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第58巻(酉の巻)
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第61巻(子の巻)
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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
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第2巻(丑の巻)
序
凡例
総説
第1篇 神界の混乱
01 攻防両軍の配置
〔51〕
02 邪神の再来
〔52〕
03 美山彦命の出現
〔53〕
04 真澄の神鏡
〔54〕
05 黒死病の由来
〔55〕
06 モーゼとエリヤ
〔56〕
07 天地の合せ鏡
〔57〕
08 嫉視反目
〔58〕
第2篇 善悪正邪
09 タコマ山の祭典その一
〔59〕
10 タコマ山の祭典その二
〔60〕
11 狸の土舟
〔61〕
12 醜女の活躍
〔62〕
13 蜂の室屋
〔63〕
第3篇 神戦の経過
14 水星の精
〔64〕
15 山幸
〔65〕
16 梟の宵企み
〔66〕
17 佐賀姫の義死
〔67〕
18 反間苦肉の策
〔68〕
19 夢の跡
〔69〕
第4篇 常世の国
20 疑問の艶書
〔70〕
21 常世の国へ
〔71〕
22 言霊別命の奇策
〔72〕
23 竜世姫の奇智
〔73〕
24 藻脱けの殻
〔74〕
25 蒲団の隧道
〔75〕
26 信天翁
〔76〕
27 湖上の木乃伊
〔77〕
第5篇 神の慈愛
28 高白山の戦闘
〔78〕
29 乙女の天使
〔79〕
30 十曜の神旗
〔80〕
31 手痛き握手
〔81〕
32 言霊別命の帰城
〔82〕
33 焼野の雉子
〔83〕
34 義神の参加
〔84〕
35 南高山の神宝
〔85〕
36 高白山上の悲劇
〔86〕
37 長高山の悲劇
〔87〕
38 歓天喜地
〔88〕
第6篇 神霊の祭祀
39 太白星の玉
〔89〕
40 山上の神示
〔90〕
41 十六社の祭典
〔91〕
42 甲冑の起源
〔92〕
43 濡衣
〔93〕
44 魔風恋風
〔94〕
第7篇 天地の大道
45 天地の律法
〔95〕
46 天則違反
〔96〕
47 天使の降臨
〔97〕
48 律法の審議
〔98〕
49 猫の眼の玉
〔99〕
50 鋼鉄の鉾
〔100〕
附録 第一回高熊山参拝紀行歌
余白歌
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(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
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(B)
(N)
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第四四章
魔風
(
まかぜ
)
恋風
(
こひかぜ
)
〔九四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻
篇:
第6篇 神霊の祭祀
よみ(新仮名遣い):
しんれいのさいし
章:
第44章 魔風恋風
よみ(新仮名遣い):
まかぜこいかぜ
通し章番号:
94
口述日:
1921(大正10)年11月08日(旧10月09日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年1月27日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
言霊別命は万寿山に落ち延びた。言霊別命の声望を慕って神将たちが集まり、万寿山の神軍は次第に集まってきた。
一方竜宮城は常世姫のために落城し、稚桜姫命は神国別命らとともに、万寿山に落ち延びてきた。言霊別命は稚桜姫命を礼を尽くしてお迎えした。稚桜姫命は、言霊別命の潔白をようやく認められた。
万寿山には、常世姫の暴虐に義憤を発した紅葉別という勇将が馳せつけ、言霊別命はこれを万寿山の主将とした。
竜宮城をはじめ地の高天原、橄欖山も一時魔軍の手に落ちた。シオン山の大八洲彦命は、大足彦の国の真澄の鏡で敵軍を射照らさせ、壊走させた。また竜宮城の魔軍に対しても、真澄の鏡を射照らすと、常世姫の身体から異様な光が現れて金毛九尾の悪狐と化した。そして、常世城めがけて遁走してしまった。
ここに稚桜姫命は言霊別命らを率いて竜宮城に帰還した。
一方、天稚彦は唐子姫と山奥で暮らしていたが、唐子姫は悪狐の姿を現して逃げてしまった。天稚彦は仕方なく諸方を流浪し、艱難をなめつつ竜宮城へ帰ることになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-12-05 17:01:56
OBC :
rm0244
愛善世界社版:
222頁
八幡書店版:
第1輯 238頁
修補版:
校定版:
226頁
普及版:
105頁
初版:
ページ備考:
001
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
