霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一一章 帰馬(きば)〔一一六二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻 篇:第3篇 河鹿の霊嵐 よみ:かじかのれいらん
章:第11章 帰馬 よみ:きば 通し章番号:1162
口述日:1922(大正11)年11月27日(旧10月9日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
治国別一行は、バラモン軍の片彦、久米彦両将軍の一隊が馬上にまたがり、困難の態で登ってくるようするを面白げに見下ろしている。
治国別は、先陣を願い出た万公に対して、三人心を合わせて敵の一人一人に善言美詞の言霊を浴びせかけるようにと言い渡した。
バラモン軍がやってくると、万公は細い谷道に飛び出して立ちはだかり、自分は三五教の宣伝使見習いだと名乗って止まるように呼ばわった。バラモン軍の騎士はそこをどけと怒鳴りつけ、万公と言い争いを始めた。
治国別は万公に、争いをしないで言霊を用いるようにと注意したが、万公はさっぱり言霊が出ないというので、晴公に代わりを命じた。しかしバラモン軍はその言霊には耳にもかけずに坂道を登ろうとする。
万公はバラモン軍を怒鳴りつけたので、軍隊の馬たちは荒れ狂いだした。治国別は荘重な声で歌い始めた。三五教の教えに目覚めて真の神の道を悟るように諭し聞かせる言霊に、バラモン軍の騎士たちは馬を飛び下りて一目散に山腹を駆け降り、元来た道を引き返し始めた。
治国別は改心させずに追い返したことを残念がったが、玉国別の一隊がさらに逃げてくる敵に言霊を発射するだろうとバラモン軍の後を追いかけた。万公は得意になって滑稽な歌を歌いながら坂を下って行く。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:166頁 八幡書店版:第8輯 89頁 修補版: 校定版:175頁 普及版:71頁 初版: ページ備考:
001 治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)は、002片彦(かたひこ)003久米彦(くめひこ)一隊(いつたい)馬上(ばじやう)(またが)り、004いとも困難(こんなん)(てい)にて(のぼ)(きた)様子(やうす)面白気(おもしろげ)見下(みおろ)して()る。
005万公(まんこう)『ヨウ、006おいでた おいでた強敵(きやうてき)御参(ござん)なれだ。007この(ほそ)坂道(さかみち)蜿蜒(えんえん)として長蛇(ちやうだ)(のぼ)るが(ごと)行進(かうしん)(きた)光景(くわうけい)(まる)絵巻物(ゑまきもの)()(やう)だなア。008霜黒葛(しもくろかづら)()るや()るや痩馬(やせうま)の、009毛曽呂(もそろ)毛曽呂(もそろ)()()(きた)るといふ珍妙奇天烈(ちんめうきてれつ)大部隊(だいぶたい)だ。010マアゆつくりと此処(ここ)()つて()ませう。011仮令(たとへ)何百人(なんびやくにん)()つた(ところ)一列(いちれつ)より(すす)(こと)出来(でき)ないのだから、012一人(ひとり)々々(ひとり)将棋倒(しやうぎだふ)しにやつつければ手間(てま)(ひま)()つたものぢやない、013さてもさても(うん)(わる)(やつ)だな。014一卒(いつそつ)(これ)(まも)れば、015万卒(ばんそつ)(すす)(あた)はざる絶所(ぜつしよ)()ふものは此処(ここ)(こと)だらう。016アハヽヽヽ、017治国別(はるくにわけ)(さま)018(なん)愉快(ゆくわい)ぢやありませぬか』
019治国別(はるくにわけ)仇人(あだびと)()()()れば流石(さすが)にも
020八岐大蛇(やまたをろち)姿(すがた)なるかな』
021万公(まんこう)面白(おもしろ)蜈蚣(むかで)(ぢん)()(なが)
022()せくる(てき)竜頭蛇尾(りうとうだび)(をは)はらむ』
023晴公(はるこう)遥々(はるばる)とハルナの(みやこ)()()でて
024河鹿峠(かじかたうげ)(あわ)()くかな』
025五三公(いそこう)(かぜ)()(この)山道(やまみち)(あわ)()
