元照別は宣伝使たちを城の高殿に招き、豪華なご馳走でもてなした。
出雲姫は、強者に搾取されている民衆の様子を思うと、もったいなくてこのようなご馳走を食べるわけにはいかない、と高殿から膳を城の堀に投げ込んでしまった。
広道別もまた同様に、元照別に戒めの言葉をかけながら、膳を投げ捨ててしまった。
元照別はただ、己の身を恥じて、うつむいて涙を流すのみであった。
岩彦と熊彦は広道別、出雲姫に遠慮しながらも、出された膳をすっかり平らげてしまった。
出雲姫は、元照別の誕生を祝す、といって歌い舞い始めた。その歌には、元照別の戒めと、神の道への立ち返りが歌い込められていた。
宣伝使たちの実地的訓戒により、心ならずもウラル彦の強圧に服していた元照別夫婦は改心し、伊弉諾大神の神政に参加することとなった。
元照別、元照姫は、誰言うとなく、大戸惑子神、大戸惑女神といわれることになった。
出雲姫の歌舞曲に広道別は知らず立ち上がり、高殿の欄干に身を預けて見とれていたが、たちまち手すりは音を立てて崩れ、眼下の堀に落下してしまった。その寒さに震えて気がつけば、王仁は高熊山の方形の岩の上に、寒風にさらされていた。
道の栞り
天帝は、瑞の霊に限りなき直日魂を与え給うた。
そして、暗い世を照らし、垢を去り、泥を清め、鬼を亡ぼさしめるために、瑞の魂を深い御心によって降し給うたのである。
天国に救われようと欲する者は救われる。
瑞霊に叛く者は、自ら亡びを招くことになるのである。