霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 (ゆめ)懸橋(かけはし)〔六七六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻 篇:第1篇 千辛万苦 よみ(新仮名遣い):せんしんばんく
章:第2章 夢の懸橋 よみ(新仮名遣い):ゆめのかけはし 通し章番号:676
口述日:1922(大正11)年05月16日(旧04月20日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年4月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫と黒姫が、アルプス教の鷹依姫を言向け和しに出発してから、何の連絡もないまま、三ケ月が過ぎた。
言依別命は密かに竜国別(元松姫の部下の竜若)、玉治別(田吾作)、国依別(宗彦)の三人を呼んで、高春山に高姫・黒姫の消息を探りにやらせた。
三人は、鷹依姫の勢力範囲の地につながる岩の橋までやってきた。神智山の入口にあり、断崖絶壁を渡す天然の岩橋で、鬼の懸橋と呼ばれていた。
玉治別が橋を渡ると、どうしたはずみか岩橋が中ほどから脆くも折れて、玉治別ははるか下の谷川に墜落してしまった。
竜国別と国依別は青くなって、せめて遺骸を拾ってやろうと谷底まで降りてきた。すると玉治別は何事もなかったかのように、谷川で着物を絞っている。二人は、この高さから落ちて無事なことを信じられず、本当の玉治別かどうか疑う。
玉治別は神懸りの真似をして、二人が自分の無事を信じないことをなじる。国依別と竜国別も、神懸りの真似をして言い返すが、玉治別はさっさと谷川を下って行ってしまった。
すると辺りが真っ暗闇に包まれたと思うと、それは夢であった。三人は亀山の珍の館にやってきた。ここは、言依別命の命で、梅照彦・梅照姫が守っていた。
三人が珍の館の門を叩くと、梅照彦は召使の春公に、丁重に招くようにと言いつけた。しかし春公は勘違いして、立派な来客があると思い込み、みすぼらしい姿の宣伝使を乞食とみなして、追い払おうとする。
三人は怒って梅照彦を大声で呼びつけ、玉治別は抗議の宣伝歌を歌った。梅照彦はあわてて門に迎え出て、丁重に土下座をして不首尾を詫びた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:インフエルノ(インフェルノ、地獄) データ凡例: データ最終更新日:2021-05-02 00:44:31 OBC :rm2102
愛善世界社版:38頁 八幡書店版:第4輯 278頁 修補版: 校定版:40頁 普及版:17頁 初版: ページ備考:
001 高春山(たかはるやま)割拠(かつきよ)するバラモン(けう)一派(いつぱ)アルプス(けう)教主(けうしゆ)鷹依姫(たかよりひめ)言向(ことむ)(やは)すべく、002言依別(ことよりわけの)(みこと)(むね)(ほう)じて(あま)磐樟船(いはくすぶね)()り、003(いきほひ)よく聖地(せいち)出発(しゆつぱつ)した高姫(たかひめ)004黒姫(くろひめ)(ほとん)(さん)(げつ)()るも(なん)消息(せうそく)もない。005言依別(ことよりわけの)(みこと)(ひそ)かに竜国別(たつくにわけ)006玉治別(たまはるわけ)007国依別(くによりわけ)(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)(まね)き、008聖地(せいち)何人(なにびと)にも(あか)さず、009高春山(たかはるやま)二人(ふたり)消息(せうそく)探査(たんさ)すべく出張(しゆつちやう)(めい)じた。010竜国別(たつくにわけ)はもと高城山(たかしろやま)松姫館(まつひめやかた)(つか)へたる竜若(たつわか)改名(かいめい)である。011玉治別(たまはるわけ)田吾作(たごさく)012国依別(くによりわけ)宗彦(むねひこ)改名(かいめい)である。
013(をしへ)(はな)(かん)ばしく
014()(にほ)ひたる桶伏(をけふせ)
015(やま)(ふもと)にそそり()
016(にしき)(みや)()(をが)
017言依別(ことよりわけ)命令(めいれい)
018(ひそ)かに(ほう)じて(さん)(にん)
019(つき)(ひかり)()びながら
020(いさ)(すす)んで石原(いさ)(えき)
021長田野(をさだの)土師(はせ)(よる)()
022栗毛(くりげ)(こま)(またが)りて
023(ひづめ)(おと)(いさ)ましく
024(あした)(かぜ)福知山(ふくちやま)
025(しり)()かけてブウブウと
026()(うま)()()りながら
027青野(あをの)(はら)右左(みぎひだり)
028(なが)めて(はし)黒井村(くろゐむら)
029(こころ)いそいそ石生(いそ)(えき)
030御教(みのり)(かしこ)柏原(かいばら)
031田圃(たんぼ)()えて(すす)()く。
032 此処(ここ)神智地(じんちぢ)(やま)入口(いりぐち)033アルプス(けう)鷹依姫(たかよりひめ)勢力(せいりよく)範囲(はんゐ)として()(じふ)()四方(しはう)入口(いりぐち)である。034(おに)懸橋(かけはし)()つて、035(たに)から(たに)天然(てんねん)()(わた)された一本(いつぽん)(いは)(はし)がある。036此処(ここ)(とほ)らねば()うしても高春山(たかはるやま)(すす)(こと)出来(でき)ない嶮要(けんえう)()である。