026五三公(いそこう)(これ)()法螺(ほら)()くなり』
027治国別(はるくにわけ)(こころ)せよ三人(みたり)(つかさ)惟神(かむながら)
028(かみ)(まか)せて刃向(はむか)ふな(ゆめ)
029万公(まんこう)大神(おほかみ)(やかた)(けが)枉神(まがかみ)
030見逃(みのが)(かへ)(こと)やあるべき』
031晴公(はるこう)(ひと)(みな)(あめ)(つち)との御子(みこ)なれば
032(あだ)()へども(にく)むべしやは』
033五三公(いそこう)一条(いちでう)(この)急坂(きふはん)(のぼ)()
034(うま)足並(あしなみ)(あやふ)()ゆるも』
035 治国別(はるくにわけ)悠然(いうぜん)として坂道(さかみち)(かたへ)(こし)(おろ)し、036(のぼ)()(てき)大部隊(だいぶたい)見下(みおろ)(なが)ら、
037『ヤ、038三人(さんにん)(もの)(ども)039(この)治国別(はるくにわけ)(てき)大将(たいしやう)掛合(かけあひ)(はじ)むるまで、040前等(まへたち)(はう)から(あわ)()しては()かないぞ、041呉々(くれぐれ)注意(ちゆうい)しておく』
042万公(まんこう)『さうだと(まを)して素知(そし)らぬ(かほ)して()れば、043いゝ()になつて斎苑館(いそやかた)進撃(しんげき)するぢやありませぬか。044(いま)となつて、045そんな(こと)仰有(おつしや)ると、046(なん)だか()りきつた(ちから)がサツパリ()けて(しま)ふぢやありませぬか』
047治国別(はるくにわけ)『これしきの敵軍(てきぐん)(たい)し、048かかる有利(いうり)地点(ちてん)陣取(ぢんど)(なが)ら、049(べつ)(ちから)(なに)()つたものぢやない。050一人(ひとり)々々(ひとり)(つかま)へて善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)(あび)せかけ、051(まこと)(みち)帰順(きじゆん)さすれば()いぢやないか。052(しか)(なが)らお前等(まへたち)(あわ)()すと、053(かへつ)折角(せつかく)作戦(さくせん)計画(けいくわく)画餅(ぐわへい)()(やう)(こと)があれば、054千仭(せんじん)(こう)一簣(いつき)()(やう)なものだ。055まづまづ()()いたが()からう』
056万公(まんこう)『さうだと()つて(なん)だか()(いさ)んでなりませぬわ。057(この)言霊戦(ことたません)(わたし)先陣(せんぢん)仰付(おほせつ)(くだ)されますれば有難(ありがた)(ござ)います』
058治国別(はるくにわけ)『ウン、059しつかりやれ、060(わし)はここでお(まへ)言霊(ことたま)発射(はつしや)()りを観戦(くわんせん)する。061晴公(はるこう)062五三公(いそこう)()してやるから、063三人(さんにん)(こころ)(あわ)(てき)(むか)つて慈悲(じひ)弾丸(だんぐわん)打出(うちだ)すのだ。064いゝか、065(わか)つたかな』
066五三公(いそこう)『エ、067(いま)自費(じひ)弾丸(だんぐわん)打出(うちだ)せと仰有(おつしや)いましたが、068(わたし)自費(じひ)弾丸(だんぐわん)官費(くわんぴ)弾丸(だんぐわん)()つてゐませぬが如何(どう)(いた)しませうかな』
069万公(まんこう)『エー、070(わか)りもせぬ(くせ)(しやべ)くるない。071慈悲(じひ)()(こと)(めぐみ)()(こと)だ。072(ひと)つわつて()へば(なさけ)()(こと)だ。073シンパシイの(こころ)(もつ)(てき)(むか)へと仰有(おつしや)るのだ。074貴様(きさま)如何(どう)しても現界的(げんかいてき)(あたま)()けぬと()えて、075(すぐ)何事(なにごと)でも統計的(とうけいてき)解釈(かいしやく)し、076官費(くわんぴ)だの自費(じひ)だのと会計係(くわいけいがかり)(なに)かの(やう)(すぐ)に、077そんな(ところ)()つて()きやがるのだ。078物質的(ぶつしつてき)欲望(よくばう)(あか)がとれぬと()えるわい。079本当(ほんたう)(こま)つたものだな。080モシ先生(せんせい)081こんな(やつ)言霊戦(ことたません)参加(さんか)させちや、082(かへつ)味方(みかた)不利(ふり)です。083五三公(いそこう)だけは(つつし)んで返上(へんじやう)(いた)しますから、084何卒(なにとぞ)085塵紙(ちりがみ)にでも(つつ)んで明日(あす)十二時(じふにじ)まで、086(ふところ)(たもと)()れてしまつておいて(くだ)さい』
