霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 (さぎ)(からす)〔二〇四一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻 篇:第3篇 木田山城 よみ:きたやまじょう
章:第14章 第81巻 よみ:さぎとからす 通し章番号:2041
口述日:1934(昭和9)年08月14日(旧07月5日) 口述場所:水明閣 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年12月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
チンリウ姫は、侍女母娘の命を憐れに思い、敵国の太子エームスの妃となることを承諾した。
エームス太子は城内に命じて、さっそく結婚式を行うこととした。太子はチンリウ姫を奥殿に招き、この結婚が成ったなら、チンリウ姫の父王をイドム城に迎えて、姫の心に報いよう、と誓った。
結婚式が始まり、仲介役となったアララギは祝歌を歌った。続いてエームス太子、チンリウ姫、朝月、夕月、センリウと喜びの歌を歌い、結婚の儀式を済ませることとなった。
チンリウ姫が太子の寝室に進みいることになった直前、アララギがすぐれない面持ちで姫を別室に招いた。そして語るに、
これまでエームス太子は何度も妃を迎えたが、いずれも一晩きりで命を落としている。
それというのも実は、太子は猛獣の化け物である。
このことは、サール国の侍女たちから噂で聞いた確かな話である。
そこで自分の娘センリウは姫にそっくりであることから、今夜は安全のため、身代わりに立てて様子を見てみましょう。
というものだった。これはアララギの計略であったが、チンリウ姫は疑いもなく乳母の提案を聞き入れ、センリウと着物を着替えてその夜は別室に控えていた。
翌朝、センリウが無事であったのを見て、チンリウ姫はアララギに、『何ともなかったようだが太子は替え玉に気づかれたのだろうか』、と相談した。
アララギは、『太子は替え玉に気づいてはいないようだが、太子の心をもっと姫に向かわせるためには、祭壇にある水晶の花瓶を庭で打つとよい』と姫に勧めた。
チンリウ姫は何の疑いもなく、花瓶を庭に持ち出して打つと、花瓶は二つに割れてしまった。
アララギは突然姫のたぶさを掴んで引きずりまわし、家宝を打ち壊した大罪人、と叫んだ。たちまち姫は捕り手に囲まれてしまった。アララギは、替え玉が気づかれないように姫の口に猿轡をかませ、顔を殴って容貌がわからないようにしてしまった。
チンリウ姫は、家宝を打ち壊した罪人・センリウとして、遠島の刑に処せられることになってしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm8114
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 504頁 修補版: 校定版:306頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 (ここ)にチンリウ(ひめ)乳母(うば)アララギの、002ことを()けての懇願(こんぐわん)により、003(てき)大将(たいしやう)エールスの太子(たいし)エームスの(きさき)となる(こと)(こころ)ならずも承諾(しようだく)し、004一時(いちじ)(なん)(まぬが)れむとしたるこそ(あは)れなれ。005エームス(わう)欣喜雀躍(きんきじやくやく)しながら、006群臣(ぐんしん)(めい)じ、007奥殿(おくでん)(おい)目出度(めでた)結婚式(けつこんしき)(おこな)(こと)厳命(げんめい)せしにぞ、008木田山城内(きたやまじやうない)(かなへ)()くが(ごと)く、009(うへ)(した)への大騒(おほさわ)ぎ、010若王(わかぎみ)目出度(めでた)結婚(けつこん)なりと、011(たか)きも(ひく)きも(ゑら)(よろこ)ばむものはなかりけり。012(なか)にもチンリウ(ひめ)結婚(けつこん)花形役者(はながたやくしや)として、013今日(けふ)までの牢獄住(らうごくずま)ひに引替(ひきか)へ、014地獄(ぢごく)より天国(てんごく)(のぼ)りし(ごと)くなれど、015心中(しんちう)(やや)悲歎(ひたん)(なみだ)()()たりけり。016エームス(わう)はチンリウ(ひめ)奥殿(おくでん)(まね)温顔(をんがん)満面(まんめん)(たた)へながら(うた)ふ。
