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第61巻(子の巻)
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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
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第6巻(巳の巻)
序歌
松葉の塵
総説
第1篇 山陰の雪
01 宇宙太元
〔251〕
02 瀑布の涙
〔252〕
03 頓智奇珍
〔253〕
04 立春到達
〔254〕
05 抔盤狼藉
〔255〕
06 暗雲消散
〔256〕
07 旭光照波
〔257〕
第2篇 常世の波
08 春の海面
〔258〕
09 埠頭の名残
〔259〕
10 四鳥の別れ
〔260〕
11 山中の邂逅
〔261〕
12 起死回生
〔262〕
13 谷間の囁
〔263〕
14 黒竜赤竜
〔264〕
第3篇 大峠
15 大洪水(一)
〔265〕
16 大洪水(二)
〔266〕
17 極仁極徳
〔267〕
18 天の瓊矛
〔268〕
第4篇 立花の小戸
19 祓戸四柱
〔269〕
20 善悪不測
〔270〕
21 真木柱
〔271〕
22 神業無辺
〔272〕
23 諸教同根
〔273〕
24 富士鳴戸
〔274〕
第5篇 一霊四魂
25 金勝要大神
〔275〕
26 体五霊五
〔276〕
27 神生み
〔277〕
28 身変定
〔278〕
29 泣沢女
〔279〕
30 罔象神
〔280〕
第6篇 百舌鳥の囁
31 襤褸の錦
〔281〕
32 瓔珞の河越
〔282〕
33 五大教
〔283〕
34 三大教
〔284〕
35 北光開眼
〔285〕
36 三五教
〔286〕
第7篇 黄金の玉
37 雲掴み
〔287〕
38 黄金の宮
〔288〕
39 石仏の入水
〔289〕
40 琴平橋
〔290〕
41 桶伏山
〔291〕
第8篇 五伴緒神
42 途上の邂逅
〔292〕
43 猫の手
〔293〕
44 俄百姓
〔294〕
45 大歳神
〔295〕
46 若年神
〔296〕
47 二王と観音
〔297〕
48 鈿女命
〔298〕
49 膝栗毛
〔299〕
50 大戸惑
〔300〕
余白歌
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第三七章
雲掴
(
くもつか
)
み〔二八七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
篇:
第7篇 黄金の玉
よみ(新仮名遣い):
おうごんのたま
章:
第37章 雲掴み
よみ(新仮名遣い):
くもつかみ
通し章番号:
287
口述日:
1922(大正11)年01月23日(旧12月26日)
口述場所:
筆録者:
石破馨
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年5月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
中津御国の天教山の木花姫命の御教えを伝える、黄金山・霊鷲山の埴安彦、三葉彦は、教えを一つにまとめて三五教を現した。
黄金山の宣伝使・青雲別は、名を高彦と改めて、青雲山への宣教に旅立った。青雲山を上っていく高彦の耳にきこえて来たのは、ウラル教の宣伝歌を歌いながら道路を開鑿する工事人夫たちの声だった。
かまわず三五教の宣伝歌を歌いながら山上に進んでいく高彦を、ウラル教の人夫の頭・雲掴がさえぎり、首筋を掴んで路上にねじ伏せた。しかし高彦は何とも感じず、平気で神言を小声に奏上し始めた。
雲掴の体は次第に強直して地蔵のようにその場に固まってしまった。人足たちはこの様を見て、一斉に高彦に襲い掛かったが、高彦の神言に、みなやはり石像のように硬直してしまった。
高彦は鎮魂を解いて、雲掴の霊縛を解除した。雲掴は涙を浮かべて無礼を陳謝した。高彦は三五教の仁慈の教えをもって諭し、青雲山の吾妻彦がウラル教に恭順したことを問いただした。
雲掴は吾妻彦がウラル彦に恭順した経緯を語り出した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-04-24 18:01:23
OBC :
rm0637
愛善世界社版:
225頁
八幡書店版:
第1輯 707頁
修補版:
校定版:
225頁
普及版:
94頁
初版:
ページ備考:
001
仰
(
あふ
)
げば
高
(
たか
)
し
久方
(
ひさかた
)
の
002
天津
(
あまつ
)
御神
(
みかみ
)
の
造
(
つく
)
らしし
003
豊葦原
(
とよあしはら
)
の
瑞穂地
(
みづほぢ
)
と
004
称
(
とな
)
へ
奉
(
まつ
)
るは
海原
(
うなばら
)
の
005
浪
(
なみ
)
に
漂
(
ただよ
)
ふ
五大洲
(
ごだいしう
)
006
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
も
三
(
み
)
ツ
栗
(
ぐり
)
の
007
中津
(
なかつ
)
御国
(
みくに
)
の
日
(
ひ
)
の
本
(
もと
)
の
008
要
(
かなめ
)
と
生
(
あ
)
れし
天教山
(
てんけうざん
)
の
009
木花姫
(
このはなひめ
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
010
語
(
かた
)
り
伝
(
つた
)
へて
経緯
(
たてよこ
)
の
011
綾
(
あや
)
と
錦
(
にしき
)
の
機
(
はた
)
を
織
(
お
)
る
012
黄金
(
こがね
)
の
山
(
やま
