霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 異志仏(いしぼとけ)〔一八〇〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第2篇 迷想痴色 よみ:めいそうちしき
章:第11章 第71巻 よみ:いしぼとけ 通し章番号:1800
口述日:1926(大正15)年01月31日(旧12月18日) 口述場所:月光閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玄真坊は逃げるうちにコブライ、コオロとはぐれてしまう。そこへ、二人の捕り手に追い詰められ、道ばたの辻堂に逃げ込み、石仏に化けてやり過ごそうとする。
二人の捕り手は玄真坊を追って辻堂にやってくるが、玄真坊が化けた石仏が生きているのに肝をつぶし、腰を抜かしてしまう。
玄真坊は逆に捕り手の食料を奪い、打ち倒してゆうゆうと逃げ去る。
その後、泥棒をしながらタラハン市の宿屋に逗留していたが、偶然、宿帳にコブライ・コオロの名前を見つけ、二人の部下と合流することができた。
3人は、かつて自分たちの頭領であったシャカンナが、今は国家の左守として権勢を振るっているのをやっかみ、左守の屋敷に泥棒に入ることに決めた。
深夜、闇にまぎれて左守家に向かっていた矢先、火事が起こって市中騒然となる。が、3人は逆に火事場泥棒を決め込んで、泥棒を決行する。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7111
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 552頁 修補版: 校定版:149頁 普及版:70頁 初版: ページ備考:
001 玄真坊(げんしんばう)はコブライ、002コオロの両人(りやうにん)(おも)(おも)ひに追手(おつて)(おどろ)いて(わか)れて(しま)ひ、003当途(あてど)もなしに西(にし)西(にし)へと月夜(つきよ)(さいは)()()したが、004(ほとん)空腹(くうふく)(ため)身体(しんたい)(よわ)()て、005(あし)(あゆ)みも捗々(はかばか)しからず、006どつかの民家(みんか)(たづ)ねてパンにありつかむものと、007(けむり)何処(どこ)かに()えぬかと、008一生懸命(いつしやうけんめい)(そら)()き、009覚束(おぼつか)なき(あし)(あゆ)んでゐると、010(かたはら)森林(しんりん)(なか)から「オイ、011オーイ」と(ひと)()(こゑ)(きこ)えて()た。012玄真坊(げんしんばう)は「ハテ(いぶ)かしや、013かやうな(ところ)自分(じぶん)(よび)とめる(もの)はない(はず)だ。014(さつ)する(ところ)昨夜(さくや)捕手(とりて)(やつ)015こんな(ところ)(まで)()しやばつて、016吾々(われわれ)先廻(さきまは)りをしてゐるに(ちが)ひない、017コリヤうつかりして()れぬ、018三十六計(さんじふろくけい)(おく)()()ぐるに()くはなし」と019(つか)れたコンパスに(より)をかけ、020(また)もや草花(くさばな)(しげ)綺麗(きれい)原野(げんや)一生懸命(いつしやうけんめい)()()す。021(あと)から二人(ふたり)追手(おつて)十手(じつて)打振(うちふ)(なが)ら、022「オイ、023オーイ」と(こゑ)(かぎ)りに()つかけ(きた)る。024トンと()(あた)つた前方(ぜんぱう)峻山(しゆんざん)025最早(もはや)自分(じぶん)到底(たうてい)(にげ)おうす(こと)出来(でき)まいと、026路傍(ろばう)辻堂(つじだう)見付(みつ)けて、027少時(しばし)姿(すがた)(かく)さむと這入(はい)りみれば、028等身(とうしん)石仏(いしぼとけ)()つてゐる。