017 エームス(わう)(うた)
018夕顔(ゆふがほ)(にほ)へる(には)()姿(すがた)
019(みと)めて(われ)(なや)みに()ちたり
020何事(なにごと)時世時節(ときよじせつ)(あきら)めて
021(われ)(ゆる)せし(きみ)(かな)しも
022(きみ)(こころ)(われ)にあはずば(たま)()
023生命(いのち)()せむと(なや)()しよな
024天地(あめつち)(かみ)(めぐみ)(つゆ)()びて
025今日(けふ)(うれ)しく(きみ)()ふかも
026(たま)()生命(いのち)(われ)()しむまじ
027(きみ)(こころ)(いだ)かるる()
028父母(ちちはは)(ゐや)なき(わざ)(ゆる)しませ
029やがて(むく)いむ(きみ)(こころ)
030()(ちち)(やす)きに(すく)ひまゐらせて
031イドムの(しろ)(むか)(まつ)らむ
032(わが)(こころ)(きみ)御前(みまへ)()()けて
033二心(ふたごころ)なきを(ちか)()くべし』
034 チンリウ(ひめ)(うた)ふ。
035若王(わかぎみ)大御心(おほみこころ)(かな)ひたる
036(わが)(さち)はひを(かみ)感謝(ゐやひ)
037永久(とこしへ)(きみ)御側(みそば)(つか)へつつ
038(わが)垂乳根(たらちね)()()()たむ
039垂乳根(たらちね)(こころ)(なや)(おも)ひつつ
040はからず(きみ)にいそひ(まつ)るも』
041 エームス(わう)(うた)ふ。
042(たま)()生命(いのち)をかけし(こひ)(ゆゑ)
043(てん)にも(のぼ)(おも)ひするかな
044朝月(あさづき)夕月(ゆふづき)、アララギ、センリウの
045真心(まごころ)()りて今日(けふ)(たの)しも』
046 アララギは(うた)ふ。
047若王(わかぎみ)(きよ)御前(みまへ)(まね)かれて
048(うれ)しさゆゑに(わが)(たま)(ふる)ふも
049チンリウの(ひめ)(こころ)(なぐさ)めつ
050今日(けふ)吉日(よきひ)(われ)()ひにき
051若王(わかぎみ)永久(とは)(つか)へて(われ)(また)
052御国(みくに)(さか)えを(いの)(まつ)らむ』
053 朝月(あさづき)(うた)ふ。
054若王(わかぎみ)御言(みこと)(かしこ)みさまざまと
055言霊(ことたま)()ちて(やぶ)れけるかな
056如何(いか)にして(ひめ)(こころ)(むか)へむと
057千々(ちぢ)(こころ)(くだ)きけるかや
058チンリウ(ひめ)(こころ)うごきて(わが)(たま)
059いや(あた)らしく(ひか)りそめたり』
060 夕月(ゆふづき)(うた)ふ。
061(われ)(また)如何(いかが)なるやと(あや)ぶみし
062(ひめ)(こころ)(うご)()めたり
063アララギの生言霊(いくことたま)(たす)けにて
064今日(けふ)吉日(よきひ)()ふぞ(うれ)しき』
065 いよいよ(ここ)盛大(せいだい)なる結婚(けつこん)(しき)()げることとなり、066(しろ)内外(ないぐわい)には国津神等(くにつかみたち)歓呼(くわんこ)(こゑ)067天地(てんち)(ゆる)がすばかりなり。068殿中(でんちう)には荘厳(さうごん)なる結婚式(けつこんしき)(ひら)かれてゐる。069媒介役(ばいかいやく)たるアララギは祝歌(しゆくか)(うた)ふ。
070天地(あめつち)(ひら)()めてゆ(ためし)なき
071今日(けふ)吉日(よきひ)()ふぞ目出度(めでた)き。
072大栄山(おほさかやま)()(のぼ)
073木田川(きたがは)(おもて)(つき)(うか)
074木田山城(きたやまじやう)清庭(すがには)
075大宮柱(おほみやばしら)太知(ふとし)りて
076(そな)へも(かた)()(しろ)
077エールス(わう)若王(わかぎみ)
078アヅミの(きみ)愛娘(まなむすめ)
079チンリウ(ひめ)(むか)へまし
080今日(けふ)(ゆふ)べの吉時(よきとき)
081華燭(くわしよく)(てん)()(たま)
