霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 老断(らうだん)〔一七四七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻 篇:第1篇 清風涼雨 よみ(新仮名遣い):せいふうりょうう
章:第2章 老断 よみ(新仮名遣い):ろうだん 通し章番号:1747
口述日:1924(大正13)年01月22日(旧12月17日) 口述場所:伊予 山口氏邸 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1927(昭和2)年10月26日
概要: 舞台:高砂城 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
岩治別が行方をくらました後、松若彦と伊佐彦は、善後策について、謀議をめぐらします。そこへ再び国照別が入ってきて、二人の古い考え方をやっつけます。国照別は、近いうちに城を出て、社会改革のために自ら民間に下るとの謎をかけて、その場を立ち去ります。
また、次に妹の春乃姫がやってきて松若彦、伊佐彦に隠退を勧告し、その古い頭を非難して、去って行きます。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6902
愛善世界社版:47頁 八幡書店版:第12輯 288頁 修補版: 校定版:49頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001 松若彦(まつわかひこ)002伊佐彦(いさひこ)大老(たいらう)003老中株(らうぢうかぶ)数多(あまた)目付(めつけ)指揮(しき)し、004急進派(きふしんは)老中(らうぢう)岩治別(いははるわけ)(とら)へしめむとしたが、005何時(いつ)()にやら(みみ)ざとくも城内(じやうない)()()姿(すがた)をかくして(しま)つたので、006心配(しんぱい)益々(ますます)(ふか)くなり、007煩悶(はんもん)苦悩(くなう)吐息(といき)をもらし、008両人(りやうにん)(ふたた)評定所(ひやうぢやうしよ)卓子(テーブル)(かこ)んで、009コーヒーをすすり(なが)善後策(ぜんごさく)協議(けふぎ)してゐる。
010 松若彦(まつわかひこ)悲痛(ひつう)(こゑ)で、
011伊佐彦(いさひこ)殿(どの)012国家(こくか)(まこと)暴風(ばうふう)(まへ)灯火(ともしび)(ひと)しき危機(きき)(ひん)したでは(ござ)らぬか。013(すこ)(ばかり)進歩(しんぽ)した(あたま)(ぐらゐ)(おも)つて、014()岩治別(いははるわけ)老中(らうぢう)推薦(すいせん)し、015国務(こくむ)枢機(すうき)参加(さんか)せしめむとし、016(かれ)(まね)いて(わが)退職(たいしよく)口実(こうじつ)意見(いけん)(たた)いてみれば、017天地(てんち)()れざる国家(こくか)逆賊(ぎやくぞく)018大野望(だいやばう)包蔵(はうざう)してゐる岩治別(いははるわけ)019如何(いか)にせば(この)(うづ)国家(こくか)泰山(たいざん)(やす)きにおく(こと)出来(でき)るであらうかな』
020(はや)くも両眼(りやうがん)より紅涙(こうるい)滂沱(ばうだ)(したた)らしてゐる。021伊佐彦(いさひこ)(ふか)吐息(といき)をつき(なが)ら、