は
思
(
おも
)
はざる
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
着
(
き
)
せられ、
002
如何
(
いか
)
にもしてこの
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らし、
003
身
(
み
)
の
潔白
(
けつぱく
)
を
示
(
しめ
)
さむと
焦慮
(
せうりよ
)
し、
004
かつ
常世姫
(
とこよひめ
)
を
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めしめむとした。
005
されど
狐独
(
こどく
)
の
身
(
み
)
となりし
命
(
みこと
)
はいかんとも
策
(
さく
)
の
施
(
ほどこ
)
すべき
道
(
みち
)
がなかつた。
006
そこでいよいよ
意
(
い
)
を
決
(
けつ
)
し、
007
万寿山
(
まんじゆざん
)
に
落
(
お
)
ち
延
(
の
)
びた。
008
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
に
同情
(
どうじやう
)
したる
数多
(
あまた
)
の
神司
(
かみがみ
)
は、
009
命
(
みこと
)
の
後
(
あと
)
をおふて
万寿山
(
まんじゆざん
)
に
馳集
(
はせあつ
)
まつた。
010
重
(
おも
)
なる
神将
(
しんしやう
)
は、
011
吾妻別
(
あづまわけ
)
、
012
鷹松別
(
たかまつわけ
)
、
013
河原林
(
かはらばやし
)
、
014
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
015
有国彦
(
ありくにひこ
)
、
016
森鷹彦
(
もりたかひこ
)
らの
諸神将
(
しよしんしよう
)
であつた。
017
勇猛
(
ゆうまう
)
なる
神軍
(
しんぐん
)
は
期
(
き
)
せずして
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
集
(
あつ
)
まりきたつた。
018
このこと
常世姫
(
とこよひめ
)
の
耳
(
みみ
)
に
雷
(
らい
)
のごとく
響
(
ひび
)
いてきた。
019
常世姫
(
とこよひめ
)
はおほいに
驚
(
おどろ
)
き、
020
八王
(
やつわう
)
大神
(
だいじん
)
常世彦
(
とこよひこ
)
をして
万寿山
(
まんじゆざん
)
を
攻撃
(
こうげき
)
せしめむとした。
021
時
(
とき
)
しも
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
は
常世姫
(
とこよひめ
)
のために
陥落
(
かんらく
)
し、
022
稚桜姫
(
わかざくらひめの
)
命
(
みこと
)
は
神国別
(
かみくにわけの
)
命
(
みこと
)
以下
(
いか
)
の
神将
(
しんしやう
)
とともに、
023
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
の
駐屯
(
ちうとん
)
せる
万寿山
(
まんじゆざん
)
に
逃
(
のが
)
れたまうた。
024
ここに
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
は、
025
礼
(
れい
)
をつくしてこれを
迎
(
むか
)
へ
奉
(
たてまつ
)
り、
026
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
を
回復
(
くわいふく
)
せむとし、
027
かつ
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
以下
(
いか
)
の
清廉
(
せいれん
)
潔白
(
けつぱく
)
にして、
028
至誠
(
しせい
)
至実
(
しじつ
)
の
神
(
かみ
)
たることが
初
(
はじ
)
めて
悟
(
さと
)
られた。
029
稚桜姫
(
わかざくらひめの
)
命
(
みこと
)
の
来臨
(
らいりん
)
とともに
万寿山
(
まんじゆざん
)
はますます
開拓
(
かいたく
)
され、
030
つひには
堅城
(
けんじやう
)
を
造
(
つく
)
り、
031
鉄壁
(
てつぺき
)
をめぐらし、
032
実
(
じつ
)
に
難攻
(
なんこう
)
不落
(
ふらく
)
の
城塞
(
じやうさい
)
となつた。
033
この
時
(
とき
)
、
034
智勇
(
ちゆう
)
兼備
(
けんび
)
の
勇将
(
ゆうしやう
)
にして、
035
紅葉別
(
もみぢわけ
)
といふ
軍神
(
ぐんしん
)
があつた。
036
この
神司
(
かみ
)
あまたの
神軍
(
しんぐん
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