082夫婦(ふうふ)(なか)よく(むつ)まじく
083千代(ちよ)(かた)めを永久(とこしへ)
084サールの(くに)国王(こくわう)
085国津神等(くにつかみら)(うやま)はれ
086堅磐常磐(かきはときは)巌ケ根(いはがね)
087(はて)なき(ひろ)国原(くにはら)
088領有(うしは)(たま)()となりぬ
089父大王(ちちだいわう)大栄(おほさか)
090御山(みやま)()えて(いま)ははや
091イドムの(くに)(わう)となり
092アヅミの(きみ)退(しりぞ)けて
093(とき)めき(たま)(たふと)さよ
094さはさりながら(わが)(きみ)
095仁慈無限(じんじむげん)にましまして
096国津神等(くにつかみら)(あは)れまし
097(めぐみ)(つゆ)(うるほ)ひて
098鳥獣虫魚(てうじうちうぎよ)にいたるまで
099(きみ)御徳(みとく)服従(まつろ)ひて
100今日(けふ)吉日(よきひ)(うた)ふなり
101木田山城(きたやまじやう)茂森(しげもり)
102(こずゑ)(ひそ)田鶴(たづ)(こゑ)
103いともさやかに(きこ)ゆなり
104(まつ)千歳(ちとせ)(いろ)(ふか)
105常磐(ときは)(さま)(あら)はせり
106チンリウ(ひめ)賢女(さかしめ)
107(また)細女(くはしめ)()(くに)
108(きさき)(きみ)()れまして
109四方(よも)(かがや)(たま)ふべし
110(われ)二十年(はたとせ)姫君(ひめぎみ)
111御側(みそば)(はべ)(つか)()
112今日(けふ)吉日(よきひ)()ひけるも
113(かみ)(めぐみ)(つゆ)なれや
114ああ有難(ありがた)目出度(めでた)しと
115今日(けふ)吉日(よきひ)()(まつ)る』
116 エームス(わう)(うた)ふ。
117(むかし)より(ためし)()かぬ(よろこ)びに
118()ひにけらしな(ひめ)(めと)りて
119天地(あめつち)(きよ)()れつつ(わが)(むね)
120御空(みそら)(つき)()(わた)りつつ
121大栄山(おほさかやま)()()()める月光(つきかげ)
122今日(けふ)一入(ひとしほ)(すが)しかりけり
123野辺(のべ)()(かぜ)(ひびき)(なん)となく
124今日(けふ)(よろこ)(うた)ふがに(きこ)
125大栄山(おほさかやま)尾根(をね)にかがよふ月影(つきかげ)
126木田(きた)(なが)れに(うか)びて(いは)
127小波(さざなみ)()たぬ(ゆふ)べの(かは)()
128月影(つきかげ)(まる)()みきらひたり
129(わが)(こころ)(とみ)(いさ)みて天地(あめつち)
130(いき)生命(いのち)(たふと)(おも)
131(わが)(ちち)(こころ)(なご)めて(つま)(ため)
132イドムの(くに)(よみがへ)らせむ
133()くならばアヅミの(きみ)(わが)(ちち)
134エールスも(また)(ちち)なりにけり
135イドム(こく)サールの(くに)()()きて
136伊佐子(いさご)(しま)(なが)(さか)えむ』
137 チンリウ(ひめ)(うた)ふ。
138何事(なにごと)(みな)()(わす)今日(けふ)()
139(われ)(とつぎ)(たの)しむものなり
140(とき)まちて(ちち)御国(みくに)(かへ)さむと
141(おも)ふは(わが)()(ねが)ひなりけり
142(なさけ)あるエームス(わう)()となりて
143(おや)孝養(かうやう)(つく)さむと(おも)
144木田山城(きたやまじやう)()らす(ゆふ)べの(つき)()れば
145()ませ(たま)へり(きみ)(おも)()て』
146 朝月(あさづき)(うた)ふ。
147国津神(くにつかみ)(やま)(ごと)くに(あつ)まりて
148今日(けふ)吉日(よきひ)(うた)(こゑ)すも
149幾万(いくまん)国津神等(くにつかみら)(とき)(こゑ)
150(あめ)(つち)とに(ひび)(わた)れり』
151 夕月(ゆふづき)(うた)ふ。
152夕月(ゆふづき)(ひかり)()えにつ若王(わかぎみ)
153今日(けふ)(よろこ)(いは)ふがに()
154(われ)(また)これの(むしろ)(つら)ねられ
155(うれ)しさあまりて(こと)()もなし
156(やま)(かは)(ゑら)(よろこ)状況(さま)()えて
