霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】霊界物語読者アンケート実施中! こちらからどうぞ。〆切りは7月17日です。
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第九章 童子教(どうじけう)〔六七一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻 篇:第3篇 三国ケ嶽 よみ:みくにがだけ
章:第9章 第20巻 よみ:どうじきょう 通し章番号:671
口述日:1922(大正11)年05月14日(旧04月18日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年3月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
宗彦、留公、田吾作に加えて、原彦が供をすることとなり、四人は三国ヶ嶽の山麓までやってきた。四人は、山麓を流れる深谷川のほとりでひそびそ話にふけっている。
留公は寒気がすると弱音を吐いている。宗彦から、帰ってよいと言われ、田吾作と原彦に、一緒に帰ろうと誘うが、断られる。留公は二人を罵りながら去ってしまう。
田吾作は、留公がいつになく臆病な様子だったので、これはきっと、逃げた振りをして我々の先回りをし、鬼の真似でもして驚かそうといういたずらの魂胆でしょう、と流した。
三人が川を上っていくと、向こう岸に四五人の男女が、熊の皮を干しているのが見えた。原彦が、三国ヶ嶽の鬼婆の岩屋を尋ねるが、皆言葉が話せない。ただ手振りで、川を渡って東へ行け、と指差している。
原彦が川を渡って向こう岸へ着くと、山人たちは逃げてしまった。田吾作は宗彦に勧めて、続いて向こう岸へ渡らせるが、渡った後に、実は登り道はこちらにあるのだ、とからかう。そして、熊の皮を全部取って来るようにと二人に言う。
仕方なく二人は、熊の皮を取って戻ってきた。三人は羊腸の小道を登っていくと、やや平坦な地点に着いた。すると突然、五六才と思しき三人の童子が現れた。一人は怒り、一人は泣き、一人は笑っている。
三人の童子の背後から五色の光明が輝いていた。田吾作はそれに気がつかず、原彦の手から熊の皮をひったくると、三人に着せて回った。三人は無言のまま、皮を脱ぐと下に敷いて座った。
宗彦は、三人が神様だと悟り、岩窟の鬼婆を言向け和すのに守護を頼んだ。しかし笑い童子はその依存心を笑い飛ばした。泣き童子は情けない、と泣いている。怒り童子は、難を避けて易きにつく心根を叱った。
三人は平伏して、取り違いを陳謝した。しかし三童子の説教は続き、三人が山人の熊の皮を奪ったことを責める。三人は平伏したまま返す言葉もなく、震えていた。半時ばかりして、麗しき音楽が聞こえてきたかと思い、ふと頭を上げると、童子の姿も熊の皮もなくなっていた。
さすがの田吾作も、反省の弁を口にする。宗彦は、三童子は我々の本守護神が現れて、戒めをなさったのだ、と説明した。田吾作と原彦はしばしおかしな問答を交わすが、宗彦に促されて山道を登っていった。
たちまち、右側の谷間から女の悲鳴が聞こえてくる。田吾作が様子を見に行くことになった。しかし戻ってきた田吾作によって、猿が喧嘩をしていただけだとわかり、三人は先に進むこととした。
主な登場人物: 備考: タグ:木花姫命 データ凡例: データ最終更新日:2017-06-12 04:39:50 OBC :rm2009
愛善世界社版:185頁 八幡書店版:第4輯 217頁 修補版: 校定版:193頁 普及版:83頁 初版: ページ備考:
001九重(ここのへ)(はな)(みやこ)山背(やまうしろ)
002(かしこ)神代(かみよ)近江路(あふみぢ)
003(いろ)若狭(わかさ)丹波(あかなみ)
004三国(みくに)(またが)三国ケ嶽(みくにがだけ)
005木立(こだち)(しげ)みは大空(おほぞら)
006月日(つきひ)(ふう)じて物凄(ものすご)
007(ひる)さへ(くら)大高峰(だいかうほう)
008(おに)大蛇(をろち)()(ひと)
009()るさへ(すご)(ばば)一人(ひとり)
010(そび)えて(たか)(いは)()
011(かり)(いほり)(むす)びつつ
012(へび)(かはづ)捕喰(とりくら)
013(その)()(おく)物凄(ものすご)
014(この)山麓(さんろく)立並(たちなら)
015(かたち)ばかりの(やぶ)()
016(ちひ)さき(むね)三四十(さんしじふ)
017浮世(うきよ)(はな)れし別世界(べつせかい)
018老若男女(らうにやくなんによ)谷川(たにがは)
019(かに)(かはづ)(あさ)りつつ
020餌食(ゑじき)となして()(おく)
021鬼婆(おにばば)一人(ひとり)棟梁(とうりやう)
022(あふ)いで(とほ)()(まぎ)
023山城(やましろ)丹波(たんば)近江路(あふみぢ)
024若狭(わかさ)能登(のと)まで()()ばし
025赤児(あかご)(こゑ)(さが)しつつ
026(すき)さへあらば引捉(ひつとら)
027(やま)()(づた)ひに()(かへ)
028(ばば)餌食(ゑじき)(たてまつ)
029(この)曲津見(まがつみ)何者(なにもの)
030言向(ことむ)(やは)()(なか)
031(なや)みを(はら)(すく)はむと
032神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)
033御言(みこと)(かしこ)高天(たかあま)
034(はら)()れます言依別(ことよりわけ)
035聖地(せいち)(のぼ)(きた)りたる
036(こころ)(きよ)宗彦(むねひこ)
037()さし(たま)へば(よろこ)びて
038(いち)()もなく承諾(しようだく)
039これぞ布教(ふけう)初陣(うひぢん)
040親兄妹(おやきやうだい)暇乞(いとまごひ)
041明石峠(あかしたうげ)乗越(のりこ)えて
042(みち)熊田(くまだ)(ひと)(いへ)
043(やまひ)(なや)原彦(はらひこ)
044(こころ)(まよ)()(はら)
045()しき御稜威(みいづ)(あら)はして
046(さと)老若男女(らうにやくなんによ)をば
047三五教(あななひけう)大道(おほみち)
048一人(ひとり)(のこ)らず帰順(きじゆん)させ
049少時(しばし)(あし)をば(やす)めつつ
050原彦(はらひこ)田吾作(たごさく)留公(とめこう)
051三人(みたり)信者(しんじや)(ともな)ひて
052青垣山(あをがきやま)(めぐ)らせる
053平野(ひらの)(さと)山国(やまぐに)
054一本橋(いつぽんばし)打渡(うちわた)
055宮村(みやむら)花瀬(はなせ)(あと)にして
056三国ケ嶽(みくにがだけ)山麓(さんろく)
057四人(よにん)(やうや)()きにける。
058 さしも三国(さんごく)(わた)大高山(だいかうざん)059(すぎ)木立(こだち)鬱蒼(うつさう)として(かぜ)(はら)み、060咆哮(ほうかう)する(こゑ)061数百千(すうひやくせん)獅子(しし)(おほかみ)一度(いちど)雄猛(をたけ)びする(ごと)(きこ)えて()る。062(なつ)とは()(なが)(なん)となく(そこ)(つめ)たき空気(くうき)(ただよ)ひ、063谷川(たにがは)(おと)何処(どこ)となく(もの)(すご)く、064悪魔(あくま)(ささや)くが(ごと)(みみ)()つ。065(さる)(むれ)(こずゑ)(つた)ひて、066キヤツキヤツと()(さけ)ぶ。067四人(よにん)山麓(さんろく)(なが)るる深谷川(ふかたにがは)(ほとり)にドツカと()し、068(たび)(つか)れを(やす)(なが)ら、069ヒソビソ(ばなし)(ふけ)つて()る。
070留公(とめこう)随分(ずゐぶん)薄気味(うすきみ)(わる)谷間(たにあひ)だないか。071山国(やまぐに)丸木橋(まるきばし)()えてからと()ふものは、072(ひと)()一人(ひとり)出会(であ)つた(こと)もなし、073時々(ときどき)左右(さいう)密林(みつりん)から(あや)しの(こゑ)074どうしても此処(ここ)大江山(おほえやま)以上(いじやう)魔窟(まくつ)らしい。075オイ田吾作(たごさく)076此処(ここ)までは(よろこ)(いさ)んでやつて()たものの、077首筋(くびすぢ)がゾウゾウとして、078()んとも()へぬ気分(きぶん)になつて(しま)つたぢやないか』
