霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 千騎一騎(せんきいつき)〔六四八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻 篇:第1篇 神慮洪遠 よみ:しんりょこうえん
章:第3章 千騎一騎 よみ:せんきいっき 通し章番号:648
口述日:1922(大正11)年05月06日(旧04月10日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高山彦は、聖地を指して白瀬川のほとりにやってきた。降り続く五月雨に河水は氾濫して渡れない。
高山彦は悔しそうに世継王山を見ていると、後から黒姫が追いついてきた。黒姫は早く河を渡れ、と高山彦をせっつく。高山彦は、どうしてこの激流が渡れようかと黒姫に返すが、黒姫はたちまち大蛇の姿となって河を渡ってしまった。
高山彦はそれを見て震えている。黒姫の大蛇の体から黒雲が出て、高山彦を包むと、高山彦を河の向こうに渡してしまった。黒姫は大蛇から元の姿に戻った。
高山彦は、黒姫の大蛇の姿を見てすっかり恐れをなしてしまった。黒姫は構わず、高山彦を前に立てて世継王山に進んで行く。
世継王山の館では、馬公と鹿公が夜の門番をしていた。二人は月を見ながら俳句を読み合っている。すると、二人は黒姫と高山彦がやってくるのを見つけた。鹿公は、門内に入ると馬公を外に置いたまま、錠を閉めてしまった。
黒姫は、門を開けてくれと頼むが、鹿公は錠を下ろしたまま青彦に注進した。黒姫は馬公が門外に締め出されているのを見つけ、人質にしてしまう。
門の内外で、黒姫と青彦、紫姫、鹿公は互いの主張を言い合って譲らない。黒姫は馬公を人質に取っていても役に立たないと、馬公を放した。紫姫が天の数歌を歌うと、黒姫と高山彦は逃げてしまった。
鹿公は馬公を門内に迎え入れた。馬公は、黒姫は自分を縛るとき、神様にお詫びをしてきつく縛らなかった、と報告すると、青彦はこれを聞いて首を垂れて思案に沈んでしまう。
紫姫は感謝の祝詞を上げるが、玉照姫は激しく泣き出した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1903
愛善世界社版:31頁 八幡書店版:第4輯 40頁 修補版: 校定版:31頁 普及版:13頁 初版: ページ備考:
001 高山彦(たかやまひこ)魔窟ケ原(まくつがはら)岩窟(がんくつ)(あと)にし、002一生懸命(いつしやうけんめい)聖地(せいち)()して(すす)()く。003(やうや)白瀬川(しらせがは)(ほとり)()けば、004()(つづ)五月雨(さみだれ)河水(かすゐ)汎濫(はんらん)し、005(なみ)(うづたか)渡川(とせん)絶対(ぜつたい)不可能(ふかのう)となりぬ。
006 高山彦(たかやまひこ)(かは)(きし)(くだ)りつ、007(のぼ)りつ、008地団太(ぢだんだ)()みて口惜(くや)しがり、009現在(げんざい)()(まへ)聖地(せいち)世継王山(よつわうざん)(なが)め、010玉照姫(たまてるひめ)御座所(ござしよ)彼方(かなた)かと憧憬(どうけい)(ねん)()られて狂気(きやうき)(ごと)くなり()たり。011(かか)(ところ)(いき)せき()つて馳来(はせきた)りしは、012(つま)黒姫(くろひめ)なりける。
013『ヤーお(まへ)黒姫(くろひめ)か、014(なに)しに()()たのだ』
015高山(たかやま)さま、016ソラ(なに)()はつしやる。017(この)(まま)にして()(わけ)には()きますまい。018あれ()(むか)ふに()ゆるは世継王(よつわう)神山(しんざん)019三五教(あななひけう)(かく)場所(ばしよ)020玉照姫(たまてるひめ)(さま)()(もり)しげみ御座(ござ)るであらう。021サアサア(はや)(わた)りなさい』
022(わた)れと()つたつて()激流(げきりう)が、023どうして(わた)れやうか』
