霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 解決(かいけつ)〔六九二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻 篇:第4篇 反復無常 よみ(新仮名遣い):はんぷくむじょう
章:第18章 解決 よみ(新仮名遣い):かいけつ 通し章番号:692
口述日:1922(大正11)年05月21日(旧04月25日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年4月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫と黒姫を閉じ込めた岩窟の前にやってきたテーリスタンは、二人に外へ出るように言って錠を開ける。高姫は鷹依姫を言向け和すのだから案内しろ、とテーリスタンに命じる。
道々、高姫はなぜテーリスタンが三五教に味方するようになったかと問いかけた。テーリスタンは、子供ながら二人を岩窟から救い出すためにやってきたお初に降参したのだ、と語る。
高姫は感心しながら鷹依姫の居間にやってきた。高姫は、自分たちを岩窟に閉じ込めて飢えさせた鷹依姫を非難する。鷹依姫は、食事を与えなかったのはテーリスタンとカーリンスだと責任を転嫁し、二人と言い争う。
テーリスタンとカーリンスは、お初に仲裁を頼むが、お初は鷹依姫も、テーリスタンもカーリンスも善人ではないから改心するように、と言い聞かせる。テーリスタンとカーリンスは赤面して反省する。
そこへ杢助、玉治別、竜国別、国依別の四人がやってきた。お初は鷹依姫に向かって底力のある声で改心を迫ると、鷹依姫ははらはらと涙を流して、遂には声を放ってその場に泣き伏した。
次にお初は高姫に向かって、改心して呑み込んだ二つの玉を返すように、と言い渡した。高姫は観念し、お初が腰を打つと、紫の玉と如意宝珠の玉を吐き出した。
お初は紫の玉を鷹依姫に返そうとするが、鷹依姫は改心した以上、玉は三五教へ献上すると答えた。そして、自分は行方をくらました極道息子との再会を願ってバラモン教に入信したが、遂には一派を立ててアルプス教を開くまでになってしまったのだ、と身の上を明かした。
鷹依姫の息子の特徴は、竜国別と一致した。お初は、竜国別は確かに鷹依姫の息子に違いないと明らかにし、高春山の途上の社で竜国別に試練を与えた女は、自分の化身であったことを明かした。
鷹依姫と竜国別は、親子の対面を果たした。お初は竜国別は額の傷によって身魂の罪は取り払われて水晶の魂となったことを宣言した。そして天津祝詞を捧げて聖地に帰るようにと一行を促した。
一同はこの言葉にはっと頭を下げ、口をすすいで天津祝詞を奏上した。そして宣伝歌を玉治別の音頭により高唱した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-05-02 02:37:19 OBC :rm2118
愛善世界社版:286頁 八幡書店版:第4輯 369頁 修補版: 校定版:295頁 普及版:130頁 初版: ページ備考:
001 テーリスタンは密室前(みつしつぜん)(あら)はれて、
002テーリスタン『モシモシ(わたし)はテーリスタンで御座(ござ)います。003高姫(たかひめ)(さま)004黒姫(くろひめ)(さま)005()機嫌(きげん)如何(いかが)御座(ござ)いますか』
006高姫『お(まへ)はテーリスタンだな。007いつも我々(われわれ)軽蔑(けいべつ)して()きながら、008今日(けふ)(かぎ)つて(その)丁寧(ていねい)(もの)()ひは何事(なにごと)だい。009大方(おほかた)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)がやつて()たものだから、010そんなお追従(つゐしよう)()ふのだらう。011なア黒姫(くろひめ)さま、012抜目(ぬけめ)のない(をとこ)ぢやありませぬか』
013テーリスタン『イエ(けつ)してさうぢや御座(ござ)いませぬが、014どうも貴方(あなた)()神徳(しんとく)(こころ)(そこ)から感動(かんどう)しました。015何卒(どうぞ)(はや)()(くだ)さいませ』