079田吾作(たごさく)宇都山村(うづやまむら)で、080(さかな)()つたり、081麦畠(むぎばたけ)鍬杖(くはづゑ)ついて、082雲雀(ひばり)(くそ)(あたま)から()びせられて()るのとは、083そりやチツとは(ほね)()るワイ。084こんな山奥(やまおく)悪魔(あくま)退治(たいぢ)()たのだもの、085どうせ満足(まんぞく)生命(いのち)()つて(かへ)れないのは、086出発(しゆつぱつ)(さい)から(きま)りきつた(はなし)だ。087貴様(きさま)(うち)()(とき)(いきほひ)はどうだつた。088(おに)でも大蛇(をろち)でも(とら)でも、089(おほかみ)でも、090(なん)でも()い。091(この)留公(とめこう)(うで)には(ほね)()ると、092力味(りきみ)(かへ)つた(とき)(こと)(かんが)へて()よ。093こんな(ところ)でそんな弱音(よわね)()いて宣伝使(せんでんし)のお(とも)出来(でき)ると(おも)ふか』
094留公(とめこう)『そらそうだ。095(しか)(なが)らモウ(すこ)(あたた)かい(やま)ぢやと(おも)うて()たに、096(なつ)最中(さなか)()(さむ)くつては(きば)れないぢやないか。097()んな(こと)()つたなら、098(あはせ)一枚(いちまい)()つて()るのだつたが、099(うす)単衣(ひとへ)一枚(いちまい)では(こら)へられない。100(おれ)(ひと)つ、101宇都山村(うづやまむら)まで引返(ひきかへ)して、102着物(きもの)着替(きがへ)出直(でなほ)して()るから、103(まへ)御苦労(ごくらう)だが、104宣伝使(せんでんし)御伴(おとも)をしてボツボツ(のぼ)りかけて()れ』
105田吾作(たごさく)『ハヽヽヽ、106隣近所(となりきんじよ)(なん)ぞの(やう)に、107さう着々(ちやくちやく)着替(きがへ)()ねるものか。108(うま)辞令(じれい)(つく)つて、109(てい)よく遁走(とんそう)するつもりだらう。110(くち)(ほど)にもない代物(しろもの)だなア。111ヨー(いま)からビリビリ(ふる)うて()よるなア』
112留公(とめこう)何程(なにほど)()めようと(おも)つても、113ガチガチと()拍子木(へうしぎ)()つものだから仕方(しかた)がないワ。114モシモシ宣伝使(せんでんし)(さま)115(わたくし)此処(ここ)から……実際(じつさい)(こと)()へば、116(かへ)らして(もら)ひたいのです』
117宗彦(むねひこ)『それだから()れて()かぬと()ふのに、118(まへ)無理(むり)()たのぢやないか。119宣伝使(せんでんし)一人旅(ひとりたび)120(けつ)して同伴(つれ)はならぬのだ。121(わし)相談(そうだん)()らぬ、122自由(じいう)行動(かうどう)()つたがよからう』
123留公(とめこう)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。124(かげ)(いのち)(たす)かりました。125あなた(がた)も、126どうぞ無事(ぶじ)(かへ)つて(くだ)さいませ。127キツと、128(わたくし)此処(ここ)でお(わか)れしても、129あなたの(こと)(わす)れませぬ。130茶湯(ちやたう)でも()げて冥福(めいふく)(いの)ります』
131田吾作(たごさく)『オイ留公(とめこう)132冥福(めいふく)(いの)るとは(なん)だ。133()ぬに(きま)つた(やう)(こと)()ひやがつて、134吾々(われわれ)首途(かどで)(しゆく)する(こと)()いて、135貴様(きさま)(とむら)ふのだな』
136留公(とめこう)(とむら)ふのか、137(のろ)ふのか、138(いは)ふのか、139どつちか(ひと)つの(うち)だ。140エー長居(ながゐ)(おそ)れ、141こんな生臭(なまぐさ)(かぜ)()くからには、142(ふと)(なが)(やつ)がノロノロと(いま)にやつて()るだらう。143宣伝使(せんでんし)一人(ひとり)仰有(おつしや)つた。144遠慮(ゑんりよ)()らぬ、145原彦(はらひこ)146(まへ)(さき)()け。147さうして田吾作(たごさく)(おれ)(しり)()いて(かへ)るのだ。148サアサア(かへ)つたり(かへ)つたり』
149原彦(はらひこ)(わたくし)生命(いのち)(たす)けて(もら)つた御恩返(ごおんがへ)しに、150御案内役(ごあんないやく)となつて()たのですから、151宣伝使(せんでんし)(ため)生命(いのち)()てた(ところ)で、152(べつ)欠損(けつそん)にもなりませぬ。153元々(もともと)です。154(この)()(およ)んで(をとこ)らしくもない、155(かへ)れますものか』
156留公(とめこう)生命(いのち)(やす)(やつ)()つたが()からう。157……オイ田吾作(たごさく)158貴様(きさま)生命(いのち)大事(だいじ)だらう。159(かつ)(こと)もチツとは(おも)うてやれ』
160田吾作(たごさく)『お(かつ)がなんだ。161神様(かみさま)御用(ごよう)のお(とも)をするのに、162そんなことを()()けて()つて(つと)まるものかい。163貴様(きさま)勝手(かつて)にしたがよからう』
164 留公(とめこう)は、
165留公(とめこう)(かはづ)行列(ぎやうれつ)(むか)()ず、166生命(いのち)()らずの馬鹿者(ばかもの)
167(くち)ぎたなく(ののし)(なが)ら、168坂路(さかみち)()して韋駄天(ゐだてん)(ばし)りに、169(きり)(なか)姿(すがた)(ぼつ)した。
170田吾作(たごさく)『ハヽヽヽ、171宣伝使(せんでんし)(さま)172随分(ずゐぶん)(めう)活劇(くわつげき)(いな)悲劇(ひげき)(えん)ぜられましたなア。173(いづ)彼奴(あいつ)(いま)()つた(やう)臆病者(おくびやうもの)ぢやないから、174先駆(さきが)けの功名(こうみやう)手柄(てがら)をやらかさうと(おも)つて、175キツト単騎(たんき)登山(とざん)(みち)()へて()かけやがつたのでせう。176途中(とちう)でアツと()はせる(やう)芸当(げいたう)(えん)ずるのかも()れませぬから、177(あや)しき(もの)()たら油断(ゆだん)をなさいますなや。178キツト留公(とめこう)化者(ばけもの)(きま)つてゐます。179彼奴(あいつ)何時(いつ)でもああ()(こと)をして(よろこ)(くせ)があるのです。180それで(わたし)勝手(かつて)()んだがよからうと、181あなたの御言葉(おことば)(さいは)ひに()なしてやりました』
182宗彦(むねひこ)面白(おもしろ)(をとこ)ですな。183(いづ)岩窟(いはや)附近(ふきん)まで()つたら、184鬼婆(おにばば)真似(まね)でもして(あら)はれるのでせう。185原彦(はらひこ)さん、186サア案内(あんない)(たの)みませう』
187原彦(はらひこ)(わたくし)御案内(ごあんない)とは(まを)しましたが、188(じつ)(はじ)めての(こと)一向(いつかう)不案内(ふあんない)です。189(しか)(わたくし)(とほ)(ところ)貴方(あなた)(とほ)れるでせう。190露払(つゆばらひ)蜘蛛(くも)()(ばらひ)に、191(さき)()きますから、192()いて()(くだ)さい』
193不案内(ふあんない)(みち)(たに)沿()うて、194トントンと(のぼ)()く。195二人(ふたり)(あと)()ふ。196前途(ぜんと)激潭飛沫(げきたんひまつ)谷川(たにがは)(よこ)たはつて()る。197四五人(しごにん)男女(なんによ)(くま)(かは)(あら)()らして()(こずゑ)()(わた)(かぜ)()てて(かわ)かして()る。198さうして()れも()れも(みな)199(くろ)(くま)(かは)や、200(あか)(しし)(かは)()(まと)うて立働(たちはたら)いて()た。
201原彦(はらひこ)『オーイ、202オイ、203其処(そこ)()五六人(ごろくにん)御連中(ごれんちう)さま、204三国ケ嶽(みくにがだけ)(ばば)アの岩窟(いはや)は、205どつちやへ()つたら()いのかな』