037 幾百丈(いくひやくぢやう)とも()れぬ(やま)(いただ)きに天然(てんねん)()(わた)された石橋(いしばし)038眼下(がんか)(なが)るる谷川(たにがは)(みづ)淙々(そうそう)として四辺(あたり)(ひび)き、039(おのづか)凄惨(せいさん)()()たるる(ばか)りである。040玉治別(たまはるわけ)はこの(はし)(まへ)()くや(いな)や、041頓狂(とんきやう)(こゑ)()して、
042玉治別『ヨー要害(えうがい)堅固(けんご)絶所(ぜつしよ)だ。043アルプス(けう)(やつ)044中々(なかなか)()地点(ちてん)(えら)んで関所(せきしよ)にしやがつたものだなア。045(わが)(こひ)深谷川(ふかたにがは)(おに)かけ(ばし)046(わた)るは(こは)し、047(わた)らねば、048(こひ)しと(おも)鷹依姫(たかよりひめ)鬼婆(おにば)アさんに()はれない』
049無駄口(むだぐち)(たた)きながら半分(はんぶん)(ばか)(すす)んで()つた。050どうした(はづみ)か、051さしもに(なが)石橋(いしばし)は、052中程(なかほど)より(もろ)くも()れて、053(はし)(とも)玉治別(たまはるわけ)(ふか)谷間(たにま)顛落(てんらく)し、054泡立(あわだ)(ふち)にドブンと、055()()んで仕舞(しま)つた。
056 竜国別(たつくにわけ)057国依別(くによりわけ)(この)変事(へんじ)(きも)(つぶ)し、
058竜国別『ヤア、059(くに)さん、060()うしよう()うしよう』
061(かほ)見合(みあは)して(おどろ)きの(なみ)()たれて()る。
062国依別今日(けふ)(なん)となしに気分(きぶん)(わる)()だと(おも)つて、063石生(いそ)(さと)から(うま)()ちやり、064(さん)(にん)()うしてテクついて()たが、065まアまア結構(けつこう)だつた。066(うま)にでも()つて()らうものなら玉治別(たまはるわけ)一緒(いつしよ)(うま)()んで仕舞(しま)ふところだつた』
067竜国別(なに)()つて()るのだ。068(うま)(くらゐ)()んだつて(あきら)めがつくが、069肝腎(かんじん)玉治別(たまはるわけ)谷底(たにそこ)(おと)して仕舞(しま)つて(つま)らぬぢやないか。070(なん)とか(かんが)へねばなるまい。071(うま)(おな)じやうに取扱(とりあつか)はれては玉治別(たまはるわけ)可憐(かはい)さうだ』
072国依別『アヽさうだつた。073(あま)吃驚(びつくり)して狼狽(うろた)へたのだ。074サア川下(かはしも)へいつて、075何処(どこ)かの岩石(がんせき)宿泊(しゆくはく)して()るだらうから、076肉体(にくたい)なと(さが)してやらねばなるまい』
077(はや)くも引返(ひきかへ)す。078竜国別(たつくにわけ)(あと)についてトントンと四五丁(しごちやう)ばかり引返(ひきかへ)し、079谷川(たにがは)彼方(あちら)此方(こちら)眼配(めくば)り、080捜索(そうさく)(はじ)めた。
081 いくら(さが)しても(かげ)(かたち)もない。082二人(ふたり)途方(とはう)()れて(ほどこ)すべき手段(てだて)もなく、083(くや)(なみだ)()れて()る。084二三丁(にさんちやう)下手(しもて)(はう)より、
085『オーイ オーイ』
086()(もの)がある。087二人(ふたり)は、
088竜国別、国依別『ハテなア、089()(おぼ)えのある言霊(ことたま)だ』
090(こゑ)する(はう)(むか)つて駆出(かけだ)した。
091 ()れば玉治別(たまはるわけ)は、092谷川(たにがは)(なか)()大岩石(だいがんせき)ホテルの露台(ろだい)(うへ)にて、093着物(きもの)一生(いつしやう)懸命(けんめい)にしぼつて()る。
094竜国別『オー、095(まへ)玉治別(たまはるわけ)ぢやないか。096(なに)(かは)つた(こと)はなかつたかなア』
097玉治別(たまはるわけ)(かは)つた(こと)(おほ)ありだ。098堂々(だうだう)たる天下(てんか)宣伝使(せんでんし)がお(とほ)(あそ)ばしたものだから、099あれだけの(おほ)きい(いし)(はし)(もろ)くも()れよつて、100(たちま)玉治別(たまはるわけ)のプロパガンデイストは、101数千丈(すうせんぢやう)空中(くうちう)滑走(くわつそう)(うま)(えん)じ、102無事(ぶじ)()着水(ちやくすゐ)103()谷川(たにがは)(みづ)(おく)られて(ほとん)下流(かりう)十丁(じつちやう)(ばか)り、104(たちま)(かは)(をとこ)洗濯婆(せんたくば)アさま、105(いま)()(ぎぬ)圧搾(あつさく)して()最中(さいちう)だ、106アハヽヽヽ』
107平気(へいき)(わら)つて()る。
108国依別『オイ、109貴様(きさま)真実(ほんと)玉治別(たまはるわけ)ではあるまい。110あれだけ(たか)石橋(いしばし)から顛倒(てんたふ)し、111谷底(たにそこ)深淵(ふかぶち)墜落(つゐらく)しながら、112そんな平気(へいき)(かほ)して()れる(はず)がない。113大方(おほかた)貴様(きさま)化州(ばけしう)だらう。114オイ竜国別(たつくにわけ)115ちつと合点(がてん)()かぬぢやないか』
116竜国別『アヽさうだ。117彼奴(あいつ)(なに)かの変化(へんげ)であらうよ』
118矢庭(やには)眉毛(まゆげ)(つばき)をつけて()る。