016高姫()いと()つたつて、017(かみ)(さま)のやうに海老錠(えびぢやう)をかけて()いたぢやないか。018(まへ)(わし)()二人(ふたり)石室(いはむろ)()れた(つも)りか()らぬが、019高姫(たかひめ)大明神(だいみやうじん)020黒姫(くろひめ)大明神(だいみやうじん)結構(けつこう)()(みと)ぢやぞエ、021(なん)心得(こころえ)()る。022大幣(おほぬさ)でも()つて()十分(じふぶん)(はら)(きよ)め、023(そな)(もの)沢山(どつさり)(たてまつ)つて冠装束(かむりしやうぞく)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、024岩戸(いはと)(びら)きの(まひ)()はぬ(こと)には、025(この)女神(めがみ)さまは滅多(めつた)()はせぬぞエ』
026 テーリスタンは(かぎ)(もつ)て、027ガタガタ()はせながら(いし)()をパツと(ひら)き、
028テーリスタン『サア何卒(どうぞ)()まし(くだ)さいませ』
029黒姫『アヽ()(がた)う、030サア、031高姫(たかひめ)さま()ませうか』
032高姫黒姫(くろひめ)さま、033(なに)()ひなさる、034(まへ)さまは(とぼ)けて()るのか。035コレヤコレヤ、036テーリスタン、037貴様(きさま)(ひと)住家(すみか)()勝手(かつて)()けよつて、038(たれ)許可(ゆるし)()けたのだ。039家宅(かたく)侵入罪(しんにふざい)(うつた)へてやるがどうだい』
040テーリスタン高姫(たかひめ)さま、041さういちやつかずに、042()(たの)みぢや、043()(くだ)さいな』
044高姫()()れいと(たの)むなら()いてやらぬ(こと)もない。045今日(けふ)はお(そな)(もの)も、046祝詞(のりと)免除(めんぢよ)してやらう。047(じつ)(わたし)一刻(いつこく)(はや)く、048こんな(くら)(ところ)()りたい(こと)()(こと)()(こと)()いのだ。049サアサア黒姫(くろひめ)さま、050(まへ)さまから(さき)()なさい。051大分(だいぶん)(この)(あひだ)から()たさうだつたから』
052黒姫先生(せんせい)からお(さき)()(くだ)さいませ。053あまり失礼(しつれい)ですから』
054高姫『そんならお(さき)御免(ごめん)(かうむ)りませう。055(なが)らく()厄介(やくかい)になりました。056サアもう此処(ここ)まで()以上(いじやう)は、057神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)(むらさき)(たま)に、058如意(によい)宝珠(ほつしゆ)夜光(やくわう)(たま)()()んだ(この)高姫(たかひめ)059仮令(たとへ)何万(なんまん)(にん)豪傑(がうけつ)()(きた)るとも、060フンと(ひと)鼻息(はないき)をしたら()()つて仕舞(しま)(くらゐ)なものだ。061これから鷹依姫(たかよりひめ)(ひと)言向(ことむ)(やは)してやらうかなア』
062テーリスタン貴女(あなた)はお(なか)()きませぬか。063大分(だいぶん)にお()せになりましたな。064テーは心配(しんぱい)ですワ』
065高姫(ひやく)(にち)二百(にひやく)(にち)()はいでも(やせ)るやうな高姫(たかひめ)とは(ちつ)(ちが)います。066イヤ(やせ)たのぢやない。067(からだ)(ほそ)くして()いたのだよ。068サアサア テーリスタン、069案内(あんない)をしなさい、070(ばば)アの(そば)へ』
071テーリスタン『イヤ、072もう最前(さいぜん)からカーリンスと二人(ふたり)()つて(くだ)をまいてまいて、073まき(つぶ)した(とこ)です。074もはや我々(われわれ)三五教(あななひけう)信者(しんじや)ですから安心(あんしん)して(くだ)さい』
075高姫『お(まへ)のやうな(もの)信者(しんじや)になれば、076安心(あんしん)(どころ)か、077益々(ますます)()をつけねばなるまい。078(たれ)(ゆる)されて三五教(あななひけう)信者(しんじや)になつたのだい』
079テーリスタン(わたくし)はお(はつ)さまに(たの)みました』