206 川向(かはむか)ひの(をとこ)207無言(むごん)(まま)208指先(ゆびさき)で……(この)谷川(たにがは)(わた)り、209(ひがし)()して()け……と手真似(てまね)(しら)して()る。
210原彦(はらひこ)『アヽ此奴(こいつ)(おし)()えるワイ。211(しか)(なが)(この)谷川(たにがは)(わた)つて(ひがし)(はう)()けと()うたのだらう。212……モシモシ宣伝使(せんでんし)(さま)213(わたくし)一寸(ちよつと)瀬踏(せぶ)みをして()ませう。214大変(たいへん)(なが)れも(きふ)なり、215水量(みづかさ)(おほ)いから、216万一(まんいち)(わたくし)()(やう)(こと)があつたら、217キツト(わた)らない(やう)にして(くだ)さい。218()づお毒見(どくみ)……(いな)水見(みづみ)(つと)めませう』
219(しり)(まく)つて(はや)くも谷川(たにがは)(わた)らうとする。
220田吾作(たごさく)『オイ原彦(はらひこ)221()ぬのはチツと()しいぢやないか。222水試(みづみ)なんかせなくとも(わか)つてる。223どれ(ほど)(みづ)達者(たつしや)河童(かつぱ)兄弟分(きやうだいぶん)でも、224(この)急流(きふりう)がどうして(わた)れるものか。225マア(あやふ)きに近寄(ちかよ)らんがよからうぞ』
226原彦(はらひこ)(わたくし)(いのち)(すで)宣伝使(せんでんし)(さま)差上(さしあ)げてあるのだから、227(うん)(てん)(まか)して(わた)つて()る』
228無理(むり)無体(むたい)川瀬(かはせ)(よこ)ぎり、229(やうや)(から)うじて対岸(むかうぎし)()いた。230五人(ごにん)男女(なんによ)(これ)()(おどろ)き、231『ア、232ア、233アー』と(こゑ)()て、234一目散(いちもくさん)(あゆ)()れし(やま)細路(ほそみち)(つた)うて、235(きり)(はやし)姿(すがた)(ぼつ)した。
236原彦(はらひこ)『ヤア有難(ありがた)い。237沢山(たくさん)(くま)(かは)(なら)べてある。238(かわ)いた(やつ)相当(さうたう)()るワイ。239サア此奴(こいつ)(ひと)()(まと)うて(のぼ)つてやらう。240……オイオイ田吾作(たごさく)241(はや)(わた)つた(わた)つた。242(わり)とは(あさ)かつた。243大丈夫(だいぢやうぶ)だよ』
244田吾作(たごさく)『サア宗彦(むねひこ)さま、245(わた)りなさいませ。246(わたし)(あと)から()いて()きます。247もしも(あやま)つて(みづ)藻屑(もくづ)にならしやつた(ところ)が、248義理(ぎり)兄弟(きやうだい)(わたし)が、249(けつ)して()てては()きませぬ。250キツト死骸(しがい)(ひろ)つてあげます。251サアあなたからお(さき)へお(わた)りお(わた)り』
252宗彦(むねひこ)『そこまで徹底的(てつていてき)受合(うけあ)つて(もら)へば、253(わたし)安心(あんしん)だ』
254戯談(じやうだん)半分(はんぶん)喋舌(しやべ)(なが)ら、255(しり)(まく)つて(やうや)対岸(むかうぎし)()いた。256田吾作(たごさく)()()つて、
257田吾作(たごさく)『アハヽヽヽ、258本当(ほんたう)(のぼ)(みち)此方(こちら)にあるのだ。259そんな(はう)()かうものなら、260近江(あふみ)(くに)()つて(しま)ふぞ』
261 原彦(はらひこ)(かは)(むか)うから(おほ)きな(こゑ)()して、
262原彦(はらひこ)『コレ田吾作(たごさく)263そんな(こと)(わか)つて()るのなら何故(なぜ)(はや)くに()らして(くだ)さらぬのだ』
264田吾作(たごさく)()らしてなるものか。265(おれ)のお土産(みやげ)(その)(しし)(かは)全部(ぜんぶ)ひつ(かか)へて此方(こちら)(わた)るのだ。266宣伝使(せんでんし)(さま)四五枚(しごまい)掻攫(かつさら)へてお(かへ)りなさい。267(その)(ため)(この)田吾作(たごさく)計略(けいりやく)で、268(むか)ふへ(わた)らしたのだ』
269宗彦(むねひこ)『ハヽハア、270一杯(いつぱい)()はされましたな。271(しか)失敗(しつぱい)(さいは)ひになるとは(ここ)(こと)だ。272(いづ)他人(ひと)にも()るだらうし、273原彦(はらひこ)さま、274(まへ)二人(ふたり)275()てる(だけ)()つて(むか)ふへ(わた)らうかな』
276(おほ)きな(くま)(かは)をひん()谷川(たにがは)(あし)()れる。277原彦(はらひこ)(からだ)一面(いちめん)(くま)(かは)をくくりつけ、278(やうや)くにして(ふたた)谷川(たにがは)(わた)り、279田吾作(たごさく)(まへ)引返(ひきかへ)して()た。
280田吾作(たごさく)(みな)さま(いか)御苦労(ごくらう)御座(ござ)いました。281土産(みやげ)一番(いちばん)飛切(とびきり)上等(じやうとう)頂戴(ちやうだい)(いた)しませう』
282原彦(はらひこ)『イエイエ()れは(わたくし)(ぶん)(だけ)だ。283生命(いのち)(あぶ)ない(この)谷川(たにがは)を、284どうして二人前(ふたりまへ)背負(せお)うて(わた)れるものか、285(まへ)(ぶん)はチヤンと(むか)ふに、286(くづ)ばつかり(のこ)してある。287(ひと)苦労(くらう)(とく)()るといふ(こと)は、288神様(かみさま)大変(たいへん)(いまし)(たま)(ところ)だ。289サアサア自分(じぶん)(もの)自分(じぶん)処置(しよち)をつけるのだよ』
290田吾作(たごさく)『そんな(こと)は、291(とほ)(むかし)から御存(ごぞん)じの田吾作(たごさく)だ。292釈迦(しやか)(きやう)()(やう)(こと)()うて(もら)ふまいかい』
293 (はや)くもザブザブと対岸(むかうぎし)(わた)り、294(あら)()ての()(のこ)りのヅクヅクばつかり引抱(ひつかか)へ、
295田吾作(たごさく)『ヤア(おも)(やつ)ばつかり()けて()きやがつた。296(しか)(おの)れの(ほつ)する(ところ)()(ひと)(ほどこ)せ。297(ほつ)せざる(ところ)(ひと)(ほどこ)(なか)れと()(こと)()るなア』
298とワザと大音声(だいおんじやう)(よば)はり(なが)ら、299藤蔓(ふぢつる)(のこ)らず(しば)りつけ、300自分(じぶん)(こし)(いは)ひ、301ザアザアと(ひき)ずり(なが)(かへ)つて()た。
302田吾作(たごさく)宣伝使(せんでんし)さま、303(わたし)智慧(ちゑ)(たい)したものでせう。304神智(しんち)神策(しんさく)305(みづ)()らさぬ(とこ)まで(みづ)利用(りよう)し、306(この)(とほ)沢山(たくさん)獲物(えもの)占領(せんりやう)して()ました。307ヤツパリ役者(やくしや)七八枚(しちはちまい)(うへ)だ。308千両(せんりやう)役者(やくしや)だからなア』
309(ひと)(えつ)()つて()る。
310原彦(はらひこ)『チツと(しぼ)つてあげませうか。311こりや()さねば(おも)たくて()つて()けますまい』
312田吾作(たごさく)不言実行(ふげんじつかう)だよ』
313原彦(はらひこ)不言実行(ふげんじつかう)とは(はじ)めて()きますが、314どう()意味(いみ)ですか。315()つて(くだ)さいな』
316田吾作(たごさく)()はないのに()がついて実行(じつかう)するのが不言実行(ふげんじつかう)だ。317()つてやるとよいが、318天機(てんき)()らすと(あめ)()る。319不言(ふげん)(をしへ)無為(むゐ)(くわ)だ。320マアマア(かんが)へて社会(しやくわい)奉仕(ほうし)(はげ)むが、321御神徳(おかげ)入口(いりぐち)だな、322アハヽヽヽ』
323原彦(はらひこ)宣伝使(せんでんし)(さま)324不言実行(ふげんじつかう)(わけ)()かして(くだ)さいませぬか』
325 宗彦(むねひこ)黙々(もくもく)として、326()れた(かは)()()げ、327一生懸命(いつしやうけんめい)(しぼ)つては()(えだ)()つかける。328原彦(はらひこ)(だま)つて()()(わけ)にも()かず、329(おな)じく(かは)(しぼ)つては()け、330(しぼ)つては()けて(かぜ)(かわ)かさうと、331車輪(しやりん)活動(くわつどう)()つて()る。332田吾作(たごさく)は、