来
(
きた
)
り、
037
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
に
面謁
(
めんえつ
)
せむことを
申込
(
まをしこ
)
んだ。
038
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
はまづ
吾妻別
(
あづまわけ
)
に
面会
(
めんくわい
)
せしめ、
039
その
来意
(
らいい
)
を
尋
(
たづ
)
ねさせた。
040
紅葉別
(
もみぢわけ
)
は
常世姫
(
とこよひめ
)
の
奸策
(
かんさく
)
を
聞
(
き
)
き
義憤
(
ぎふん
)
をおこし、
041
自
(
みづか
)
ら
進
(
すす
)
んで
万寿山
(
まんじゆざん
)
に
参加
(
さんか
)
し、
042
彼
(
かれ
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼし
天下
(
てんか
)
を
太平
(
たいへい
)
に
治
(
をさ
)
めむと
欲
(
ほつ
)
し、
043
協心
(
けふしん
)
戮力
(
りくりよく
)
もつてミロク
神政
(
しんせい
)
の
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
せむと、
044
殊勝
(
しゆしよう
)
にも
誠意
(
せいい
)
を
表
(
おもて
)
にあらはして
参加
(
さんか
)
せむ
事
(
こと
)
を
申込
(
まをしこ
)
んだ。
045
吾妻別
(
あづまわけ
)
はおほいに
喜
(
よろこ
)
び、
046
これを
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
に
委細
(
ゐさい
)
進言
(
しんげん
)
した。
047
紅葉別
(
もみぢわけ
)
は
戦闘
(
せんとう
)
に
妙
(
めう
)
をえたる
武神
(
ぶしん
)
である。
048
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
は
稚桜姫
(
わかざくらひめの
)
命
(
みこと
)
とはかり、
049
紅葉別
(
もみぢわけ
)
をして
万寿山
(
まんじゆざん
)
の
主将
(
しゆしやう
)
たらしめむとした。
050
このとき
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
はすでに
常世姫
(
とこよひめ
)
の
占領
(
せんりやう
)
するところとなり、
051
ついで
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
も、
052
橄欖山
(
かんらんざん
)
も
敵手
(
てきしゆ
)
に
落
(
お
)
ちてゐた。
053
シオン
山
(
ざん
)
の
総大将
(
そうだいしやう
)
大八洲彦
(
おほやしまひこの
)
命
(
みこと
)
は、
054
逃
(
のが
)
れきたれる
大足彦
(
おほだるひこ
)
の
国
(
くに
)
の
真澄
(
ますみ
)
の
鏡
(
かがみ
)
をもつて、
055
敵軍
(
てきぐん
)
を
山上
(
さんじやう
)
より
射照
(
いてら
)
した。
056
たちまち
山頂
(
さんちやう
)
より
幾十万
(
いくじふまん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
巨巌
(
きよがん
)
湧出
(
ゆうしゆつ
)
して
中空
(
ちゆうくう
)
に
飛
(
と
)
び、
057
美山彦
(
みやまひこ
)
、
058
国照姫
(
くにてるひめ
)
、
059
武熊別
(
たけくまわけ
)
の
魔軍
(
まぐん
)
の
集団
(
しふだん
)
めがけて
雨
(
あめ
)
のごとく
落下
(
らくか
)
し、
060
一方
(
いつぱう
)
鏡
(
かがみ
)
に
射照
(
いてら
)
されてその
正体
(
しやうたい
)
を
露
(
あら
)
はし、
061
たちまち
悪鬼
(
あくき
)
、
062
大蛇
(
だいじや
)
、
063
悪狐
(
あくこ
)
の
姿
(
すがた
)
と
変
(
へん
)
じ、
064
鬼城山
(
きじやうざん
)
めがけて
逃
(
に
)
げ
散
(
ち
)
つた。
065
ここに
大八洲彦
(
おほやしまひこの
)
命
(
みこと
)
は
宮比彦
(
みやびひこ
)
を
祭祀
(
さいし
)
の
長
(
ちやう
)
とし、
066
安世彦
(
やすよひこ
)
を
主将
(
しゆしやう
)
とし、
067
一部
(
いちぶ
)
の
神軍
(
しんぐん
)
をもつてこれを
守
(
まも
)
らしめ、
068
ただちにその
勢
(
いきほひ
)
をもつて
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ
回復戦
(
くわいふくせん
)
を
試
(
こころ
)
みた。
069
真鉄彦
(
まがねひこ
)
は
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