080高姫『お(はつ)さまて(たれ)(こと)だえ』
081テーリスタン(いつ)(むつ)つのちつぽけな(むすめ)()です。082貴女(あなた)岩窟(いはや)から(すく)()さねばならぬと()つて(ただ)一人(ひとり)子供(こども)だてらやつて()たのですよ』
083高姫『さうしてお(まへ)(たち)(その)子供(こども)降参(かうさん)したのかい』
084テーリスタン『ハイハイ何処(どこ)ともなしに()神力(しんりき)(そな)はつて()るので、085()むを()降参(かうさん)をして貴女(あなた)をお(すく)(まを)したのです』
086高姫(なん)(えら)子供(こども)もあればあるものぢやなア。087子供(こども)大人(おとな)(たす)けられるなんて(むかし)から()いた(こと)がない。088時節(じせつ)()ふものは結構(けつこう)なものだな』
089黒姫高姫(たかひめ)(さま)090それで()(さか)さまになつて()ると、091(かみ)(さま)がお(ふで)にお(しめ)しになつて()るぢやありませぬか』
092高姫黒姫(くろひめ)さまは(しばら)沈黙(ちんもく)して()なさい。093言葉尻(ことばじり)(つか)まへられちや(かへつ)不利益(ふりえき)ですよ。094(をんな)()ふものは()()喋舌(しやべ)らぬ(はう)高尚(かうしやう)()えて宜敷(よろし)い、095(しか)(わたし)例外(れいぐわい)だ。096()うしても率先(そつせん)して()はねばならぬ役廻(やくまは)りだから……これこれアルプス(けう)教主(けうしゆ)どの、097(なが)らく結構(けつこう)岩窟(がんくつ)ホテルに逗留(とうりう)さして(いただ)きまして、098日々(にちにち)()馳走(ちそう)()つから頂戴(ちやうだい)(いた)しませず、099()親切(しんせつ)(だん)()りがたくお(れい)申上(まをしあ)げませぬワイ』
100鷹依姫(べつ)山中(さんちう)(こと)とて()馳走(ちそう)御座(ござ)りませず、101テーリスタンやカーリンスに申付(まをしつ)けて、102三度(さんど)々々(さんど)103相当(さうたう)食物(しよくもつ)をお()(まを)すやう命令(めいれい)して()きましたが、104()うせお()()すやうなものは()げられませぬでしたらう』
105テーリスタン『コレ()アさん、106自分(じぶん)責任(せきにん)我々(われわれ)転嫁(てんか)するのかい。107(わし)がそつと(かく)して高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)さまに進上(しんじやう)しようと(おも)へば、108(はやぶさ)のやうな()でジロジロと(わし)(にら)みつけ、109さうして(みづ)一滴(いつてき)110(めし)一粒(ひとつぶ)やつてはならない。111()うして()けば、112高姫(たかひめ)がカンピンタンになるだらう。113都合(つがふ)よく()からびた(とき)に、114(はら)()んだ(むらさき)(たま)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)()()いて()ると()つたのでは()かつたのではないか。115(いま)となつて、116そんな卑怯(ひけふ)二枚舌(にまいじた)使(つか)ふものぢや()いワ。117なア、118カーリンス、119(おれ)()(こと)間違(まちが)ひはあるまい』
120カーリンス『オヽ、121さうとも さうとも、122(おれ)(たち)にさへけちけち()つて(さけ)(ろく)()まさない(こと)()い、123悪党婆(あくたうばば)アだから、124どうしてあれだけ(にく)んで()高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)さまに、125飲食物(いんしよくぶつ)差上(さしあ)げる(はず)があらうかい』
126鷹依姫『お(まへ)(たち)(なん)()(うそ)()ふのだ。127(わし)八方(はつぱう)攻撃(こうげき)()はして(こま)らす(つも)りだな』