)
や
霊鷲
(
れいしう
)
の
013
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
に
現
(
あ
)
れませる
014
埴安彦
(
はにやすひこ
)
や
三葉彦
(
みつばひこ
)
015
清
(
きよ
)
く
湧
(
わ
)
き
出
(
で
)
る
瑞御霊
(
みづみたま
)
016
流
(
なが
)
れ
流
(
なが
)
れて
世
(
よ
)
を
洗
(
あら
)
ふ
017
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
勲功
(
いさをし
)
を
018
固
(
かた
)
めて
茲
(
ここ
)
に
三五教
(
さんごけう
)
019
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
白梅
(
しらうめ
)
の
020
香
(
かを
)
りも
床
(
ゆか
)
し
神
(
かみ
)
の
教
(
のり
)
021
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
へむと
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
022
山
(
やま
)
の
尾上
(
をのへ
)
も
川
(
かは
)
の
瀬
(
せ
)
も
023
残
(
のこ
)
る
隈
(
くま
)
なく
青雲
(
あをくも
)
の
024
靉靆
(
たなび
)
く
極
(
きは
)
み
白雲
(
しらくも
)
の
025
降
(
を
)
り
居
(
ゐ
)
向
(
む
)
か
伏
(
ふ
)
す
其
(
そ
)
の
涯
(
かぎり
)
026
峻
(
さか
)
しき
国
(
くに
)
は
平
(
たひら
)
けく
027
狭
(
せま
)
けき
国
(
くに
)
は
弥
(
いや
)
広
(
ひろ
)
く
028
神
(
かみ
)
の
光
(
ひかり
)
を
照
(
て
)
らさむと
029
光
(
ひかり
)
まばゆき
黄金
(
わうごん
)
の
030
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
031
青雲
(
せいうん
)
遥
(
はるか
)
に
押
(
お
)
し
別
(
わ
)
けて
032
進
(
すす
)
む
青雲別
(
あをくもわけ
)
の
天使
(
かみ
)
033
名
(
な
)
も
高彦
(
たかひこ
)
と
改
(
あらた
)
めて
034
服装
(
みなり
)
も
軽
(
かる
)
き
宣伝使
(
せんでんし
)
035
峻
(
さか
)
しき
山
(
やま
)
を
打
(
う
)
ち
渡
(
わた
)
り
036
深
(
ふか
)
き
谷間
(
たにま
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
えて
037
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
歌
(
うた
)
ひ
来
(
く
)
る
038
世人
(
よびと
)
を
覚
(
さま
)
す
宣伝歌
(
せんでんか
)
039
世
(
よ
)
は
烏羽玉
(
うばたま
)
の
闇
(
やみ
)
となり
040
万
(
よろづ
)
の
神
(
かみ
)
の
音
(
おと
)
なひは
041
五月蠅
(
さばへ
)
の
如
(
ごと
)
く
満
(
み
)
ち
生
(
わ
)
きて
042
治
(
をさ
)
むる
由
(
よし
)
もなくばかり
043
山川
(
やまかは
)
どよみ
草木
(
くさき
)
枯
(
か
)
れ
044
宛然
(
さながら
)
荒野
(
あれの
)
の
如
(
ごと
)
くなる
045
山
(
やま
)
と
山
(
やま
)
とを
踏
(
ふ
)
み
分
(
わ
)
けて
046
青雲山
(
せいうんざん
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
047
漸
(
やうや
)
く
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
きにけり。
048
高彦
(
たかひこの
)
天使
(
かみ
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
青雲山
(
せいうんざん
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
きしに、
049
山中
(
さんちゆう
)
に
幾百
(
いくひやく
)
人
(
にん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
人声
(
ひとごゑ
)
あり。
050
何事
(
なにごと
)
ならむと
暫
(
しばら
)
く
木蔭
(
こかげ
)
に
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ち
掛
(
か
)
けて、
051
その
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くともなしに
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め
居
(
ゐ
)
たり。
052
数多
(
あまた
)
の
人々
(
ひとびと
)
は
手
(
て
)
に
手
(
て
)
に
柄物
(
えもの
)
を
持
(
も
)
つて、
053
山上
(
さんじやう
)
に
達
(
たつ
)
する
道路
(
だうろ
)
の
開鑿中
(
かいさくちう
)
なり。
054
高彦
(
たかひこの