022如何(いか)にも閣下(かくか)のお言葉(ことば)(とほ)り、023(じつ)深憂(しんいう)()へませぬ。024乍併(しかしながら)最早(もはや)かくなる(うへ)025閣下(かくか)拙者(せつしや)とあらむ(かぎ)りの努力(どりよく)(もつ)国家(こくか)未倒(みたう)(すく)ひ、026国司(こくし)御心(みこころ)(なぐさ)(まつ)り、027国民(こくみん)安堵(あんど)(みち)(ひら)かねばなりませぬ。028乍併(しかしながら)()岩治別(いははるわけ)029敏捷(びんせふ)にも(つみ)(その)()(およ)ばむことを前知(ぜんち)し、030(はと)(ごと)(ねずみ)(ごと)く、0301(やみ)(まぎ)れて姿(すがた)(かく)しました以上(いじやう)は、031(いづ)れどつかの(くに)(はて)にひそみ、032三平社(さんぺいしや)労働者(らうどうしや)033対命舎(たいめいしや)(など)()(あつ)め、034国家(こくか)顛覆(てんぷく)企図(きと)し、035(おの)欲望(よくばう)(たつ)せむとして、036(とき)()捲土(けんど)重来(ぢうらい)せむは(あん)(うち)037(なん)とか予防(よばう)方法(はうはふ)(いな)(かれ)討滅(たうめつ)手段(しゆだん)講究(かうきう)しなくてはなりますまい。038かかる天地(てんち)()れざる逆賊(ぎやくぞく)国内(こくない)放養(はうやう)しおくは、039猛虎(まうこ)()(はな)つよりは危険(きけん)なことで(ござ)りませう。040閣下(かくか)(おい)ては、041(さだ)めて妙案(めうあん)奇策(きさく)のおはしますことと(ぞん)じますが…』
042心配気(しんぱいげ)松若彦(まつわかひこ)(かほ)眼鏡越(めがねごし)(のぞ)きあげ、043(ひか)つた(あたま)(みぎ)()でツルリツルリと二三(にさん)べん()でまはし、044薬鑵(やくわん)(しり)手巾(はんけち)(ぬぐ)うた。
045松若(まつわか)本当(ほんたう)(こま)つた(こと)だ。046最早(もはや)()うなる(うへ)()ぬるい手段(しゆだん)では駄目(だめ)であらう。047(この)城下(じやうか)保安令(ほあんれい)()き、048目付(めつけ)やサグリを増員(ぞうゐん)貧民窟(ひんみんくつ)隅々(すみずみ)(まで)も、049(うたが)はしき(もの)否応(いやおう)()はさず拘引(こういん)し、050大老(たいらう)権威(けんゐ)()せなくては、051到底(たうてい)(この)人心(じんしん)収攬(しうらん)することは(のぞ)まれないであらう。052現代(げんだい)(ごと)人心(じんしん)悪化(あくくわ)頂点(ちやうてん)(たつ)した社会(しやくわい)には、053最早(もはや)054煎薬(せんやく)水薬(みづぐすり)治療(ちりやう)では駄目(だめ)(ござ)る。055外科(げくわ)(てき)大手術(だいしゆじゆつ)(ほどこ)し、056(かれ)()醜類(しうるゐ)根底(こんてい)より剿滅(さうめつ)し、057国難(こくなん)未然(みぜん)(ふせ)ぐより方法(はうはふ)(ござ)るまい。058(さいは)吾々(われわれ)目付(めつけ)(けん)()(にぎ)り、059(かつ)有事(いうじ)()には大名(だいみやう)060(さむらい)使役(しえき)するの特権(とくけん)(いう)()れば、061吾々(われわれ)今日(こんにち)立場(たちば)として、062最早(もはや)懐柔(くわいじう)善政(ぜんせい)駄目(だめ)(ござ)らう』
063伊佐(いさ)成程(なるほど)(おほ)御尤(ごもつと)(なが)ら…(わたし)(かんが)へます、064()衆生(しゆじやう)(よろこ)相談権(さうだんけん)(あた)へ、065徳政案(とくせいあん)とか(その)(ほか)衆生(しゆじやう)人気(にんき)(とう)ずる政策(せいさく)標榜(へうばう)し、066(もつ)(いま)破裂(はれつ)せむとする噴火口(ふんくわこう)(ふせ)067曠日(くわうじつ)瀰久(びきう)068(もつ)(いち)()(のぼ)りつめたる人心(じんしん)()ましめ、069(ほね)()き、070()(しぼ)り、071元気(げんき)消耗(せうまう)せしめて、072(しか)して(のち)絶対(ぜつたい)無限(むげん)権威(けんゐ)(しめ)しなば、073さしもに熾烈(しれつ)なる衆生(しゆじやう)運動(うんどう)も、074投槍(なげやり)思想(しさう)()()悪思想(あくしさう)(くび)(もた)ぐるに(よし)なく自滅(じめつ)するで(ござ)らう。075閣下(かくか)()意見(いけん)如何(いかが)(ござ)いまするか』