128テーリスタン(きま)つた(こと)だ。129大勢(おほぜい)(ひと)(こま)らせて()くと(その)罪障(めぐり)()()て、130自分(じぶん)(また)(こま)らねばならぬ(こと)出来(しゆつたい)(いた)すぞよ、131三五教(あななひけう)(かみ)(さま)仰有(おつしや)つた。132(かみ)(おもて)(あら)はれて(ぜん)(あく)とを()()けると()ふのは(この)(こと)だ。133(げん)にお(はつ)さまはまだ(とし)(むつ)つだが、134(たふと)(かみ)(さま)のお(うま)(かは)りだ。135(この)(かみ)(さま)()いて()れば善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)一遍(いつぺん)(わか)るのだ……(わたくし)(わる)いですか(ばば)(わる)いですか判断(はんだん)して(くだ)さいな』
136お初『お()アさまもあんまり()(こと)はない。137テーリスタンもカーリンスもあまり善人(ぜんにん)でもありませぬよ。138(はや)改心(かいしん)をしなさい。139改心(かいしん)さへすれば(みな)(もと)善人(ぜんにん)になれますよ』
140 テー、141カーの二人(ふたり)(かほ)真赤(まつか)(あたま)()いて(うつ)むく。142()かる(ところ)表口(おもてぐち)より、143宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら、144竜国別(たつくにわけ)145玉治別(たまはるわけ)146国依別(くによりわけ)先頭(せんとう)に、147力強(ちからづよ)杢助(もくすけ)148(その)()(ろく)(にん)のアルプス(けう)信者(しんじや)(したが)へ、149どやどやと這入(はい)つて()る。
150玉治別(たまはるわけ)『ヨー、151貴女(あなた)高姫(たかひめ)さま、152黒姫(くろひめ)さま、153ヨウ、154マア無事(ぶじ)()(くだ)さつた。155我々(われわれ)言依別(ことよりわけの)(みこと)(さま)内命(ないめい)()けて、156(やうや)三方(さんぱう)より当山(たうざん)()(のぼ)り、157言霊戦(ことたません)(むか)つたのです。158あゝこれで結構(けつこう)だ。159(この)(かた)湯谷(ゆや)(だに)杢助(もくすけ)さまと()つて、160(じつ)時置師(ときおかしの)(かみ)(さま)()変名(へんめい)161大変(たいへん)なお世話(せわ)になつたのですワ』
162高姫『それはそれは(みな)さま()苦労(くらう)でした。163よう()(くだ)さつた。164杢助(もくすけ)(さま)とやら、165玉治別(たまはるわけ)さまがいかい世話(せわ)になられたさうです。166(わたし)から(あつ)くお(れい)申上(まをしあ)げます』
167黒姫皆様(みなさま)よくこそお()(くだ)さいました。168(とき)にこの()アさまはまだ改心(かいしん)せないのかな』
169お初『サアお()アさま、170モウ()うなつては()()つても駄目(だめ)ですよ。171(なに)()もすつかり懺悔(ざんげ)して(まこと)(こころ)()(かへ)り、172結構(けつこう)(かみ)(さま)生宮(いきみや)として、173(この)()(きよ)(うるは)しくお(くら)しなさい』
174とお(はつ)(ちひ)さき(くちびる)より、175(なん)となく底力(そこぢから)のある(こゑ)にて()めつけられ、176さしもに頑固(ぐわんこ)鷹依姫(たかよりひめ)(なみだ)をハラハラと(なが)し、177(つい)には(こゑ)(はな)つて(その)()()()しにける。
178(はつ)『サア、179これからは高姫(たかひめ)さまだ。180(まへ)さまはウラナイ(けう)()てて素盞嗚(すさのをの)(みこと)(さま)反対(はんたい)をして()つた(とき)181秋山彦(あきやまひこ)(やかた)()()り、182冠島(かむりじま)宝庫(はうこ)(かぎ)(ぬす)()し、183如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)(うば)()つて()()んだその(つみ)で、184こんな岩窟(がんくつ)(なが)らく()()められ、185(くる)しんだのですよ。186何程(なにほど)()けぬ()になつて空元気(からげんき)()しても矢張(やつぱり)(つら)かつたでせう。187(いま)(わたし)(まへ)にその(たま)()()しなさい。