)
天使
(
かみ
)
は
木蔭
(
こかげ
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で、
055
またもや
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら
登
(
のぼ
)
りゆく。
056
数多
(
あまた
)
の
人足
(
にんそく
)
は
土工
(
どこう
)
に
従事
(
じうじ
)
しながら
声
(
こゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げて、
057
『
呑
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
は
暗夜
(
やみよ
)
、
058
暗
(
やみ
)
の
後
(
あと
)
には
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
る。
059
人
(
ひと
)
は
飲
(
の
)
め
食
(
く
)
へ、
060
寝
(
ね
)
てころべ』
061
と
唄
(
うた
)
ひながら
汗水
(
あせみづ
)
垂
(
た
)
らして
働
(
はたら
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
062
その
中
(
なか
)
を、
063
高彦
(
たかひこの
)
天使
(
かみ
)
は
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
064
多人数
(
たにんずう
)
の
中
(
なか
)
より
頭領
(
かしら
)
らしき
一人
(
ひとり
)
が、
065
宣伝使
(
せんでんし
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ
大手
(
おほて
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がり、
066
『
当山
(
たうざん
)
へ
登
(
のぼ
)
ること
罷
(
まか
)
りならぬ』
067
と
梟
(
ふくろ
)
のごとき
眼
(
め
)
を
剥
(
む
)
きだし、
068
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らせながら
呶鳴
(
どな
)
りつけたるに、
069
宣伝使
(
せんでんし
)
は
笑
(
わら
)
ひながら、
070
手
(
て
)
の
下
(
した
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
登
(
のぼ
)
らむとするを、
071
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
は
矢庭
(
やには
)
に
首筋
(
くびすぢ
)
引
(
ひ
)
つ
掴
(
つか
)
みて
路上
(
ろじやう
)
に
捻
(
ね
)
ぢ
伏
(
ふ
)
せ、
072
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
にて
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
め、
073
『
通行
(
つうかう
)
ならぬと
申
(
まを
)
すに
何故
(
なぜ
)
無断
(
むだん
)
にて
当山
(
たうざん
)
に
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
るか、
074
当山
(
たうざん
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
075
昔
(
むかし
)
は
吾妻彦
(
あづまひこの
)
命
(
みこと
)
[
※
校正本では「吾妻別命」
]
、
076
八頭神
(
やつがしらがみ
)
として
当山
(
たうざん
)
を
中心
(
ちうしん
)
に
神政
(
しんせい
)
を
布
(
し
)
き
給
(
たま
)
うたが、
077
世界
(
せかい
)
の
大洪水
(
だいこうずゐ
)
の
後
(
のち
)
は、
078
ウラル
彦神
(
ひこのかみ
)
、
079
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
の
管轄
(
くわんかつ
)
のもとに
置
(
お
)
かれ、
080
吾妻彦
(
あづまひこの
)
命
(
みこと
)
[
※
校正本では「吾妻別命」
]
はその
配下
(
はいか
)
として
当山
(
たうざん
)
を
守護
(
しゆご
)
し「
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
は
闇夜
(
やみよ
)
、
081
闇
(
やみ
)
の
後
(
あと
)
には
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
る」と
唄
(
うた
)
つてこの
世
(
よ
)
の
人民
(
じんみん
)
を
気楽
(
きらく
)
に
暮
(
くら
)
さして
下
(
くだ
)
さるのだ。
082
それに
何
(
なん
)
ぞや
七六
(
しちむつ
)
ケ
(
か
)
敷
(
し
)
い、
083
肩
(
かた
)
の
凝
(
こ
)
るやうな
宣伝歌
(
せんでんか
)
とやらを
歌
(
うた
)
ひよつて、
084
見
(
み
)
のがせ
の
聞
(
きき
)
のがせ
のと、
085
何
(
な
)
んのことだい。
086
見逃
(
みのが
)
せと
云
(
い
)
つたつて、
087
聞逃
(
ききのが