024生命(いのち)(まと)(わた)るのだよ。025それだから(をとこ)真逆(まさか)(とき)()(あは)ぬと()ふのだ。026(まへ)さまも鼻高(はなだか)守護神(しゆごじん)御厄介(ごやくかい)になつて中空(ちうくう)(たか)(わた)りなさい』
027『ソンナことを()つたつて、028さう易々(やすやす)(もと)(からだ)還元(くわんげん)することは出来(でき)ないよ』
029還元(くわんげん)出来(でき)ないと()道理(だうり)があらうか、030貴方(あなた)信仰(しんかう)()らぬからだ。031()になつても(じや)になつても、032()(かは)(わた)らな()くものか』
033()ふより(はや)く、034()るも(おそ)ろしき大蛇(だいじや)姿(すがた)となり、035激流(げきりう)怒濤(どたう)()(なか)目蒐(めが)けて、036ザンブとばかり()()み、037(やうや)対岸(むかうぎし)(わた)()きたり。
038 高山彦(たかやまひこ)()気色(けしき)(おそ)(をのの)き、039ガタガタ(ぶる)ひの最中(さいちう)040蛇体(じやたい)身体(からだ)より黒雲(くろくも)(おこ)一団(いちだん)となりて、041(かは)上空(じやうくう)此方(こなた)(わた)高山彦(たかやまひこ)身体(からだ)(つつ)むよと()()に、042高山彦(たかやまひこ)(かは)対岸(むかうぎし)にバタリと()()たりぬ。043蛇体(じやたい)(たちま)(もと)黒姫(くろひめ)(へん)じ、
044『サア高山(たかやま)さま、045コンナ(はな)(わざ)一生(いつしやう)一度(いちど)より出来(でき)ないのだが、046千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)047黒姫(くろひめ)信念(しんねん)(ちから)(あら)はれたのだ。048サアサアこれに(おそ)れず、049今後(こんご)斯様(かやう)なことは()(ほど)に、050(わたし)(つづ)いてお()でなさい』
051 高山彦(たかやまひこ)(ふる)(ごゑ)で、
052『ナント(をんな)()(やつ)(おそ)ろしいものだなア』
053『コレ高山(たかやま)さま、054(まへ)はモーこれで愛想(あいさう)がつきただらうな。055愛想(あいさう)をつかすなら、056つかして()なさい、057此方(こちら)にも(ひと)(かんが)へがありますよ』
058(ひや)やかに(わら)ふ。059高山彦(たかやまひこ)()(しばた)たき、060(たか)(はな)()(かふ)(こす)(なが)ら、
061『イヤ何事(なにごと)黒姫(くろひめ)さまに御任(おまか)せする、062(この)()一切(いつさい)(かま)(ごと)(いた)さぬ。063貴女(あなた)のお()きの(やう)御使(おつか)(くだ)さいませ』
064大分(だいぶ)改心(かいしん)出来(でき)ましたナア、065それでこそ(わたし)立派(りつぱ)なハズバンドだ。066サアサア()きませう、067エヽなンとした(あし)つきじやいな、068(しつか)りしなさらぬか、069(この)(かは)(わた)るが最後(さいご)070油断(ゆだん)のならぬ(てき)縄張(なはば)りだよ』
071『さうだと()つて、072ナンダか(あし)がワナワナして(ある)けないのだもの』
073『エー(なん)とした卑怯(ひけふ)(ひと)だらう。074(たれ)(こは)いのだい。075たか()れた紫姫(むらさきひめ)076青彦(あをひこ)連中(れんちう)ぢやないかいナ』
077青彦(あをひこ)078紫姫(むらさきひめ)も、079ナンニも(こわ)くはない。080(こわ)いのはお(まへ)性念(しやうねん)だよ』
081高山(たかやま)さま、082()()えても矢張(やつぱり)(をんな)(をんな)だよ。083御心配(ごしんぱい)なさるな。084これでも(また)大事(だいじ)にして可愛(かあい)がつて()げますワ』
085 高山彦(たかやまひこ)はブルブル(ふる)(なが)ら、