029矢庭(やには)玄真(げんしん)満身(まんしん)(ちから)をこめて、030(くび)のあたりをグツと()すと、031石仏(いしぼとけ)()もなく(たふ)れて(しま)つた。032玄真(げんしん)石仏(いしぼとけ)(たふ)れた(あと)台石(だいいし)にスークと()033不格好(ぶかつかう)羅漢面(らかんづら)をさらし(なが)(ひだり)()をふりあげ、034(みぎ)()(ひざ)のあたり(まで)さげ035石仏(いしぼとけ)()けて追手(おつて)()(のが)れむと、0351早速(さつそく)頓智(とんち)036そこへ(やうや)(かけ)つけやつて()二人(ふたり)追手(おつて)辻堂(つじだう)見付(みつ)けて、
037(かふ)『オイ、038あの泥棒(どろばう)はどつか、039ここらの(くさ)(なか)へでも沈澱(ちんでん)しやがつたとみえて、040(かげ)(かたち)()くなつたぢやないか、041こんな(もの)(さが)しに()つたつて(くも)(つか)()うなものだ、042彼奴(あいつ)魔法使(まはふづかひ)かも()れぬぞ。043()(かく)(この)辻堂(つじだう)があるのを(さいはひ)044コンパスに休養(きうやう)(めい)じたらどうだい。045(はら)相当(さうたう)()つて()たなり、046(いのち)(がけ)活動(はたらき)をして(つか)まへた(ところ)で、047(わづか)()くされ(がね)褒美(ほうび)(もら)(だけ)だ。048一遍(いつぺん)散財(さんざい)したら(しま)ひだからのう』
049(おつ)『そらさうだ、050(おれ)だつてお(まへ)だつて、051(いま)()うして堅気(かたぎ)になり、052追手(おつて)(やく)(つと)めてゐるものの、053(もと)(あら)へば立派(りつぱ)人間(にんげん)ぢやないからの、054グヅグヅしてをれば(はな)(した)干上(ひあが)るなり、055せう(こと)なしの追手(おつて)(やく)だ。056マア(この)(はる)()(なが)いのに泥棒(どろばう)一人(ひとり)(ぐらゐ)(つか)まへたつて、057(あま)()(ため)にもなるまいし、058(からだ)肝腎(かんじん)だ。059ア、060(この)辻堂(つじだう)(さいはひ)一服(いつぷく)せうぢやないか』
061(かふ)此処(ここ)には(めう)石仏(いしぼとけ)()つてゐるぞ、062(この)石工(いしく)(たれ)がやつたのか()らぬが、063(まる)生仏(いきぼとけ)()うだ、064(ひと)煙草(たばこ)でも()もうぢやないか』
065()(なが)ら、066ケチケチと火打(ひうち)()()し、067煙管(きせる)(さら)()うな雁首(がんくび)煙草(たばこ)一杯(いつぱい)()つて()をつけ、068両人(りやうにん)はスパリスパリと()(はじ)めた。069一服(いつぷく)()ふては石仏(いしぼとけ)(あし)(かふ)へポンポンと()(はら)ひ、070(また)煙草(たばこ)をつぎかへては()ひつける。071玄真坊(げんしんばう)(あつ)くてたまらず、072(くろ)(かほ)真中(まんなか)(はう)から、073(しろ)()(むき)()し、074(なみだ)さへたらし()した。075二人(ふたり)はフツと(うへ)むく途端(とたん)に、076石仏(いしぼとけ)()がグリグリと(まは)り、077(なみだ)さへ(おと)してゐるので、
078『ヤア、079此奴(こいつ)化物(ばけもの)だ』
080(おどろ)きの(あま)り、081アツと()つて(こし)をぬかし、