076松若(まつわか)拙者(せつしや)とても(みだ)りに国家(こくか)干城(かんじやう)動員(どうゐん)し、077(あるひ)衆生(しゆじやう)目付(めつけ)やサグリを(もつ)鎮圧(ちんあつ)するは(せつ)(せつ)なるものたる(こと)承知(しようち)()(ども)078焦頭(せうとう)爛額(らんがく)(きふ)(せま)つた今日(こんにち)場合(ばあひ)079(これ)より方法(はうはふ)はあるまいと(ぞん)ずるからだ。080(ぢき)相談案(さうだんあん)()に、081民心(みんしん)籠絡(ろうらく)するも一策(いつさく)だらう、082徳政案(とくせいあん)(いち)()緩和剤(くわんわざい)となるだらう。083今日(こんにち)最早(もはや)正直(しやうぢき)では()れない。084某々(ぼうぼう)(ごと)政治家(せいぢか)正直(しやうぢき)()ぎるから、085何時(いつ)内甲(うちかぶと)()すかされ、086失敗(しつぱい)繰返(くりかへ)し、087(つひ)には(たう)分裂(ぶんれつ)(きた)したではないか。088非常(ひじやう)(とき)には非常(ひじやう)手段(しゆだん)必要(ひつえう)だらう。089伊佐彦(いさひこ)殿(どの)090如何(いかが)(ござ)らうかな』
091伊佐(いさ)成程(なるほど)092今日(こんにち)時局(じきよく)(たい)しては清廉(せいれん)潔白(けつぱく)とか正直(しやうぢき)とか()(こと)は、093(がい)あつて(えき)ないことで(ござ)いませう。094(おほ)せの(ごと)権謀(けんぼう)術数(じゆつすう)095(あるひ)妥協(だけふ)政治(せいぢ)(もつ)現代(げんだい)(しよ)するのが(もつと)賢明(けんめい)なる行方(やりかた)(ござ)いませう』
096次第(しだい)(こゑ)(たか)くなり、097両人(りやうにん)(こぶし)(にぎ)り、098(たく)(たた)いて花瓶(くわびん)にさした山吹(やまぶき)花弁(はなびら)一面(いちめん)()らしてゐる。099そこへ軽装(けいさう)をして(また)もや国照別(くにてるわけ)(あら)はれ(きた)り、
100国照(くにてる)『ハヽヽ()両所(りやうしよ)(とも)101国家(こくか)(ため)心慮(しんりよ)(なや)ませられ、102国照別(くにてるわけ)()()恐懼(きようく)()(ところ)()らざる次第(しだい)(ござ)います。103(なん)()つても(うづ)(くに)第一流(だいいちりう)(だい)政治家(せいぢか)巨頭(きよとう)会合(くわいがふ)104(さだ)めて神案(しんあん)妙策(めうさく)がひねり()された(こと)でせう』
105揶揄(からか)(はじ)めた。106二人(ふたり)若君(わかぎみ)茶化(ちやくわ)されて(おこ)(わけ)にもゆかず、107「チエー」と(ひそ)かに舌打(したうち)(なが)ら、108ワザと謹厳(きんげん)態度(たいど)椅子(いす)(はな)れ、109直立(ちよくりつ)して両手(りやうて)(おび)(した)あたりまで垂直(すゐちよく)()げ、110立礼(りつれい)(ほどこ)(なが)ら、
111松若(まつわか)若君(わかぎみ)(さま)112()くこそ()らせられました。113微臣(びしん)()には国政(こくせい)(じやう)問題(もんだい)()き、114秘密(ひみつ)相談(さうだん)(ござ)いますれば、115どうか(しばら)く、116(おそ)(なが)奥殿(おくでん)()(かへ)(くだ)さいませ』
117伊佐(いさ)大老(たいらう)(おほ)せの(ごと)く、118(ただ)(いま)国務(こくむ)(じやう)(けん)()き、119大至急(だいしきふ)相談(さうだん)(えう)する場合(ばあひ)(ござ)いますれば、120(おそ)(なが)らどうぞ少時(しばらく)引取(ひきとり)(ねが)ひまする』