157五月(さつき)(あめ)()(あが)りたり』
158 センリウは(うた)ふ。
159姫君(ひめぎみ)雄々(をを)しき(こころ)(さち)はひに
160(やす)けく異邦(いはう)(つき)()しかな
161(さき)()にイドムの(しろ)(なが)めてし
162(つき)にも()して(すが)しかりけり
163(わが)姿(すがた)(おも)ざしまでも姫君(ひめぎみ)
164()たりと(ひと)()ふぞあやしき』
165 アララギは(うた)ふ。
166姫君(ひめぎみ)(なれ)吾乳(わがちち)()()りて
167はぐくまれたる(ため)なりにけり
168賤女(はしため)といへども(なれ)乳兄弟(ちきやうだい)
169(ひめ)にまがひて(うるは)しきかも』
170 いよいよチンリウ(ひめ)結婚(けつこん)儀式(ぎしき)()ませ、171(これ)より(わう)寝室(しんしつ)(すす)()(こと)となりけるが、172乳母(うば)のアララギは(すぐ)れざる面持(おももち)にて、173(ひそ)かにチンリウ(ひめ)一間(ひとま)()(かた)るらむ。
174(ひめ)(さま)175大変(たいへん)(わたし)には心配事(しんぱいごと)出来(でき)ました。176如何(いかが)(いた)しませうかと思案(しあん)()れて()りますが、177どうか御許(おゆる)(くだ)さいませ。178乳母(うば)一生(いつしやう)(あやま)ちですから』
179と、180チンリウ(ひめ)意外(いぐわい)乳母(うば)言葉(ことば)(むね)(とどろ)かせながら、
181(いま)となり(あや)しき言葉(ことば)()くものか
182(なれ)(おもて)(うれ)(ただよ)ふ』
183 乳母(うば)のアララギは一入(ひとしほ)(こゑ)(ひそ)めて、
184(ひめ)(さま)185これが心配(しんぱい)せずに()られませうか。186滝津瀬(たきつせ)187山風(やまかぜ)側女(そばめ)(うけたまは)りますれば、188(いま)まで王様(わうさま)幾度(いくたび)(うるは)しき(きさき)をお(むか)へになつたさうでありますが、189(いづ)れも一晩(ひとばん)きりでお生命(いのち)がなくなるさうで、190()(うはさ)遠近(をちこち)(つた)はり、191それゆゑに()(くに)では王様(わうさま)(きさき)になるものはないさうで御座(ござ)います。192如何(いか)高貴(かうき)()になつても生命(いのち)がなくてはなりませぬからなあー。193かくなる(うへ)()(いだ)さうとしても(あり)()()隙間(すきま)もありませぬから』
194と、195(いき)はづませて耳打(みみう)ちする。
196 チンリウ(ひめ)(うた)ふ。
197(おそ)ろしき(こと)()くかもアララギの
198言葉(ことば)真言(まこと)(おも)へば(おそ)ろし
199如何(いか)にして()()(のが)永遠(とこしへ)
200(われ)生命(いのち)をながらへむかな
201アララギによき智慧(ちゑ)あればかしてたべ
202(わが)(たま)()生命(いのち)(おも)し』
203 アララギは一入(ひとしほ)(こゑ)(ひそ)めて()ふ。
204(ひめ)(さま)205この王様(わうさま)(くま)(とら)との(なか)から出来(でき)猛獣(まうじう)化物(ばけもの)で、206あんな(やさ)しい姿(すがた)はして()られますが、207夜分(やぶん)になつて()()かれますと、208(あま)りに(うで)(ちから)(つよ)いため、209(よわ)姫君様(ひめぎみさま)一息(ひといき)()(ころ)されて、210なくなるとの(こと)211(わたし)廿年間(にじふねんかん)(つか)へしまして、212(いま)()(ところ)大切(たいせつ)姫君様(ひめぎみさま)(ころ)されたら申訳(まうしわけ)()たず、213いろいろ(かんが)へた結果(けつくわ)214(ひと)つのよき智慧(ちゑ)(しぼ)()しました。215つまり(わが)(むすめ)センリウは乳兄弟(ちきやうだい)間柄(あひだがら)(ゆゑ)216(ひめ)(さま)面貌(おもざし)217姿(すがた)寸分(すんぶん)(たが)はず、218菖蒲(あやめ)燕子花(かきつばた)との区別(くべつ)(わか)らぬと(まう)しますから、219(これ)(さいは)(ひめ)(さま)御装束(ごしやうぞく)着替(きか)へさせ、220(ひめ)(さま)はセンリウの着物(きもの)()して(くら)がりに(かく)れ、221今晩(こんばん)一夜(いちや)だけ様子(やうす)(かんが)へる(こと)(いた)しませう。222センリウは(いや)しき(わたし)(むすめ)御座(ござ)いますから、223貴賤(きせん)()天地(てんち)(くら)ぶべきもので御座(ござ)ります。224それで今夜(こんや)替玉(かへだま)御許(おゆる)(くだ)さらば、225屹度(きつと)(ひめ)(さま)危難(きなん)をお(すく)(まう)()げます』