082『アヽヽヽ、083羅漢(らかん)さま、084どうぞお(ゆる)(くだ)さいませ。085エライ失礼(しつれい)(こと)(いた)しました。086どうにもかうにも(こし)()ちませぬワ。087どうぞ一口(ひとくち)(ゆる)すと()つて(くだ)さいませ。088さうすると(こひ)しい女房(にようばう)(うち)(かへ)(こと)出来(でき)ます。089(その)(かは)追手(おつて)(やく)孫子(まごこ)(だい)まで(いた)しませぬ』
090両手(りやうて)(あは)せて一生懸命(いつしやうけんめい)(たの)()む。091玄真(げんしん)(こころ)(うち)で「ハヽア、092バカな(やつ)だな、093此奴(こいつ)094本者(ほんもの)だと(おも)つてゐるらしい、095(こし)()けたとあらばモウ大丈夫(だいぢやうぶ)だ、096ソロソロ還元(くわんげん)してやらうかな………」と(だい)(うへ)からポイと()びおり、
097(げん)『コーリヤ、098木端役人(こつぱやくにん)(ども)099神変不思議(しんぺんふしぎ)(おれ)魔力(まりよく)には(おどろ)いただろ、100(おれ)泥棒(どろばう)張本(ちやうほん)玄真坊(げんしんばう)(さま)だぞ。101ここな石仏(いしぼとけ)(この)(とほ)り、102(おれ)小指(こゆび)一本(いつぽん)(おし)(たふ)し、103(その)(あと)(おれ)()てつて()つたのだ。104(こし)()けたとありや、105()うすることも出来(でき)まい。106(きさま)少々(せうせう)(ぐらゐ)(かね)()つてをらう。107有金(ありがね)(のこ)らずこちらへよこせ……ナニ、108ないと(まを)すか、109(こし)にブラ()げてるのは、110そら(なん)だ』
111(かふ)『ヤ、112コリヤ弁当(べんたう)(のこ)りで御座(ござ)いますよ』
113(げん)『ヨーシ、114(わか)つてる、115(おれ)(はら)()つた(ところ)だ。116仮令(たとへ)(きさま)()ひさしにしろ、117(いのち)にはかへられぬ、118此方(こちら)へよこせ』
119()(なが)ら、120無理(むり)無体(むたい)にひきむしり、121一人(ひとり)弁当(べんたう)(たひら)げて(しま)ひ、122(また)(つぎ)(やつ)(こし)弁当(べんたう)をむしつて一粒(ひとつぶ)(のこ)らぬ(ところ)(まで)123いぢ(ぎたな)()(をは)り、124弁当箱(べんたうばこ)小口(こぐち)から(した)(かは)(あら)つて(しま)つた。
125(かふ)『モシ玄真(げんしん)さま、126(まへ)さまは大変(たいへん)神力(しんりき)のある(かた)だな、127到底(たうてい)吾々(われわれ)()には()ひませぬワ。128(まへ)さまの(つら)()てさへ(この)(とほ)(こし)()けて(しま)ふんだもの』
129(げん)『ワツハヽヽ、130(この)(はう)御神力(ごしんりき)には随分(ずいぶん)(おどろ)いただろ、131(きさま)一体(いつたい)(なん)といふ(やつ)だ』
132(かふ)(わたし)なんか()のあるやうな()()いた(もの)ぢや御座(ござ)いませぬ。133(しか)(なが)134(おや)()けてくれたか(ひと)()けてくれたか()りませぬが、135(わたし)はトンビと(まを)します。136一人(ひとり)(をとこ)はカラスと(まを)します』
137(げん)成程(なるほど)138トンビにカラス、139此奴(こいつ)面白(おもしろ)い、140そんなら(おれ)二人(ふたり)家来(けらい)(みち)ではぐれて(しま)つたのだから、141前等(まへら)二人(ふたり)家来(けらい)にしてやらう。142どうだ143改心(かいしん)(いた)して追手(おつて)(やく)はやめるか』
144ト『ヘーヘ、145やめます(とも)146(なに)(ほど)147追手(おつて)よりもお(まへ)さまの乾児(こぶん)になつてる(はう)()()いてるか()れませぬワ。148のうカラス、149(きさま)もさうだらう』