086『ヤーもう可愛(かあい)がつて(もら)はいでも結構(けつこう)です。087(わたくし)(やう)なものは貴女(あなた)のお(そば)()るのは勿体(もつたい)ない。088(おそ)(おほ)い。089どうぞ草履持(ざうりもち)になつとして(くだ)さいな』
090『エー(この)(ひと)(また)(なん)とした卑怯(ひけふ)なことを()ふのだらう。091アヽもうすつかり愛想(あいさう)()きちやつた、092(いや)になつて(しま)ふワ』
093『どうぞ愛想(あいさう)をつかして(くだ)さいな。094(いや)になつて(もら)へば大変(たいへん)好都合(かうつがふ)です』
095 黒姫(くろひめ)(こゑ)(とが)らし、
096『ソリヤ(なに)()ふのだい、097(いや)になつて()れと()つたつて、098(いま)となつて(たれ)がソンナ軽挙(かるはづみ)なことをするものかいな。099(へび)(ねら)はれた(かはづ)ぢやと(おも)つて(あきら)めなさいよ』
100『ハイ(あきら)めます。101何事(なにごと)因縁(いんねん)づくぢやと(おも)つて、102コンナ悪縁(あくえん)辛抱(しんばう)(いた)しませう。103前生(ぜんせい)(わる)因縁(いんねん)(むく)うて()たのだから』
104(なに)悪縁(あくえん)だへ。105(まへ)さまは(をとこ)(こころ)(あき)(そら)106(すぐ)飽縁(あくえん)だらうが、107(わたし)何処迄(どこまで)(あき)(そら)で、108何処々々迄(どこどこまで)()いて()いてすき(とう)つてゐますよ、109ホヽヽヽヽ』
110『モシモシ黒姫(くろひめ)(さま)111何卒(どうぞ)(ひと)一人(ひとり)(たす)けると(おも)つて(わたくし)(つみ)(ゆる)して(くだ)さいな』
112『そりや(また)(なに)()ふのだえ、113モー()うなる(うへ)(ゆる)してたまるものか。114竜宮(りうぐう)(うみ)(そこ)まで()れて()つて()みたり、115()みたり、116(ねぶ)つたり大事(だいじ)にして()げようぞへ』
117『モー大事(だいじ)にして(もら)はいでも結構(けつこう)です。118何卒(どうぞ)()御心遣(おこころづか)ひは御無用(ごむよう)になさつて(くだ)さいませ。119返礼(へんれい)仕方(しかた)がありませぬワ』
120『エーわからぬ(をとこ)だ。121(はなし)(あと)(ゆつ)くりして()げよう。122サア一時(いちじ)(はや)()かねばなるまい。123恰度(ちやうど)()()れて()た』
124高山彦(たかやまひこ)(さき)()たせ、125夏草(なつぐさ)(しげ)露野ケ原(つゆのがはら)世継王(よつわう)山麓(さんろく)()して辿(たど)()く。
126 五月(ごぐわつ)十三夜(じふさんや)(つき)は、127楕円形(だゑんけい)(かがみ)(そら)(てら)してゐる。128馬公(うまこう)129鹿公(しかこう)(つき)(ひかり)(なが)め、
130『アヽ(なん)といい(つき)ぢやないか、131のう鹿公(しかこう)
132『ソリヤ馬公(うまこう)133きまつた(こと)だ。134五月五日(ごぐわついつか)(よひ)玉照姫(たまてるひめ)(さま)がお()(あそ)ばし、135記念(きねん)すべき(つき)だもの。136古往今来(こわうこんらい)コンナよい(つき)があるものかい。137それに(つい)ても可哀相(かわいさう)なのは黒姫(くろひめ)ぢやないか。138この(とほ)御空(みそら)水晶(すゐしやう)玉照姫(たまてるひめ)(さま)(かがや)(わた)り、139この(また)屋内(をくない)にもお(たま)さまに、140玉照姫(たまてるひめ)さまぢや、141(これ)()(あは)せて()つの御魂(みたま)()つても()いワ。142アヽ、
 
143()れて()たやうに(おも)ふや雨後(うご)(つき)
 
144とは如何(どう)だ』
145『ヤー鹿公(しかこう)146貴様(きさま)俳句(はいく)()つて()るのか』
147『ハイ()でも、148(うた)でも、149(なん)でも()らぬものは()い。150(なん)なと()うて()よ。151当意即妙(たういそくめう)152(ただち)(つく)つて御目(おめ)にかける鹿公(しかこう)だよ』