119玉治別実際(じつさい)玉治別(たまはるわけ)()んだのだ。120大岩石(だいがんせき)(とも)墜落(つゐらく)し、121五体(ごたい)()()微塵(みぢん)122流血(りうけつ)淋漓(りんり)として谷水(たにみづ)(あけ)()め、123(たちま)(かは)るインフエルノの()(かは)となつたと(おも)ひきや、124まアざつと()(とほ)()壮健体(さうけんたい)だ。125オイ(たつ)126(くに)両人(りやうにん)127(まへ)(はし)()いが、128あの橋詰(はしづめ)から一辺(いつぺん)()()んで()よ、129随分(ずゐぶん)愉快(ゆくわい)だよ』
130竜国別益々(ますます)()しからん(こと)()(やつ)だ。131オイ国依別(くによりわけ)132(すこ)(しも)(さが)して死骸(しがい)でも(ひろ)うて(かへ)らうぢやないか』
133玉治別『お(まへ)(さが)肝腎(かんじん)(たま)は、134この岩上(がんじやう)洗濯爺(せんたくぢい)となつて鎮座(ちんざ)()しますのを()らぬのか。135(まへ)(かんが)へはタマ間違(まちが)つて()る。136治別(たまはるわけ)宣伝使(せんでんし)二人(ふたり)もあつてたまるものかい。137死骸(しがい)(さが)すと()うても、138()なぬ(もの)死骸(しがい)何処(どこ)にあるか。139そんな至難(しなん)(わざ)はよしにせよ。140苦労(くらう)仕甲斐(しがひ)がないぞよ、141アハヽヽヽ』
142竜国別(たつくにわけ)本当(ほんたう)玉治別(たまはるわけ)間違(まちが)ひは()からうかのう、143国依別(くによりわけ)
144玉治別間違(まちが)ひがあつて(たま)らうかい。145(おれ)はお(かつ)婿(むこ)(もと)田吾作(たごさく)だ。146これでもまだ(うたが)ふのか。147(いま)人民(じんみん)薩張(さつぱり)(あく)(こころ)になりて仕舞(しま)うて()るから、148(うたがひ)がきつうて(なに)()うても(まこと)(いた)さず、149(かみ)迷惑(めいわく)(いた)すぞよ。150改心(かいしん)なされよ。151改心(かいしん)(いた)せば(めくら)()があき、152(つんぼ)(みみ)(きこ)えるやうになるぞよ。153灯台下(とうだいもと)真闇(まつくら)がり、154()(まへ)()友達(ともだち)真偽(しんぎ)(わか)らぬとは()くも此処(ここ)まで(くも)つたものだぞよ。155玉治別(たまはるわけ)(かみ)も、156(いま)人民(じんみん)さまには往生(わうじやう)(いた)すぞよ。157(あんま)(はな)(たか)(いた)すと、158(はな)邪魔(じやま)して(うへ)()えず、159(むか)ふも()えず、160足許(あしもと)(なほ)()えぬやうになつて仕舞(しま)ふぞよ。161()いた(くち)(ふさ)がらぬ、162煎豆(いりまめ)(はな)()いたやうな結構(けつこう)()神徳(しんとく)が、163()(まへ)にぶらついて()りながら、164灯台下(とうだいもと)真闇(まつくら)がり、165ほんに可憐(かはい)さうなものであるぞよ。166改心(かいしん)なされよ。167改心(かいしん)(いた)せば(その)()から()()えるぞよ。168身魂(みたま)(ひか)()すぞよ。169二人(ふたり)のお(かた)(うたが)()らして(くだ)されよ。170玉治別(たまはるわけ)(いう)宣伝使(せんでんし)間違(まちが)ひはないぞよ。171これが(ちが)うたら(かみ)(この)()()らぬぞよ。172(あんま)慢心(まんしん)(いた)して宣伝使(せんでんし)(うま)()つたり(いた)すから、173神罰(しんばつ)(かうむ)つて、174結構(けつこう)(かみ)のかけた(はし)()られ、175谷川(たにがは)(おと)されてアフンと(いた)さなならぬと()実地(じつち)正真(しやうまつ)()せてやつたのであるぞよ。176高姫(たかひめ)黒姫(くろひめ)()改心(かいしん)なされよ。177結構(けつこう)二本(にほん)(あし)神界(しんかい)から(いただ)きながら、178(えら)さうに飛行船(ひかうせん)()つて、179悪魔(あくま)征服(せいふく)なぞと()つて()かけるものだから、180(いま)行衛(ゆくゑ)()れぬではないか。181(その)(はう)()(かみ)御用(ごよう)(いた)宣伝使(せんでんし)だ。182(かがみ)何程(いくら)でも()してあるから、183(かがみ)()改心(かいしん)(いた)されよ。184この玉治別(たまはるわけ)(まこと)結構(けつこう)(かみ)守護(しゆご)して御座(ござ)るぞよ。185明神(みやうじん)高倉(たかくら)186(あさひ)眷属(けんぞく)(いた)して、187身代(みがは)りに()てたぞよ。188人民(じんみん)()らぬ(こと)であるぞよ、189アハヽヽヽ』
190国依別『オイオイ田吾作(たごさく)191馬鹿(ばか)にするない。192貴様(きさま)稲荷(いなり)ぢやないか。193稲荷(いなり)なら稲荷(いなり)はつきり()へ、194(おれ)はこれから貴様(きさま)審神(さには)をしてやるから、195(はや)素直(すなほ)往生(わうじやう)(いた)さぬと()(かへ)しのつかぬ(こと)出来(しゆつたい)(いた)すぞよ。196ジリジリ(もだ)(いた)しても(あと)(まつ)り、197(くる)しむのを()るのが国依別(くによりわけ)可憐(かわい)さうなから、198()もない(うち)から()をつけるぞよ。199(まへ)(おれ)(いもうと)のお(かつ)婿(むこ)()けて()るが、200(はや)往生(わうじやう)(いた)して改心(かいしん)(いた)せばよし、201(あま)()張通(はりとほ)すと、202神界(しんかい)規則(きそく)()らして(ちよう)()るぞよ、203外国(ぐわいこく)()きに(いた)すぞよ』