150カ『お(まへ)意見(いけん)(どほり)だ。151モシ、152玄真(げんしん)さまとやら、153どうか(よろ)しうお(ねが)(まをし)ます』
154(げん)『ヨーシ、155(わか)つた。156そんなら(これ)から(おれ)のいふ(とほり)するのだよ。157(なん)でも命令(めいれい)服従(ふくじゆう)するのだぞ。158サア、1581()かう』
159ト『モーシモシ玄真(げんしん)さま、160()かうと仰有(おつしや)つても(こし)()ちませぬがな。161どうか貴方(あなた)神力(しんりき)でお(なほ)(くだ)さる(わけ)には(まゐ)りませぬか』
162(げん)『エー、163仕方(しかた)がねい、164(なほ)してやろ。165(その)(かは)(この)(こし)(なほ)つたら最後(さいご)166(おれ)神力(しんりき)(みと)めるだらうな』
167ト『ヘーヘ、168(みと)める(どころ)(だん)ぢやありませぬ、169(すで)(すで)(こし)()かした(とき)から、170(まへ)さまの神力(しんりき)(みと)めて御家来(ごけらい)にして(くだ)さいと(ねが)つてゐるのですもの』
171(げん)『ウーン成程(なるほど)172さうに間違(まちがひ)なからう』
173()(なが)ら、174両人(りやうにん)(こし)(あた)りをメツタ矢鱈(やたら)握拳(にぎりこぶし)(かた)めて(なぐ)りつけた。175二人(ふたり)(あま)りの(いた)さに(おも)はず()らず(たち)(あが)り、176一間(いつけん)(ばか)(にげ)()し、177(また)もやパタリと(たふ)れて(しま)つた。
178(げん)『ハツハヽヽ腰抜野郎(こしぬけやらう)だな、179(この)(やう)(もの)何万人(なんまんにん)()れてゐたつて、180手足纏(てあしまと)ひになる(ばか)りだ。181(また)(こし)(なほ)つたらついて()い、182キツト家来(けらい)にしてやらう。183(おれ)天下経綸(てんかけいりん)事業(じげふ)(いそが)しいから御免(ごめん)(かうむ)らう、184ても(さて)(あは)れな代物(しろもの)だなア』
185(あご)()()つしやくり、186阪路(さかみち)元気(げんき)よく鼻唄(はなうた)(うた)(なが)(のぼ)()く。
187 (これ)より玄真坊(げんしんばう)彼方(あなた)此方(こなた)に、188(ひる)山野(さんや)()(よる)泥棒(どろばう)(かせ)いで、189百日(ひやくにち)(あま)りを(すご)した。190(また)もやダリヤ(ひめ)(こと)(おも)()し、191()ひたくて(たま)らず、192(なん)とかして(うま)彼女(かれ)()()れたいものだと、193少々(せうせう)(ふところ)(ぬく)くなつたので、194タラハン城市(じやうし)変装(へんさう)して(しの)()み、195タラハン市中(しちう)でも一等旅館(いつとうりよくわん)(きこ)えたる丸太(まるた)ホテルに(とま)()んで(しま)つた。196玄真坊(げんしんばう)(おく)二間造(ふたまづく)りの別室(べつしつ)(きよ)(かま)へ、197種々(いろいろ)とタラハン(じやう)転覆(てんぷく)(ゆめ)辿(たど)つてゐる。198そこへ下女(げぢよ)(ちや)()んで(いで)(きた)り、
199『モシお客様(きやくさま)200主人(しゆじん)から、201ネームを(うけたま)はつて()いと(おほ)せられましたが、202どうか(この)宿帳(やどちやう)にお(しる)(くだ)さいませ』
203(げん)『あゝよしよし』
204()(なが)ら、205スラスラと宿帳(やどちやう)(しる)した。206宿帳(やどちやう)(おもて)にはバリヲンと()(しる)し、
