本書は、王仁が明治三十一年旧二月九日から十五日に至る前後一週間の荒行と、帰宅後一週間の床縛りの修行を神界から命ぜられ、その間に霊魂が現幽神三界の消息を実見した。その物語である。
霊界は時間空間を超越しているので、古今東西の出来事は平面的に霊眼に映じる。
一部でも読んでいただき、霊界の消息の一部を窺い、神々の活動を幾分でも了解してもらえれば、後述の目的は達せられる。
本巻はシオン山攻撃の神戦を描いた。国祖大神が天地の律法を制定し、天則違反で稚桜姫命が幽界にやらわれた経緯を述べている。
『三千世界一度に開く梅の花、艮の金神の世になりたぞよ。須弥仙山に腰を掛け、鬼門の金神、守るぞよ』との神示は、ヨハネの身魂というべき教祖に帰神された、最初の艮の金神様の救世の一大神言であった。
口述者はこの神言を読むたびに、無限絶対、無始無終の大原因神(おほもとがみ)の洪大なご経綸と抱負の雄偉さに、自分の心の海面に真如の月が光り輝き、慈悲の太陽が宇宙全体を斉しく公平に照らし、全世界の闇を晴らすような心持になるのである。
また、『三千世界一度に開く』という宇宙の経綸を堅く完全に言い表している。そして句の終わりに『梅の花』とつづめている。あたかも白扇を広げて涼風を起こし、梅の花の小さな要をもって之を統一した如く、至大無外、至小無内の神権発動の真相を説明している。
『須弥仙山に腰をかけ、艮の金神守るぞよ』とは、偉大な神格の表現である。そのほかにも、大神の帰神の産物としては、三千世界の神界、幽界、現界に対し、神祇、諸仏、人類に警告を与え、将来を示して懇切至らざるはないのである。
口述者は神諭の一端に解釈を施し、大神の大御心がどこにあるかを明らかに示したく、前後ほとんど二十三年間の久しきにわたった。しかしながら神界では、その発表を許さなかったために、今まで神諭の文章の意義については、一言半句も説明したことはなかった。
しかし大正十年の旧九月八日にいたって、突然神命が口述者の身魂に下り、神から開示した霊界の消息を発表せよ、との教えに接した。神の教えに、神が口を借りて口述するので、筆録させろ、とのことだった。