)
せと
云
(
い
)
つたつて、
088
吾々
(
われわれ
)
は
見
(
み
)
のがし
聞
(
き
)
のがし
は
罷
(
まか
)
りならぬのだ。
089
この
上
(
うへ
)
一寸
(
いつすん
)
でもこの
山
(
やま
)
に
登
(
のぼ
)
るなら
登
(
のぼ
)
つて
見
(
み
)
よれ、
090
生首
(
なまくび
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
いて
了
(
しま
)
ふぞ』
091
と
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てる。
092
宣伝使
(
せんでんし
)
はこの
男
(
をとこ
)
に
首筋
(
くびすぢ
)
を
掴
(
つか
)
まれ
捻
(
ね
)
ぢ
伏
(
ふ
)
せられては
居
(
ゐ
)
るが、
093
別
(
べつ
)
に
弱
(
よわ
)
つても
居
(
ゐ
)
ない、
094
蚊
(
か
)
や
虻
(
あぶ
)
の
一二疋
(
いちにひき
)
肩
(
かた
)
に
止
(
と
)
まつた
位
(
くらゐ
)
に
感
(
かん
)
じてゐる。
095
引掴
(
ひつつか
)
んで
中天
(
ちうてん
)
に
放
(
は
)
り
上
(
あ
)
げるくらゐは
何
(
なん
)
でもないが、
096
神示
(
しんじ
)
の「
見直
(
みなほ
)
せ
聞直
(
ききなほ
)
せ」の
戒律
(
かいりつ
)
は
破
(
やぶ
)
ることが
出来
(
でき
)
ぬので、
097
わざと
柔順
(
すなほ
)
に
彼
(
かれ
)
が
為
(
な
)
すままに
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
してゐた。
098
而
(
しか
)
して
小声
(
こごゑ
)
になりて
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めたり。
099
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
の
名
(
な
)
は
雲掴
(
くもつかみ
)
と
云
(
い
)
ふ。
100
雲掴
(
くもつかみ
)
の
手
(
て
)
はだんだんと
痲痺
(
しび
)
れ
出
(
だ
)
し
遂
(
つひ
)
には
全身
(
ぜんしん
)
強直
(
きやうちよく
)
して
石地蔵
(
いしぢざう
)
のごとくに
硬化
(
かうくわ
)
して
了
(
しま
)
つた。
101
数多
(
あまた
)
の
人足
(
にんそく
)
共
(
ども
)
はこの
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
より
宣伝使
(
せんでんし
)
に
向
(
むか
)
つて、
102
手
(
て
)
に
手
(
て
)
に
鎌
(
かま
)
や、
103
鍬
(
くは
)
や、
104
鶴嘴
(
つるはし
)
、
105
山
(
やま
)
こぼち
等
(
など
)
を
振
(
ふ
)
り
上
(
あ
)
げ
攻
(
せ
)
め
掛
(
かか
)
つた。
106
宣伝使
(
せんでんし
)
は
少
(
すこ
)
しも
騒
(
さわ
)
がず、
107
路上
(
ろじやう
)
に
端坐
(
たんざ
)
して
盛
(
さかん
)
に
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
した。
108
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より
攻
(
せ
)
め
囲
(
かこ
)
んだ
人足
(
にんそく
)
等
(
ら
)
は
孰
(
いづ
)
れも
柄物
(
えもの
)
を
以
(
もつ
)
て
腕
(
うで
)
をふり
上
(
あ
)
げたるまま
石像
(
せきざう
)
のごとく
強直
(
きやうちよく
)
硬化
(
かうくわ
)
して
身動
(
みうご
)
きもならず、
109
只
(
ただ
)
二
(
ふた
)
ツの
眼球
(
めだま
)
ばかり
白黒
(
しろくろ
)
と
転回
(
てんくわい
)
させて
居
(
ゐ
)
るのみであつた。
110
宣伝使
(
せんでんし
)
は
鎮魂
(
ちんこん
)
の
神術
(
かむわざ
)
を
以
(
もつ
)
て
雲掴
(
くもつかみ
)
の
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
いた。
111
雲掴
(
くもつかみ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
身体
(
しんたい
)
の
自由
(
じいう
)
を
得
(
え
)
、
112
両眼
(
りやうがん
)
に
涙
(
なみだ
)
を
浮
(
う
)
かべて
大地
(
だいち
)
に
平伏
(
へいふく
)
しその
無礼
(
ぶれい
)
を
謝
(
しや
)
したり。
113
宣伝使
(
せんでんし
)
は
言葉
(
ことば
)
を
改
(
あらた
)
めて
云
(
い
)
ふ。
114
『
先刻
(
せんこく
)
の
汝
(
なんぢ
)
の
言
(
げん
)
によれば
当山
(
たうざん
)
の
守護職
(
しゆごしよく
)
吾妻彦
(
あづまひこ
)
[
※
校正本では「吾妻別」
]
は、
115
ウラル
彦
(
ひこ
)
に
帰順
(
きじゆん
)
せりと
聞
(
き
)
き
及
(
およ
)
ぶが、
116
はたして
真実
(
しんじつ
)
なるや、
117
詳細
(
しやうさい
)
に
逐一
(
ちくいち
)
物語
(
ものがた
)
れ』
118
と
云