204竜国別『こらこら(なに)()ふのだ。205彼方(あちら)にも此方(こちら)にも、206しようもない神懸(かむがかり)をやりよつて、207(おれ)馬鹿(ばか)にするのか』
208玉治別(かみ)()()きにものは()はれぬから田吾作(たごさく)肉体(にくたい)()りて()をつけるぞよ。209実地(じつち)正真(しやうまつ)手本(てほん)()せてあるぞよ。210大本(おほもと)大橋(おほはし)()えてまだ(さき)へ、211行方(ゆくへ)(わか)らぬ後戻(あともど)り、212慢心(まんしん)すると(その)(とほ)谷底(たにそこ)(おと)されて仕舞(しま)ふぞよ』
213竜国別『エヽ怪体(けつたい)な、214(はや)真正(ほんま)ものなら此方(こつち)()()い』
215玉治別(たまはるわけ)真正者(ほんまもの)でも贋者(にせもの)でも、216何時(いつ)(まで)もこんな(ところ)()つて()れるかい。217(はや)改心(かいしん)して()れ、218改心(かいしん)さへ出来(でき)たなら、219(かみ)はいつでも(たに)(わた)つて、220其方(そちら)()つてやるぞよ』
221国依別(くによりわけ)竜公(たつこう)改心(かいしん)出来(でき)ぬのは、222度渋太(どしぶと)豆狸(まめだぬき)守護神(しゆごじん)であるから、223玉治別(たまはるわけの)(かみ)(さま)()降臨(かうりん)224イヤ()降来(くわうらい)(あそ)ばさぬのは無理(むり)もないぞよ。225(はや)豆狸(まめだぬき)や、226野天狗(のてんぐ)守護神(しゆごじん)()()して、227(かみ)(さま)(もら)うた生粋(きつすゐ)水晶魂(すゐしやうだま)(みが)いて(くだ)されよ。228(かみ)(うそ)(まを)さぬぞよ』
229竜国別(たつくにわけ)『エヽ(あに)(おとうと)()りよつて、230(この)谷底(たにそこ)竜国別(たつくにわけ)馬鹿(ばか)にするのか』
231玉治別(たまはるわけ)馬鹿(ばか)にし()いは山々(やまやま)なれども、232頂上(ちやうじやう)(たつ)した完全(くわんぜん)馬鹿(ばか)だから、233(この)(うへ)もう馬鹿(ばか)にしようがないので、234(たま)もたまらぬから(かみ)(むね)(いた)めて()るぞよ』
235 竜国別(たつくにわけ)236自暴自棄(やけくそ)になつて、
237竜国別(あま)(この)()(のぼ)りつめて、238悪魔(あくま)(ばか)りの()になりて、239(かみ)三千(さんぜん)(ねん)苦労(くらう)艱難(かんなん)(いた)して(この)()(あら)はれて()たなれど、240(あんま)其処辺(そこら)(ぢう)(むさくる)しうて、241(あし)()つこむ(ところ)も、242指一本(ゆびいつぽん)(おさ)へる(ところ)もありは(いた)さぬぞよ。243(あんま)(この)豆狸(まめだぬき)身魂(みたま)世界(せかい)(くも)らしたによつて、244(かみ)仕組(しぐみ)(いた)して、245玉治別(たまはるわけ)身魂(みたま)懲戒(みせしめ)のために、246()れる(はず)のない石橋(いしばし)をポキンと()つて、247神力(しんりき)(あら)はし、248身魂(みたま)洗濯(せんたく)をして()せたぞよ。249(くも)つた()(なか)にも、250一人(ひとり)二人(ふたり)(まこと)(もの)があらうかと(おも)うて、251(かね)草鞋(わらぢ)(やぶ)れる(ところ)(まで)(さが)して()たが、252(たつ)一人(ひとり)(まこと)(もの)(あら)はれたぞよ。253(これ)()(いた)して三千(さんぜん)世界(せかい)立替(たてかへ)立直(たてなほ)しを(いた)すのであるぞよ。254竜国別(たつくにわけ)身魂(みたま)(まこと)結構(けつこう)因縁(いんねん)身魂(みたま)であるから、255(かみ)(うつ)りて何彼(なにか)(こと)()らさねばならぬから、256(なが)らく()苦労(くらう)になりて()るぞよ。257糞糟(くそかす)()ちて()りて(くだ)されと(かみ)(まを)したら、258一言(ひとこと)(そむ)かずに竜国別(たつくにわけ)()いて(くだ)されたおかげによつて、259(かみ)大望(たいもう)成就(じやうじゆ)(いた)したぞよ。260それについても因縁(いんねん)(わる)身魂(みたま)玉治別(たまはるわけ)261国依別(くによりわけ)のガラクタであるぞよ。262(この)身魂(みたま)さへ改心(かいしん)(いた)せば世界(せかい)一度(いちど)改心(かいしん)(いた)すぞよ。263(この)(おん)(かた)(まこと)結構(けつこう)(きよ)(たふと)(えら)立派(りつぱ)な、264世界(せかい)にもう一人(ひとり)とない生粋(きつすゐ)根本(こつぽん)(もと)分霊(わけみたま)であるから、265(かみ)(うつ)りて大望(たいまう)御用(ごよう)(あふ)せつけてあるぞよ。266世界(せかい)(もの)よ、267竜国別(たつくにわけ)(おこな)ひを()改心(かいしん)(いた)されよ』