087五三公(いそこう)(なに)(ぬか)しやがるのだい。088(おれ)虫族(むしけら)(あつかひ)にしてるぢやないか。089そんな(こと)善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)使(つか)神司(かむつかさ)()へるかい。090本当(ほんたう)言霊(ことたま)(わる)(やつ)だな』
091 (てき)軍隊(ぐんたい)峻坂(しゆんぱん)をエチエチと(やうや)四五間前(しごけんまへ)まで(のぼ)つて()た。092ズツと谷底(たにそこ)見渡(みわた)せば二三十丁(にさんじつちやう)ばかりも騎馬隊(きばたい)(つづ)いてゐる。093万公(まんこう)はツカツカと先鋒(せんぽう)()つた騎士(きし)(まへ)(すす)みより、094大手(おほて)(ひろ)げて、
095『バラモン(けう)軍人(いくさびと)(ども)096(しばら)()つた』
097騎士(きし)(その)(はう)吾々(われわれ)進軍(しんぐん)(さまた)(やう)(いた)すのか、098()しからぬ(やつ)だ。099そこ()け、100愚図々々(ぐづぐづ)(いた)すと、101(この)(やり)切先(きつさき)がお見舞(みまひ)(まを)すぞ』
102万公(まんこう)『アハヽヽヽ(ぬか)したりな(ぬか)したりな、103ヘナチヨコ(ざむらひ)()104(おれ)(たれ)だと心得(こころえ)てゐる。105勿体(もつたい)なくも(かたじけ)なくも、106天地(てんち)御先祖(ごせんぞ)(あら)はれ(たま)大国治立尊(おほくにはるたちのみこと)御守護(ごしゆご)(あそ)ばす三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)見習生(みならひせい)だ、107今日(こんにち)只今(ただいま)汝等(なんぢら)一隊(いつたい)河鹿峠(かじかたうげ)(わた)斎苑(いそ)(やかた)()()(きた)ると()き、108此処(ここ)()()せて()つたのだ。109サア(この)(さき)110一足(ひとあし)でも(すす)めるものなら(すす)んで()たがよからうぞ』
111大手(おほて)(ひろ)(まゆ)()()げし()をクリクリと回転(くわいてん)させ、112芝居(しばゐ)気取(きどり)になつて()えを()つた。
113騎士(きし)『アハヽヽヽ御供(ごく)にも()たぬ蠅虫(はいむし)()()114(その)広言(くわうげん)(のち)()かう。115サア(これ)からは(やり)(さび)だ、116観念(くわんねん)(いた)せ』
117万公(まんこう)『エー、118愚図々々(ぐづぐづ)(ぬか)すと言霊(ことたま)発射(はつしや)だぞ』
119騎士(きし)『アハヽヽヽヽ怪体(けたい)(やつ)(あら)はれたものだな』
120 先鋒隊(せんぽうたい)一人(ひとり)()()まつたので、121追々(おひおひ)やつて()騎馬隊(きばたい)急坂(きふはん)立止(たちど)まり、122立往生(たちわうじやう)(てい)である。123(うしろ)(はう)から久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)采配(さいはい)()()り、124(すす)(すす)め』と(きび)しき下知(げち)をやつて()る。125殿(しんがり)には(また)もや一人(ひとり)将軍(しやうぐん)126采配(さいはい)()()り『(すす)(すす)め』と叱咤(しつた)してゐる。127(さき)()つた騎士(きし)万公(まんこう)(さへぎ)られて(すす)みも()ず、128仏頂面(ぶつちやうづら)馬上(ばじやう)(さら)し、129(かみ)逆立(さかだ)てて呶鳴(どな)つてゐる。
130騎士(きし)『コリヤ、131小童子(こわつぱ)(ども)132(みち)()け』