333田吾作(たごさく)『アヽそれが不言実行(ふげんじつかう)だよ。334(わか)つたか』
335原彦(はらひこ)『まだ(わか)りませぬ』
336田吾作(たごさく)(わか)らなくても、337実地(じつち)さへ出来(でき)ればよいのだ。338現今(いま)(やつ)宣伝(せんでん)だけは立派(りつぱ)だが(すこ)しも実行(じつかう)(ともな)はない。339(しか)しマアマア(やうや)及第点(きふだいてん)(たつ)した。340宗彦(むねひこ)(さま)率先(そつせん)して不言実行(ふげんじつかう)をやられたから六十五点(ろくじふごてん)341(まへ)(やうや)四十五点(しじふごてん)だ。342五点(ごてん)(こと)落第点(らくだいてん)になる(ところ)だよ』
343原彦(はらひこ)『ますます(わか)りませぬ』
344田吾作(たごさく)(はら)(はら)(くら)くつて、345(むね)(ひら)けぬから、346実地(じつち)(こと)()()つても()えず、347田吾作(たごさく)立派(りつぱ)()きた(をしへ)(みみ)這入(はい)らず、348嗅出(かぎだ)(こと)出来(でき)ず、349(した)()つても(あぢ)はふ(こと)出来(でき)ないのだ。350()(おも)へば(なん)にも()らずに実行(じつかう)する(もの)(くらゐ)幸福(かうふく)(もの)はないワイ』
351宗彦(むねひこ)有難(ありがた)御座(ござ)いました。352(かげ)田吾作(たごさく)宣伝使(せんでんし)より六十五点(ろくじふごてん)頂戴(ちやうだい)しました。353サア()れでモウ三十五点(さんじふごてん)頂戴(ちやうだい)(いた)しませうか』
354一番(いちばん)立派(りつぱ)(くま)(かは)()()して、355田吾作(たごさく)背中(せなか)()せる。
356田吾作(たごさく)『ヨシヨシ、357モウ試験済(しけんずみ)だ。358希望(きばう)(どほ)三十五点(さんじふごてん)(あた)へる。359これで満点(まんてん)だ。360満天(まんてんか)神教(しんけう)宣伝(せんでん)しても()ぢることなき大宣伝使(だいせんでんし)だ。361芽出(めで)たう。362(ぎん)のセコンドでも賞与(しやうよ)()りたいのだが、363生憎(あいにく)()つて()ないから、364親譲(おやゆづ)りのヘソンドで辛抱(しんばう)するのだなア、365これでも十二時(じふにじ)()るとよく()つて()る』
366原彦(はらひこ)(わたくし)にも、367せめて二十点(にじつてん)(くだ)さいな』
368自分(じぶん)(さら)へて()(なか)より、369(もつと)(すぐ)れたる毛皮(けがは)()()し、370田吾作(たごさく)背中(せなか)()せる。
371田吾作(たごさく)『ヨシヨシ、372物品(ぶつぴん)一点(いつてん)(おれ)()れたから、373一点(いつてん)()してやらう。374総計(そうけい)四十六点(しじふろくてん)だ、375アハヽヽヽ』
376 田吾作(たごさく)原彦(はらひこ)(かほ)(なが)(なが)ら、377(また)もや、
378田吾作(たごさく)不言実行(ふげんじつかう) 不言実行(ふげんじつかう)
379(ふし)をつけて(うた)(やう)繰返(くりかへ)して()る。380原彦(はらひこ)狼狽(うろた)へて、381彼方(あちら)(かは)をかやして()382此方(こちら)(かは)(なぶ)つて()383田吾作(たごさく)背中(せなか)()でて()るやら、384宣伝使(せんでんし)足許(あしもと)草鞋(わらぢ)()れて()るのではなからうかと、385キリキリ()ひをして()る。386田吾作(たごさく)一層(いつそう)(おほ)きな(こゑ)で、387(ふし)をつけて、
388田吾作(たごさく)不言実行(ふげんじつかう) 不言実行(ふげんじつかう)
389(また)もや繰返(くりかへ)して()る。390原彦(はらひこ)はハツと(ひざ)(たた)いて、391片方(かたへ)()ちてゐた(ぼう)(やう)木切(きぎれ)(ひろ)ひ、392毛皮(けがは)両端(りやうはし)(くく)りつけ、393(かた)(かつ)いで、
394原彦(はらひこ)『サア(わたくし)不言実行(ふげんじつかう)のお(とも)(いた)します。395不言菩薩(ふげんぼさつ)実行菩薩様(じつかうぼさつさま)396サアお()でなさいませ』
397田吾作(たごさく)普賢菩薩(ふげんぼさつ)()いた(こと)があるが、398実行菩薩(じつかうぼさつ)()(はじ)めだ』
399原彦(はらひこ)実行菩薩(じつかうぼさつ)といへば、400ミロク(さま)(こと)だよ。401(みづ)御霊(みたま)大神(おほかみ)さまだ。402本当(ほんたう)月光(げつくわう)結構(けつこう))な(かみ)さまと()(こと)だよ』
403田吾作(たごさく)『アハー月光菩薩(ぐわつくわうぼさつ)洒落(しやれ)だな。404洒落(しやれ)(どころ)かい、405(これ)から(さき)不言実行(ふげんじつかう)()つのだ。406最前(さいぜん)五人(ごにん)男女(だんぢよ)()い。407一口(ひとくち)()はず、408不言実行(ふげんじつかう)標本(へうほん)(しめ)して、409手早(てばや)()げやがつたぢやないか。410あれ(くらゐ)慈悲(じひ)(ぶか)(やつ)()つたものぢやない。411(その)(かげ)吾々(われわれ)月光(げつくわう)恩恵(おんけい)(よく)したのだ、412アハヽヽヽ、413ドレ田吾作(たごさく)不言実行菩薩(ふげんじつかうぼさつ)()かけようかい』
414(さき)()ちて羊腸(やうちやう)小径(こみち)辿(たど)辿(たど)(すす)んで()く。415田吾作(たごさく)(あゆ)()らした(ほそ)(みち)を、416曲々(きよくきよく)()(なが)ら、417(さき)()ちて(やや)平坦(へいたん)地点(ちてん)()いた。
418田吾作(たごさく)『アヽ不言実行組(ふげんじつかうぐみ)(なに)をして()るのか。419(あし)(おそ)(こと)だなア』
420(つぶや)いて()る。421そこへ横合(よこあひ)から三人(さんにん)五六才(ごろくさい)(おぼ)しき(をとこ)()422一人(ひとり)赤裸(まつぱだか)となり(かほ)()()てて()いて()る。423一人(ひとり)(はだか)(まま)(つら)ふくらして(おこ)つて()る。424一人(ひとり)はニヤニヤと(わら)ふ。
425田吾作(たごさく)『ヤア此奴(こいつ)三国ケ嶽(みくにがだけ)化物(ばけもの)だな。426こんな(ところ)三人(さんにん)上戸(じやうご)()()やがつて、427(さけ)でも()つたら不言実行(ふげんじつかう)してやるのだが。428生憎(あいにく)(さけ)もなし……ハヽハ赤裸(まつぱだか)だ。429ヨシヨシ(かんが)へがある。430(はや)原彦(はらひこ)(やつ)431毛皮(けがは)()つて()やがると()いのだけれどなア』
432()(をり)しもハアハアと(いき)(はず)ませ、433両人(りやうにん)(のぼ)つて()た。434田吾作(たごさく)(もの)をも()はず、435原彦(はらひこ)(かつ)いで()()をボツタクり、436手早(てばや)くほどいて、437(その)(なか)(ちひ)ささうな(かは)()()()した。438原彦(はらひこ)は、
439原彦(はらひこ)不言実行(ふげんじつかう)だつて、440泥棒(どろばう)まで実行(じつかう)して()いのか』
441(ふく)れる。442田吾作(たごさく)三人(さんにん)童子(どうじ)()(しめ)した。443宗彦(むねひこ)444原彦(はらひこ)()るより『ヤア』と(たふ)れむばかりに(おどろ)いた。445よくよく()れば三人(さんにん)童子(どうじ)背後(はいご)から五色(ごしき)光明(くわうみやう)(かがや)き、446(うるは)しき霊衣(れいい)(つつ)まれて()る。447田吾作(たごさく)(すこ)しも()()かず、448(あわ)てまはして、449適当(てきたう)毛皮(けがは)()()し、450三人(さんにん)一々(いちいち)()せて(まは)つた。451三人(さんにん)(だま)つて毛皮(けがは)()(はづ)し、452大地(だいち)にパツと()いて、453各自(めいめい)(その)(うへ)行儀(ぎやうぎ)よくキチンと(すわ)つた。