121国照(くにてる)『ハヽヽ岩治別(いははるわけ)投槍(なげやり)老中(らうぢう)消滅(せうめつ)したので、122(さだ)めて、123円満(ゑんまん)熟議(じゆくぎ)()らされるだらう。124ヤ、125国家(こくか)(ため)拙者(せつしや)大慶(だいけい)至極(しごく)(ぞん)ずる。126(しか)(なが)両老(りやうらう)(たづ)ねたい(こと)がある』
127松若(まつわか)『ハイ(おそ)()りました。128何事(なにごと)なり(とも)()(たづ)(くだ)さいませ』
129国照(くにてる)『お(まへ)(いま)廊下(らうか)()いて()れば、130某々(ぼうぼう)正直(しやうぢき)すぎるから、131(たう)内紛(ないふん)(かも)失敗(しつぱい)したと()ふたぢやないか。132正直(しやうぢき)すぎるとは、133ソラ一体(いつたい)(なん)(こと)か。134(えう)するに正直(しやうぢき)もよいが、135チツとは詐欺(さぎ)もやれ、136権謀(けんぼう)術数(じゆつすう)(もち)ひなくては今日(こんにち)政局(せいきよく)(たも)てないといふのであらう。137(ぼう)(ごと)正直(しやうぢき)()ぎる(ため)失敗(しつぱい)したのならば、138本望(ほんまう)ではないか。139上下(じやうか)一般(いつぱん)人間(にんげん)(いつは)つてまで、140政権(せいけん)掌握(しやうあく)する必要(ひつえう)がどこにあるか。141正直(しやうぢき)(すぎ)るといふ(その)意味(いみ)()かして(もら)ひたいものだ』
142とつめかけられ、143両人(りやうにん)返答(へんたふ)()まり、144(かほ)(あか)らめて、145『ハイ』と()つたきり俯向(うつむ)いてゐる。
146国照(くにてる)『ハヽヽ、147ヨモヤ返答(へんたふ)出来(でき)ようまい。148正直(しやうぢき)()ぎる政治家(せいぢか)(もち)ひられない()(なか)だから、149(まへ)(たち)羽振(はぶり)()くのだらう。150そしてモ(ひと)()ひたい(こと)がある……国家(こくか)枢要(すうえう)事務(じむ)協議(けふぎ)してゐる最中(さいちう)だから、151(おく)引取(ひきと)つてくれといつたでないか。152なぜ政治(せいぢ)枢機(すうき)(おれ)参加(さんか)することが出来(でき)ないのだ。153若輩者(じやくはいしや)()くびつての(ゆゑ)か、154(ただ)しは(おれ)信用(しんよう)しないのか、155言葉(ことば)(うへ)(おい)若君(わかぎみ)々々(わかぎみ)尊敬(そんけい)(なが)ら、156(おまへ)(たち)心中(しんちう)(おい)ては、157(すで)(おれ)(みと)めてゐないのか、158サア(その)返答(へんたふ)()かして(もら)はう』
159()()をさされて二人(ふたり)はグウの()()ず、160(うつ)むいて(ふる)うてゐる。
161国照(くにてる)『アツハヽヽヽ、162オイ、163両人(りやうにん)164薬鑵(やくわん)()つてゐるぢやないか、165みつともないぞ。166一層(いつそ)(こと)167両人(りやうにん)(とも)国家(こくか)(ため)老職(らうしよく)廃業(はいげふ)して、168市井(しせい)(ちまた)(くだ)り、169饂飩屋(うどんや)でもやつたらどうだ。170それの(はう)余程(よほど)国家(こくか)利益(りえき)になるかも()れないぞ。171岩治別(いははるわけ)のやうにトツトと(しり)をからげて退却(たいきやく)した(はう)が、172(なに)(ほど)衆生(しゆじやう)気受(きうけ)がよいか(わか)つたものぢやない。173(くさ)(いわし)火箸(ひばし)にひつついたやうに、174いつ(まで)もコビリついてゐると、175(たれ)見返(みかへ)(もの)がなくなつて(しま)ふぞ。176(いち)にも権力(けんりよく)177()にも暴力(ばうりよく)唯一(ゆゐいつ)武器(ぶき)として国政(こくせい)維持(ゐぢ)するやうな(こと)で、178()うして王道(わうだう)仁政(じんせい)()かれると(おも)ふか。