188さうして(また)189(むかし)竹熊(たけくま)()悪神(わるがみ)()つて、190八尋殿(やひろどの)竜宮城(りうぐうじやう)使神(ししん)招待(せうたい)し、191芳彦(よしひこ)()つて()つた(むらさき)(たま)()つたが、192竹熊(たけくま)終焉(しゆうえん)(とも)死海(しかい)()()んだ十個(じつこ)(たま)(なか)で、193この(たま)ばかりは(けが)されず、194中空(ちうくう)()んで自転倒(おのころ)(じま)()ちて()(たま)ですよ。195それをこの鷹依姫(たかよりひめ)()()れて、196それを()神体(しんたい)としてアルプス(けう)()てて()つたのだが、197(その)(たま)をお(まへ)さまは(また)()()んで仕舞(しま)つたぢやないか。198(はら)(なか)何程(なにほど)(たま)があると()つても、199さう()(わる)(こころ)()()んだのだから、200(すこ)しも(ひかり)()ない。201サア(わたし)此所(ここ)()して()げよう。202如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)素盞嗚(すさのをの)(かみ)(さま)()(かへ)(まを)し、203(むらさき)(たま)鷹依姫(たかよりひめ)さまに(かへ)してお()げなさいませ』
204高姫『ハイ仕方(しかた)御座(ござ)いませぬ、205如何(どう)したら()()んだ(たま)()ませうかなア』
206お初心配(しんぱい)()りませぬ。207(わたし)(いま)(らく)()してあげませう』
208()ひつつ、209高姫(たかひめ)(こし)(ひと)つエヽと(こゑ)かけ()つた(はづみ)に、210ポイと(くち)から()んで()たのは(むらさき)(たま)である。211もう(ひと)(ひだり)()(こし)()つた(はづみ)()んで()たのが如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)であつた。212高姫(たかひめ)はグタリと(つか)れて(その)()(たふ)れる。
213お初高姫(たかひめ)さまは()()えても心配(しんぱい)()りませぬ、214(しばら)休息(きうそく)なされば元気(げんき)(もと)(とほ)りになります。215サア竜国別(たつくにわけ)さま、216貴方(あなた)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)大切(たいせつ)(あづか)つて聖地(せいち)へお(かへ)りなさい。217鷹依姫(たかよりひめ)さま、218(むらさき)(たま)貴方(あなた)()つて()たものだ、219()うか受取(うけと)つて(くだ)さい』
220鷹依姫(わたくし)最早(もはや)改心(かいしん)(いた)しました以上(いじやう)(たま)必要(ひつえう)御座(ござ)いませぬ。221何卒(どうぞ)これを聖地(せいち)献上(けんじやう)(いた)したう御座(ござ)います。222(わたくし)白状(はくじやう)(いた)しまするが、223(わたくし)には(たつた)一人(ひとり)(せがれ)御座(ござ)いました。224その(せがれ)極道者(ごくだうもの)近所(きんじよ)(ひと)迷惑(めいわく)をかけたり、225喧嘩(けんくわ)をする、226賭博(ばくち)はうつ、227(をんな)ずぼる228(わたし)意見(いけん)をすれば「(なに)229親顔(おやがほ)をしてゴテゴテ()ふな」と(なぐ)りつける、230(しまひ)(はて)には(おや)をふり()てて、231何処(いづこ)ともなく姿(すがた)(かく)して仕舞(しま)ひました。232極道(ごくだう)()(なほ)可愛(かあい)とか(まを)しまして、233()して一人(ひとり)(てん)にも()にもかけ()へのない(せがれ)234一度(いちど)()ひたい(こと)だと一生(いつしやう)懸命(けんめい)(かみ)(さま)にお(ねが)(いた)し、235とうとうバラモン(けう)入信(にふしん)し、236(つひ)にアルプス(けう)()てる(こと)になつたので御座(ござ)います。237(わたし)のやうな不運(ふうん)なものは世界(せかい)御座(ござ)いませぬ』
238玉治別『さうしてその(せがれ)()(なん)()(かた)でしたか』