454宗彦(むねひこ)『これはこれは何神様(なにがみさま)かは()りませぬが、455よくマア(あら)はれて(くだ)さいました。456(わたくし)()れより山頂(さんちやう)岩窟(いはや)割拠(かつきよ)する鬼婆(おにばば)言向(ことむ)(やは)(ため)(まゐ)ります。457どうぞ御守護(ごしゆご)御願(おねが)(いた)します』
458笑童子(わらひどうじ)『アハヽヽヽ、459七尺(しちしやく)男子(だんし)が……(しか)宣伝使(せんでんし)肩書(かたがき)()ち、460岩窟(がんくつ)鬼婆(おにばば)退治(たいぢ)せむと、461此処(ここ)まで(いさ)(すす)んで(のぼ)()(なが)ら、462(ひと)(たす)けを()らうとするのか。463ハツハツハ可笑(をか)しい可笑(をか)しい、464依頼心(いらいしん)(つよ)(をとこ)だなア』
465宗彦(むねひこ)(おそ)()りました。466モウ(けつ)して依頼(いらい)(いた)しませぬ。467(いづ)れの神様(かみさま)()りませぬが、468ついお(たの)(まを)すとか、469御守護(ごしゆご)(ねが)ひますとか()(こと)が、470吾々(われわれ)常套語(じやうたうご)になつて()ますので(こころ)にもなき卑怯(ひけふ)(こと)(まを)したので御座(ござ)います。471どうぞ見直(みなほ)聞直(ききなほ)して(くだ)さいませ』
472泣童子(なきどうじ)『アンアンアン、473(なさけ)()宣伝使(せんでんし)ぢやなア。474三人(さんにん)荒男(あらをとこ)が、475たつた一人(ひとり)(ばば)アを(あて)()()よつて、476(なん)(ざま)ぢや。477()んな(こと)でどうして三五教(あななひけう)神徳(しんとく)(あら)はれようぞ。478(おも)へば(おも)へば(いや)になつて()た。479これでは国治立大神(くにはるたちのおほかみ)(さま)480素盞嗚尊(すさのをのみこと)(さま)何程(なにほど)(ほね)()り、481(こころ)(くだ)かしやつても、482こんなガラクタ宣伝使(せんでんし)ばつかりでは、483神政(しんせい)成就(じやうじゆ)覚束(おぼつか)()いわいの、484……オンオンオン』
485宗彦(むねひこ)『どうぞモウ見直(みなほ)聞直(ききなほ)(くだ)さいませ。486(これ)からキツと勇猛心(ゆうまうしん)発揮(はつき)し、487(ばば)アの千匹(せんびき)万匹(まんびき)は、488善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)神力(しんりき)()つて()()らしますから、489どうぞ()いて(くだ)さいますな』
490泣童子(なきどうじ)()らぬ(たぬき)皮算用(かはざんよう)をしよつて、491(あて)もない(こと)威張(ゐば)つて()る……(その)心根(こころね)可憐(いぢ)らしい。492一寸先(いつすんさき)(やみ)()ぢや。493なんにも()らぬ人民(じんみん)は、494足許(あしもと)()()えて()(まで)(わか)らないのか。495アヽア可哀相(かはいさう)なものぢや。496どうして人間(にんげん)()(だけ)497(もの)(わか)らぬのだらうな……オンオンオン』
498宗彦(むねひこ)(まこと)汗顔(かんがん)(いた)りで御座(ござ)います。499さう(おつ)しやれば……さうですが、500何事(なにごと)神様(かみさま)にお(まか)(いた)して(すす)むので御座(ござ)います』
501 (おこ)つた(かほ)童子(どうじ)502(つら)ふくらし()()き、
503童子(どうじ)惟神(かむながら)504惟神(かむながら)口癖(くちぐせ)(やう)()ひやがつて、505(なん)()(やす)きに()き、506自分(じぶん)責任(せきにん)神様(かみさま)転嫁(てんか)し、507惟神中毒病(かむながらちうどくびやう)(おこ)し、508(おほ)きな(つら)をして天下(てんか)(また)にかけ、509(にご)つた言霊(ことたま)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひ、510折角(せつかく)結構(けつこう)()(なか)(にご)(やつ)貴様(きさま)(やう)代物(しろもの)だ。511チツとも足元(あしもと)()()かず、512(しり)(むす)べぬ馬鹿者(ばかもの)だ。513それでも(まこと)(みち)宣伝使(せんでんし)かい。514貴様(きさま)(やう)穀潰(ごくつぶ)しが沢山(たくさん)()(なか)に、515ウヨウヨと発生(わき)やがるものだから、516世界(せかい)人民(じんみん)(くるし)むのだ、517エーエー腹立(はらだ)たしい。518(かみ)(かさ)()たり、519(つゑ)()いたり、520尻敷(しりしき)にしたり、521(けが)らはしい、522(ぬす)んで()(くま)(かは)俺達(おれたち)背中(せなか)()せよつて、523ケツケツけがらはしいワイ。524尻敷(しりしき)にしてやつてもまだ(むし)承知(しようち)せないのだ。525コラ()(ちひ)さい子供(こども)(やう)()えても、526至大無外(しだいむぐわい)527至小無内(しせうむない)528千変万化(せんぺんばんくわ)結構(けつこう)神様(かみさま)のお使(つか)ひだぞ。529貴様(きさま)量見(りやうけん)次第(しだい)で、530閻魔(えんま)ともなれば、531(おに)ともなり、532大蛇(をろち)ともなつて()(しま)うてやらうか。533イヤ背筋(せすぢ)()()(なまり)熱湯(ねつたう)(なが)()んで、534制敗(せいばい)をしてやらうか。535三国ケ岳(みくにがだけ)大蛇(をろち)()るの、536鬼婆(おにばば)()るのと(ぬか)して、537言向(ことむ)(やは)すの、538征服(せいふく)するのとは(なん)(こと)だい。539鬼婆(おにばば)大蛇(をろち)も、540(おに)悪魔(あくま)も、541貴様(きさま)(むね)割拠(かつきよ)して()るのを()らぬのか。542鬼婆(おにばば)言向(ことむ)(やは)さうと(おも)へば、543貴様(きさま)(たち)(はら)(なか)鬼婆(おにばば)から(さき)改心(かいしん)さして()()きやがれ。544大馬鹿者(おほばかもの)()545ウーン』
546()()()し、547(おほ)きな(くち)()け、548(かぶ)()(やう)(いきほひ)で、549()()(あが)り、550三人(さんにん)(かほ)をギヨロギヨロと()めまはす。551三人(さんにん)一度(いちど)大地(だいち)(かしら)()げ、
552三人(さんにん)(まこと)取違(とりちが)ひを(いた)して()りました。553イヤもう結構(けつこう)御神徳(ごしんとく)(いただ)きました。554モウこれから改心(かいしん)(いた)します』
555笑童子(わらひどうじ)『アハヽヽヽ、556一寸(ちよつと)よいと得意(とくい)がつて無暗(むやみ)(はし)やぎ、557一寸(ちよつと)叱言(こごと)()いては(すぐ)悄気(しよげ)(かへ)るカメリヲンの(やう)(をとこ)だな。558(おほ)きな図体(づうたい)をして、559こんなチツポケな子供(こども)(しか)られて、560それが(こは)いのかい。561神界(しんかい)にはそんな(めう)(よわ)(よわ)人足(にんそく)一人(ひとり)()りはせぬぞや。562神界(しんかい)喜劇(きげき)よりも、563よつぽど面白(おもしろ)面白(おもしろ)い。564アハヽヽヽアハヽヽヽ』
565(へそ)(かか)へて(わら)()ける。
566泣童子(なきどうじ)『アーア(なさけ)()(こと)()せられたものだ。567これでも現界(げんかい)では()りに()つて(えら)まれた特別(とくべつ)選手(せんしゆ)ぢやさうなが、568(その)()()して()るべしだ。569(みづ)御霊(みたま)祖神様(おやがみさま)(さぞ)御骨(おほね)()れる(こと)だらう。570オイオイオイ。571あまり(かな)しうて(なみだ)()やせぬわいなア。572宣伝使(せんでんし)()(もの)は、573(なん)とした腑甲斐(ふがひ)ないものだらう。574(たこ)(やう)(ほね)(なに)()りやせぬワ。575こんな(こと)で、576どうして八岐(やまた)大蛇(をろち)退治(たいぢ)出来(でき)るものか、577()(なか)益々(ますます)悪鬼(あくき)羅刹(らせつ)横行(わうかう)濶歩(くわつぽ)(ほしいまま)にさせるのみだ。578どうして現界(げんかい)には(まこと)らしい(もの)()いのだらうか、579アンアンアン』