にむかひ、
070
磐樟彦
(
いはくすひこ
)
は
橄欖山
(
かんらんざん
)
にむかひ、
071
吾妻別
(
あづまわけ
)
、
072
大足彦
(
おほだるひこ
)
は
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
にむかひ、
073
国
(
くに
)
の
真澄
(
ますみ
)
の
鏡
(
かがみ
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し、
074
敵軍
(
てきぐん
)
を
照
(
てら
)
し、
075
かつ
大八洲彦
(
おほやしまひこの
)
命
(
みこと
)
の
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
するや、
076
たちまち
暴風
(
ばうふう
)
吹
(
ふ
)
きおこり、
077
浪
(
なみ
)
は
山
(
やま
)
の
如
(
ごと
)
く
立荒
(
たちすさ
)
び、
078
城
(
しろ
)
はほとんど
水中
(
すゐちゆう
)
に
没
(
ぼつ
)
した。
079
常世姫
(
とこよひめ
)
の
身体
(
しんたい
)
よりは
異様
(
いやう
)
の
光
(
ひかり
)
現
(
あら
)
はれ、
080
金毛
(
きんまう
)
八尾
(
はちび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
と
化
(
くわ
)
し、
081
黒雲
(
こくうん
)
を
巻
(
ま
)
きおこし、
082
常世城
(
とこよじやう
)
めがけて
遁走
(
とんさう
)
し、
083
部下
(
ぶか
)
の
魔軍
(
まぐん
)
は
諸方
(
しよはう
)
に
散乱
(
さんらん
)
して、
084
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
も
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
も
再
(
ふたた
)
び
神軍
(
しんぐん
)
の
手
(
て
)
に
帰
(
かへ
)
つた。
085
ここに
稚桜姫
(
わかざくらひめの
)
命
(
みこと
)
は、
086
言霊別
(
ことたまわけの
)
命
(
みこと
)
、
087
吾妻別
(
あづまわけ
)
らを
率
(
ひき
)
ゐてふたたび
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
に
帰還
(
きくわん
)
したまうた。
088
万寿山
(
まんじゆざん
)
は
鷹松別
(
たかまつわけ
)
、
089
有国別
(
ありくにわけ
)
らの
諸神将
(
しよしんしよう
)
をしてこれを
守備
(
しゆび
)
せしむることとなつた。
090
話
(
はなし
)
かはつて
天稚彦
(
あめのわかひこ
)
は、
091
唐子姫
(
からこひめ
)
に
心
(
こころ
)
を
奪
(
うば
)
はれ、
092
壇山
(
だんざん
)
を
捨
(
す
)
ててなほも
山奥
(
やまおく
)
深
(
ふか
)
くわけいり、
093
『お
前
(
まへ
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
暮
(
くら
)
すなら、
094
たとへ
野
(
の
)
の
末
(
すゑ
)
山
(
やま
)
の
奥
(
おく
)
、
095
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
の
住家
(
すみか
)
にて、
096
竹
(
たけ
)
の
柱
(
はしら
)
に
茅
(
かや
)
の
屋根
(
やね
)
、
097
手鍋
(
てなべ
)
提
(
さ
)
げてもかまやせぬ』
098
といふやうな
状態
(
じやうたい
)
にて、
099
わづかの
庵
(
いほり
)
を
結
(
むす
)
び
夫婦
(
ふうふ
)
きどりで
暫
(
しばら
)
く
暮
(
くら
)
してゐた。
100
ある
時
(
とき
)
天稚彦
(
あめのわかひこ
)
は
近辺
(
ほとり
)
の
山
(
やま
)
に
分
(
わ
)
け
入
(
い
)
りて、
101
兎
(
うさぎ
)
を
狩
(
か
)
つて
帰
(
かへ
)
つてきた。
102
唐子姫
(
からこひめ
)
は
夫
(
をつと
)
の
留守
(
るす
)
に
気
(
き
)
を
許
(
ゆる
)
し、
103
辺
(
あた
)
りに
響
(
ひび
)
く
鼾声
(
かんせい
)
を
発
(
はつ
)
し、
104
よく
寝入
(
ねい
)
つてゐた。
105
天稚彦
(
あめのわかひこ
)
はひそかに
外
(
そと
)
より
覗
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
た。
106
唐子姫
(
からこひめ
)
の
姿
(
すがた
)
はどこへ
行
(
い
)
つたか
影
(
かげ
)
もなく、
107
寝間
(
ねま
)