179(まへ)(たち)()政治(せいぢ)所謂(いはゆる)権道(けんだう)だ、180覇道(はだう)だ、181(つよ)きを(たす)け、182(よわ)きを圧倒(あつたう)せむとする悪魔(あくま)政治(せいぢ)だ。183(ぼく)はお(まへ)(たち)陰謀(いんぼう)前知(ぜんち)184岩治別(いははるわけ)内報(ないはう)して裏門(うらもん)より遁走(とんそう)させ、185(まへ)(たち)計略(けいりやく)(うら)をかかしてやつたのだ。186それが(わか)らぬやうな(こと)で、187どうして一国(いつこく)大老(たいらう)がつとまるか。188沐猴(もくこう)(くわん)するといふは所謂(いはゆる)デモ大老(たいらう)状態(じやうたい)遺憾(ゐかん)なく()(あら)はした言葉(ことば)であらうよ、189アツハヽヽ。190テモ(さて)もつまらな(さう)な……心配(しんぱい)(さう)面付(つらつき)だのう。191到底(たうてい)(その)(かほ)()(ねん)(さん)(ねん)では復興(ふくこう)せうまいよ。192自転倒(おのころ)(じま)震災(しんさい)(やう)復興(ふくこう)するのは容易(ようい)だあるまい、193アツハヽヽ』
194 松若彦(まつわかひこ)(かたち)(ただ)し、
195『コレハ コレハ若君(わかぎみ)(さま)御諚(ごぢやう)とはいひ、196(あま)りに理不尽(りふじん)なお言葉(ことば)197(この)老臣(らうしん)()るに牛馬(ぎうば)(もつ)(ぐう)せらるるは()しからぬ(こと)では(ござ)らぬか。198拙者(せつしや)正鹿(まさか)山津見(やまづみの)(かみ)(さま)御代(みよ)より祖先(そせん)代々(だいだい)国政(こくせい)(あづか)り、199(おん)母上(ははうへ)末子姫(すゑこひめ)(さま)(この)国土(こくど)奉還(ほうくわん)(いた)し、200(おん)父上(ちちうへ)(むか)へて国司(こくし)(あふ)(つか)へまつり(きた)りし(もの)201(ほか)臣下(しんか)とは(すこ)しく(ちが)ひますぞ。202如何(いか)(うづ)国司(こくし)若君(わかぎみ)なればとて、203拙者(せつしや)をさしおき、204自由(じいう)施政(しせい)方針(はうしん)をおきめ(あそ)ばす(こと)事実(じじつ)(おい)出来(でき)ないといふ不文律(ふぶんりつ)()つて()りますぞ』
205祖先(そせん)引張(ひつぱり)()して気色(きしよく)ばみ(なが)一矢(いつし)(むく)うた。
206 国照別(くにてるわけ)平然(へいぜん)として、
207『ハツハヽヽヽ、208(むかし)歴史(れきし)引張(ひつぱり)()して、209何某(なにがし)国司(こくし)累代(るゐだい)後胤(こういん)などといふ(やう)なバラモン(てき)言草(いひぐさ)210数十(すうじふ)(ねん)過去(くわこ)時代(じだい)(もち)ゐられた言葉(ことば)だ、211さやうな(ふる)脳味噌(なうみそ)だから国家(こくか)(をさ)まらないのだ。212今日(こんにち)(うづ)(くに)人心(じんしん)(すさ)んでゐるのは、213(えう)するに国司(こくし)(つみ)でもない。214(この)(くに)(かみ)(さま)のお(まも)りある以上(いじやう)215(けつ)して(ほろ)ぶるものではない。216(しか)(なが)(おまへ)(ごと)没常識漢(わからずや)(うへ)にある(あひだ)217()はいつ(まで)平安(へいあん)なることは(のぞ)まれない。218(うづ)(くに)今日(こんにち)状態(じやうたい)(みちび)いたのは(おまへ)()大責任(だいせきにん)であるぞ。219()両人(りやうにん)(とも)(むね)()()て、220(みづか)(かへり)み、221(みづか)()い、222(その)無能(むのう)()ぢ、223無智(むち)(さと)り、224時代(じだい)()()まし、225天命(てんめい)(おそ)れ、226(もつ)最善(さいぜん)処決(しよけつ)をしたが()からう。227(おれ)何時(いつ)(まで)若君(わかぎみ)(さま)では()られないのだから………』