133万公(まんこう)『ハヽヽヽヽ(よわ)つたか。134何程(なにほど)(てき)沢山(たくさん)()()(きた)るとも(この)難所(なんしよ)135一度(いちど)二人(ふたり)とかかる(こと)出来(でき)ようまい。136一人々々(ひとりひとり)虱殺(しらみごろ)しにやつてやらうかい』
137治国別(はるくにわけ)『コリヤコリヤ万公(まんこう)138(あらそ)ひを(いた)せとは(けつ)して命令(めいれい)しない。139何故(なぜ)善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)(もち)ひないのか』
140万公(まんこう)言霊(ことたま)よりも(わたし)(うで)先陣(せんぢん)(つと)めたがつて仕方(しかた)がありませぬわ。141言霊軍隊(ことたまぐんたい)はサツパリ休戦(きうせん)喇叭(ラツパ)()いたと()えます。142如何(どう)しても()()ませぬがな』
143治国別(はるくにわけ)『そんなら晴公(はるこう)144(まへ)(かは)つて言霊(ことたま)発射(はつしや)せよ』
145晴公(はるこう)『ハイ、146(たしか)承知(しようち)(いた)しました。
147三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
148治国別(はるくにわけ)(したが)ひて
149ここに(あら)はれ(きた)りしは
150御空(みそら)(きよ)()(わた)
151晴公(はるこう)さまの宣伝使(せんでんし)
152(わが)言霊(ことたま)(はな)ちなば
153一歩(いつぽ)(この)(やま)(すす)めまい
154(はや)(うま)より(くだ)()
155善言美詞(ぜんげんびし)三五(あななひ)
156世人(よびと)(すく)御教(みをしへ)
157(こころ)(しづ)めて()くがよい
158朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
159(つき)()つとも()くるとも
160仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
161(ほし)(てん)より()つるとも
162(あく)(さか)えし(ためし)ない
163大黒主(おほくろぬし)(したが)ひし
164(まが)(いくさ)人々(ひとびと)
165一時(いちじ)(はや)村肝(むらきも)
166(こころ)(こま)立直(たてなほ)
167仁慈(じんじ)無限(むげん)大神(おほかみ)
168(きよ)(をしへ)()くがよい
169(ひと)(かみ)()(かみ)(みや)
170(おな)天地(てんち)(うま)()
171(あらそ)(にく)(たたか)ふは
172皇大神(すめおほかみ)御神慮(みこころ)
173背反(はいはん)したる醜業(しこわざ)
174(いま)打出(うちいだ)言霊(ことたま)
175(こころ)()ゑてよつく()
176大黒主(おほくろぬし)(つよ)くとも
177手下(てした)如何(いか)(おほ)くとも
178天地(てんち)(つく)(たま)ひたる
179(かみ)(たい)して刃向(はむか)ふも
180如何(いか)でか(をはり)(まつた)うせむ
181一時(いちじ)(はや)()()ませ
182あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
183(かみ)(ちか)ひて晴公(はるこう)
184汝等(なんぢら)一同(いちどう)()をつける』
185 晴公(はるこう)熱誠(ねつせい)をこめて()()げた生言霊(いくことたま)(みみ)にもかけず、186(うま)鞭撻(むちう)一目散(いちもくさん)坂道(さかみち)(のぼ)()かうとする。187万公(まんこう)(ただ)一騎(いつき)にても(この)(たうげ)通過(つうくわ)させてはならないと、188(らい)(ごと)大音声(だいおんぜう)()()げ、
189万公(まんこう)大声(おほごゑ)で)『()て、190曲者(くせもの)
191呶鳴(どな)りつけた。192(さき)()つた騎士(きし)(この)(こゑ)辟易(へきえき)し、193(うま)(おどろ)いて危険(きけん)谷道(たにみち)()(くる)ふ。194先頭(せんとう)()つた(うま)足並(あしなみ)(みだ)れたるを()て、195(つぎ)(うま)(また)(なん)(おどろ)いてか()(くる)()した。196一匹(いつぴき)(うま)(くる)へば千匹(せんびき)(うま)(くる)(たと)へ、197(つぎ)から(つぎ)伝染(でんせん)して、198数百頭(すうひやくとう)(うま)はヒンヒンと(いなな)(なが)()(あが)り、199(いづ)れの騎士(きし)(その)制御(せいぎよ)にもちあぐんでゐた。