580田吾作(たごさく)『モシモシ子供(こども)(かみ)さま、581さうお(なげ)きなさいますな。582(ひろ)世界(せかい)には一人(ひとり)二人(ふたり)立派(りつぱ)(もの)()いとも()へませぬ。583(げん)此処(ここ)(ただ)一人(ひとり)()るぢやありませぬか。584さう取越(とりこ)苦労(くらう)をして、585()くものぢやありませぬ。586()(なか)何事(なにごと)善言美詞(ぜんげんびし)()(なほ)すのが天地(てんち)御規則(ごきそく)だ。587()いて(くら)すも一生(いつしやう)なら、588(わら)つて(くら)すも一生(いつしやう)だ。589結構(けつこう)(この)()(なか)に、590(なに)不足(ふそく)でメソメソと()くのだ。591わしは「(くや)(ごと)()(ごと)(だい)(きら)ひであるぞよ。592(いさ)んで(くら)して(くだ)されよ」と()神様(かみさま)(をしへ)(まも)つて、593()(なか)大楽観(だいらくくわん)して活動(くわつどう)して()るのだ。594(まへ)さまもチツとは(おも)(なほ)して改心(かいしん)なさつたらどうだ。595(くや)めば(くや)(こと)出来(でき)()るぞよ」……と()(こと)()つとりますか。596ヤ、597まだ子供(こども)だから(わか)らぬのも無理(むり)はない』
598泣童子(なきどうじ)『わしも(あさ)から(ばん)まで()いて(くら)した(こと)はない。599今日(けふ)(はじ)めて()かねばならぬ(こと)出来(でき)たのだわいのう…アンアンアンアン…折角(せつかく)(ほね)()つて、600生命(いのち)()けで(くま)()り、601(かは)綺麗(きれい)(あら)ひ、602(ぢい)さま()アさまの着物(きもの)にしようと(おも)つて、603(たの)しんで()つた人間(にんげん)物品(ぶつぴん)を、604横奪(わうだつ)した泥棒(どろばう)根性(こんじやう)宣伝使(せんでんし)説教(せつけう)()かされるかと(おも)へば、605残念(ざんねん)残念(ざんねん)で、606(これ)()かずに()られようか。607モウどうぞ今日(けふ)(かぎ)泥棒(どろばう)根性(こんじやう)はやめて(くだ)さい……アンアンアン…それに()けても言依別神(ことよりわけのかみ)(さま)から、608大切(たいせつ)御命令(ごめいれい)(うけ)宗彦(むねひこ)のデモ宣伝使(せんでんし)609二人(ふたり)(やつ)盗人(ぬすびと)をするのに、610なぜ(だま)つて()つたか、611…イヤ自分(じぶん)から率先(そつせん)して泥棒(どろばう)手本(てほん)()せよつたぢやないか。612()んな(こと)でどうして(まこと)(みち)(ひら)けると(おも)ふか。613アーア()()れて(みち)(とほ)しの(かん)益々(ますます)(ふか)しだ。614どうしたら人間(にんげん)らしい人間(にんげん)が、615一人(ひとり)でも出来(でき)るだらう。616泥棒(どろばう)聖山(せいざん)(けが)されて取返(とりかへ)しのならぬ(こと)をした(わい)……アンアンアンアン』
617宗彦(むねひこ)『イヤ(けつ)して(けつ)して泥棒(どろばう)をすると()(やう)(かんが)へはチツとも()りませぬ。618あの(やう)(ところ)()てておいては、619(また)泥棒(どろばう)(さら)へて()つちやならない………それよりも吾々(われわれ)(しばら)拝借(はいしやく)して、620(また)(かへ)りがけにや、621(もと)(ところ)御返(おかへ)しをして(かへ)(つも)りだつた。622()(なか)相身(あひみ)(たがひ)だからと(おも)つて、623一寸(ちよつと)()つたのですよ。624(こころ)(そこ)から泥棒(どろばう)する根性(こんじやう)()りませぬ』
625怒童子(おこりどうじ)『エーつべこべと(この)()(およ)んで卑怯(ひけふ)未練(みれん)()(わけ)をするのが()()はぬワイ。626貴様(きさま)女殺(をんなごろ)しの後家倒(ごけたふ)し、627(その)(うへ)嬶泣(かかあな)かせの家潰(いへつぶ)し、628沢山(たくさん)(ひと)()かして()揚句(あげく)629不知不識(しらずしらず)とは()ひながら、630平気(へいき)平三(へいざ)でお(かつ)と〇〇になつて()(けが)れた人足(にんそく)だ。631何程(なにほど)言依別神(ことよりわけのかみ)(さま)から大任(たいにん)(あふ)()けられたと()つて、632(いち)()もなく御受(おう)けして()ると()(こと)()るものか。633貴様(きさま)はそれでも清浄(せいじやう)潔白(けつぱく)人間(にんげん)だと(おも)うて()るのか。634()岩窟(いはや)鬼婆(おにばば)よりも、635(ひと)(わる)(やつ)だ。636(こころ)(そこ)から改心(かいしん)すればよし、637マゴマゴして()ると、638天狗風(てんぐかぜ)()かして()()ばしてやるぞ。639天下(てんか)娑婆塞(しやばふさ)()640ここを何処(どこ)だと心得(こころえ)てゐる。641貴様(きさま)()には悪神(あくがみ)巣窟(さうくつ)()えるであらうが、642(まこと)(かみ)()から()れば、643どこもかしこも(みんな)天国(てんごく)浄土(じやうど)だ。644貴様(きさま)(こころ)地獄(ぢごく)(きづ)かれ、645鉄条網(てつでうまう)()られ、646(おに)()()んで()るのが(わか)らぬか』
647 三人(さんにん)(あたま)鉄槌(てつつゐ)にて打砕(うちくだ)かるる(やう)心地(ここち)し、648一言(いちごん)(はつ)()ず、649大地(だいち)にピタリと鰭伏(ひれふ)し、650(しばら)くは(かしら)得上(えあ)げず、651(ふる)(をのの)いて()た。652半時(はんとき)ばかり()ちしと(おも)(ころ)653()()はれぬ(うる)はしき天然(てんねん)音楽(おんがく)(みみ)()まして(ひび)きわたる。654三人(さんにん)はフト(かしら)(もた)四辺(あたり)()れば、655童子(どうじ)(かげ)もなく(また)一枚(いちまい)獣皮(けがは)()くなつて()る。
656田吾作(たごさく)神様(かみさま)から大変(たいへん)なお目玉(めだま)頂戴(ちやうだい)したものだ。657原彦(はらひこ)(やつ)率先(そつせん)して不言窃盗(ふげんせつとう)をやるものだから、658()んな()()つたのだよ。659(しか)(なが)らマアマア結構(けつこう)教訓(けうくん)()けたものだ。660()自分(じぶん)(こころ)(なか)鬼婆(おにばば)征服(せいふく)して(かか)らねば、661何程(なにほど)努力(どりよく)しても駄目(だめ)だワイ』
662原彦(はらひこ)三人(さんにん)愁笑怒(しうせうど)神様(かみさま)(あら)はれて、663()んで()(やう)に、664詳細(しやうさい)堂々(だうだう)(をし)へて(くだ)さるのに、665(まへ)口答(くちごた)へをするものだから、666到頭(たうとう)怒鳴(どな)りつけられ、667(ちぢ)みあがつて、668(おほ)きな七尺(しちしやく)(をとこ)()んな馬鹿(ばか)(ざま)()たのだ。669チツト()れから言霊(ことたま)(ひか)へて(もら)はねば、670(この)(さき)はどんな(こと)突発(とつぱつ)するか(わか)つたものぢやありませぬワイ。671ナア宗彦(むねひこ)宣伝使(せんでんし)(さま)
672宗彦(むねひこ)何事(なにごと)神様(かみさま)のなさる(こと)673惟神(かむながら)我々(われわれ)(まか)すより仕方(しかた)()りませぬ』
674田吾作(たごさく)『それ(また)(おぼ)えの(わる)い、675(いま)惟神(かむながら)()つて(おこ)られたぢやありませぬか。676惟神中毒(かむながらちうどく)をすると、677(おこ)(がみ)さんが(また)(あら)はれますぞや。678貴方(あなた)こそ(つつし)んで(もら)はねばなりませぬ』