228松若(まつわか)『そらさうで(ござ)いませう(とも)229国司(こくし)(さま)()老齢(らうれい)230何時(いつ)()病気(びやうき)(がち)231何時(いつ)()上天(しやうてん)(あそ)ばすかも()れませぬ。232さうなれば若君(あなた)一国(いつこく)柱石(ちうせき)233いつ(まで)(ぢやう)(ぼん)でも()られますまい。234それだから(すこ)しは(ぢい)()ふこともお(みみ)()めて(いただ)かねばなりませぬ』
235(かほ)()ずまひを(なほ)し、236仔細(しさい)らしく()()てる。237(しか)(いま)国照別(くにてるわけ)が………何時(いつ)(まで)若君(わかぎみ)(さま)ではをられない……と()つたのは、238(ちか)(うち)清家(せいか)生活(せいくわつ)から(はな)れ、239民間(みんかん)(くだ)つて徹底(てつてい)(てき)社会(しやくわい)改造(かいざう)せむと(かんが)へてゐた(こと)をフツと()らしたのである。240(しか)(なが)両人(りやうにん)若君(わかぎみ)にそんな(かんが)へがあるとは(かみ)ならぬ()(ゆめ)にも()らなかつたので、241(この)()無難(ぶなん)()んだのである。
242 国照別(くにてるわけ)冷笑(れいせう)(うか)(なが)ら、243足音(あしおと)(たか)(わが)居間(ゐま)(かへ)つてゆく。244(あと)二人(ふたり)(くび)(あつ)め、245(こゑ)(ひく)うして、
246松若(まつわか)伊佐彦(いさひこ)殿(どの)247若君(わかぎみ)(さま)があゝいふ()精神(せいしん)では248吾々(われわれ)到底(たうてい)(しよく)(とど)まることが出来(でき)ぬでは(ござ)らぬか。249一層(いつそ)のこと(いさぎよ)辞職(じしよく)(いた)し、250閑地(かんち)については如何(どう)(ござ)らうかな』
251伊佐(いさ)貴方(あなた)のお言葉(ことば)とも(おぼ)えませぬ。252貴方(あなた)国司(こくし)補佐(ほさ)すべき()家柄(いへがら)(うま)れ、253吾々(われわれ)(ごと)氏素性(うぢすじやう)(いや)しき(もの)同日(どうじつ)(かんが)へることは出来(でき)ますまい。254仮令(たとへ)()退隠(たいいん)(あそ)ばしても、255内局(ないきよく)組織(そしき)(とき)には国司(こくし)からもキツとお(たづ)ねもあるだらうし、256(また)腰抜(こしぬけ)政治家(せいぢか)(ども)がお百度(ひやくど)(まゐ)りをしてお指図(さしづ)(あふ)ぎに()くでせうから、257到底(たうてい)貴方(あなた)(うづ)(くに)政治(せいぢ)圏外(けんぐわい)(だつ)することは出来(でき)ますまい。258それが貴方(あなた)(うづ)(くに)(たい)する忠誠(ちうせい)(ござ)いますからな』
259松若(まつわか)『なる(ほど)260それも(おも)はぬではないが、261(あま)りのことで(じつ)(こころ)(まよ)ふのだ。262あゝ人生(じんせい)政治家(せいぢか)となる(なか)れ……とはよく()つたものだなア』
263(あを)吐息(といき)をつく。
264伊佐(いさ)()苦心(くしん)()(さつ)(まを)します。265(しか)(なが)国司(こくし)(さま)(まへ)で、266貴方(あなた)()りにも辞意(じい)をお()らしになつてはいけませぬぞ。267()老齢(らうれい)国司(こくし)()心配(しんぱい)をかけては、268臣子(しんし)たる(もの)(やく)がすみませぬからなア。269それ(だけ)伊佐彦(いさひこ)(いのち)()へても()注意(ちうい)(まをし)()げておきます』