200万公(まんこう)『ハヽヽ、201晴公(はるこう)婉曲(ゑんきよく)生言霊(いくことたま)よりも(おれ)一喝(いつかつ)余程(よほど)()いたと()えるわい。202一人(ひとり)でも万公(まんこう)だから万倍(まんばい)(ちから)(そな)はつてゐると()(こと)(いま)実験(じつけん)した。203エヘヽヽヽ愉快(ゆくわい)愉快(ゆくわい)だ、204()(うま)()(うま)一度(いちど)(くる)()したぢやないか』
205晴公(はるこう)馬鹿(ばか)()ふな、206晴駒(はるこま)(くる)うたのだ。207晴公(はるこう)言霊(ことたま)(こま)(くる)ふから春駒(はるこま)()ふのだよ。208()いた(さくら)何故(なぜ)(こま)つなぐ、209(こま)(いさ)めば(はな)()る」エヘヽヽヽヽ一番槍(いちばんやり)功名(こうみやう)はやつぱり晴公(はるこう)だよ』
210 治国別(はるくにわけ)はいと荘重(さうちよう)(こゑ)にて(うた)(はじ)めたり。
211(まこと)(かみ)(あら)はれて
212河鹿峠(かじかたうげ)峻坂(しゆんぱん)
213善神邪神(ぜんしんじやしん)()()ける
214バラモン(けう)(つかさ)(たち)
215(わが)言霊(ことたま)聞召(きこしめ)
216(ひと)(かみ)()(かみ)(みや)
217(あめ)(つち)との御水火(みいき)より
218(うま)()でたるものぞかし
219(つき)御空(みそら)()(わた)
220()晃々(くわうくわう)(かがや)ける
221無事(ぶじ)太平(たいへい)天国(てんごく)
222(にく)(あらそ)ひあるべきぞ
223一日(ひとひ)(はや)三五(あななひ)
224仁慈(じんじ)無限(むげん)御教(みをしへ)
225(まなこ)()ませ(みみ)すませ
226(わが)言霊(ことたま)(きこ)()
227朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
228(つき)()つとも()くるとも
229仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
230(ほし)(そら)より()つるとも
231印度(いんど)(うみ)はあするとも
232大黒主(おほくろぬし)軍隊(ぐんたい)
233如何(いか)(いきほ)(つよ)くとも
234皇大神(すめおほかみ)御道(おんみち)
235(そむ)きて(こと)()るべきぞ
236(かへり)(たま)へバラモンの
237(かみ)(をしへ)(つかさ)(たち)
238(その)(ほか)(もも)軍人(いくさびと)
239吾等(われら)(ここ)(つつし)みて
240(なんぢ)一同(いちどう)(かみ)()
241(やす)(たの)しく(すく)はむと
242真心(まごころ)こめて言霊(ことたま)
243(ひかり)(あら)はし(たてまつ)
244(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
245(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
246(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
247直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
248()(あやまち)()(なほ)
249(まこと)(かみ)御教(みをしへ)
250(うべな)ひませよ惟神(かむながら)
251(かみ)(ちか)ひて亀彦(かめひこ)
252治国別(はるくにわけ)(あら)はれて
253汝等(なんぢら)一同(いちどう)()(つた)
254あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
255御霊(みたま)(さちは)ひましませよ』