268玉治別『アハヽヽヽ、269何奴(どいつ)此奴(こいつ)(みな)神懸(かむがかり)真似(まね)ばかりしよるわい。270サアサアこんな人足(にんそく)相手(あひて)になつて()れば()()れる。271一遍(いつぺん)出直(でなほ)して、272(ふたた)出陣(しゆつぢん)しようかい』
273と、274()れた着物(きもの)(わき)(かか)へ、275真裸(まつぱだか)のまますたすたと(たに)(なが)れを此方(こちら)(わた)り、276坂道(さかみち)(たに)沿()ひに(くだ)()く。277二人(ふたり)は、
278竜国別、国依別『オーイ()て』
279(あと)()ふ。
280 (をり)から(にはか)黒雲(くろくも)(ふさ)がり、281咫尺(しせき)(べん)ぜざるに(いた)つた。282玉治別(たまはるわけ)は、
283玉治別『オーイオーイ二人(ふたり)(やつ)284(おれ)(こゑ)目当(めあて)について()い』
285(ちから)一杯(いつぱい)呶鳴(どな)()てる。
286竜国別(たつくにわけ)『アヽ吃驚(びつくり)した。287(なん)だい、288夜中(よなか)(ゆめ)()やがつて、289(おほ)きな(こゑ)()しよつて、290()られぬぢやないか』
291国依別(くによりわけ)『アヽ(おれ)もエライ(ゆめ)()()つた。292玉公(たまこう)(やつ)293(おに)懸橋(かけはし)から谷川(たにがは)顛落(てんらく)し、294(やが)仕様(しやう)もない(こと)口走(くちばし)りよつたと(おも)つたら、295(なん)だ、296(ゆめ)だつたか。297(にしき)(みや)高殿(たかどの)七五三(しちごさん)太鼓(たいこ)()りかけた。298サア(はや)くお(れい)をして、299言依別(ことよりわけ)(さま)夜前(やぜん)(おれ)(たち)()ひつけられた高春山(たかはるやま)征伐(せいばつ)(むか)はうぢやないか』
300 (をり)からの(かぜ)小雲川(こくもがは)水瀬(みなせ)(おと)()()(ごと)(みみ)()る。
301言依別(ことよりわけ)御言(みこと)もて
302聖地(せいち)(あと)竜国別(たつくにわけ)
303(かみ)(みこと)宣伝使(せんでんし)
304(こころ)玉治別(たまはるわけ)(つかさ)
305国依別(くによりわけ)(ともな)ひて
306小雲(こくも)(なが)れを(さかのぼ)
307高春山(たかはるやま)鬼神(おにがみ)
308征服(せいふく)せむと()()きし
309高姫(たかひめ)黒姫(くろひめ)両人(りやうにん)
310(たす)けにや山家(やまが)肥後(ひご)(はし)
311(ひざ)栗毛(くりげ)(むち)()ちて
312草鞋(わらぢ)脚絆(きやはん)()(かた)
313(すげ)小笠(をがさ)(くさ)(みの)
314巡礼姿(じゆんれいすがた)()(やつ)
315(たに)(つた)ひてテクテクと
316須知(しうち)蒲生野(がまふの)(はら)()
317観音峠(くわんのんたうげ)()()えて
318(をしへ)(はな)()(にほ)
319(うづ)園部(そのべ)小山郷(をやまがう)
320(つばさ)なけれど鳥羽(とば)(さと)
321(みち)広瀬(ひろせ)川伝(かはづた)
322高城山(たかしろやま)右手(めて)()
323()さへ目出度(めでた)亀山(かめやま)
324(うづ)(やかた)()きにける。
325 此処(ここ)には梅照彦(うめてるひこ)326梅照姫(うめてるひめ)二人(ふたり)327言依別(ことよりわけの)(みこと)(めい)(ほう)じ、328(ささ)やかな(やかた)()て、329(をしへ)遠近(をちこち)(つた)へて()た。330(さん)(にん)姿(すがた)(おどろ)いて梅照姫(うめてるひめ)(おく)駆入(かけい)り、
331梅照姫『モシモシ()主人(しゆじん)(さま)332(めう)(をとこ)(さん)(にん)やつて()ました。333さうして門口(かどぐち)()つて(うご)きませぬ。334どう(いた)しませうか』
335梅照彦誰人(どなた)()らぬが、336服装(ふう)(わる)くつても、337如何(いか)なる(かみ)(さま)()けて御座(ござ)るか()れないから、338鄭重(ていちよう)にお(むか)(まを)したらよからう』
339 梅照姫(うめてるひめ)召使(めしつかひ)春公(はるこう)(まね)き、
340梅照姫何人(どなた)(もん)()()られる(はず)だから、341鄭重(ていちやう)にお(むか)(まを)して()なさい』
342春公承知(しようち)(いた)しました』
343門口(かどぐち)(はし)つて()た。344春公(はるこう)其処(そこら)をきよろきよろ見廻(みまは)しながら独言(ひとりごと)
345春公庭長(ていちやう)にせよと仰有(おつしや)るから(むか)ひに()たが、346(たれ)()やせぬぢやないか。347乞食(こじき)(さん)(にん)()(ばか)りで、348大切(たいせつ)なお(きやく)さまは()えはせぬ。349ハヽア、350もう、351つい御座(ござ)るのであらう。352オイ其処(そこ)乞食(こじき)(ども)353其処(そこ)退()いて()れ。354唯今(ただいま)庭長(ていちやう)さまがお()しになるのだから、355(まへ)のやうな乞食(こじき)門口(かどぐち)()つて()ると、356()つとも()くない。357サアサア何処(どこ)かへ()つたり()つたり』
358竜国別(たつくにわけ)貴方(あなた)当家(たうけ)召使(めしつかひ)ですか。359梅照彦(うめてるひこ)()られますかな』
360春公『エヽ(なに)をごてごて()ふのだ。361(ひと)見下(みさ)げて召使(めしつかひ)かなんて、362其様(そん)なものとはちつと(ちが)ふのだ』
