
する
蒙古
(
もうこ
)
の
英雄
(
えいいう
)
を
従
(
した
)
がへて
行
(
ゆ
)
くのですから、
166
屹度
(
きつと
)
目的
(
もくてき
)
は
成就
(
じやうじゆ
)
するでせう。
167
先
(
ま
)
づ
大庫倫
(
だいクウロン
)
を
根拠
(
こんきよ
)
とし
新彊
(
しんきやう
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れ
赤軍
(
せきぐん
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
や
)
はすには、
168
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
位
(
ぐらゐ
)
適当
(
てきたう
)
な
人物
(
じんぶつ
)
はありますまい。
169
ナア
佐々木
(
ささき
)
、
170
大倉
(
おほくら
)
171
さうぢやないか』
172
と
二人
(
ふたり
)
の
満州
(
まんしう
)
浪人
(
らうにん
)
を
顧
(
かへり
)
みた。
173
佐々木
(
ささき
)
、
174
大倉
(
おほくら
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
175
佐々木、大倉
『
成程
(
なるほど
)
君
(
きみ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りだ。
176
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
先生
(
せんせい
)
と
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
との
提携
(
ていけい
)
を
願
(
ねが
)
ひたいものだ。
177
世間
(
せけん
)
の
奴
(
やつ
)
は
吾々
(
われわれ
)
が
先生
(
せんせい
)
と
共
(
とも
)
に
行動
(
かうどう
)
するのを
見
(
み
)
て
178
満州
(
まんしう
)
浪人
(
らうにん
)
が
又
(
また
)
日本
(
につぽん
)
の
宗教家
(
しうけうか
)
を
喰物
(
くひもの
)
にしよると
云
(
い
)
ふ
連中
(
れんぢう
)
があるかも
知
(
し
)
れないが、
179
吾々
(
われわれ
)
は
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
人物
(
じんぶつ
)
ではありませぬ。
180
其処
(
そこ
)
等
(
ら
)
にゴロついて
居
(
ゐ
)
る
満州
(
まんしう
)
ゴロとは
些
(
すこ
)
し
違
(
ちが
)
つた
考
(
かんが
)
へを
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
181
何
(
ど
)
うか
岡崎
(
をかざき
)
の
説
(
せつ
)
に
賛成
(
さんせい
)
して
貰
(
もら
)
へますまいか』
182
日出雄
(
ひでを
)
は
暫
(
しばら
)
く
考
(
かんが
)
へた
後
(
のち
)
、
183
面
(
おもて
)
を
輝
(
かがや
)
かし
乍
(
なが
)
ら、
184
日出雄
『
実
(
じつ
)
は
私
(
わたし
)
も
日本
(
につぽん
)
の
官憲
(
くわんけん
)
や
有識
(
いうしき
)
階級
(
かいきふ
)
及
(
およ
)
び
日本人
(
につぽんじん
)
の
大多数
(
だいたすう
)
から、
185
大本
(
おほもと
)
事件
(
じけん
)
の
突発
(
とつぱつ
)
によつて
大
(
おほい
)
なる
誤解
(
ごかい
)
を
受
(
う
)
け
且
(
か
)
つ
圧迫
(
あつぱく
)
を
加
(
くは
)
へられて
居
(
ゐ
)
るのです。
186
夫
(
そ
)
れ
故
(
ゆゑ
)
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
際
(
さい
)
一
(
ひと
)
つ
国家
(
こくか
)
の
為
(
た
)
めになる
大事業
(
だいじげふ
)
を
完成
(
くわんせい
)
して、
187
日頃
(
ひごろ
)
主張
(
しゆちやう
)
せる
愛神
(
あいしん
)
、
188
勤王
(
きんわう
)
、
189
報国
(
はうこく
)
の
至誠
(
しせい
)
を
天下
(
てんか
)
に
発表
(
はつぺう
)
し、
190
今迄
(
いままで
)
の
疑惑
(
ぎわく
)
を
解
(
と
)
くべき
必要
(
ひつえう
)
に
迫
(
せま
)
られて
居
(
を
)
ります。
191
現代
(
げんだい
)
の
内憂
(
ないいう
)
外患
(
ぐわいくわん
)
交々
(
こもごも
)
到
(
いた
)
り、
192
国難来
(
こくなんらい
)
の
声
(
こゑ
)
喧
(
かま
)
びすしき
我
(
わが
)
皇国
(
くわうこく
)
の
為
(
た
)
め、
193
東亜
(
とうあ
)
の
平和
(
へいわ
)
的
(
てき
)
聯盟
(
れんめい
)
を
実現
(
じつげん
)
する
為
(
た
)
め、
194
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
を
遂行
(
すひかう
)
せなくてはならないのです。
195
今
(
いま
)
の
時
(
とき
)
に
当
(
あた
)
つて
帝国
(
ていこく
)
の
為
(
た
)
め、
196
一身
(
いつしん
)
一家
(
いつか
)
を
賭
(
と
)
して
大経綸
(
だいけいりん
)
を
行
(
おこな
)
はねば、
197
我
(
わが
)
国家
(
こくか
)
の
前途
(
ぜんと
)
は
実
(
じつ
)
に
憂
(
うれ
)
ふべき
運命
(
うんめい
)
に
見舞
(
みま
)
はれはしないかと
憂慮
(
いうりよ
)
して
居
(
ゐ
)
るのです。
198
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
其
(
その
)
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
の
宅
(
たく
)
に
参
(
まゐ
)
り
同氏
(
どうし
)
の
意見
(
いけん
)
を
聞
(
き
)
いた
上
(
うへ
)
で
決定
(
けつてい
)
する
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう』
199
一行
(
いつかう
)
は
同夜
(
どうや
)
八時半
(
はちじはん
)
二台
(
にだい
)
の
自動車
(
じどうしや
)
を
連
(
つら
)
ねて
奉天城
(
ほうてんじやう
)
小南辺
(
せうなんへん
)
門外
(
もんぐわい
)
、
200
盧
(
ろ
)
の
公館
(
こうくわん
)
へと
馳
(
は
)
せつけた。
201
(
大正一四、八、一五
、筆録)
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