153『ソンナラ(いま)()のお(つき)さまに黒雲(くろくも)がさしかかり、154(いま)(かく)さうとして()る。155()れを(ひと)つやつて()よ』
156黒姫(くろひめ)玉照姫(たまてるひめ)(つつ)まれて 馬鹿(ばか)()むとす青彦(あをひこ)(そら)
157(なん)()縁起(えんぎ)(わる)(うた)()むのだ。158()(なほ)さぬかい、159鹿公(しかこう)()
160大方(おほかた)馬公(うまこう)がさうお(いで)ると(おも)つて()た。161今度(こんど)真剣(しんけん)だよ。
 
162青彦(あをひこ)紫姫(むらさきひめ)大空(おほぞら)に (つき)玉照姫(たまてるひめ)(かがや)
 
163とは如何(どう)だ』
164『ヨーシ モー(ひと)つやれ』
165『いくらでも、166(つき)(だい)にするのなら(つき)先祖(せんぞ)よ。167(つき)大神様(おほかみさま)(この)()御先祖様(ごせんぞさま)であるぞよ。168馬公(うまこう)()つかり()けよアーン、
169(つき)叢雲(むらくも)(はな)には(あらし)
170(ひがし)旗雲(はたぐも)箒星(はうきぼし)
171(あま)河原(かはら)北南(きたみなみ)
172(ほし)(なが)れは久方(ひさかた)
173フサの御国(みくに)()ちて()
174高山彦(たかやまひこ)短山(ひきやま)
175(みね)より(のぼ)月影(つきかげ)
176今日(けふ)芽出度(めでた)十三夜(じふさんや)
177たとへ黒姫(くろひめ)かかるとも
178伊吹(いぶき)狭霧(さぎり)()()らし
179(たちま)(かは)大御空(おほみそら)
180紫姫(むらさきひめ)青彦(あをひこ)
181(きよ)姿(すがた)となりにけり。
182 とは如何(どう)だ』
183随分(ずゐぶん)(なが)(うた)だのう、184鹿公(しかこう)
185(なが)いとも(なが)いとも、186(いま)(なが)(やつ)(くろ)(かほ)してやつて()るのだ。187(よこ)(なが)(やつ)と、188(たて)(なが)高山彦(たかやまひこ)青瓢箪(あをべうたん)だ。189うまくやらぬと馬鹿(うましか)()るぞよ。190変性男子(へんじやうなんし)(まを)(こと)一分一厘(いちぶいちりん)(ちが)ひはないぞよ』
191(なに)(ぬか)すのだ、192モー()加減(かげん)()めて(もら)はうかい。193オイオイ()れを()よ、194(ふた)つの(かげ)(うごめ)いて()るぢやないか、195鹿(しか)とは(わか)らぬけれど』
196鹿公(しかこう)『ヨオ来居(きを)つたぞ、197(ふと)(みじか)(やつ)(ほそ)(なが)(やつ)だ。198ヤー此奴(こいつ)高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)だ。199愚図々々(ぐづぐづ)して()ると(そら)のお(つき)さまの(やう)に、200黒姫(くろひめ)()まれて(しま)つちや、201玉照姫(たまてるひめ)(さま)一大事(いちだいじ)だ、202サアサア()()めろ』
203()ふより(はや)く、204鹿公(しかこう)飛込(とびこ)みてピシヤリと(ぢやう)()ろしたり。
205『オイ(おれ)()れて()れないか』
206『エー邪魔臭(じやまくさ)い。207貴様(きさま)何処(どこ)(くさむら)(なか)潜伏(せんぷく)して()れ、208(うま)じやないか。209(おれ)(なか)から()関所(せきしよ)死守(ししゆ)するのだ』
210 (ふた)つの(かげ)段々(だんだん)近寄(ちかよ)つて()る。211鹿公(しかこう)()うしても()けぬ。212馬公(うまこう)()むを()(かや)しげみ()(かく)して(ふる)()る。
213 二人(ふたり)(かげ)戸口(とぐち)(あら)はれたり。214一人(ひとり)(をんな)215一人(ひとり)(をとこ)
216『モシモシ一寸(ちよつと)此処(ここ)()けて(くだ)さいな』