679宗彦(むねひこ)『さうだと()つて、680我々(われわれ)惟神(かむながら)(みち)(つか)へて()(もの)だ。681惟神(かむながら)()はなければ、682宣伝(せんでん)(なに)出来(でき)ぬぢやないか。683(にはとり)にコケコーと()くな、684(からす)にカアカア(さへづ)るな、685釣鐘(つりがね)になんぼ(たた)かれてもゴンゴンと()らずに沈黙(ちんもく)せよと()(やう)註文(ちうもん)だないか。686そんな天地(てんち)不自然(ふしぜん)(こと)がどうして実行(じつかう)出来(でき)るものかい』
687田吾作(たごさく)惟神(かむながら)688不言実行(ふげんじつかう)さへすれば()のですよ。689何事(なにごと)(こころ)(おこな)ひを惟神(かむながら)にして、690(くち)だけは(しばら)()はない(はう)(よろ)しかろ。691材木(ざいもく)でもカンナがらをかけて()なさい、692一遍々々(いつぺんいつぺん)(ほそ)くなるぢやないか。693あまり執拗(しつか)うカンナがらを使(つか)つて()ると、694結局(しまひ)にや(いと)(やう)になつて、695結構(けつこう)宣伝使(せんでんし)神柱(かむばしら)資格(しかく)消滅(せうめつ)して(しま)ひますワ』
696宗彦(むねひこ)『ハヽヽヽ、697余程(よほど)(おこ)神様(かみさま)御言(おことば)感応(こた)へたと()えるワイ。698ありや一体(いつたい)どこから()神様(かみさま)だと(おも)つて()るのだ』
699田吾作(たごさく)神界(しんかい)(こと)我々(われわれ)(わか)るものぢや()りませぬが、700マア(てん)から天降(あまくだ)られたと()ふより仕方(しかた)()りますまい』
701宗彦(むねひこ)馬鹿(ばか)()ふな、702あの(おこ)(がみ)さまは宗彦(むねひこ)さまの本守護神(ほんしゆごじん)だ。703泣神(なきがみ)さまが貴様(きさま)本守護神(ほんしゆごじん)704(わら)(がみ)さまが留公(とめこう)守護神(しゆごじん)だ。705チツト貴様(きさま)改心(かいしん)せぬとあの(とほ)守護神(しゆごじん)がベソを()いて()るぢやないか』
706田吾作(たごさく)『そりやチト(ちが)ひませう。707(わら)つて()るのが(わたし)守護神(しゆごじん)708(おこ)つて()るのがあなたの守護神(しゆごじん)709()いとる(やつ)留公(とめこう)守護神(しゆごじん)(ちが)ひありませぬワイ。710結構(けつこう)御用(ごよう)(あふ)()かり(なが)ら、711(まへ)さまはまだ(はら)(そこ)(くも)りがあると()えて、712本守護神(ほんしゆごじん)(おこ)つて()るのだ。713()加減(かげん)改心(かいしん)をしなさらぬと、714どんな地異(ちい)天変(てんぺん)おこつておこつて、715おこりさがすか()れませぬぞ。716(まへ)さまの大将面(たいしやうづら)して威張(ゐば)つて(ある)くのがあまり可笑(をか)しうて、717田吾(たご)さんの本守護神(ほんしゆごじん)(わら)つて()るのだ』
718宗彦(むねひこ)『どうでも()いぢやないか。719(おこ)(かみ)もあれば(わら)(がみ)もあり、720()(がみ)もある。721実際(じつさい)のこたア、722三柱(みはしら)(かみ)(とも)共通的(きようつうてき)守護(しゆご)して御座(ござ)るのだ』
723原彦(はらひこ)『モシモシ(わたくし)(だけ)本守護神(ほんしゆごじん)がどうなりました』
724田吾作(たごさく)『お(まへ)本守護神(ほんしゆごじん)はまだ(あら)はれる(まく)ぢやない、725地平線下(ちへいせんか)身魂(みたま)だから、726(つち)(うへ)()(とこ)へは()かぬ。727(しか)(なが)孟宗竹(まうそうだけ)でさへも(つち)()つてニユーと(くび)突出(つきだ)すのだから、728どつか其辺(そこら)(あたま)をあげかけてゐるかも(わか)らぬぞ。729チツト(さが)して()たらどうだ』
730原彦(はらひこ)『アハヽヽヽ、731身魂(みたま)(たけのこ)(ひと)つに()られちや、732原彦(はらひこ)迷惑(めいわく)だ。733(まる)でドクトルの身魂(みたま)(やう)に、734田吾(たご)さんが(おつ)しやいますワイ。735(うたが)ふのぢやありませぬけれど、736随分(ずゐぶん)道理(だうり)(ちが)うた(こと)()ふお(かた)ですな。
737(たけ)()番人(ばんにん)()れば(やぶ)にらみ」
738アハヽヽヽ、739オイ(やぶ)にらみの田吾竹(たごたけ)さま』
740田吾作(たごさく)議論(ぎろん)(あと)にせい。741(たけのこ)身魂(みたま)()(こと)は、742モウつい、743日日薬(ひにちくすり)竹々(ちくちく)(わか)つて()る。744チクと身魂(みたま)練薬(ねりやく)して、745(おれ)()(こと)膏薬(かうやく)後学(こうがく))の(ため)()いて()くのだな。746……エー(なに)薬々(くすりくすり)(わら)ふのだい。747薬価(やくか)い(厄介(やくかい)(もの)()748それよりも身魂(みたま)煎薬(せんやく)洗濯(せんたく))が一等(いつとう)だぞ』
749原彦(はらひこ)『これはこれはイカい(医界(いかい))お世話(せわ)になりました。750(やうや)医師(いし)意思(いし))が疎通(そつう)しました。751モウ(この)(うへ)(けつ)して、752()()()(まを)しませぬ』
753田吾作(たごさく)『キツト医薬(いやく)違約(ゐやく))をするでないぞ。754(おれ)()(こと)(まも)れば、755キツト(くすり)九層倍(くそうばい)(むく)いが()()る。756(ちから)一杯(いつぱい)(やく)(やく))を(まも)つて、757(この)(うへ)口答(くちごた)へをしてはならぬぞ。758(おれ)()(こと)はチツトは(にが)(こと)もある。759(しか)良薬(りやうやく)(くち)(にが)しだ。760(やく)(やく)雑魂(ざだましひ)下痢(げり)させて、761神霊(しんれい)注射(ちうしや)()し、762身体(からだ)一面(いちめん)(なん)()()(じやう)もないとこまで(きよ)めて、763()れから悪魔(あくま)征伐(せいばつ)(むか)ふのだ。764(こころ)(わづら)ひのある(とき)(やまひ)(おこ)ると()ふ、765(その)(やまひ)問屋(とんや)(やま)(かみ)置去(おきざ)りにして、766()んな(ふか)(やま)(やまひ))あがつて()るものだから、767到頭(たうとう)逆上(ぎやくじやう)して不健窃盗病(ふけんせつたうびやう)勃発(ぼつぱつ)するのだ、768アハヽヽヽ』
769宗彦(むねひこ)『サアもう()こう。770グヅグヅして()ると、771中途(ちうと)()()れて薬鑵(やくわん)(かぜ)()いて(しま)ふぞ』
772 二人(ふたり)(だま)つて()()ち、773宗彦(むねひこ)(あと)よりエチエチと小柴(こしば)()け、774()(やう)にして胸突坂(むねつきざか)()きあがる。775(たちま)右方(うはう)谷間(たにま)(あた)つて(をんな)悲鳴(ひめい)(きこ)えて()た。
776田吾作(たごさく)『イヨー(あや)しい(こゑ)がするぞ。777(ばば)アの(こゑ)にしては(すこ)(わか)(やう)だ。778(しか)(ばば)(ばか)りぢやない、779沢山(たくさん)(をんな)()るであらうから、780(ひと)(こゑ)(あて)実地(じつち)検分(けんぶん)()かけたらどうでせう。781ナア宗彦(むねひこ)さま』
782宗彦(むねひこ)追々(おひおひ)(さけ)(ごゑ)(たか)くなつて()るやうです。783(なに)(これ)には秘密(ひみつ)伏蔵(ふくざう)されて()るでせう。784(わたし)此処(ここ)原彦(はらひこ)さまと()つて()るから、785一寸(ちよつと)偵察(ていさつ)して()(もら)へませぬかなア』
786田吾作(たごさく)『ハイ診察(しんさつ)して(まゐ)ります。787探険家(たんけんか)のオーソリチーの田吾作(たごさく)ですよ』
788(はや)くも小柴(こしば)(なか)姿(すがた)(かく)した。789宗彦(むねひこ)は、