(
い
)
はれて
雲掴
(
くもつかみ
)
は
大団扇
(
おほうちは
)
の
様
(
やう
)
な
手
(
て
)
を
以
(
もつ
)
て
天
(
てん
)
に
向
(
むか
)
ひ
拍手
(
かしはで
)
を
響
(
ひび
)
かせながら、
119
またも
地上
(
ちじやう
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き、
120
恐
(
こは
)
さに
震
(
ふる
)
うて、
121
『
申上
(
まをしあ
)
げます、
122
モー
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
は
何
(
なに
)
もかも、
123
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
さず
綺麗
(
きれい
)
サツパリと、
124
白状
(
はくじやう
)
いたしますから
生命
(
いのち
)
ばかりはお
助
(
たす
)
け』
125
と
男泣
(
をとこな
)
きに
泣
(
な
)
く、
126
その
見
(
み
)
つともなさ。
127
数多
(
あまた
)
の
人足
(
にんそく
)
共
(
ども
)
は
何
(
いづ
)
れも
石地蔵
(
いしぢざう
)
となつて、
128
眼
(
め
)
ばかりギロツカせこの
光景
(
くわうけい
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たり。
129
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
130
『
吾
(
われ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
である。
131
何事
(
なにごと
)
も
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
132
過
(
あやま
)
ちを
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
すのが
吾々
(
われわれ
)
の
主旨
(
しゆし
)
であるから、
133
決
(
けつ
)
して
汝
(
なんぢ
)
らを
憎
(
にく
)
しとは
思
(
おも
)
はぬ。
134
何
(
いづ
)
れも
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
最愛
(
さいあい
)
の
御子
(
みこ
)
である。
135
吾々
(
われわれ
)
もまた
神
(
かみ
)
の
愛
(
あい
)
し
給
(
たま
)
ふ
御子
(
みこ
)
である
以上
(
いじやう
)
は、
136
汝
(
なんぢ
)
らと
吾
(
われ
)
らは
同一
(
どういつ
)
の
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
であつて、
137
いはば
兄弟
(
きやうだい
)
である。
138
吾々
(
われわれ
)
はどうして
兄弟
(
きやうだい
)
を
虐
(
しひた
)
げることができるであらうか。
139
神
(
かみ
)
は
広
(
ひろ
)
く
万物
(
ばんぶつ
)
を
愛
(
あい
)
し
給
(
たま
)
ふ。
140
吾
(
われ
)
らは
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
なれば、
141
互
(
たがひ
)
に
相愛
(
あひあい
)
し
相助
(
あひたす
)
けねばならぬ。
142
人間
(
にんげん
)
に
差別
(
さべつ
)
を
付
(
つ
)
けるといふことは、
143
最
(
もつと
)
も
神
(
かみ
)
の
嫌
(
きら
)
はせ
給
(
たま
)
ふところである。
144
汝
(
なんぢ
)
らも
今迄
(
いままで
)
の
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
め、
145
本心
(
ほんしん
)
に
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
り、
146
神
(
かみ
)
の
尊
(
たふと
)
き
御子
(
みこ
)
として、
147
善
(
ぜん
)
を
行
(
おこな
)
ひ
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
け、
148
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
に
副
(
かな
)
ふ
至善
(
しぜん
)
の
行
(
おこな
)
ひをするが
人間
(
にんげん
)
の
本分
(
ほんぶん
)
である』
149
と
諄々
(
じゆんじゆん
)
として
人道
(
じんだう
)
を
説
(
と
)
き
始
(
はじ
)
めたるにぞ、
150
さしも
暴悪
(
ばうあく
)
無頼
(
ぶらい
)
の
雲掴
(
くもつかみ
)
も、
151
宣伝使
(
せんでんし
)
の
言葉
(
ことば
)
に
感激
(
かんげき
)
して、
152
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひながら
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
物語
(
ものがた
)
りける。
153
(
大正一一・一・二三
旧大正一〇・一二・二六
石破馨
録)
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