217『ナンダ、218暮六(くれむ)(さが)つてから(ひと)(うち)(おとづ)れる(やつ)があるかい。219()()世界(せかい)だ、220(よう)があれば明日(あす)()()い。221(この)門口(かどぐち)鹿公(しかこう)絶対(ぜつたい)()けることは出来(でき)ないぞよ』
222左様(さやう)御座(ござ)いませうが、223ホンのチヨイトで(よろ)しい、224一尺(いつしやく)(ばか)()けて(くだ)さい。225(まを)()()一大事(いちだいじ)がございます』
226 鹿公(しかこう)227戸口(とぐち)()つて、
228其方(そちら)一大事(いちだいじ)があつても此方(こちら)(また)一大事(いちだいじ)だ。229ナント()つても()けないよ。230モシモシ青彦(あをひこ)さま、231貴方(あなた)一寸(ちよつと)()(くだ)さいな。232どうやら黒姫(くろひめ)がやつて()たやうですワ』
233 青彦(あをひこ)(おく)()より、
234(たれ)がなんと()つても()けられないぞ』
235『さうだと()つて馬公(うまこう)(そと)に、236這入(はい)(そこ)ねて(かく)れて()ますがな』
237 黒姫(くろひめ)()(こゑ)()き、238(あた)りの(くさむら)(たづ)ね、
239『ヤアお(まへ)馬公(うまこう)ぢやな。240サアもう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。241コレコレ高山(たかやま)さま、242用意(ようい)(つな)をお()しなさい。243エー(なに)をビリビリ地震(ぢしん)(やう)(ふる)ふて()なさる。244()(よわ)(けもの)だな』
245()ふより(はや)自分(じぶん)細帯(ほそおび)(ほど)いて、246馬公(うまこう)(しば)つて(しま)ひ、
247『サア馬公(うまこう)248此方(こつち)()るのだよ。249(この)()()ける(まで)250(まへ)人質(ひとじち)だ。251()()けなかつたら(この)黒姫(くろひめ)正体(しやうたい)(あら)はして、252一呑(ひとの)みに()みて(しま)はうか』
253『エーコンナことだと(おも)つて()つた。254それだから神様(かみさま)言霊(ことたま)(つつし)めと仰有(おつしや)るのに、255鹿公(しかこう)(やつ)256黒姫(くろひめ)()うだの()うだのと()ひよるものだから、257コンナ破目(はめ)(おちい)るんだ。258オイ馬公(うまこう)(くく)られたよ、259鹿公(しかこう)()けて()れないか』
260貴様(きさま)(くく)られる(やく)だ、261(おれ)(なか)(なが)くなつてグツスリ(やす)(やく)だ。262マア()()ける(まで)263其処(そこ)立往生(たちわうじやう)するがよいワ。264(やさ)しい黒姫(くろひめ)さまと、265色男(いろをとこ)高山(たかやま)さまとのお()れだもの、266あまり(さび)しくもあるまいがな』
267『ソンナ冷酷(れいこく)なことを()ふものぢやないよ、268(まへ)もちつとは朋友(ほういう)(みち)(わきま)へて()るだらう』
269『マア()て、270(いま)これから紫姫(むらさきひめ)(さま)十八番(じふはちばん)言霊(ことたま)発射(はつしや)()さるところだ。271さうすれば黒姫(くろひめ)だつて高山彦(たかやまひこ)だつて(かぜ)()()()(ごと)く、272悲惨(ひさん)()()つて(ほろび)(しま)ふのだ』
273『さうしたら(おれ)()うなるのだ』
274貴様(きさま)(こと)まで、275()研究(けんきう)はして()らぬ(わい)276オイ黒姫(くろひめ)(やつ)277(まこと)(もつ)てお()(どく)千万(せんばん)278御心中(ごしんちう)御察(おさつ)(まを)す。279高姫(たかひめ)(さま)(さぞ)叱言(こごと)頂戴(ちやうだい)なさつたでせう。280(しか)(なが)何程(なにほど)(まへ)さまが玉照姫(たまてるひめ)(さま)をお(むか)へしようと(おも)つてもモー駄目(だめ)だから足許(あしもと)(あか)るい(うち)に、281トツトと(かへ)りなさい。282其処(そこ)(うま)一匹(いつぴき)()るから、283ソレに()つてお(かへ)りなさいよ』