207(げん)(おれ)はな、208ハルナの(みやこ)から遙々(はるばる)大黒主(おほくろぬし)さまの命令(めいれい)()つて、209諸国視察(しよこくしさつ)(ため)行脚(あんぎや)()()てゐる(もの)だが、210最早(もはや)七千余国(しちせんよこく)遍歴済(へんれきずみ)となり、211当家(たうけ)(おい)てゆるゆると二三ケ月(にさんかげつ)(ばか)休息(きうそく)さして(もら)(つも)りだから、212主人(しゆじん)(よろ)しく()ふてくれ。213そして宿賃(やどちん)には(けつ)して心配(しんぱい)かけないから、214朝夕(あさゆふ)膳部(ぜんぶ)にはな、215()をつけるやうに(たの)んでおく』
216といひ(なが)ら、217宿帳(やどちやう)二三枚(にさんまい)繰返(くりかへ)してみると、218二三日前(にさんにちまへ)から、219コブライ、220コオロが(とま)つてゐると()えて、221自筆(じひつ)姓名(せいめい)(しる)してある。222玄真坊(げんしんばう)(なに)()はぬ(かほ)して下女(げぢよ)(むか)ひ、
223『ここにコブライとか、224コオロとかいふ(きやく)(とま)つて()ないかのう』
225下女(げぢよ)『ハイ、226(とま)つて()られましたが、227昨日(きのふ)()(くれ)に、228一寸(ちよつと)そこ(まで)見物(けんぶつ)()ると仰有(おつしや)つたきり、229まだお(かへ)りになりませぬので、230心配(しんぱい)をしてゐる(ところ)御座(ござ)います』
231(げん)『あゝさうか、232フーン』
233()(なに)貴方(あなた)234(この)(かた)御関係(ごくわんけい)御座(ござ)いますのですか』
235(げん)『ナーニ(べつ)関係(くわんけい)(なに)もない、236()()らずの(ひと)だが(あま)面白(おもしろ)()だから、237一寸(ちよつと)(たづ)ねてみたのだ。238ヨ、239(これ)(おれ)心付(こころづけ)だ』
240()(なが)(ふところ)から鳥目(てうもく)取出(とりだ)し、241下女(げぢよ)()(あた)へた。242下女(げぢよ)(よろこ)んで()(いただ)き、243母家(おもや)(はう)(かへ)つて()く。244(あと)玄真坊(げんしんばう)(うで)()吐息(といき)をつき(なが)ら、
245『アーア、246世間(せけん)()ふものは(ひろ)いやうでも(せま)いな。247三月以前(みつきいぜん)追手(おつて)にかかり、248彼等(かれら)両人(りやうにん)にはぐれて(しま)ひ、249何処(どこ)()つたかと(おも)ふてをれば、250(しか)(おな)宿(やど)(とま)つてゐたとは(じつ)不思議(ふしぎ)だ。251ア、252(さつ)する(ところ)253彼等(かれら)両人(りやうにん)(この)(おれ)がタラハン()大望(たいまう)遂行(すゐかう)(ため)()てゐるに(ちが)ひないと目星(めぼし)をつけ、254彼方(あなた)此方(こなた)行方(ゆくへ)(さが)してゐるのだらう。255(いづ)今日(けふ)明日(あす)(うち)には(かへ)つて()るだらうから、256様子(やうす)(わか)らうし、257マア(ゆつく)休養(きうやう)せうかい』
258(ひとり)ごちつつ(ひぢ)(まくら)にゴロンと(よこ)たはり、259グウグウと(らい)()うな(いびき)をかいて()(しま)つた。
260 少時(しばらく)すると(また)もや下女(げぢよ)がやつて()て、
261『モシモシお(きやく)さま、262エー、263貴方(あなた)のお(はなし)になつて()つた面白(おもしろ)()(かた)二人(ふたり)(かへ)つてみえました。264御用(ごよう)がありますなら()ふて()げて(くだ)さいませ』
265 玄真坊(げんしんばう)()をこすり(なが)ら、
266『ナアニ、267コブライ、268コオロの両人(りやうにん)(かへ)つたといふのか』