270松若(まつわか)『いかにも貴殿(きでん)()はるる(とほ)りだ。271(しか)(なが)(すす)みもならず退(しりぞ)きもならず、272(じつ)(こま)つた世態(せたい)になつたものだなア。273アヽ()うしたら()からうかなア』
274 (つぎ)()から(わか)(こゑ)
275展開(てんかい)(みち)(ただ)辞職(じしよく)一途(いつと)あるのみだ』
276(さけ)(こゑ)(きこ)えて()る。277二人(ふたり)はハツと(おどろ)(みみ)(そばだ)てて(かんが)()んでゐる。278少時(しばらく)すると、279(へだて)(ふすま)無雑作(むざふさ)(おし)(ひら)き、280浴衣(ゆかた)(まま)(あら)はれ()たのは春乃姫(はるのひめ)であつた。
281春乃(はるの)二人(ふたり)老爺(おぢい)さま、282(あに)さまのあれ(だけ)()注意(ちうい)(いま)(わか)らないのかい。283本当(ほんたう)(ふる)(あたま)だね』
284 二人(ふたり)春乃姫(はるのひめ)(かほ)()るより、285(にはか)威儀(ゐぎ)(ただ)し、286(かしら)()(なが)ら、
287松若(まつわか)(おそ)()ります。288何分(なにぶん)(にん)(おも)くして(とく)()らず、289(じつ)国司(こくし)(さま)()心慮(しんりよ)(なや)まし(まつ)り、290(まを)(わけ)(ござ)いませぬ』
291春乃(はるの)『ホヽヽヽ(うそ)(ばか)(ぢい)(たち)()ふぢやないか。292(にん)(おも)くして(とく)()らぬといふ(こと)自覚(じかく)がついてゐるのなら、293なぜ(はや)挂冠(けいくわん)をせないのか。294(いま)(わらは)()つた(こと)表面(へうめん)(かざ)辞令(じれい)にすぎないのだらう。295(にん)(おも)し、296(とく)あり()あれ(ども)時代(じだい)進展(しんてん)(じやう)(この)(うへ)(ほどこ)すべき手段(しゆだん)なし、297(われ)にして(かく)(ごと)しとすれば、298(その)()末輩(まつぱい)(ども)幾度(いくど)()でて(その)(にん)(あた)るとも、299到底(たうてい)(われ)以上(いじやう)政治(せいぢ)はなし(あた)はざるべし。300(たちま)国家(こくか)滅亡(めつぼう)(ふち)投入(なげい)るるならむ。301乃公(だいこう)()でずむば、302(この)国家(こくか)蒼生(さうせい)如何(いか)にせむ(てい)自負心(じふしん)にかられてゐるのだらう。303それに(ちが)ひはあるまいがな、304ホヽヽヽ。305(わか)(をんな)分際(ぶんざい)として経験(けいけん)(ふか)きお(ぢい)さま(たち)失礼(しつれい)なことを(まを)しました。306神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)し、307(すみやか)(ゆる)して頂戴(ちやうだい)ね。308(おほ)きに失礼(しつれい)さま、309ホヽヽヽヽ』
310(わら)(なが)らスタスタと廊下(らうか)(つた)うて奥殿(おくでん)(すす)()る。311二人(ふたり)少時(しばらく)熟議(じゆくぎ)(こら)した(うへ)312相携(あひたづさ)へて国司(こくし)居間(ゐま)に、313何事(なにごと)進言(しんげん)せむと(すす)()く。314(にはか)(きこ)ゆる警鐘(けいしよう)乱打(らんだ)(こゑ)315フト廊下(らうか)高欄(かうらん)から城下(じやうか)瞰下(みおろ)せば、316遠方(ゑんぱう)(はう)黒煙(こくえん)(てん)(こが)し、317()なり(おほ)きい火災(くわさい)(おこ)つてゐる。
318大正一三・一・二二 旧一二・一二・一七 伊予 於山口氏邸 松村真澄録)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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