363竜国別(たつくにわけ)(しか)らば貴方(あなた)当家(たうけ)()主人(しゆじん)ですか』
364春公『マアマア()うでもよいわい。365どつちかの(うち)ぢや』
366竜国別()主人(しゆじん)とあれば、367一寸(ちよつと)(うけたま)はり()(こと)があつて(まゐ)りました』
368春公『そんな(もの)当家(たうけ)主人(しゆじん)(よう)()いわい。369(はや)何処(どこ)かへ退散(たいさん)せぬか。370(いま)庭長(ていちやう)さまがお()しになるのだ。371邪魔(じやま)(いた)すと(この)(はうき)(なぐ)りつけるぞ』
372玉治別(たまはるわけ)『これや、373(まへ)此処(ここ)召使(めしつかひ)だらう。374下男(しもをとこ)だらう。375門前(もんぜん)(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)()えて()るのに主人(しゆじん)にも()()がず、376()()すと()(こと)があるものか。377(はや)()()いで()れ』
378春公()()がぬ(こと)もないが、379今日(けふ)(にはか)にお取込(とりこ)みが出来(でき)たのだ。380庭長(ていちやう)さまがお(いで)になるのだから、381(いづ)()馳走(ちそう)をせなくてはならぬ、382さうすれば(また)ちつとは(あま)るから、383明日(あした)()けて()いてやるから、384(あらた)めて()()い。385それ(まで)其辺(そこら)うちを迂路(うろ)ついて、386今日(けふ)はまア他家(よそ)(もら)ふが()からう』
387玉治別(たまはるわけ)『お(まへ)我々(われわれ)乞食(こじき)()()るのだなア。388それや(あんま)りぢやないか』
389春公(あんま)りも(くそ)もあつたものかい。390(たて)から()ても、391(よこ)から()ても乞食(こじき)間違(まちが)ひはない。392(あんま)りぢやと()うたが、393今日(けふ)()馳走(ちそう)(あんま)るとも(あんま)らぬとも見当(けんたう)がつかぬ。394明日(あす)()()い。395屹度(きつと)(にぎ)(めし)あんまり(ひと)(くらゐ)(おれ)がそつと()けて()いてやる。396貴様(きさま)(はら)()つとるだらうが、397まア辛抱(しんばう)をして()れ。398(おれ)だつて(うま)れつきの悪人(あくにん)ぢやない。399つい十日(とをか)(ほど)(まへ)まで、400乞食(こじき)(ある)いて、401(みち)(はた)(うゑ)(せま)(たふ)れて()つたところ、402此家(ここ)主人(しゆじん)(ひろ)()げて(くだ)さつたのだから何処迄(どこまで)大切(たいせつ)(この)(もん)(まも)らねばならぬのだ。403何卒(どうぞ)(たの)みだから(しばら)他家(よそ)()つて()()れ。404(いま)庭長(ていちやう)さまがお()えになるのだ。405()しその庭長(ていちやう)さまが、406(この)(いへ)主人(しゆじん)にでも(なに)かの(はし)に、407此方(こなた)門口(かどぐち)には乞食(こじき)(さん)(にん)()つて()ましたと()はつしやらうものなら、408それこそ(おれ)(この)()()()されて(また)(もと)乞食(こじき)になり、409(まへ)(たち)仲間(なかま)逆転(ぎやくてん)せなくてはならぬから、410()うぞここは(おれ)(たす)けると(おも)つて、411(しばら)退却(たいきやく)して()れ。412乞食(こじき)(あぢ)(おれ)もよく()つて()る。413(つら)いものだ。414本当(ほんたう)同情(どうじやう)するよ。415(わけ)(わか)らぬ無慈悲(むじひ)(やつ)だと(うら)めて()れな』
416 国依別(くによりわけ)大声(おほごゑ)(はつ)し、
417国依別梅照彦(うめてるひこ) 々々々(うめてるひこ)
418呶鳴(どな)つた。419(はる)吃驚(びつくり)して、
420春公『コラコラ、421そんな非道(ひど)(こと)()ふものぢやない。422(おれ)(しか)られるぢやないか。423乞食(こじき)()うたと(おも)はずに、424(おれ)主人(しゆじん)()()てにしたやうにとられては(たま)らぬぢやないか。425(ちつ)とは(おれ)()にもなつて()れ』
426 (たつ)427(たま)428(くに)(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)(いち)()(こゑ)(そろ)へて、
429三人梅照彦(うめてるひこ) 々々々(うめてるひこ)
430呶鳴(どな)()ける。431(はる)は、
432春公『やアこいつは(たま)らぬ、433ぢやと()うて(ひと)(くち)()()てる(わけ)にも()かないわ。434(ひと)(おく)()つて()(わけ)をして()う』
435とバタバタと(おく)駆込(かけこ)む。436梅照彦(うめてるひこ)人待顔(ひとまちがほ)にて、
437梅照彦『お(きやく)さまはどうなつたか。438(はや)くこちらへ()案内(あんない)せぬか』
439春公『イヤ、440()()えませぬ。441()うしてこんなに(おそ)いのでせうなア』
442梅照彦(いま)(なん)だか大勢(おほぜい)(こゑ)がしたではないか』
443春公『あれは乞食(こじき)(うた)(うた)つて()門前(もんぜん)(とほ)つたのですよ』
444梅照彦『お(まへ)(こゑ)ではなかつたかな』