には
銀毛
(
ぎんまう
)
八尾
(
はちび
)
白面
(
はくめん
)
の
悪狐
(
あくこ
)
が
睡
(
ねむ
)
つてゐる。
108
天稚彦
(
あめのわかひこ
)
はおほいに
驚
(
おどろ
)
き、
109
かつ
怒
(
いか
)
り、
110
『この
邪神
(
じやしん
)
奴
(
め
)
、
111
わが
不在
(
ふざい
)
を
窺
(
うかが
)
ひ、
112
最愛
(
さいあい
)
の
唐子姫
(
からこひめ
)
を
喰
(
く
)
ひ
殺
(
ころ
)
し
腹
(
はら
)
膨
(
ふく
)
らせ、
113
安閑
(
あんかん
)
と
仮眠
(
いねむ
)
りをるとは
心憎
(
こころにく
)
し。
114
妻
(
つま
)
の
敵
(
かたき
)
、
115
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
れよ』
116
と
弓
(
ゆみ
)
に
矢
(
や
)
をつがひ、
117
悪狐
(
あくこ
)
をめがけて
発止
(
はつし
)
と
射
(
い
)
かけた。
118
この
時
(
とき
)
遅
(
おそ
)
く、
119
かの
時
(
とき
)
速
(
はや
)
く、
120
悪狐
(
あくこ
)
はたちまち
白煙
(
はくえん
)
となつて
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せた。
121
いづこともなく
唐子姫
(
からこひめ
)
の
声
(
こゑ
)
として、
122
『われは
常世姫
(
とこよひめ
)
の
部下
(
ぶか
)
の
魔神
(
まがみ
)
なり。
123
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
を
占領
(
せんりやう
)
せむために
花森彦
(
はなもりひこ
)
を
誘
(
おび
)
き
出
(
だ
)
し、
124
今
(
いま
)
また
汝
(
なんぢ
)
をこの
山奥
(
やまおく
)
に
誘
(
さそ
)
ひ、
125
その
通力
(
つうりき
)
を
失
(
うしな
)
はしめたり。
126
吾
(
われ
)
はこれより
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
に
馳帰
(
はせかへ
)
り
賞賜
(
しやうし
)
に
預
(
あづ
)
からむ。
127
汝
(
なんぢ
)
はすみやかに
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
に
還
(
かへ
)
り、
128
この
失敗
(
しつぱい
)
を
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
さず
物語
(
ものがた
)
り、
129
唐子姫
(
からこひめ
)
に
眉毛
(
まゆげ
)
をよまれ、
130
尻
(
しり
)
の
毛
(
け
)
も
一本
(
いつぽん
)
も
残
(
のこ
)
らず
引抜
(
ひきぬ
)
かれたり。
131
悔
(
くや
)
し
残念
(
ざんねん
)
を
耐
(
こば
)
りこばりてここまで
還
(
かへ
)
りきました。
132
今
(
いま
)
までの
罪
(
つみ
)
はお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいと、
133
女房
(
にようばう
)
の
稚桜姫
(
わかざくらひめの
)
命
(
みこと
)
に
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げて、
134
三拝
(
さんぱい
)
九拝
(
きうはい
)
せよ』
135
と
言葉
(
ことば
)
途切
(
とぎ
)
るとともに、
136
カラカラと
嘲笑
(
あざわら
)
ひの
声
(
こゑ
)
次第
(
しだい
)
に
遠
(
とほ
)
くなりゆくのであつた。
137
命
(
みこと
)
は
大
(
おほ
)
いに
怒
(
いか
)
り、
138
声
(
こゑ
)
する
方
(
はう
)
を
中空
(
ちゆうくう
)
目
(
め
)
がけて
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
つた。
139
矢
(
や
)
は
危
(
あやふ
)
くも
命
(
みこと
)
の
肩先
(
かたさき
)
をすれずれにうなりを
立
(
た
)
てて
落
(
お
)
ちきたり、
140
実
(
じつ
)
に
危機
(
きき
)
一髪
(
いつぱつ
)
の
間
(
あひだ
)
であつた。
141
天稚彦
(
あめのわかひこ
)
はこれより
諸方
(
しよはう
)
を
流浪
(
るらう
)
し、
142
種々
(
しゆじゆ
)
の
艱苦
(
かんく
)
を
嘗
(
な
)
めつつすごすごと
竜宮城
(
りゆうぐうじやう
)
に
帰
(
かへ
)
ることとなつた。
143
(
大正一〇・一一・八
旧一〇・九
加藤明子
録)
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