269下女(げぢよ)左様(さやう)御座(ござ)います。270二人(ふたり)のお(きやく)さまに、271貴方(あなた)御面相(ごめんさう)から、272背恰好(せかつかう)をお(はな)(まを)しましたら、273二人(ふたり)さまは、274どうか(その)(かた)一目(ひとめ)()ひたいものだと仰有(おつしや)るので275(うかが)ひに(まゐ)りました』
276(げん)(べつ)にそんな野郎(やらう)()必要(ひつえう)もなし、277()(こと)もない(をとこ)だが、278所望(しよまう)とあらば、279(おれ)一人(ひとり)だから、280退屈(たいくつ)ざましに()つてやらう、281ソツと此方(こちら)(とほ)してみてくれ、282首実検(くびじつけん)(うへ)283言葉(ことば)をかけてやるかやらぬかが(きま)るのだ』
284下女(げぢよ)左様(さやう)なら さう(まを)(あげ)ます』
285()(なが)(わか)れて()く。286少時(しばらく)すると二人(ふたり)はドヤドヤと玄真(げんしん)居間(ゐま)にやつて()た。
287コブ『イヤー、288親方(おやかた)289どうも(ひさし)()りだつたな、290一体(いつたい)何処(どこ)をうろついとつたのだい、291どれ(だけ)(さが)したか()れないワ、292のうコオロ』
293 玄真(げんしん)右手(めて)()げて空中(くうちう)にふり(なが)ら、
294『オイ(ちひ)さい(こゑ)()はないか、295(ちか)うよれ(ちか)うよれ』
296コブ『ハイ』
297()(なが)耳許(みみもと)両人(りやうにん)(とも)より()ふた。
298玄真(げんしん)『どうだ、299タラハン(じやう)様子(やうす)は……偵察(ていさつ)したか』
300コブ『ハイ、301大変(たいへん)なこつて御座(ござ)いますよ。302タニグク(やま)岩窟(がんくつ)吾々(われわれ)親分(おやぶん)になつて()つた、303あのシヤカンナさまが左守(さもり)(つかさ)となり、304(むすめ)のスバール(ひめ)王妃殿下(わうひでんか)成上(なりあが)り、305()(とり)(おと)()うな(いきほひ)で、306城下(じやうか)人気(にんき)()つたら、3061素晴(すば)らしいものだ。307今日(けふ)のシヤカンナは泥棒(どろばう)親分(おやぶん)でなく、308最早(もはや)一国(いつこく)主権者(しゆけんしや)同様(どうやう)だ。309玄真僧都(げんしんそうづ)目的(もくてき)は、310マアマアマアここ百年(ひやくねん)二百年(にひやくねん)到底(たうてい)()ちますまいよ』
311(げん)(なん)と、312(ひと)出世(しゆつせ)といふものは(わか)らぬものだの。313ウン、314さうか、315あの(おやぢ)316(また)(もと)左守(さもり)還元(くわんげん)しやがつたな。317ヨーシ、318それを()くと、319(おれ)もむかついて(たま)らぬ。320(なん)だシヤカンナの(おやぢ)一国(いつこく)棟梁(とうりやう)とは321チヤンチヤラ可笑(をか)しいワ。322(しか)両人(りやうにん)323大分(だいぶん)(かせ)いだらうな』
324コブ『(かせ)いでみましたが、325ヤツとの(こと)両人(りやうにん)宿賃(やどちん)(はら)へる(くらゐ)なものです。326(しか)(なが)(かね)在所(ありか)沢山(たくさん)見届(みとど)けておきました。327どうも大将(たいしやう)智慧(ちゑ)()りなくちや、328吾々(われわれ)()()ひませぬワイ』
329(げん)『フン、330さうか、331それぢや今晩(こんばん)(ひと)つ、332何処(どつか)宝庫(むすめ)(かどは)かしてみようかい』
333 それより三人(さんにん)浴湯()使(つか)夕食(ゆふしよく)(をは)り、334(また)もや一間(ひとま)(はい)つてコソコソと大望(たいまう)遂行(すゐかう)下準備(したじゆんび)相談(さうだん)をやつてゐた。