445春公『イエイエ滅相(めつさう)もない、446誰人(だれ)()主人(しゆじん)(さま)梅照彦(うめてるひこ)なんて()びつけに(いた)しますものか。447(なん)でも貴方(あなた)のお()()つて()乞食(こじき)()つたのでせう』
448梅照彦『ハテナ、449それでも(いま)(つま)が、450門口(かどぐち)(さん)(にん)のお(かた)(もん)()けて()れと()つてお()ちになつて()ると()うて()た。451(いま)御飯(ごぜん)仕度(こしらへ)をすると()つて炊事場(すゐじば)(はう)にいきよつたが、452もうお(きやく)さまは(かへ)つて仕舞(しま)はれたのかなア』
453春公『イヽエ、454まだお(きやく)さまは()えませぬ。455(ただ)(さん)(にん)()すぼらしい乞食(こじき)が、456蓑笠(みのかさ)()て、457(もん)(はた)()つて()ります』
458梅照彦(なに)459まだ()つて()られるか』
460春公()主人(しゆじん)(さま)461貴方(あなた)はあんな乞食(こじき)丁寧(ていねい)言葉(ことば)をお使(つか)ひになるのですなア』
462梅照彦乞食(こじき)だつて誰人(だれ)だつて、463(おな)(かみ)(さま)から(うま)れた人間(にんげん)だ。464丁寧(ていねい)(いた)さねばならぬではないか』
465春公『それでも(わたし)(たい)しては(あま)丁寧(ていねい)ぢやありませぬな。466いつも(はる)467(はる)()びつけになさるでせう』
468梅照彦『そんならこれから、469(はる)さまと()つたらお()()りますかなア』
470春公御尤(ごもつと)もでございますなア』
471 ()(はな)(をり)しも、472門口(かどぐち)から宣伝歌(せんでんか)(きこ)(きた)る。
473(玉治別)(かみ)(おもて)(あら)はれて
474(ぜん)(あく)とを()()ける
475(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
476(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
477(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
478直日(なほひ)見直(みなほ)()(なほ)
479()(あやま)ちは()(なほ)
480三五教(あななひけう)(かみ)(のり)
481四方(よも)(つた)ふる亀山(かめやま)
482(うづ)(やかた)(まも)()
483梅照彦(うめてるひこ)(もん)(まへ)
484遥々(はるばる)(たづ)()()れば
485(たたず)()たる(やま)(かみ)
486(われ)()姿(すがた)()るよりも
487(きびす)(かへ)(おく)()
488嗚呼(ああ)(いぶ)かしや(いぶ)かしや
489主人(あるじ)(つま)下婢(はしため)
490不思議(ふしぎ)(かど)()()まり
491(もん)(ひら)くを()つうちに
492(をど)(いで)たる下男(しもをとこ)
493(われ)()(まへ)竹箒(たけばうき)
494掃出(はきだ)すやうな捨言葉(すてことば)
495庭長(ていちやう)さまが(きた)るまで
496(かへ)つて()れいと頑張(がんば)つて
497(また)もや(もん)をピシヤと()
498蒼惶(さうくわう)姿(すがた)(かく)しけり
499(なんぢ)梅照彦(うめてるひこ)(つかさ)
500三五教(あななひけう)御教(みをしへ)
501(なん)(おも)ふか()(ひと)
502貴賤(きせん)老幼(らうえう)(わか)ちなく
503(すく)(たす)けて皇神(すめかみ)
504(をしへ)(とく)(なび)かせつ
505世人(よびと)(まも)神司(かむづかさ)
506()にも(たふと)天職(てんしよく)
507もはや(なんぢ)(わす)れしか
508(かみ)(をしへ)(かさ)()
509体主(たいしゆ)霊従(れいじう)利己(りこ)主義(しゆぎ)
510発揮(はつき)()るは三五(あななひ)
511(かみ)(をしへ)(あら)ずして
512バラモン(けう)()(かた)
513(われ)御国(みくに)(すく)はむと
514(あした)(かぜ)(ゆふ)(あめ)
515そぼち()れつつ高春(たかはる)
516(やま)(むか)うてアルプスの
517(かみ)(をしへ)(つかさ)なる
518鷹依姫(たかよりひめ)言向(ことむ)けて
519世人(よびと)(すく)神柱(かむばしら)
520言依別(ことよりわけ)御言(みこと)もて
521(やうや)此処(ここ)(きた)りしぞ
522(なんぢ)日頃(ひごろ)のやり(かた)
523(いま)(あら)はれた下男(しもをとこ)
524言葉(ことば)(はし)によく()える
525(たふと)(きぬ)()(まと)
526表面(うはべ)(かざ)曲人(まがびと)
527(よろこ)(むか)()れながら
528服装(みなり)(いや)しき我々(われわれ)
529(ただ)一言(ひとくち)(にべ)もなく
530()(かへ)さむと(つと)むるは
531(まつた)(そなた)指金(さしがね)
532(ただし)下男(しもべ)(あやま)りか
533詳細(つぶさ)()(こた)(いた)されよ
534朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
535(つき)()つとも()くるとも
536仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
537(かみ)(つか)へし()(うへ)
538如何(いか)なる(いや)しき姿(すがた)をも
539如何(いか)なる見悪(みにく)服装(みなり)せる
540乞食(こじき)(はし)(いた)るまで
541(すく)(たす)けにやおかれまい
542(なんぢ)(やす)きに()()ぎて
543(すく)ひの(みち)(わす)れしか
544(かみ)(われ)()(とも)にあり
545(かみ)(みこと)(かしこ)みて
546曲津(まがつ)征途(せいと)(のぼ)()
547(われ)()一行(いつかう)三人(みたり)()
548竜国別(たつくにわけ)玉治別(たまはるわけ)
549国依別(くによりわけ)宣伝使(せんでんし)
550此処(ここ)(いとま)()げまつる
551あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
552恩頼(みたまのふゆ)(かかぶ)りて
553()()れかかる(ふゆ)()
554御稜威(みいづ)(たか)高熊(たかくま)
555御山(みやま)()して(すす)むべし
556梅照彦(うめてるひこ)妻神(つまがみ)
557随分(ずゐぶん)(まめ)でお達者(たつしや)
558(かみ)のお(みち)()くされよ
559(わたし)はこれにて(いとま)()
560三人(みたり)(つかさ)凱旋(がいせん)
561(ゆび)をり(かぞ)へて()つがよい
562さアさア()かうさア()かう
563門前(もんぜん)(ばら)ひを()はされて
564(あま)(うれ)しうは()けれども
565これも(なに)かのお仕組(しぐみ)
566()けるとこ(まで)()つて()よう
567(けつ)して世界(せかい)(おに)()
568三五教(あななひけう)()(うち)
569梅照彦(うめてるひこ)(おに)()
570もしや(われ)()()(こと)
571()(さは)れば(ゆる)してよ
572あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
573御霊(みたま)(さち)(たま)へかし』
574玉治別(たまはるわけ)大声(おほごゑ)にて(こころ)(たけ)(うた)(をは)つた。
575 梅照彦(うめてるひこ)(この)(うた)()くや、576(おどろ)いて表門(おもてもん)()けつけ砂上(しやじやう)(かうべ)()げ、
577梅照彦『これはこれは宣伝使(せんでんし)(さま)御座(ござ)いましたか。578まことに下男(しもべ)粗忽(そそう)(いた)しまして、579申訳(まをしわけ)御座(ござ)いませぬ。580さアさアどうぞお這入(はい)(くだ)さいませ』
581玉治別(たまはるわけ)『イヤ有難(ありがた)う。582かういふ立派(りつぱ)なお(やかた)乞食(こじき)這入(はい)りましては、583(やかた)名誉(めいよ)にかかはりますから、584今日(けふ)はまアこれで御免(ごめん)(かうむ)りませう』
585梅照彦『お腹立(はらだち)御尤(ごもつと)もで御座(ござ)いますが、586つい失礼(しつれい)(いた)しまして……(まつた)下男(しもべ)(わざ)御座(ござ)いますから、587どうぞ(ゆる)して(くだ)さいませ。588さアさア()機嫌(きげん)(なほ)して、589トツトとお這入(はい)(くだ)さいませ。590コレ梅照姫(うめてるひめ)591春公(はるこう)592(わび)申上(まをしあ)げないか』
593呶鳴(どな)つて()る。594二人(ふたり)(この)(こゑ)(おどろ)いて様子(やうす)(わか)らねど、595梅照彦(うめてるひこ)土下座(どげざ)をして()るのを()て、596自分(じぶん)(おな)じく大地(だいち)平伏(へいふく)して(かうべ)()げた。
597玉治別(たまはるわけ)(いま)貴方(あなた)下男(しもべ)(わる)いのだと()はれましたな。598(けつ)して下男(しもべ)ぢやありませぬよ。599責任(せきにん)矢張(やつぱり)主人(しゆじん)にある。600さう()()のつかない馬鹿(ばか)(をとこ)を、601門番(もんばん)にするのが第一(だいいち)(あやま)りだ』
602梅照彦『ハイ、603(なん)(あふ)せられましても弁解(べんかい)(ことば)がありませぬ』
604竜国別『サア、605(こと)(わか)れば()いぢやないか。606玉治別(たまはるわけ)607国依別(くによりわけ)608世話(せわ)になりませうかい』
609(さき)()つて(すす)()る。610二人(ふたり)もニコニコしながら、
611玉治別、国依別『アヽ、612エライお()()ませました。613もうこれで一切(いつさい)経緯(いきさつ)帳消(ちやうけし)だ。614さア梅照彦(うめてるひこ)()夫婦(ふうふ)さま、615(はる)さま、616()うぞ安心(あんしん)して(くだ)さいませ』
617梅照彦有難(ありがた)御座(ござ)います』
618安心(あんしん)(むね)()(おろ)し、619(つま)諸共(もろとも)(さん)(にん)(あと)()いて(おく)()る。620春公(はるこう)(もん)(かたはら)佇立(ちよりつ)し、
621春公『アヽ庭長(ていちやう)さまの()挨拶(あいさつ)だつた。622(かげ)免職(めんしよく)もどうやら(のが)れたやうだ』
623大正一一・五・一六 旧四・二〇 加藤明子録)

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