239玉治別(たまはるわけ)()ひに、
240鷹依姫『ハイ、241(いま)如何(どう)なつたか行方(ゆくへ)(わか)りませぬが、242(かほ)特徴(とくちやう)()へば一割(いちわり)(ひと)より(はな)(たか)いもので御座(ござ)いました。243そして()竜若(たつわか)(まを)します。244(えら)いまあ極道(ごくだう)(おや)心配(しんぱい)をかけよつたが、245今頃(いまごろ)はどうして()(こと)か、246アーア』
247(そで)(しぼ)る。248玉治別(たまはるわけ)不審(ふしん)さうに、
249玉治別『コレコレ竜国別(たつくにわけ)250(まへ)竜若(たつわか)()つたぢやないか。251そして一人(ひとり)(はは)があると(はな)した(こと)があるなア。252何処(どこ)やら(この)()アさまに目許(めもと)253(はな)(たか)具合(ぐあひ)がよく()()るやうだ。254もしや(この)()アさまぢやあるまいかな』
255 竜国別(たつくにわけ)両手(りやうて)()み、256ウンと吐息(といき)しながら(なみだ)をホロホロと(なが)して()る。
257(はつ)鷹依姫(たかよりひめ)(せがれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)竜国別(たつくにわけ)間違(まちが)ひはない。258親子(おやこ)対面(たいめん)させるために、259(かみ)仕組(しぐ)んで当山(たうざん)()()けられたのです。260竜国別(たつくにわけ)改心(かいしん)(めん)じ、261鷹依姫(たかよりひめ)(つみ)(ゆる)して()げよう。262竜国別(たつくにわけ)宣伝使(せんでんし)263昨夜(さくや)(ふる)(やしろ)(まへ)にて(なんぢ)()うた(をんな)(わたし)化身(けしん)であつたぞや』
264 竜国別(たつくにわけ)無言(むごん)(まま)両手(りやうて)(あは)せ、265(うれ)(なみだ)にかき()れる。266鷹依姫(たかよりひめ)(なみだ)(はら)ひ、
267鷹依姫『アヽ、268其方(そなた)(せがれ)竜若(たつわか)であつたか。269ヨウ、270マア改心(かいしん)して(くだ)さつた。271立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)になつたものだ。272もう(これ)(かぎ)(はは)改心(かいしん)するから、273何卒(どうぞ)(わたし)(つみ)をお(わび)して(くだ)さい』
274竜国別母様(ははさま)御座(ござ)いましたか、275(なつ)かしう(ぞん)じます』
276鷹依姫『お(まへ)277(ひたひ)(きず)如何(どう)なさつた。278矢張(やつぱり)(ひと)(にく)まれて怪我(けが)をしたのぢやないかな』
279竜国別『エヽ』
280お初竜国別(たつくにわけ)(この)(ひたひ)(きず)によつて、281身魂(みたま)(つみ)をすつかり取払(とりはら)はれ、282水晶(すゐしやう)身魂(みたま)(うま)(かは)れり。283(その)(とく)()親子(おやこ)対面(たいめん)(ゆる)したのである。284(けつ)して(あらそ)ひなどを(いた)したのではないから、285鷹依姫(たかよりひめ)()安心(あんしん)なさるがよからう。286何時(いつ)まで()うても(はて)しがなければ、287サア(みな)さま、288一緒(いつしよ)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、289感謝(かんしや)祈願(きぐわん)()(ささ)げて、290聖地(せいち)一同(いちどう)うち(そろ)うて(まゐ)りませう』
291との言葉(ことば)一同(いちどう)ハツと(かしら)()げ、292(くち)(すす)ぎ、293()(あら)つて天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、294宣伝歌(せんでんか)玉治別(たまはるわけ)音頭(おんど)()れて高唱(かうしやう)する。
295大正一一・五・二一 旧四・二五 加藤明子録)
296(昭和一〇・六・五 王仁校正)

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