霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三二章 瓔珞(えうらく)河越(かはごえ)〔二八二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻 篇:第6篇 百舌鳥の囁 よみ(新仮名遣い):もずのささやき
章:第32章 瓔珞の河越 よみ(新仮名遣い):ようらくのかわごえ 通し章番号:282
口述日:1922(大正11)年01月22日(旧12月25日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
目付を追い返した乞食たちは、今の世の中に悪霊がはびこっているため、勢力ある神人らは憑依されており、偉い神様だと思ったら大間違いという有様を嘆き憤慨した。そして河を渡ってアーメニヤの向こう岸に逃げようとした。
そこへ、乞食に変装した目付が近づいてきた。乞食たちは警戒して我先にと河を渡って逃げ出した。変装した偽乞食は、逃げていく乞食たちを捕らえろと叫んでいた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-06-20 06:57:23 OBC :rm0632
愛善世界社版:191頁 八幡書店版:第1輯 694頁 修補版: 校定版:189頁 普及版:78頁 初版: ページ備考:
001 目付役(めつけやく)姿(すがた)()えなくなつたので、002ホツと安心(あんしん)したもののごとく、003一同(いちどう)はヤレヤレと(むね)()(おろ)し、
004(おつ)『アヽ(あぶ)なかつたのー。005すんでのことで女郎(ぢよらう)でも()いのに、006わが()をウラル(さん)山奥(やまおく)に、007引捉(ひつとら)へられて()(とこ)だつたい。008本当(ほんたう)利己主義(われよし)(つよ)(もの)()ちの()(なか)ぢやないか。009われわれは()んな()には(すま)へないよ。010(いつ)()つて()ぬか、011()はずに()ぬか、012(おも)ひきり大洪水(だいこうずゐ)ぢやないが、013(どて)()つて(あば)れてやつたら(どう)だらう』
014 (へい)は、015(くろ)()をぎよろつかせ、016(あご)(した)のむしやむしや(ひげ)(ひね)りながら、
017一体(いつたい)全体(ぜんたい)この()(なか)(なん)(おも)ふ。018貴様(きさま)らは人間(にんげん)世界(せかい)(おも)つてゐるのか。019第一(だいいち)その(てん)からして大間違(おほまちが)ひだよ。020八岐(やまた)大蛇(をろち)といふ(おほ)きな()や、021金毛(きんまう)九尾(きうび)といふ大魔狐(だいまこ)(おに)大魔(だいま)蔓延(はびこ)()(なか)だ。022さうしてその魔神(ましん)(ども)が、023(いま)勢力(せいりよく)ある神人(かみがみ)のり(うつ)つて、024いろいろの(こと)()して(よわ)者虐(いぢ)めをやるのだよ。025それで(えら)(かみ)さまだと(おも)つたら大魔違(おほまちが)ひだといふのだ。026こんな(ところ)魔誤(まご)魔誤(まご)してゐると、027()かり(ちが)へばまたまた()れウラル(さん)ぢや。028(なに)ほど(うら)めしいと()つたつて仕方(しかた)()いよ。029永居(ながゐ)(おそ)れだ。030(はや)くこの(かは)(わた)つて対岸(むかう)()げろ()げろ』
031(かふ)()世界(せかい)なら(かは)対岸(むかう)にも、032()けつからア。033()うなるも(みな)各自(めいめい)(うん)だよ、034(いま)(やつ)は「(うん)(てん)()り」なんて(ぬか)しよるが(うん)()いて(あき)れる。035(くそ)いまいましい、036(しり)(あき)れるワ。037今頃(いまごろ)はウラル(ひこ)は、038沢山(たくさん)白首(しらくび)左右(さいう)(はんべ)らして「()めよ(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)(やみ)よ」なんて、039(さと)つたらしいことを()ひよつて、040おまけに宣伝歌(せんでんか)とやらを世界(せかい)(ひろ)め、041(さけ)(ぜい)()手段(しゆだん)(かんが)へて(さけ)宣伝歌(せんでんか)()かぬものは踏縛(ふんじば)つて(しま)ふなんて、042本当(ほんたう)乱暴(らんばう)(きは)まるぢやないか。043沢山(たくさん)(もの)()つてゐる(やつ)は、044()ンだり(さわ)いだりしとつてもよいが、045(あさ)冷飯(ひやめし)()つて昼間(ひるま)には何処(どこ)何処(いづこ)(いただ)かうやらといふ乞食(こじき)分際(ぶんざい)では、046(なに)()もあつたものぢやない。047そんな(をしへ)沢山(たくさん)財産(ざいさん)のある(やつ)(まも)ることだ。048貧乏人(びんばふにん)乞食(こじき)仲間(なかま)にや適用(てきよう)できぬごうたくだ。049それでも宣伝使(せんでんし)(とほ)つた(とき)は、050大地(だいち)(ひざまづ)かされて(うた)()かされるのだ。