335 三人(さんにん)(いよいよ)左守司(さもりづかさ)屋敷(やしき)(しの)()り、336しこたま(かね)をふんだくらむと覆面(ふくめん)頭巾(づきん)扮装(いでたち)裏口(うらぐち)からソツと()()し、337町裏(まちうら)細路(ほそみち)(つた)ふて、338左守(さもり)(やかた)をさして(しの)びゆく。339折柄(をりから)チヤン チヤン チヤン チヤンと半鐘(はんしよう)(こゑ)340(またた)(うち)炎々(えんえん)(てん)(こが)してタラハン()目抜(めぬき)場所(ばしよ)(きこ)えたる広小路(ひろこうぢ)()()した。341(ほと)んど森閑(しんかん)として山河草木(さんかさうもく)居眠(ゐねむ)つてゐたやうな星月夜(ほしづきよ)342(にはか)()(さま)したやうに、343あたりが(さわ)がしくなつて、344何処(どこ)(うち)彼処(かしこ)(うち)火消装束(ひけししやうぞく)でトビを(かた)げて()()し、345危険(きけん)(たま)らず、346三人(さんにん)(ある)(いへ)軒下(のきした)()(しの)び、347(また)もやコソコソと相談(さうだん)(はじ)()した。
348(げん)『オイ今夜(こんや)はダメかも()れぬぞ。349これ(だけ)何処(どこ)(いへ)何処(どこ)(いへ)一度(いちど)()(さま)し、350トビを(かた)げて()()してゐやがるから、351街道(かいだう)混雑(こんざつ)といつたら大変(たいへん)なものだ。352こんな(ばん)仕事(しごと)をしなくても(また)明日(あす)(ばん)があるぢやないか』
353コブ『泥棒稼(どろぼうかせ)ぎには()つて()いの()さですよ。354何奴(どいつ)此奴(こいつ)火事(くわじ)(はう)()()られてるから、355火事泥(くわじどろ)()つて、356何処(どこ)彼処(かしこ)となし火消(ひけし)()けて()()むのですよ。357()泥棒(どろばう)はこんな(とき)(かぎ)りますよ、358のうコオロ』
359コオ『ウンそらさうだ、360(いま)一番(いちばん)(げん)ナマを余計(よけい)()つてる(やつ)361左守(さもり)(つかさ)()(こと)だ。362何時(いつ)彼奴(あいつ)(うち)には衛兵(ゑいへい)三四十人(さんしじふにん)()やうが、363こんな(とき)余程(よほど)大火事(おほくわじ)だから、364(みな)火消(ひけし)()てゐやがるから(いへ)はがら(あき)だ。365サ、366()かうぢやないか。367ナ、368千万両(せんまんりやう)(かね)をふんだくり、369(その)(つぎ)にや民衆(みんしう)買収(ばいしう)して、370タラハン(じやう)転覆(てんぷく)(くはだ)てるには恰好(かつかう)時期(じき)だ。371玄真(げんしん)さま、372こんな()機会(きくわい)はありませぬよ。373左守(さもり)屋敷(やしき)はすつかりと(しら)べておきましたから、374(わたし)案内(あんない)さして(くだ)さい』
375玄真(げんしん)成程(なるほど)376(まへ)命令(めいれい)には(したが)はねばならぬのだつたな。377ヤ、378こんな命令(めいれい)なら服従(ふくじゆう)する』
379()(なが)ら、380自分(じぶん)()災難(さいなん)(かか)るとは、381(かみ)ならぬ()()(よし)もなく、382火事(くわじ)(さわ)ぎに(まぎ)れて左守(さもり)裏門(うらもん)より、383ソツと三人(さんにん)(とも)(しの)()んで(しま)つた。
384大正一五・一・三一 旧一四・一二・一八 於月光閣 松村真澄録)
   
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