284『コラ鹿公(しかこう)285無茶(むちや)ばつかり()ふない、286(おれ)(けつ)して黒姫(くろひめ)さまの(うま)ではないぞ』
287黒姫(くろひめ)『どうしても()けませぬか、288()けな(よろ)しい。289黒姫(くろひめ)道成寺(だうじやうじ)釣鐘(つりがね)ぢやないが()(いへ)大蛇(だいじや)となつて、290十重(とへ)二十重(はたへ)取捲(とりま)き、291熱湯()にして()せうか』
292『モシモシ紫姫(むらさきひめ)さま、293青彦(あをひこ)さま、294(しつか)りして(くだ)さい。295トツケもないことを()ひますぜ』
296 紫姫(むらさきひめ)言葉(ことば)(しづか)に、
297『ホヽヽヽヽ、298御心配(ごしんぱい)なさいますな。299鹿(しか)さま、300(しつ)かりと()()めて()きなさいや、301モシモシ黒姫(くろひめ)さま、302(まこと)貴女(あなた)には御気(おき)(どく)でございますが、303神界(しんかい)()め、304()(なか)(ため)には貴女(あなた)(たい)して不親切(ふしんせつ)なことを(いた)すのも()むを()ませぬ。305どうぞ(かへ)つて(くだ)さいませ』
306(なん)()つても(かへ)らない。307青彦(あをひこ)紫姫(むらさきひめ)素首(そつくび)引抜(ひきぬ)いて、308フサの(くに)高姫(たかひめ)(さま)にお()にかけ、309玉照姫(たまてるひめ)(さま)御迎(おむか)(まを)さねば()きませぬぞや』
310青彦(あをひこ)(なん)執念深(しふねんぶか)()アさまぢやな、311青彦(あをひこ)(あき)れたよ。312いい加減(かげん)執着心(しふちやくしん)放棄(はうき)したらどうだい』
313執着心(しふちやくしん)はお(まへ)のことだよ。314(まへ)から()つたがよからう。315さうして玉照姫(たまてるひめ)さまと、316(たま)さまを此方(こつち)(わた)しなさい』
317青彦(あをひこ)()執着心(しふちやくしん)だけは何処(どこ)までも(はな)されない。318(けつ)して個人(こじん)私有(しいう)すべきものでない、319神政(しんせい)成就(じやうじゆ)大切(たいせつ)御宝(おたから)だ。320たとへ天地(てんち)()へるとも、321こればかりは承諾(しようだく)出来(でき)ない、322どうぞ(はや)くお(かへ)りになつて(くだ)さい』
323(なん)()つても黒姫(くろひめ)(かへ)りませぬ』
324紫姫(むらさきひめ)玉照姫(たまてるひめ)(さま)三五教(あななひけう)(おい)ても()くてはならぬ結構(けつこう)神様(かみさま)でございます。325(また)ウラナイ(けう)にも必要(ひつえう)神様(かみさま)でございます。326さうだと(まを)して両方(りやうはう)欲求(よくきう)(みた)すと()(こと)は、327到底(たうてい)出来(でき)ませぬから、328いつそ(こと)貴方(あなた)御改心(ごかいしん)をなさつて、329三五教(あななひけう)にお(はい)(くだ)さつたら如何(どう)ですか。330貴方(あなた)御改心(ごかいしん)なさつた以上(いじやう)は、331高姫(たかひめ)さまも自然(しぜん)御改心(ごかいしん)になりませうから、332(むらさき)がさう()つたと高姫(たかひめ)さまに(つた)へて(くだ)さいませ』
333権謀術数(けんぼうじゆつすう)(ろう)折角(せつかく)(わたし)(のぞ)みた玉照姫(たまてるひめ)(さま)計略(けいりやく)(もつ)て、334横領(わうりやう)なさつたお(まへ)さまこそ改心(かいしん)()され。335どちらが(ぜん)か、336(あく)か、337(こころ)(かがみ)(てら)して御覧(ごらん)なさい。338貴方(あなた)()(かた)三五教(あななひけう)精神(せいしん)破壊(はくわい)する()(かた)339つまり優勝劣敗(いうしようれつぱい)利己主義(われよし)ではありませぬか』