790宗彦(むねひこ)『アハヽヽヽ、791(くち)達者(たつしや)(をとこ)だが、792随分(ずゐぶん)(あし)達者(たつしや)だ…ヨウヨウ、793一人(ひとり)(こゑ)かと(おも)へば大勢(おほぜい)らしいぞ。794こりや安閑(あんかん)としては()られない。795(わたし)()つて調(しら)べて()ようかな』
796(くび)(かた)げて()る。797原彦(はらひこ)は、
798『マア少時(しばらく)御待(おま)ちなさいませ。799(いま)田吾(たご)さまが(かへ)へつて()れば、800様子(やうす)(わか)りませうから、801大方(おほかた)最前(さいぜん)()()きの守護神(しゆごじん)極端(きよくたん)()きの本性(ほんしやう)発揮(はつき)してるのかも()れませぬぜ。802最前(さいぜん)(やう)なお叱言(こごと)頂戴(ちやうだい)すると(こま)りますから、803マアゆつくりと此処(ここ)()ちませうかい』
804宗彦(むねひこ)『そうだな。805()つてもよいが、806(しか)(なん)だか()がイライラして()た。807田吾作(たごさく)一人(ひとり)()つて()くのも心許(こころもと)ない。808………そんなら此処(ここ)()つて()るから、809(はら)さま、810(まへ)()つて()()れないか』
811原彦(はらひこ)『ハイ、812そりやモウさうです。813あまり(なん)ですから、814(なん)となく気分(きぶん)(なに)しませぬ。815ならう(こと)なら、816何々様(なになにさま)御一緒(ごいつしよ)(ねが)ひたいものですなア』
817宗彦(むねひこ)(わか)つたやうな(わか)らぬやうな(こと)()ふぢやないか。818ハツキリと()つたらどうだ』
819原彦(はらひこ)現在(げんざい)(わたくし)(こころ)が、820あなたには(わか)りませぬか。821天眼通(てんがんつう)822天耳通(てんじつう)823漏尽通(ろじんつう)824宿命通(しゆくめいつう)825自他神通(じたしんつう)826感通(かんつう)天言通(てんげんつう)827七神通(しちじんつう)阿羅耶識(あらやしき)()たと()宣伝使(せんでんし)ぢやありませぬか、828(いち)()いて(じふ)()身魂(みたま)でないと、829(まこと)御用(ごよう)出来(でき)ぬぞよ」……と神様(かみさま)仰有(おつしや)いませう。830さうすれば貴方(あなた)最前(さいぜん)百点(ひやくてん)返上(へんじやう)なさらねばならぬ破目(はめ)(おちい)りますよ』
831宗彦(むねひこ)(おれ)天言通(てんげんつう)はお神徳(かげ)(いただ)いて()るが、832どうもまだ人語通(じんごつう)()()ないのだ。833()して(くも)つた身魂(みたま)(ささや)きは尚更(なほさら)判別(はんべつ)がつきかねる。834何程(なにほど)(ちか)くに()つても、835御神諭(ごしんゆ)(とほ)り「灯台下(とうだいもと)真暗(まつくら)がり、836遠国(ゑんごく)からわかりて()るぞよ」……と()ふのが本当(ほんたう)だからなア』
837原彦(はらひこ)左様(さやう)か、838左様(さやう)ならばあなたも何々(なになに)(わり)とは何々(なになに)ですな。839(わたくし)今迄(いままで)チツト(ばか)八丁笠(ばつちやうがさ)()(かぶ)つて()りました』
840宗彦(むねひこ)『さうだらう、841御互様(おたがひさま)だ。842(まへ)もモウチツト勇気(ゆうき)()るかと(おも)へば、843(じつ)(もろ)いものだ、844田吾作(たごさく)でさへも、845一人(ひとり)探険(たんけん)にいつたのに、846わしの(そば)にくつついて、847(ふる)うて()るとは(じつ)見上(みあ)げたものだ。848生命(いのち)宣伝使(せんでんし)差上(さしあ)げると()つた(くせ)に、849ヤツパリ生命(いのち)(をし)いと()えるワイ。850きつく(おれ)()(かぶ)つたものだワイ』
851原彦(はらひこ)(はじ)めに()つたのは、852アラ見本(みほん)ですよ。853見本通(みほんどほり)物品(ぶつぴん)製造(せいざう)して輸出(ゆしゆつ)でもしようものなら、854海関税(かいくわんぜい)沢山(たくさん)()られて、855今日(こんにち)(はげ)しい商業(しやうげふ)戦争(せんそう)零敗(ゼロはい)()りますワ』
856宗彦(むねひこ)『アハヽヽヽ、857(まへ)(くち)ばつかりの(をとこ)だなア』
858原彦(はらひこ)『さうですとも、859ハラから出口(でぐち)(かみ)(おもて)(あら)はれて、860(この)()(あく)立直(たてなほ)し、861(ぜん)身魂(みたま)改心(かいしん)させるお(やく)ですもの……』
862宗彦(むねひこ)(あく)立直(たてなほ)し、863(ぜん)身魂(みたま)改心(かいしん)さすとは、864そら(なに)()ふのだ』
865原彦(はらひこ)『イヤ一寸(ちよつと)(ちが)ひました。866「ニ」と「ヲ」との配置(はいち)(あやま)つたのです。867(あく)立直(たてなほ)し、868(ぜん)身魂(みたま)改心(かいしん)させるのです。869(うへ)()くか、870(した)()くか、871「に」……にか、872「を」にか、873どつちやにせよ、874チツト(ばか)りの間違(まちが)ひだ。875さう一字(いちじ)二字(にじ)配置(はいち)(ちが)つたと()つて、876()(ちひ)さい(こと)()ふものぢやありませぬワ。877アハヽヽヽ』
878 (にはか)(そば)小柴(こしば)(なか)よりガサガサと(おと)()て、879(あら)はれて()たのは田吾作(たごさく)であつた。
880宗彦(むねひこ)『ヤア田吾作(たごさく)か、881様子(やうす)はどうだなア』
882田吾作(たごさく)最早(もはや)讐敵(かたき)()()せて(さふら)へば、883あなたに(かは)つて一戦(ひといくさ)884御身(おんみ)(はや)(この)()(のが)れて(くだ)さりませ……と(くち)には()へど御名残(おんなごり)……チヽヽヽヽヽヽチンチンだ』
885宗彦(むねひこ)『ハヽヽヽヽ、886そんな冗談(ぜうだん)()つてる(ところ)ぢやなからう。887どんな(こと)(おこ)つて()つたか、888(はや)()かして()れい』
889田吾作(たごさく)『ハイ申上(まをしあ)げます。890一方(いつぱう)大将(たいしやう)大岩石(だいがんせき)(たて)()り、891一丈(いちぢやう)有余(いうよ)大木(たいぼく)小枝(こえだ)甲冑(かつちう)(よろ)ひ、892一生懸命(いつしやうけんめい)阿修羅王(あしゆらわう)(ごと)()(くる)ひ、893采配(さいはい)()つて号令(がうれい)をなすあり、894此方(こちら)谷間(たにま)よりは、895(また)古今無双(ここんむさう)豪傑(がうけつ)樹上(じゆじやう)陣取(ぢんど)り、896(まけ)(おと)らず(こゑ)(かぎ)りにキヤツ キヤツ キヤツ キヤツの言霊戦(ことたません)897(いさ)ましかりける次第(しだい)なり、898ハアハアハアハアだ。899ウツフツフツ ウツフツフツフウ』
900宗彦(むねひこ)『なアンだ、901ちツとも(わか)らぬぢやないか』
902田吾作(たごさく)『ソラさうでせうとも。903実地(じつち)目撃(もくげき)した(わたし)でさへも、904テンと了解(れうかい)出来(でき)ない、905猿芝居(さるしばゐ)906(いな)猿合戦(さるがつせん)ですもの……』
907宗彦(むねひこ)『ハヽヽヽヽ、908千匹猿(せんびきざる)喧嘩(けんくわ)だつたのか。909なアーンだ、910しやうもない。911……サアサア愚図々々(ぐづぐづ)しては()られまいぞ。912(この)前途(さき)又々(またまた)大蛇(をろち)芝居(しばゐ)か、913(くま)のダンスでも開演(かいえん)されて()るだらう、914面白(おもしろ)無料(むれう)観覧(くわんらん)()かけよう』
915大正一一・五・一四 旧四・一八 松村真澄録)
   
逆リンク[?]このページにリンクを張っている外部サイトを自動的に探して表示します。ブログの場合、トップページやカテゴリページは無視されます。エントリーのページだけです。該当ページからすでにリンクが削除されている場合もありますが、反映されるのに数週間かかります。[×閉じる]逆リンク集はこちら