256(うた)(をは)るや、257(さき)()つた騎士(きし)(うま)をヒラリと()()り、258一目散(いちもくさん)(みち)なき山腹(さんぷく)()(くだ)る。259一同(いちどう)騎士(きし)(これ)(なら)つて、260(いづ)れも吾遅(われおく)れじと(うま)()()一目散(いちもくさん)()(かへ)す、261(その)可笑(をか)しさ。262(うま)是非(ぜひ)なく(めう)腰付(こしつき)(なが)らコツリコツリと()(かへ)(かへ)()く。
263万公(まんこう)『アハヽヽヽヽ(なん)(もろ)いものだな。264如何(いか)鬼神(きしん)だとてこんな(とき)(てき)出会(でつくは)したら(たま)つたものぢやないわ。265(なん)神様(かみさま)はいい(とき)出会(であ)はして(くだ)さるものだ。266(これ)だからあまり()いても、267(おく)れても、268不可(いかん)()ふのだ。269もしも(のぼ)(ざか)出会(でつくは)さうものなら()(らち)よく()かないが都合(つがふ)のいい地点(ちてん)だつた。270アハヽヽヽ有難(ありがた)有難(ありがた)治国別(はるくにわけ)(さま)271万公(まんこう)初陣(うひぢん)如何(いかが)(ござ)いましたな。272屹度(きつと)金鵄勲章(きんしくんしやう)頂戴(ちやうだい)出来(でき)るでせう』
273治国別(はるくにわけ)『ウン、274遺憾(ゐかん)(なが)改心(かいしん)させずにぼつ(かへ)して(しま)つた。275(しか)(なが)(この)(たうげ)()ひとめた()けが、276まだしも吾々(われわれ)職務(しよくむ)(つと)まつたと()ふものだ。277()一服(いつぷく)したら()からう。278()()(てき)玉国別(たまくにわけ)一隊(いつたい)(ほこら)のあたりで(また)もや言霊(ことたま)発射(はつしや)してるだらう。279(てき)になつても(たま)つたものぢやないわ』
280五三公(いそこう)(なん)先生(せんせい)言霊(ことたま)はよく()きますなア。281晴公(はるこう)言霊(ことたま)十五点(じふごてん)なら先生(せんせい)のは万点(まんてん)ですわ。282いやもう(おそ)()りました。283オイ万公(まんこう)284(てき)(いきほひ)辟易(へきえき)して今迄(いままで)広言(くわうげん)()絶句(ぜつく)して一言(いちげん)発射(はつしや)出来(でき)なかつたぢやないか。285大方(おほかた)()いた(くち)がすぼまらなんだのか、286すぼんだ(くち)早速(さつそく)()かなんだのか、287(なん)()惨目(みぢめ)(ざま)だつたい』
288万公(まんこう)『ナニ、289(おれ)のは荒木細工(あらきざいく)だ。290荒木棟梁(あらきとうりやう)だ。291晴公(はるこう)のは小細工棟梁(こざいくとうりやう)だ。292()(この)万公(まんこう)さまが、293うまうまと荒削(あらけづ)りをやつて()いたものだから、294晴公(はるこう)言霊(ことたま)如何(どう)なり()うなり発射(はつしや)出来(でき)たのだよ。295先生(せんせい)のは、296こりや特別(とくべつ)だ。297さぞ今頃(いまごろ)(てき)(やつ)298狼狽(らうばい)してゐることだらう。299ヤア、300(つき)(にはか)(くも)(きぬ)(かむ)(たま)うた。301あの(くも)さへのけば(てき)敗亡(はいばう)見下(みお)ろすに都合(つがふ)()いのだけどな。302アハヽヽヽエヘヽヽヽヽ』
303治国別(はるくにわけ)『サア、304ボツボツと出掛(でかけ)ようか。305玉国別(たまくにわけ)さまと屹度(きつと)衝突(しようとつ)してるだらう。306(これ)から(あと)おつかけて、307もう一戦(ひといくさ)しよう』
308()(あが)(さき)()つて(くだ)りゆく。309谷間(たにま)彼方(かなた)此方(こなた)には(てき)()()てた(うま)(いなな)いてゐる。310万公(まんこう)得意(とくい)になつて月下(げつか)(みち)(くだ)りつつ(うた)(はじ)めた。
311『ウントコ ドツコイ ドツコイシヨ
312河鹿峠(かじかたうげ)はきつい(さか)
313やうやう(のぼ)りつめた(とき)
314(つき)(ひかり)皎々(かうかう)
315数十里(すうじふり)にも(わた)りたる