340鹿公(しかこう)『エー八釜敷(やかまし)()ふない、341黒姫(くろひめ)(やつ)342貴様(きさま)こそ利己主義(われよし)ぢやないか。343()玉照姫(たまてるひめ)(さま)三五教(あななひけう)神様(かみさま)御経綸(おしぐみ)(あそ)ばして悦子姫(よしこひめ)(さま)()()げまでなさつた因縁(いんねん)があるのぢや。344(なん)()つても正義(せいぎ)だ、345先取権(せんしゆけん)があるのだ。346(ひと)(たから)垂涎(すゐゑん)して()らぬ謀叛(むほん)(おこ)煩悶(はんもん)をするよりも、347すつかりと(おも)()つて気楽(きらく)になつたら如何(どう)だ、348鹿公(しかこう)(はら)()つワイ』
349黒姫(くろひめ)(なん)()つても()(ばか)りは貫徹(くわんてつ)させなくては()くものか。350仮令(たとへ)千年(せんねん)万年(まんねん)かかつても(いの)つて(いの)つて(いの)()つて()せよう。351ヤアコンナ馬公(うまこう)人質(ひとじち)()つたところが、352(なん)(やく)にも()たない。353サア馬公(うまこう)354世界中(せかいぢう)(はな)(がひ)だ。355何処(どこ)なと勝手(かつて)にお()でなさい』
356(いましめ)(ほど)けば、357馬公(うまこう)は、
358『ヤアヤア黒姫(くろひめ)さま有難(ありがた)う。359ヤアどつこい、360(まへ)(しば)られて、361(まへ)(ほど)かれたのだ、362有難(ありがた)うと()(すぢ)()い。363エー取返(とりかへ)しのならぬ失策(しつさく)をやつたものだ。364馬鹿々々(ばかばか)しい』
365 (この)(とき)紫姫(むらさきひめ)(すず)やかな(こゑ)にて、366(あま)数歌(かずうた)(とどろ)(わた)りける。367(たちま)黒姫(くろひめ)頭部(とうぶ)真白(まつしろ)(へん)じ、368高山彦(たかやまひこ)()()(くも)(かすみ)西北(せいほく)()して(にげ)()く。
369馬公(うまこう)『オイ鹿公(しかこう)370モー黒姫(くろひめ)夫婦(ふうふ)(にげ)(しま)つたよ。371どうぞ()けて()れないか』
372『ヨシヨシ』
373()をガラリと()()け、
374『オイ馬公(うまこう)どうだつたい、375貴様(きさま)(しば)られて()つたぢやないか』
376『ウン(しば)られたよ。377(しか)しチツトモ(いた)くはなかつた。378黒姫(くろひめ)(やつ)379(おれ)(しば)るときに一生懸命(いつしやうけんめい)小声(こごゑ)になつて、380大神様(おほかみさま)()みませぬ、381(ゆる)して(くだ)さい。382(つみ)()馬公(うまこう)(しば)ります、383これも御道(おみち)(ため)ですから、384神直日(かむなほひ)385大直日(おほなほひ)見直(みなほ)し、386聞直(ききなほ)して(くだ)さいませ」と(ねん)じて()つた。387(ひと)(せい)(ぜん)なりとは、388よく()うたものだなア』
389 青彦(あをひこ)はこれを()いて両手(りやうて)()み、390(かうべ)首垂(うなだ)思案(しあん)(しづ)む。391紫姫(むらさきひめ)(ただち)神前(しんぜん)感謝(かんしや)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)する。392玉照姫(たまてるひめ)(にはか)にヒシるが(ごと)()()(たま)ひける。393(たま)(おどろ)きあはてて玉照姫(たまてるひめ)()()(さす)り、394(なぐさ)()たり。
395 (そら)には(しろ)魚鱗(ぎよりん)(なみ)(たた)へた(くも)()()(つき)(おぼろ)(かがや)き、396(かな)しげに山杜鵑(やまほととぎす)(こゑ)(みね)彼方(かなた)(きこ)()る。
397大正一一・五・六 旧四・一〇 外山豊二録)
   
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