051宣伝使(せんでんし)とやらいふ(やつ)瓢箪(へうたん)粟島(あはしま)さまのやうに、052(こし)のあたりに沢山(たくさん)ぶら()げよつて、053(ひと)(うた)うては()み、054(ひと)(うた)うては()みして、055さうしてその(うた)(つつし)んで()けと()ひよるのだ。056()()かぬときは、057(みぎ)()()つてゐるあの(つるぎ)で、058(ところ)(かま)はず、059()つたり()いたりするのだから(たま)らぬ。060(おい)らは(ねこ)(かぶ)つて、061()をつぶつて()いてやつて()ると、062咽喉(のど)(むし)()(さけ)()しがりよつて、063(ねこ)(のど)のやうにゴロゴロ()かすぢやないか。064有難(ありがた)くも、065(うま)くも(なん)ともありやしない。066宣伝使(せんでんし)()()になりよつて、067(おな)(こと)繰返(くりかへ)し、068(おい)()()せびらかしよつて、069宣伝(せんでん)(くそ)もあつたものぢやない。070業腹(ごふはら)()つて、071むかついて嘔吐(あげ)さうになつてくるよ。072なんぼ()めよ、073(さわ)げよといつたつて(おい)らのやうな乞食(こじき)は、074()ンで(さわ)ぐことはできはせぬ。075(さけ)一滴(いつてき)もくれるものは()いのだもの』
076(てい)()めよ()めよといつたつて、077(さけ)()めと()つて()るのぢやない。078(なに)()むのか()れやしない。079(はら)()つたら(みづ)でも()ンで(さわ)げと()ふのか。080(ふところ)短刀(たんたう)いないな松魚(かつを)でも()んで(さわ)げといふのか。081まさか(ちが)うたら、082泥水(どろみづ)でも小便(せうべん)でも()めと()かすのか(わか)りやしない。083それなら宣伝歌(せんでんか)徹底(てつてい)してゐるが、084()()みが(わる)いと(はら)()つのぢや』
085(かふ)貴様(きさま)そら(なに)()かす。086(くち)番所(ばんしよ)()いと(おも)ひよつて、087馬鹿(ばか)なことを()かすも(ほど)がある。088貴様(きさま)大方(おほかた)ウラル(ひこ)間諜(まはしもの)だな。089(いま)(かへ)つて()きよつた目付(めつけ)(なん)だか(めう)(ふう)をしよつて、090(あご)をしやくりよつて合図(あひづ)をさらしとつたやうだ。091そんな(こと)はチヤーンと此方(こつち)(くろ)(まなこ)(にら)んであるのだ。092オイ兄弟(きやうだい)093此奴(こいつ)(いぬ)だ。094(かは)へぶち()め、095ぶち()め』
096一同(いちどう)『オー、097それがよからう。098薩張(さつぱり)(かは)(なが)勘定(かんぢやう)だ。099(かは)(みづ)でも、100どつさり()んで、101()めよ(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)(やみ)よ」だ。102それより(まへ)()吾々(われわれ)一統(いつとう)小便(せうべん)(くそ)()めよ(くら)へよ、103さうしてくたばれ
104毒吐(どくつ)きながら、105手足(てあし)引浚(ひつさら)へ、106カイン(がは)へざむぶと(ばか)()()みにける。
107(おつ)『オイ(みな)(やつ)108()()け。109向方(むかう)()よ、110(むか)うを。111また(なに)()よつたぜ』
112(へい)(なに)()たのだい』
113(おつ)『それ()()けて()ろ。114瓔珞(えうらく)仏像の頭・首・胸などにかける宝石の飾りさまだ』
115(へい)瓔珞(えうらく)さまて(なん)だい』
116(おつ)『わからぬ(やつ)ぢやな。117(おい)()仲間(なかま)(おな)(ふう)してる(やつ)さ』
118(へい)(おい)らはそんな立派(りつぱ)瓔珞(えうらく)のやうなものを(あたま)(かぶ)つたことは、119(ゆめ)にも()いぢやないか』
120(おつ)馬鹿(ばか)121うんばら122さんばら123若布(わかめ)行列(ぎやうれつ)124襁褓(しめし)親分(おやぶん)125雑巾屋(ざふきんや)看板(かんばん)126けつでも(くら)へと()ふやうな襤褸(つづれ)(にしき)()()(あそ)ばした天下(てんか)のお乞食(こじき)(さま)だ。127(しか)彼奴(きやつ)本当(ほんたう)吾々(われわれ)仲間(なかま)(おも)つたら間違(まちが)ひだ。128きつと(いぬ)だよ。129()()けよ』
130(へい)(いぬ)だといふが(ちつ)とも()なぬぢやないか。131だんだん此方(こつち)()つて()()るぞ』
132(ぼう)()をる()をる。133こいつは(あや)しい。134()げろ にげろ』
135瓔珞(えうらく)さまの一隊(いつたい)は、136(しり)ひつからげ(かは)(なが)(わた)りに、137ザブザブと(おと)をさせながら、138対岸(むかう)()しげみ姿(すがた)(かく)しける。
139 この(てい)()(いま)()かかつた偽乞食(にせこじき)は、
140『オーイオーイ。141(たれ)でもよい、142(いま)そこへ()(やつ)一人(ひとり)でも(とら)へたら褒美(ほうび)をやるぞ』
143対岸(かはむかう)から(さけ)びゐたりける。
144大正一一・一・二二 旧大正一〇・一二・二五 外山豊二録)
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