316原野(げんや)()らし(たま)ひつつ
317吾等(われら)一行(いつかう)(まも)ります
318あゝ有難(ありがた)有難(ありがた)
319治国別(はるくにわけ)(したが)ひて
320二人(ふたり)弱虫(よわむし)諸共(もろとも)
321(さか)此方(こなた)()()れば
322(かぜ)()()(かね)(おと)
323こりや(たま)らぬと雀躍(こをどり)
324()()(ほど)なく(のぼ)()
325数百人(すうひやくにん)騎士(きし)(たい)
326(たちま)(まん)さま(をど)()
327疾風迅雷(しつぷうじんらい)(いき)つかず
328大喝(たいかつ)一声(いつせい)言霊(ことたま)
329ドンと一発(いつぱつ)打出(うちだ)せば
330先登(せんとう)()つた騎士(きし)(やつ)
331(たちま)(あを)(かほ)をして
332地震(ぢしん)(まご)菎蒻(こんにやく)
333幽霊(いうれい)()たよにブルブルと
334(ふる)()したる可笑(をか)しさよ
335ウントコドツコイ(あぶな)いよ
336夜目(よめ)にはしかと(わか)らねど
337(うま)足形(あしがた)沢山(たくさん)
338所狭(ところせ)(まで)ついてゐる
339あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
340一時(いちじ)(はや)(この)(さか)
341トントントンと(くだ)りつき
342(ほこら)(もり)()(たま)
343玉国別(たまくにわけ)宣伝使(せんでんし)
344(その)()一行(いつかう)におひついて
345バラモン(けう)敵軍(てきぐん)
346(かた)(ぱし)から()(たふ)
347善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)
348(ゆき)(あられ)夕立(ゆふだち)
349()(そそ)(ごと)()びせかけ
350(まこと)(ひと)つの三五(あななひ)
351(をしへ)(ふか)(さと)らしめ
352ウントコドツコイ(まが)(みち)
353ウツカリすると(すべ)るぞよ
354コリヤコリヤ五三公(いそこう)()をつけよ
355晴公(はるこう)(おな)(こと)ぢやぞや
356治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)
357貴方(あなた)()をつけなさいませ
358何処(どこ)かそこらの()(かげ)
359(てき)片割(かたわれ)潜伏(せんぷく)
360不意(ふい)手槍(てやり)(しご)きつつ
361突掛(つつかけ)(きた)るも(はか)られず
362あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
363神素盞嗚神(かむすさのをのかみ)(さま)
364何卒(どうぞ)吾等(われら)一行(いつかう)
365(まも)らせ(たま)ひて逸早(いちはや)
366曲津(まがつ)(いくさ)帰順(きじゆん)させ
367貴方(あなた)御側(おそば)復言(かへりごと)
368(まを)させ(たま)へと万公(まんこう)
369満腔(まんこう)熱誠(ねつせい)(ささ)げつつ
370(つつし)(うやま)(ねが)ひます
371朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
372(つき)黒雲(くろくも)(かく)るとも
373(この)山道(やまみち)如何(どう)しても
374(わた)らにやならぬ吾々(われわれ)
375(かみ)(めぐ)みを(かうむ)りて
376()さしの使命(しめい)(はた)さぬと
377()しても()しても()みませぬ
378ウントコ ドツコイ ドツコイシヨ
379(また)もやそこに(まが)(みち)
380殊更(ことさら)きつい(さか)がある
381()()(うち)にも()()いて
382玉国別(たまくにわけ)()(うへ)
383(あん)()されて仕方(しかた)ない
384あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
385御霊(みたま)(さちは)ひましませよ』
386大正一一・一一・二七 旧一〇・九 北村隆光録)