226と、227言葉巧(ことばたく)みに()()つれば、228チンリウ(ひめ)乳母(うば)アララギの(くろ)(こころ)(すこ)しも(さと)らず、229盛装(せいさう)()()てセンリウ(ひめ)着替(きか)へさせ、230自分(じぶん)はセンリウ(ぢよ)着物(きもの)(ちやく)一間(ひとま)(ひそ)()()たりける。231(しか)るに()()(あま)(かは)りたる(さま)もなく、232センリウ(ぢよ)欣然(きんぜん)として朝庭(あさには)逍遥(せうえう)して()る。233チンリウ(ひめ)乳母(うば)(そで)()きて小声(こごゑ)になりながら、
234乳母(うば)235夜前(やぜん)(なに)(こと)がなかつたさうだが、236王様(わうさま)一体(いつたい)(なん)思召(おぼしめ)して御座(ござ)らうぞ。237替玉(かへだま)使(つか)はれて御心(みこころ)()かないのであろうか』
238と、239(やや)心配気(しんばいげ)()ひければ、240乳母(うば)アララギはチンリウ(ひめ)(みみ)(くち)()せ、
241()祭壇(さいだん)(かざ)りある水晶(すゐしやう)花瓶(くわびん)(には)持出(もちだ)し、242小石(こいし)()ちて(しづ)かに()(とき)は、243(たちま)王様(わうさま)歓心(くわんしん)()て、244(かなら)(ひめ)(さま)(あい)(たま)ふと()(こと)御座(ござ)ります。245王様(わうさま)(わが)(むすめ)センリウを真正(まこと)(ひめ)(さま)(おも)ふて()られますさうですから、246夜前(やぜん)替玉(かへだま)(おそ)(おほ)くて(まう)されませぬから、247()花瓶(くわびん)(には)()()し、248(すこ)しくお()(くだ)さいませ。249(きよ)()()ますから』
250と、251()懇切(ねんごろ)()(さと)せば、252おぼこ(むすめ)のチンリウ(ひめ)(ふか)計略(けいりやく)のあるとは()らず、253水晶(すゐしやう)花瓶(くわびん)(には)()()()(たま)ひければ、254水晶(すゐしやう)花瓶(くわびん)はポカリと(ふた)つに(やぶ)れたり。255(これ)()るより乳母(うば)アララギは、256チンリウ(ひめ)(たぶさ)をグツと(にぎ)りて引摺(ひきず)(まは)しながら、
257(なんぢ)(ひめ)(さま)侍女(じぢよ)でありながら、258(いへ)重宝(たから)(いし)をもつて(たた)(やぶ)るとは言語道断(ごんごだうだん)259吾子(わがこ)であつて吾子(わがこ)でない。260皆様(みなさま)261大罪人(だいざいにん)(あら)はれました』
262と、263大音声(だいおんじやう)()ばはるや、264数多(あまた)司等(つかさたち)(あつ)まり(きた)り、265十重(とへ)二十重(はたへ)取巻(とりま)き、266狼藉者(らうぜきもの)(のが)すなと手毎(てんで)得物(えもの)をもつて()(きた)る。
267 チンリウ(ひめ)(こと)意外(いぐわい)(おどろ)き、268乳母(うば)アララギに(むか)ひ、
269(なんぢ)(むすめ)にあらず』
270()ばはりければ、271アララギは発覚(はつかく)しては大事(おほごと)と、272(ひめ)(くち)真綿(まわた)(ふく)ませ猿轡(さるぐつわ)をかませ、273頭部(とうぶ)面部(めんぶ)()()ゑければ、274()にじみ(あが)()ても()つかぬ醜悪(しうあく)なる(おも)となりければ、275(ここ)(あは)れや大罪人(だいざいにん)としてチンリウ(ひめ)遠島(ゑんたう)(けい)(しよ)せられけり。
276昭和九・八・一四 旧七・五 於水明閣 森良仁謹録)